会計事務所と顧問先をむすぶCLUE 第139号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『赤字企業の黒字化への道』
 経営・税務・・・ 『あなたも「還付申告」で所得税を取り戻そう!!』
 経理・財務・・・ 『坂本龍馬に学ぶ 経営学』





 今月の特集

赤字企業の黒字化への道

慢性的な赤字企業には何らかの課題を抱えているところが多いようです。この課題を抜本的に解決し、企業体質を変えない限り黒字には転換しません。景気の回復に期待し、一生懸命働いていればいつかは良くなると思い込んでいることが、黒字に転換しない最大の理由なのです。現在の不況は、単なる循環的な不況ではありません。何故なら、リーマンショック以前から日本の中小企業の多くは、人件費の削減で何とか生き延びてきたのが実態だからです。つまり、戦後高度成長の終焉と成熟社会の到来による社会変化との条件適合が多くの企業に求められています。ここ数年の老舗型倒産の多発は、すべての企業にビジネスモデルの転換を求めています。


なぜ赤字企業になるのか?

その原因は大きく分けて次の5つの経営課題をまず検証する必要があります。

【1】経営体質
【2】財務体質
【3】商品力
【4】販売力
【5】マネジメント力

【1】経営体質

業種・業態によって労働力構成が違ってきます。まずは、労働力構成を根本的に見直す必要があります。

(1)労働集約型企業でパートなど臨時社員の比率が低い。

(2)季節変動の大きい業界で社員の定員数が受注のピーク時にセットされている。
したがって閑散期の仕事量が少なく、年間を通じた生産性は低いものとなる。この労働分配率が月変動なく一定の水準で動くシフトづくりが必要である。

(3)平均年齢の高い企業で年功序列型賃金体系をとっている。この場合は労働分配率が高くなる。

業種等で違いがありますが、総じて労働分配率は、50%以下が理想であり、60%を超えると赤字体質となると言われています。



【2】財務体質

(1)借金経営
借入金が限度を超えており、高い金利負担のために利益が出ない状態。
金利水準が歴史的低水準の今日であっても、2〜3.5%程度であり、営業利益率と比較して、月商の3月分程度が理想であり、売上と等しい借入金や高利の街金では存続は困難である。

(2)貧血体質
流動比率(流動資産/流動負債)が100%以下で、特に80%を切っている場合は資金繰りが苦しい。結果、資金繰りのために、売上を伸ばすための安売りや長いサイト手形を切るために、結果として高額な仕入価格、売上総利益の減少となり、慢性赤字の原因となる。

財務体質の悪い企業は資金繰りのために無理をするので、ますます悪循環に陥っていきます。小手先の対策ではなく抜本的な大手術を施さないと倒産の可能性があります。


【3】商品力〜商品力の衰弱化〜

商品力が弱い場合、粗利益率が低くなるので、売上は伸びても利益が伴ってきません。商品力が弱い要因には次のものがあります。

※商品力とは、業種によって違いますが、設備・デザイン・品揃え・メニュー・価格・人材・技術スキル等多様です。

(1)商品のリニューアルが不十分なためマンネリ化となっている。
(2)商品のライフサイクルが衰退期にさしかかっている。
(3)品質が悪く低グレードに位置づけされている。
(4)開発体制の見直しやマーケティングの強化も必要であるが、それ以前に経営の感覚・センスの問題である。

ここでは、自社が何業であり、顧客のニーズ、同業他社の動向、自社の商品力の強み・弱みの分析、市場への適合能力が問われます。


【4】販売力

多少、商品力が劣っていても販売力があれば商品は売れます。逆に、商品力があっても販売力がなければ商品は売れません。販売力とは次の要因の総合力を言います。

(1)営業の質と量
(2)営業管理のノウハウ(受注先行管理、顧客管理など)
(3)販売促進のための諸制度
(4)販売ツールおよび販売に必要なマニュアル類の充実度
(5)各種営業チャンネルの開拓


【5】マネジメント力

中小企業の少ない経営資源、カネ・モノ・人・情報を総合的に管理・活用しているでしょうか。選択と集中が適正かが問われます。持てる経営資源を有効に活用するマネジメント力が備わっていますか?ここでは、計画と実績、実績+計画=予想決算数値を月次定例で検討する経営会議による選択と集中の意思決定と全社員への役員一丸となった意思の実行体制づくりが求められます。


