会計事務所と顧問先をむすぶCLUE 第138号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『小さな会社の経理活用術』
 経理・税務・・・ 『これだけは知っておきたい!「償却資産税」』
 経営・財務・・・ 『全ての業種・業界で前年割れ、急げ経営改善!!』





 今月の特集

小さな会社の経理活用術

会社を『荒海に漕ぎ出す船』に例えれば、経営計画は『海図』で、月次決算は『GPS』のようなものではないでしょうか。会社を潰さず経営していくには、月ごとに会社の業績を調べ、目指したところに到達しているのかをチェックすることが、経営管理の第一歩です。例え前年度からの積み上げであろうと、今年度はこうするという経営計画なくしては、この厳しい激動の時代に『GPS』や『海図』なしに荒波の海へ出発するようなものです。しかし、今や経営計画(海図)や月次決算(GPS)を持っていても、年間10%の企業が倒産してしまうのが現状です。しっかりとした経営計画(海図)を作成し、毎月の月次決算(GPS)で正確な自社の位置を確かめ、月次定例の経営会議により迅速かつ正確な経営判断(舵取り)をして、従業員(乗組員・積み荷)の生活を守ること、会社を成長させること(目的地への到達)、これこそ経営者の責務ではないでしょうか。ここでは顧問税理士は、経営者(船長)の名補佐役と言えます。


あ!!そうか!

まず、(1)1年先までの経営の見通しを数値化した「経営計画」を作ります。
次に、(2)毎月できる限り早期に月次決算を実施して、先月の経営成績をつかみます。
そして、(3)経過月実績+未経過月予算から決算予測数値を出して経営の舵取りを行います。

これによって、黒字の決算予測であれば、決算対策、納税資金対策、投資、新規事業を立案します。他方赤字の決算予測であれば、不採算店舗や部門、商品の改善、閉鎖・閉店、賞与、役員報酬、人件費や経費の削減等を検討します。決算予測、税額予測、資金繰り予測ができる会社に倒産は無縁です。


経営計画は海図、月次決算はGPS

達成可能な経営計画『海図(地図)』と正確な月次決算『GPS』で現在値を知り、目的地に向けて舵取る仕組みが黒字経営を100%可能とします。


会社にはどんなメリットがあるのか?

1.経営の先行管理が可能
海図としての経営計画と月次決算による正しい位置をつかむGPSで会社の経営の舵取りを間違えません。

2.金融機関の信用獲得
経営計画書を金融機関に提出し、毎月の月次決算で決算予測をしている会社は、金融機関に大きな安心を与え、信用を獲得できます。

3.月次決算により経理の精度アップ
税務申告のためではなく、経営管理のための月次決算は、より精度の高い経理が実現します。

4.全社経営により経営体質の改善
経営計画と財務会計との予算・実績対比、予想決算等は、全社的に経営数値に基づく経営管理が可能となり、筋肉質のある経営体質に貴社を変えます。

5.経理の公開による公私混同・私利私欲の排除
経営計画、月次決算等経理データの公開は、経営陣が自然に陥りやすい公私混同や私利私欲を排除する力を与えます。

6.役員会・経営会議の定例化により経理の締切り確立
月次・定例の役員会・経営会議の定期化により、結果として月次決算の締切日が逆算され、経理の締切りが制度として確立します。

7.予算実績管理による迅速な意思決定可能
予算・実績差異分析や予想決算により、経営の舵取り、航路変更等が迅速になります。黒字の場合の決算対策や赤字の場合の経営改善、利益出し等が経営会議で検討できます。

8.役員会・経営会議により後継者・役員の経営能力・経営参加意識の向上
月次定例の役員会・経営会議を経営の根幹に据えることにより、役員等に経営参加、経営責任意識が生まれ、後継者や層としての経営陣が形成できます。

9.経営にゆとりが生まれる
常に現在と未来が数値として見えることは、経営陣に経営に対するゆとりを与え、余裕をもった経営を可能とします。

10.業績主義賃金体系への移行に役立つ
部門別の予算・実績対比、部門別予想決算、計画労働分配率等により業績主義賃金体系導入が可能となります。

11.予想決算により計画的決算対策可能
予想決算、予想実績資金繰り表を月次定例経営会議で毎月検討しておけば、計画的かつ有効な決算対策が幾らでも可能となります。利益が出た、お金がないといったことや後悔することがありません。

12.黒字経営の可能性が高まります
毎月予想決算を見ながら経営をする会社には赤字決算は無縁です。赤字になるのであれば、増収・増益に向けた、営業・技術・商品・投資、原価・経費等の検討を毎月の役員会や経営会議で行います。


月次定例の役員会・経営会議とは?

