経営者・経理総務担当者向け 実務月刊誌ビジネス支援 第212号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『土壇場まで追い込まれた小さな会社の大きな軌跡』
 経営・税務・・・ 『「平成28年度税制改正大綱」の概要』
 経理・財務・・・ 『社長の経理は杜撰になる』
『扶養控除等申告書に個人番号を記載しない場合』
『平成28年度税制改正大綱 消費課税編』





 今月の特集

土壇場まで追い込まれた小さな会社の大きな軌跡
〜現場発信、中小企業実例「社長に足りなかったものはなにか」〜

慢性的赤字体質、債務超過マイナス1,000万超、このままだと2ヶ月後に資金ショート!?

 (株)バロー企画(仮称)は、業歴35年、バロー社長が一代で築いた印刷業を生業とする会社である。印刷会社といっても、機械は自社に一切持たない、印刷は全て外注に回す、といったファブレス印刷、広告代理店に近いものである。

 平成20年頃までは業績もよく、全盛期には年商も売上1億円超、社員も営業マン2人を含め4人を抱えていた会社だ。そんなバロー社長と出会ったのはH26年1期決算が終わる頃だった。そのときの会社の状況をみて驚いた。年商3,700万、現預金35万、債務超過額は1,000万超、平成20年以降、慢性的な赤字体質だったのだ。H26年1月期においては、損益計算書上は利益が出ているが、役員報酬計上を減らし、役員借入金の返済に振り替えているのみにおいて、実質営業収支は依然マイナスであった。H26年1月期も終わりにかかる頃、唯一の営業担当社員も退職し独立、それに伴い既存顧客の約半数を失った。今期から従業員は社長の奥様である経理担当者のみ、営業マンは社長1人となっていた。この6年間、営業収支のマイナスを銀行借入や資産の取崩(定期預金、保険の解約等)、ときには社長が身銭をきりながら、賄っていた。そして、そのような状況でも金融機関には正常返済を続けていた。あらゆる必要資料をもとに吟味・分析した結果、このままいけば2ヶ月後に資金ショートを起こすということが分かった。バロー企画は、設立以来最大の局面を迎えているといっても過言ではなかった。不況、デフレの影響、通販印刷等の浸透による受注機会の損失等、印刷業界を取り巻く環境も非常に厳しい。ここから、バロー社長との二人三脚、いや経理担当の奥様、顧問の税理士先生含め、4人での会社再建への取り組みが始まった。現在、バロー社長と出会って3年目となる今、バロー社長の、踏ん張ろう、頑張ろう、の精神が実を結び、バロー企画の状況も、「次の段階」の話しができるようになった。しかし当時は本当に厳しい状況だった。



ヒアリングの重要性〜定量分析では分からない、必ず把握すべき4つのこと!!

1.社長の「想い」を知る

 「いずれは息子にバロー企画を継いでほしい」これがバロー社長の本当の「想い」だ。息子は当時、大手同業他社でサラリーマンとして働いていた。社長は65歳。一刻も早い経営改善が必要だ。「承継を考えるなら、まず再生」社長の覚悟は固まった。

2.社長の「考え」を知る

 しかしながら、バロー企画の最大の問題点は、社長の自社に対する「考え」にあった。このような状況下でも、初回訪問時、社長に危機意識がなかったことだ。問題意識がなければ危機意識は生まれない。危機意識がなければ経営改善は不可である。

3.社長の「理解度」を知る

 なぜ危機意識がなかったのか、それは、社長の財務に関する意識、財務能力の必要性の欠如からくるものだった。年に一度決算書に一応目は通すものの、見ている部分は損益計算書の売上と当期純利益。債務超過という言葉も分からないどころか決算書の見方自体、分からないとのことだった。それでは自社のどこに問題があるかをはき違えるどころか、考えることもできないだろう。