赤字企業の打つべき手

赤字企業の対策は次の手順になります。

【1】止血策として赤字要因の撲滅

まずやるべきことは赤字のもとを断つことです。
着眼点は次の通りです。

(1)逆サヤとなっている商品・仕事・得意先の洗い出し
販売中止・投資判断による継続・付加価値化が可能か等々の検討が必要。

(2)赤字拠点の洗い出し
店舗別・事業所別・業務別損益計算により、黒字化が可能か、何年で等の検討。

(3)人員の見直し(間接部門は一定の比率で減員し、残った人員で仕事の消化を考える)
最小限の間接部門づくりとアウトソーシングによる効率化の追求。

(4)残業の廃止
ムダなつきあい残業がないか、ムダな業務がないか?
赤字企業の多くが残業代を支払わず、一生懸命夜遅くまで働くことが価値と信じる経営者が多い。
このような企業では、計画時間の見積りと効率化が一切検討されず、ただ無計画な作業時間が費やされ、ムリ・ムダ・ムラな業務の見直し、限られた時間内でどれだけ効率化するのかが会社の体質とならず、結果としてムダな仕事の山と社員の入退社の繰り返しによる人件費の二重払いに帰結する。

(5)役員報酬のカット
最低限の生活の維持費の算定と段階的カットが必要とされる。

(6)不要不急の業務の停止
本業が赤字なのに起死回生の新規投資に走る企業が後を絶たない。本業の建て直しなしに新規投資は成功することはない。掛け金なしでバクチをするようなものである。 また、後少しで何とかなると街金に走り、結果倒産会社した会社の山だらけである。

(7)経費については費目ごとにゼロベースで見直しを図る
0から積み上げ、徹底的に事務所等を小さくすることが秘訣である。ここで見栄を張る経営者が多い。見栄などビジネスの世界では何の役にも立たない。

以上のことを赤字がゼロになるまで見直しを図ります。
この段階で重要なことは現状否定の精神で見直しを図ることが必要です。


【2】赤字部門・店舗の対策

(1)経営者や経営トップが現場にたつ
経営者や経営トップが集中的に経営を立て直すべく現場に張り付くことです。

(2)責任者を交代させる
これは心機一転という意味やこれまでの運営を全般的に見直す、新しい風を入れる、賞罰を徹底する等々の目的があります。ある事例では、責任者を交代させることによって売上が2倍になったという例もあります。

(3)店舗等の売却
店舗・部門・支店等々の営業権を社内・外部へ売却することです。社内フランチャイズ制度等々も活用すべきです。織田信長ではありませんが、経営を委託され、一国一城の主となり、一定の委託料を支払い、残りは自分のものともなれば社員のやる気も違ってきます。企業は一定のリスクを背負った人々が創意工夫をして付加価値を生み出す装置とも考えられます。

(4)同業他社への売却、造作譲渡
不採算店舗、部門等を撤退となると現状回復費用、解雇予告手当等々の撤退資金が必要となります。1円の価値もない不良資産でも、同業他社であれば、そのまま使用できる設備も多々あるはずです。例え0円でも現状回復費用がかからないのであれば良しとするという考えもあります。

(5)撤退・廃業
最後の手段として撤退や廃業という判断があります。


【3】資金と損益は別ものと考える!!

資金繰りのための赤字覚悟の売上拡大に走らず、利益重視の堅実経営を追及することです。倒産する会社の共通の特徴として、資金繰りのために、目先の支払いのために採算を度外視した安売りに走ってしまう傾向があります。仕事が減り、売上が減り、禁断の誘惑である「安売り」に走った段階で倒産は目前です。売上ではなく粗利重視の営業や経営が求められています。まず売上という量に着目するのではなく、粗利が幾らあるのかを考えることです。

事例として、会計事務所や弁護士事務所を考えてください。彼等はなぜ倒産しないのでしょうか?(1)仕入がない・原価がない (2)在庫がない (3)売上=粗利。結果、売上金額の範囲で固定費が出ればいいのです。逆に言えば、売上が下がれば、大きな固定費である人件費の削減、安い家賃の事務所へ引越しをすればいいのです。最後は自宅で1人でも商売を続けていけるからです。それでも駄目だったら廃業して働きに出ればいいのですから倒産という概念がないのです。

ここで疑問をもつ方もおられるのでは?