1.毎月一度計画と実績のチェックをします。当月・累計実績・予算・前期との差異分析により異常値・問題点をチェックします。

2.毎月一度計画・実績による予想決算書を作成します。予想決算で黒字なら決算対策を。赤字なら益出し対策が事前に打てます。

3.毎月一度、実績・予定資金繰り表を作成します。資金の計画的な調達・運用が可能となります。

4.毎月一度、予想納付税額計算書を作成します。これで、納税資金の準備ができます。


経営計画を絵に書いた餅で終わらせないために・・・

会社の経営管理は、「経営計画を作成すること」がゴールではありません。今までは、経営計画の作成自体が目的となって、出来上がった経営計画を経営に活用されていないケースが意外に多く、経営計画が「絵に書いた餅」で終わっていました。これまでの経営計画はなぜ活用されなかったのでしょうか?

(1) 「経営計画」は「決算予測」「税額予測」「資金予測」が出来て初めて経営者に役立つ
針路に間違いないか?月次定例の役員会・経営会議を開催し、正確な月次決算書で計画と実績のズレ、決算予測を管理します。これによって「経営計画の必要性、正確性」が明確になります。

(2)月次定例の役員会・経営会議で資金チェック
経営計画と月次決算により、正確な予想・実績資金繰り表を作成します。正しい資金予測を見ながら、投資計画、運転資金計画、納税資金計画、新規事業計画、銀行等への資金調達交渉を行います。

また経営会議の実施により、次の点が解消されます。

◎経営とは「仮説と検証」の繰り返しとも言われますが、今まではせっかく立てた計画(仮説)も実行されずに終わり、検証を行なうことができませんでした。

→「月次定例の役員会・経営会議」で、毎月の月次決算と計画のズレをチェックし、実行された計画(仮説)を検証する場所にしましょう。これによって、作りっ放しの「経営計画」ではなくなります。

◎慎重かつ綿密に計画を策定しても、経営環境は日々変化し、残念ながらその通りにはいかない場合が多いものです。

→重要なことは、常に先行きを見通した経営を実行することです。経営陣が年初に計画した予想数値と実際の実績数値とのズレを検証し、誤差の原因は何か、どのような改善策・打つ手があるのかを決算予測数値を眺めながら判断していくことが本当の経営ではないでしょうか?

■ポイントは毎月の定例日に経営会議を開催すること
毎月10日・第三金曜日・25日等決まった日に会社の経営陣の意思決定会議を実施することが定着化するコツです。

経営環境が不透明な今こそ、パソコン会計を活用し、経営者の夢と現実を繰り込んだ経営管理システムで心地よい経営を実現してください。





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これだけは知っておきたい!「償却資産税」

経理担当者の方は昨年末の年末調整業務も終わり、ひと段落かと思いますが、年明け後も1月10日(届出等の所定の要件を満たす場合は1月20日)の「源泉徴収税額の納税」や、1月末日が期限の「給与総括票の送付」「法定調書の合計表の送付」が待っています。さらに経理が行う業務としては「償却資産税の申告」もあります。
この償却資産税については、知っているようで知らないことが意外と多いのではないでしょうか。今回は改めて償却資産について、経理担当者として「これだけは知っておきたい」という内容を網羅してみました。

一度読んでみれば「あ、そうそう」と思い出すことも多いと思いますので、一読いただきスムーズな業務進行をしていただきたいところです。


償却資産税って、そもそもどんな税金なの?