4.社長の「強み」を知る

 ただ、バロー社長には、他人に秀でた「強み」があった。簡潔にいえば、人間的魅力であり特性であるが、このバロー社長の「強み」こそ、決算書の数値には現れない見えざる資産であり、後述するが、バロー企画再建の最大の武器となった。
 経営者には、様々なタイプの経営者がいる。事務的、技術者、積極的、消極的、創業者、二代目社長等。とかく、バロー企画のように、経営資源に乏しい小さな会社が自力で再生できるか否かは、経営者の人間的魅力や特性に寄与する部分が大きい。そして、その強みを最大限に発揮できるようナビゲートする必要がある。このような場合、外発的動機づけより、内発的動機づけを心がけるべきであり、手法としてはギャップアプローチよりポジティブアプローチの方が効果的だ。このような心理学的なアプローチは、モチベーション維持や従業員との個別面談、全体会議等の場でも活用することができる。



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「平成28年度税制改正大綱」の概要

 平成27年12月16日に「平成28年度税制改正大綱」が公表されました。法人税改革の一環として法人実効税率の引き下げと、外形標準課税の拡充による課税ベースの拡大が行われており、デフレ脱却、経済再生を最重要課題としております。また、消費税については平成29年4月からの軽減税率制度導入における対象品目や、いわゆるインボイス制度である適格請求書等保存方式についての骨格が示されております。反面、社会全体への影響力が大きい配偶者控除等の各種控除の抜本的な改正は見送られました。以下、主要な改正項目を概観していきます。

法人課税編
●法人税の税率引下げ

 法人税の税率は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度については、23.4%(標準税率ベースでの実効税率29.97%)、平成30年4月1日以後に開始する事業年度については、23.2%(標準税率ベースでの実効税率29.74%)に引き下げられます。
 なお、中小法人等の軽減税率15%(所得800万円以下)は、存置されています。

●減価償却制度の見直し

 平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物の償却方法について、定率法が廃止され、定額法(鉱業用は生産高比例法との選択)に一本化されています。

●欠損金繰越控除の見直し

(1) 欠損金の控除限度額は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度から所得の60%(現行:65%)、平成29年4月1日以後開始から所得の55%(現行:50%)と一部見直されています。
なお、中小法人等については、従来どおり、控除限度額は所得の100%、そして、欠損金の繰戻還付は存置されています。

(2) 平成30年4月1日以後に開始する事業年度から、(1)青色欠損金の繰越期間、(2)青色欠損金の控除制度に係る帳簿保存期間、(3)欠損金に係る更正の期間制限、(4)欠損金に係る更正の請求期間を、10年(現行9年)に延長する、としています。

●少額減価償却資産の特例の見直し

 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象となる法人から「常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人」を除外した上、その適用期限を2年延長しています。

●生産性向上設備投資促進税制の見直し

 生産性向上設備投資促進税制(特別償却又は税額控除)は、適用期限(平成29年3月31日)をもって廃止され、また、上乗せ措置についても、適用期限(平成28年3月31日)を延長しない、としています。



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社長の経理は杜撰になる

経理とはユダヤの商人が考えたもの

 ここで言う「経理」とは「複式簿記に則った制度会計」と理解してください。
 複式簿記とは現在商業高校や簿記学校で教えている最も完成された、帳簿の記帳方法となり、制度会計とは国が認めた経理の処理方法です。
 経理のそもそもの起源は、大航海時代に有ります。大航海時代商人は、船を仕立てて積み荷や食料や船員を雇い入れ、遠くアフリカやインドへ出向き、香辛料や宝石を安く仕入れ、それをヨーロッパで換金し儲けたわけです。
 しかし大変危険を伴い、命を落としかねないリスクのある航海です。リスクが高い分儲けも多かったのだと思います。ですから儲けようと思った商人達は、決してそんな航海には行きません。
 航海に出て行ったのは、命知らずの何処の馬の骨とも知らない荒くれ者です。そんな荒くれ者ですから取引した商品を隠し持ってはいないか?積み荷をごまかしてはいないか?商人たちは、全く彼らを信用していません。彼らを監視しごまかしようのない管理方法は無いかと知恵を搾って考えたのが、複式簿記による帳簿作成だと言われております。
 ですから経理の本質は、取引現場にいない者が、取引が正しく行われたか否かを管理し監視するシステムとなります。
 経理に携わる者がよく、帳簿が●円(たいした金額ではなくても)合わないとか言って四苦八苦する事を聞きますが、それは取引の不正を監視するという経理の本質から来るもので、1円でも合わなかったら何処かに間違いなり不正があるということなのです。人たちは、全く彼らを信用していません。彼らを監視しごまかしようのない管理方法は無いかと知恵を搾って考えたのが、複式簿記による帳簿作成だと言われております。