「売上ではなく粗利重視の経営は理解できるが、毎月の銀行への返済資金がなく、結果倒産するだけではないか?」

確かに売上額が下がれば、一時的に銀行返済資金が不足して資金ショートを起こす可能性があります。そのためにまず、粗利重視の黒字の経営計画を立て、それを元に資金計画を立てます。期間は一年から半年の可能な限り売上低め、経費多めの計画です。それを元にして銀行に返済猶予か不足分の折り返し融資をお願いしましょう。現在、ほとんどの金融機関が相談に乗ってくれているはずです。そうでなければ金融庁へ相談すればいいでしょう。
問題は、企業の側の自助努力、黒字経営を達成することです。それが不可能と考えられているのなら即廃業、破産をすればいいのです。JALの問題は多くの赤字企業の問題でもあります。





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あなたも「還付申告」で所得税を取り戻そう!!

確定申告の時期が近づいてきました。

ご承知のとおり、所得税の確定申告は2月16日から3月15日の1ヶ月間に行います。そして例年、特に3月に入ってからは税務署は多くの人々でごった返します。
さて、もしあなたが会社勤めのサラリーマンやOLだったら、すでに年末調整をして所得税の還付を受けているかもしれません。
しかしちょっと待ってください。あなたが次の要件に該当することで所得税が更に「還付」されるかもしれないのです。「そんなことはない。どうせ還付なんかされない」などと諦めずに、一度確認してみてはいかがでしょうか。

本当にあなたは該当しませんか?


還付申告と「意外に長い申告期限」

もしあなたが確定申告しなくてもよい人だったとしても、源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額が、その年の所得税として計算した金額よりも多いときは、確定申告(これを「還付申告」といいます)をすることによって、多く払いすぎた所得税が還付されます。
そして覚えておいていただきたいのは、還付申告は過去5年前までの所得税についても、申告することにより還付を受けることが出来るということです。

どんな場合に還付申告が出来るのか

以下、よくあるケースをみてみましょう。


ケース1
年の途中で退職したために、年末調整を受けなかったとき

その年中で退職しても、同じ年に再就職をした場合には、通常は新しい勤務先が前の勤務先の給与を含めて年末調整をすることになりますから、所得税の納め過ぎは解消されます。しかし退職したままだと年末調整を受けられないため、その納め過ぎの所得税はそのままになっているのです。
この納め過ぎの所得税を「還付申告」することにより還付を受けるのです。
なお前述したように、この還付申告は退職した翌年以降5年以内であれば提出できますが、その申告の際には退職した勤務先から退職年分の源泉徴収票をもらい申告書への添付が必要となりますので、極力早めに申告することが望ましいでしょう。


ケース2
多額の医療費を支払った場合・・・「医療費控除」

ご存知の方が多いのが「医療費控除」による還付申告です。『医療費を10万円以上支払ったら税金が安くなる』ということは皆さんご存知でしょうから、ここでは注意点を記載します。

(1)控除額は本当に10万円ですか?
医療費控除の足切り額は、(1)10万円、(2)その年の総所得金額等(※)×5%、のうちの少ない金額です。例えばサラリーマン(給与所得のみ)であれば年収が311.6万円未満の人については、足切り額も10万円未満となりますから、必ずしも『医療費が10万円に届かなかったから控除できない』という訳ではありません。

(2)入金等により保険金の支給を受けるとき、医療費から控除していますか?
事故や病気で入院した際、加入している保険金の支給を受ける場合がありますが、この保険金は原則として医療費から控除しなければなりません。「税務署にはわからないだろう」なんて思わないでください。申告してすぐに税務署から「お問い合わせ」が来てしまいます。

(※)総所得金額等
純損失、雑損失、その他各種損失の繰越控除後の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等に係る配当所得の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額及び退職所得金額の合計額をいいます。