償却資産とは、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上、損金又は必要な経費に算入されるもののうち、その取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない方が所有されているものも含みます。)をいいます(地方税法第341条第4号〈固定資産税に関する用語の意義〉)。
たとえば、会社や個人で事業を行っている方が事業のために用いることができる構築物、機械、器具、備品等が対象となります。


償却資産の種類

以下に掲げるようなものです。なお特に建物附属設備については、その支出が「建物附属設備」なのか「建物」とされるべき支出なのかの判断が困難ですので、会計事務所にお問合せすることをお勧めします。

減価資産の種類
資産の種類 例示
構築物 構築物 舗装路面、永遠、門、塀、看板、広告塔など
建物附属設備 電気設備、電力の引込工事、電話機や交換機
機械及び装置 各種製造設備等の機械及び装置、クレーン等建設機械、機械式駐車設備
船舶 ボート、釣船、漁船、遊覧船等
航空機 飛行機、ヘリコプター、グライダー等
車両及び運搬具 大型特殊自動車(分類番号が「0、00から09及び000から099」、「9、90から99及び900から999」の車両)、構内運搬車、貨車、客車等
工具、器具及び備品 パソコン、陳列ケース、看板(ネオンサイン)、医療機器、測定工具、金型、理容及び美容機器、衝立、ルームエアコン、応接セット、レジスター、自動販売機等


申告に関する「イ・ロ・ハ」

【1】どの時点の資産を申告するの?
・・・その年(年があけた年。)1月1日の時点です。

【2】提出期限はあるの?
・・・その年の1月31日です(平成22年は2月1日)。つまり1ヶ月以内。

【3】税金の計算方法は?
・・・その資産の課税標準額(通常は資産の評価額)×1.4%です。

【4】免税点は?
・・・減価を考慮した後の課税標準額の合計額が150万円未満の場合。

【5】納税の方法は?
・・・各市区町村から納税通知書が郵送で届きます。支払いは一括または分割(東京23区では6月、9月、12月、翌2月の計4回)で行います。

【6】提出先は?
・・・その資産が所在する場所の各市区町村に提出します。


こんな資産は申告が必要?

償却資産税の対象となる資産の区分は既に述べましたが、では以下のような状態の資産は果たして申告が必要(課税の対象)になるのでしょうか?
償却資産税の対象資産は法人税のそれとは若干が異なります。意外と勘違いし易い部分ですので、是非押さえて欲しいところです。

【1】対象となる資産
次の資産で実際に事業で使用できるもの。
・償却済みの資産
・勘定科目が「建設仮勘定」である資産
・経理上では減価償却をしていない資産
・法人税法の「中小企業者等の30万円未満の少額資産の損金算入の特例」を使用して一時に損金経理した資産
・賃借人が行った内装工事や造作、建物設備(賃借人が申告します)

【2】対象とならない資産
・土地・建物(別途「固定資産税」が課税されています)
・自動車(自動車税、軽自動車税が課税されているもの)
・無形固定資産や繰延資産
・法人税法の「一括償却資産(取得価額20万円未満が対象)」で処理している資産
・法人税法64条の2(所有権移転外リース資産)で20万円未満のもの


償却資産税の対象となる資産、評価額の計算方法は?

償却資産の評価額は、その資産の取得年月・取得価額や耐用年数を基礎として、償却資産を一品ごとに算出し、その評価額を合計します。その合計額が決定価格(課税標準額)となります。
※平成20年度の税法改正で、もう一つの価額であった理論帳簿価額は廃止され、評価額が決定価課(税標準額)となりました。

[計算式]
【1】前年中に取得した資産:取得価額×(1−減価率×1/2)
【2】前年前に取得した資産:前年度評価額×(1−減価率)


固定資産税・償却資産税が絡んだ「雑学」

【1】企業が所有する「有形固定資産」に対しては、上記のとおり1.4%の固定資産税が課税されます(土地と建物については他に0.3%の都市計画税もあわせて課税されます)。またその資産を「借入金」で購入したのなら、その借入金にも年間2〜3%程度の利息負担が生じます。
つまり、例えば貴方の会社が1億円の建物設備を「年3%の借入金」で購入したのなら、その資産を「保有しているだけ」で年間470万円(4.7%)の経費がかかるということです。

【2】そもそも固定資産税が課税される理屈は以下です(総務省資料より)。
「固定資産税は、固定資産の保有と市町村が提供する行政サービスとの間に存在する受益関係に着目し、応益原則に基づき、資産価値に応じて、所有者に対し課税する財産税である。」

ですから、公益性が高い固定資産、例えば市区町村が保有する資産や一定の独立行政法人、さらに宗教法人が行う事業の一部(ペット供養裁判等)については非課税ということになるのです。

【3】平成5年までは、固定資産税評価額は地価(公示価格)の3割程度でしたが、平成6年の評価基準の告示で「地価の7割程度」に変更されました。ちなみに相続税評価額は「地価の8割程度(平成4年以降)」として現在も評価されています。





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100年に一度の大不況は本当だった!!
全ての業種・業界で前年割れ、急げ経営改善!!