自分で自分の首を締める行為

 小規模企業の経営者は自ら取引現場の先頭に立って一番良く取引の実態が解っております。
 ですから小規模企業の経営者にとって経理業務とは、自分で自分の取引が正しく行われたか否かを管理し監視する行為なのです。つまり自らの首を締めているような行為なので必要がない、煩わしいし、出来ればやりたくない行為なのです。

経理業務は公にしたくない

 経理部門があり仕事として経理を行うことの出来る会社は別として、多くの小規模企業は、現場の仕事と経理業務が掛け持ちの場合がほとんどです。
 更に経理業務には給与計算等あまり公にしたくない業務も含まれます。
 そこで往々にして社長自らが経理業務をおこなっている場合が多々見受けられます。しかし社長自らが経理業務を行っている会社は、一部の例外を除き必ずといってよいほど管理がずさんで、経理も遅れがちです。



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扶養控除等申告書に個人番号を記載しない場合

原則的な個人番号の取り扱い

 扶養控除等申告書は平成28年1月以降に従業員本人や扶養親族の個人番号(マイナンバー)を記載しておく事になっています。新しい申告書に個人番号の記載欄が設けられているのを確認されたと思いますが、原則はその記載の内容が前年と同じ番号であっても記載する事になっています。扶養控除等申告書の法定保存期間は7年間ですから給与計算事務担当者にとって、個人番号が記載された申告書を安全に保管しておく事は会社としても負担となるものです。

国税庁が発表した記載省略措置

 このような事情も考慮して、国税庁は平成27年10月28日に公表された内容においては給与支払者と従業員との間で合意に基づき、従業員が扶養控除等申告書の余白に「個人番号については給与支払者に提出済みの個人番号と相違ない」旨を記載した上で、既に会社が受け取っている個人番号を確認している旨を扶養控除等申告書に表示すれば、申告書提出時に本人が番号を記載しなくともよいと認めています。

デイリーコラムより


平成28年度税制改正大綱 消費課税編

 消費税については、平成29年4月1日から軽減税率制度を導入、そして、対象品目及び課税方式についての骨格も決まりました。以下、その内容を概観していきます。

軽減税率対象品目及び税率

(1) 対象品目は、(1)飲食料品の譲渡(飲食店営業等を営む事業者が、一定の飲食設備のある場所等において行う食事の提供を除く)、(2)定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡、とされています。なお、飲食料品からは、酒類を除くとしています。
(2)税率は、8%(国分:6.24%、地方分:1.76%)です。

適格請求書等保存方式

(1) 課税方式は、適格請求書等保存方式、いわゆる「インボイス制度」を導入することに決定しました。この方式は、登録を受けた課税事業者が交付する適格請求書及び帳簿の保存を仕入税額控除の要件とするもので、具体的には次のようなものです。
適格請求書には、<1>発行者の氏名又は名称及び登録番号、<2>取引年月日、<3>取引内容(軽減税率対象である旨の記載を含む)、<4>税率ごとに合計した対価の額及び適用税率、<5>消費税額等、<6>交付を受ける事業者の氏名及び名称が記載されます。

デイリーコラムより



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