ケース3
マイホームの取得等をして、住宅ローンがあるとき・・・「住宅ローン控除」
医療費控除に次いで認知度が高い「住宅ローン控除」を確認しましょう。

原則として、
(1)住宅を購入した場合に、
(2)10年以上の住宅ローンを組むと、
(3)その住宅ローンの年末残高の1%(例えば年末残高が2千万円であれば20万円)が、その年の所得税から控除される(結果として還付となる)のです。

このローン控除は、次に記載したように思いのほか多くのケースで適用可能です。しかしまた、それぞれの場合について多くの制限が設けられています。適用に際しては会計事務所に確認していただくのが適当かと思います。

【適用可能なケース】
(1)住宅を新築した場合(建物床面積など、一定の制限があります)
(2)中古住宅を取得した場合(古すぎる建物はダメ)
(3)増改築等をした場合
(4)「省エネ改修工事」をした場合
(5)「バリアフリー改修工事」をした場合
(6)認定長期優良住宅(200年住宅等)の新築等をした場合
(7)その他


ケース4
災害や盗難などで資産に損害を受けたとき・・・「雑損控除」

もしあなたが地震・台風被害・火事などの災害や盗難等によって損害を受けたのなら、還付申告をすることによって所得税が戻ってきます。
還付申告は次に該当するような場合に行います。

(1)「資産の所有者」が次のいずれかであること。
ア.納税者
イ.納税者と生計を一にする親族で、その年の総所得金額等が38万円以下の者。

(2)「その資産」が、生活に通常必要な住宅、家具、衣類などの資産であること(例えばその資産が事業用資産・別荘・書画・骨とう・30万円超の貴金属などの場合は該当しません)

(3)「被害」は次のいずれかの場合であること。
ア.震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
イ.火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
ウ.害虫などの生物による異常な災害
エ.盗難
オ.横領
なお詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。

(4)控除額は次の計算式のうちいずれか多い金額です。
ア.損害額(但し総所得金額等×10%をマイナス)
イ.災害関連支出額(但し5万円をマイナス)
申告の方法ですが、確定申告書の雑損控除に関する欄に必要事項を記載するとともに、災害関連支出の領収書を添付するなどします。

なお、損失額が多額でその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後3年間繰り越して、各年の所得金額から控除することができます。


ケース5
特定の寄附をしたとき・・・「寄附金控除」

もしあなたが国や市区町村、特定公益増進法人に対して寄附金を支出したときには、所得控除を受けることができます。また政党等に対する寄附金で一定要件に該当するものについては、所得控除ではなく「税額控除」を選択することもできます。
寄附の相手方は次のような先です。

(1)国、地方公共団体
(2)公益社団法人、公益財団法人で一定のもの
(3)独立行政法人、自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団及び日本赤十字社などで一定のもの
(4)一定の政党等
(5)認定特定非営利法人(いわゆる認定NPO法人)で一定のもの
(6)その他


還付申告ではない「更正の請求」

もしあなたが、既にその年分の確定申告をしているのであれば、その申告した年分については「還付申告」ではなく「更正の請求」という手続を取ることになります。
この更正の請求ができる期間は、原則として確定申告期限(通常は3月15日)から1年以内となっており、5年以内の還付申告よりも期限は短くなっていますので注意が必要です。
但しケースによっては申告期限が延長される場合もありますので、万が一、更正の請求の要件に該当する場合には、あきらめずに会計事務所に確認してみてください。





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坂本龍馬に学ぶ 経営学

今年のNHKの大河ドラマの主人公は坂本龍馬です。坂本龍馬の功績と伝えられているものは、「海援隊」「薩長同盟」「大政奉還」「船中八策」等々。これらに共通するものは『三方良し』という考え方です。


『三方良し』の意味をもう一度考える

『三方良し』は、良く知られているように、売り手良し、買い手良し、世間良し、の三つを指し、鎌倉時代から江戸時代にかけて近江商人が到達した普遍的経営理念です。

坂本龍馬の数々の功績は、巷説の徒ではなく、一介の脱藩者の身でありながら、実際の活動で『三方良し』の実利を基本に多くの人を動かし、明治維新の道を切り開いたことにあります。