平成21年度の実績は、ほとんどの業種で前年割れとなり、100年に1度の経済危機はより現実のものとなっています。平成20年10月のリーマンショック以来早一年。それ以前から建設・不動産の景気が悪かったのですが、平成20年10月以降、広告業・人材派遣・求人業等で悪化し、平成21年4月以降は小売・飲食といった末端消費者相手の業種でも大幅に前年割れを起こしています。

特に夏・冬のボーナスの減額に加え、先行きの見えない景気で、一般消費者の消費減退が著しいのです。報道では、大企業の平成21年度冬のボーナスが夏以上に減額するとのことで、平成21年末、平成22年の年初の小売・飲食業の苦戦はまだまだ続くと思われます。

そんな先行きの見えない景気に打つ手はないのでしょうか?
そんなことはありません。以下のことを実践すれば先は見通せるのではないでしょうか。


自社の経営分析をしっかりすること

原価率、人件費率、地代家賃の3大経費の合計が75%以内の範囲で収まっていますか?
まず、75%以内を目指すべきです。特に売上と原価は比例していますか?売上5%減なら原価率は一定にしていますか?何も管理していないと原価率は上昇します。

人件費も売上が減少すれば比例して下がりますが、固定費的な社員割合を減らし、バイト・パート等の変動人件費となるような雇用を増やすべきです。その前提として、社員とバイトの役割分担、仕事と作業の区分、作業マニュアルの作成、バイト教育の徹底が必要です。

地代家賃については、大家と家賃交渉してください。この大不況期に家賃はまだまだ下がっていません。交渉の余地は十分あるはずです。
その他、大口経費の広告宣伝費・通信費等の削減を追求します。


減価償却費を計上せずに黒字になる見込みのない店舗等は閉鎖、廃業も考える必要がある

減価償却費+利益<0ではお金が流失していくばかりで、借金が雪だるま式に増えていくだけです。


資金繰りのための赤字覚悟の売上拡大に走らず、利益重視の堅実経営を追及する

倒産する会社の多くは、資金繰り等、目先の支払のために採算を度外視した安売りに走ってしまいます。仕事が減り、売上が減り、禁断の誘惑である「安売り」に走った段階で倒産は目前です。安売りする前に、仕事や売上が減った原因を徹底分析する必要があるのです。

全業種に共通することですが、次のようなチェック項目が必要です。
□お客様から見て不愉快なサービスはなかったか?
□商品力は価格との関係で適正か?
□整理整頓、段取り、合理化は出来ていたか?等々

仕入の努力・業務の効率化等々の結果、価格を安くするのであれば良いのですが、ただ単に、「お客が来ない→安くすればいい」では何一つ原因が改善されません。一時的にお客様が来ても、安かろう・悪かろうでは、「もう二度と来ない」というお客様が増えるだけです。


基本に戻る

どんな業種でも共通していることは、お客様の目線で仕事をすることです。丁寧・正確・迅速・親切・清潔・明るい・美しい等々は自分も気持ちがよいものです。不親切・間違いだらけ・遅い・ぞんざい・汚い・暗い等々は自分にとってもイヤでしょう。イヤなことはしないという当たり前のことが、社員全員で出来ているかをまず検証することから、不況脱出は始まります。


意志決定の迅速性が問われている

だらだらと赤字を垂れ流している店舗や部門、年功序列の給与体系で高い給与と能力が不一致な社員の多い会社、売上激減で固定給与が変化しない会社、会社の業績と不似合いな一等地の事務所と高い家賃等々。会社の生き残りをかけた早急な経営判断、意志決定が問われています。

「もう少し様子を見てから」という経営者の真の心理は、「イヤだなぁ」という気持ち、その真意は「イヤな人にはなりたくない」「見栄」がほとんどを占めていると思われます。真の見栄とは、社員の生活と取引先に迷惑をかけないという一点なのです。

能力と給与の不似合いな社員や不似合いな事務所を守ってどうするのでしょう。
100年に一度の大不況はダメ社長を退場させる試練の場でもあるのです。


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