タナベマネジメントレター


コンサルタンツ・EYE
『既存顧客の深耕と掘起し』


 市場の“パイ”が縮小傾向にある業界を「残り福市場」と呼んでいる。日本の大多数の産業はこれに当てはまる。残り福市場の特徴は、勝ち組と負け組の差が拡がり、負け組は最終的に撤退を迫られ、勝ち組がまさに残った福を享受する市場である。

 残り福市場で戦っている事業は、まず自社の事業が勝ち組であるか(競争優位性が競合他社より高いか)を分析することからはじめる。競争優位性の切り口は、一般的にバリューチェーン(研究開発・購買・製造・営業・物流・サービス)とQC(品質・価格)で分析できるだろう。

 ここで競争優位性を見出せない場合には、何らかの優位性(差別化ポイント)を構築するか、事業自体の縮小・撤退を選択せざるを得ない。しかし、ほとんどの事業は「オンリーワン」「No.1」とは言わないまでも、どこかには優位性があると思う。

 さて、それでは勝ち組と分析された事業において、選択すべき戦い方はどういったものがあるか? 顧客は2種類しかない。「既存顧客」か「新規顧客」である。新規顧客の開拓が常に必要なのは言うまでもないが、費用対効果が高いのは既存顧客の深耕である。過去に取引実績があり、何らかの信用関係があるのだから当然だ。

 とくにこの残り福市場では“パイ”自体が縮小傾向にある。したがって、既存顧客の深耕はより高い費用対効果を発揮する。既存顧客の深耕に成功した事例を紹介しよう。

 A社は年商100億円の中堅企業で顧客は約1,000社。顧客ごとに営業担当者を振り分けていたが、顧客マネジメントについては担当者任せであったため、実動顧客は約650社であった。そこで、次のようなプロセスで「顧客の深耕(インストアシェアアップ)」と「掘起し」を図った。

 まず全ての顧客の自社商品購買力をリサーチして、一定基準規模以上の顧客をリストアップ。

 次に自社のインストアシェアが70%以下の企業約300社を抽出。そしてチームリーダーと担当者が、これらの各顧客にどのような提案をするかを決めていった。

 ここまで下準備をした上で訪問計画を立て、週一回のチームミーティングにてPDCAを回し、リストをつぶし込んでいった。結果、稼動顧客は約700社に増え、年商が昨対115%という実績を残すことができた。

 この成功事例で学ぶべき点は分析方法だけではない。常日頃、担当者は漠然と顧客に訪問していることが多いものだ。「どの顧客にどのような提案をするか」を明確にすれば成果が出るということを再認識し、ぜひ実行に移されることをおすすめしたい。



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