タナベマネジメントレター


コンサルタンツ・EYE
『技能伝承が企業の存続を左右する』


 最近、経営者から「ベテランの退職で現場が混乱している」といった悩みをよく聞く。工場の技術者、小売店のパート社員、ホテルの接客担当など、業種や職種はさまざまだ。

 以前、団塊の世代のリタイアに伴う“2007年問題”が取り沙汰された。団塊の世代とは1947年から1949年に生まれた人たちで約800万人いる。その世代のサラリーマンが60歳になり、一斉に定年退職を迎えることで、退職金の支払い、労働力の減少、技術力の低下などのリスクが懸念された。

 今は話題に上らないが、企業側が定年延長や再雇用で65歳まで働ける環境を整えたことで、実は問題が先送りされた可能性がある。そうであれば、来年あたりから表面化してもおかしくない。

 特に中堅・中小企業は、自社の強みがベテランの技によることが多い。退職金はともかく、競争力の源である技術・技能の喪失は避けたい。組織として強みをどう継承するかが喫緊のテーマになるだろう。

 技術と技能は違う。技術は、文書や数字としてマニュアルなどに残せる“形式知”。技能は、個人の感性や感覚的な要素が大きく、形にできない“暗黙知”である。

 したがって技能の伝承方法は、基本的に熟練技能者による教育訓練しかないが、彼らは総じて職人肌なので教えることが苦手だ。それゆえ、昔から徒弟制度のようなOJTで伝承されてきた。しかし、今さら「見て覚えろ」「体に叩きこめ」では、時間がいくらあっても足りない。そこで、教育訓練を補完するためのツールや環境づくりが必要になる。

 例えば、熟練技能者の技を映像や音声として記録し、文書では表現できない微妙なニュアンスが伝わるような教材をつくる。それは、組織の中に眠っている“暗黙知”を“形式知”に置き換える作業である。若手社員が携われば、作成するプロセスが教育になる。

 教育訓練も計画的かつ効果的に進めたい。まずは社内にある技術・技能を棚卸し、伝承すべき技能を特定した上で、優先順位をつけることだ。

 技能の伝承は企業の“真の強み”を継承することであり、重要な技術戦略である。その成否が企業の存続を左右すると言っても過言ではない。

 自社で伝承すべき技能は何か、これを機に整理してみていただきたい。



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