代表的なものとして、「薩長同盟」があります。幕末雄藩の薩摩と長州は、尊王攘夷派の主導権争いの果てに、薩摩は会津と組み、公武合体派の8月18日クーデター、長州追放と7卿落ち、池田屋事件から蛤御門の戦いと、徹底的に痛め付けられました。8.18クーデター後、各藩の勤皇の志士は弾圧され、脱藩して長州へと逃げました。

土佐を追われた土佐勤皇党も例外ではなく、後に龍馬と一緒に暗殺された中岡慎太郎や田中顕光等も長州へ逃げました。他方、勝海舟の海軍塾に在籍していた坂本龍馬と土佐勤皇党の一部から蛤御門や池田屋事件に関わった者が大量にいたということで、海軍塾も幕府によって閉鎖されました。困った勝海舟の頼みで、薩摩藩の庇護下で坂本龍馬を盟主として海軍塾の生徒たちが中心となって海援隊は結成されました。その結果、坂本龍馬は当時としては唯一の、薩摩と長州の両藩に太い人脈と信頼関係を持っている人物となりました。

しかし、蛤御門の変で会津と薩摩に久坂玄瑞を始め、木島・寺島・真木・吉田等多くの同士を失った長州藩の薩摩藩への恨みは凄まじく、下駄の裏に会津と薩摩と書いて毎日踏みつけていたそうです。明治維新の志士の中でも冷静沈着と言われた桂小五郎(木戸孝允)さえ、薩摩への怒りはひとしおとのことでした。

その頃の龍馬は、各藩の志士が、狭い藩という枠で物事を考えるのではなく、日本という大きな器で物事を考えるべきであり、幕府や各藩の仕組みそのものが時代遅れであり、廃藩置県や国会の開設等の必要と考えていました。その仕組みは船中八策に具体化され、後の五カ条の御成文として明治維新の精神となったと言われています。

そんな龍馬は、政治や思想では薩長同盟は難しいと考え、第二次長州征伐を控え、最新の武器・船舶を必要とした長州藩に、海援隊が薩摩藩名義で武器を購入し、長州藩に渡すという実利を餌に長州藩の指導者であった木戸孝允、高杉晋作等に薩長同盟を持ちかけます。一方薩摩藩はようやく幕府を見切り、西郷・大久保等は倒幕に踏み切ることにし、薩長同盟の必要性を痛感していました。
「薩長同盟」は、(1)武器が欲しい長州 (2)長州の米が欲しい薩摩 (3)実務を仕切り船が欲しい海援隊といった『三方良し』という解決形態を提案したからこそ実現したものでした。

他方「大政奉還」は『三方良し』とはいきませんでした。これは、倒幕に踏み切れない土佐山内藩と長州征伐の敗北によって弱体化した幕府の苦境を救うため、龍馬が提案したと言われています。幕府が自ら政権を朝廷に奉還することによって、長州・薩摩の倒幕派に肩透かしを加え、徳川家と雄藩連合政権を作ろうというものでした。この案は結局、薩摩の西郷と大久保の胆力と政治力、ある種の陰謀による鳥羽伏見の戦いで葬りさられます。すでに土佐藩の軍事力を掌握していた乾退助(板垣退助)等は薩長土肥芸の軍事同盟を締結していたのです。


『三方良し』を活用しよう!

幕末、龍馬は狭い藩という利害にとらわれず、日本や世界という器で物事を見た稀有な人材であり、自由な発想でのびのびと創意工夫を試み、ベンチャー企業の第一号ともいうべき海援隊を造りあげました。

その基本を今日流に言えば、自社の提供する商品・サービスが顧客に喜んで頂け、(顧客ご満足・CS)世の中の進歩・発展に役立つこと、環境汚染や違法行為で世の中に迷惑をかけないこと、その結果、自社も利益を上げ、その配分を通じて社員の雇用維持や待遇改善が行えることにあります。

社長が社員に呼び掛け、近江商人の『三方良し』を参考に、営業活動、生産活動など日常活動の実際と自社の経営理念について話し合い、見直し、又は再確認してはいかがでしょうか。このような社長を持つ会社は社員のモラルが向上し、お客様、世の中からの信頼が高まり、企業にとって良いことが起こるでしょう。


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