会計事務所と顧問先をむすぶCLUE 第135号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『「税務調査」虎の巻〜税務調査は秋が本番〜』
 経理・税務・・・ 『「不動産を買ったとき、売ったとき」の経理と税務』
 経営・財務・・・ 『会社の価値…幾らで売れるのか』





 今月の特集

「税務調査」虎の巻〜税務調査は秋が本番〜

税務調査は無料の税務監査

税務調査は、申告納税制度の下に納税者によって計算された課税標準や税額などが、適法に算出されたものであるかどうかを調査するものです。

具体的には、その課税標準や税額などを計算した会社の担当者に質問し、帳簿書類その他の物件を調査する他、この会社と取引関係にあると認められる第三者に対しても、同じように質問し、調査することにより行われます。

これらは、申告納税制度の基盤となる課税の公平を維持する役割も負っています。

納税者の方も、税務調査を受身的に考えるのではなく、日常業務や社内管理体制を充実させるためのチェックとして利用するといった態勢も必要でしょう。


税務調査一巡の流れ

税務調査は、通常、下記の図のように行われています。



知って安心、税務調査の風景

通常の税務調査は以下のような順番で行われます。ここでは典型的な2日間のパターンで説明します。

★1日目(初めは会社の概略について)

10:00
【1】朝10時になると、税務職員がやってきます。そして、身分証明書を提示しながら挨拶をします。名刺を持っている調査官もいますが、驚く事にその作成費用は自前だそうです。
 ↓
【2】雑談から入り、会社の経営方針、業務内容、販売方法、会社組織、業種の特殊性等について質問されます。※社長の趣味は要注意。個人の経費か会社経費かどうかの情報提供になります。例)ゴルフ・ゴルフ関係の経費を詳細に調査されます。
 ↓
【3】元帳や得意先元帳の提示を求められます。
 ↓
12:00
調査官は通常昼食を外で食べます。
 ↓
13:00
【4】売上内容のチェック(調査修正項目のうち19%を占める。 項目の約2割はこの項目です。そのうち売上の計上時期のズレ40%(今期に計上すべき売上が、来期にずれ込んでいないか)と、小口現金の売上の計上漏れ55%(実際の現金残高と、帳簿の残高を確認・合わせておきましょう。)
 ↓
【5】原価の内容のチェック(5%)
棚卸の計上漏れが判明する場合、特に仕掛品の計上もれが多いので注意です。期末で受注し、すでに作業を開始していれば仕掛品です。材料費は、会社側も間違いなく計上していますが、計上漏れでよく指摘されるのが、作業に関わった人件費部分です。また、外注費、賃金のチェックは該当者の住所や電話の確認がされます。
 ↓
【6】反面調査との突合
税務署が予め取引先や銀行の調査をしていて当社に関する資料を持参している場合があります。
不一致がある場合は、厳しく問い詰められます。
 ↓
16:40
【7】帰る準備
明日の宿題等が出され、16:50頃には帰ります。

★2日目(最終日の場合)

10:00
【1】昨日の続き
 ↓
【2】経費・損失等のチェック(29%)
これらの内、他科目中の交際費の認定が23%と一番多いです。その他、修繕費、寄付金、旅費等のチェックが多くなります。
 ↓
【3】利用資産等のチェック(18%)
会社の業務にきちんと使われているか?等
 ↓
【4】その他の項目
 ↓
12:00
調査官は通常昼食を外で食べます。
 ↓
13:00
【5】問題点の絞込み
問題点の証拠固めをします。
 ↓
15:30
【6】最終結論の確認
この日でほとんど修正の結論が出ますが、持ち帰って検討となる場合もあります。
 ↓
16:50
この頃には帰ります。

後日、調査官から顧問税理士に、税務署での検討結果の報告があります。修正がある場合には、修正申告書を提出するとともに、税金を納めなくてはなりません。修正がある場合は延滞金や罰金がかかります。
タイムスケジュールとしては以上ですが、その中には様々なドラマがあります。


税務調査の傾向と注意点は?

最近の法人税調査では、95%に事前通知があり、うち85%は税理士に通知がありますが、5%は事前通知なしに行われます。特に現金商売の飲食・小売業は、現金実査のため、通知なしで行われますのでびっくりしないようにしてください。この場合、税理士が立ち会っていない調査は原則認められませんので、現金調査だけにして帰ってもらってください。調査日数は、2日間が多く、84%は4日以内に終わります。調査の結果のうち75%に何らかの修正があり、悪質な重課税処分がその内21%であるというのが平均的な税務調査のパターンのようです。(東京税理士会税務調査アンケート)

また、調査修正項目では、費用、売上・収益、利用資産等、その他資産の計上の誤り、という順で多いようです。最近の税務調査の主な留意点を挙げれば以下のようになります。

【1】現金
現金の調査は約9%の確率で実施され、現金の実際有高を実査、帳簿残高と突合します。
この作業で両者が一致しなかった場合、調査官は記帳全体の真実性に疑問を持ちます。さらに金庫の中のハンコ・鍵・プリペイドカード等の使われ方や、所有者等で不正の手がかりを見つけようとします。例えば、ハンコがあれば、調査官はそのままハンコを押して、よく使われて朱肉が残っているものの利用理由を追求してきます。

【2】預金
決算書に計上されていない「隠し口座」等のチェックがされます。税務調査では、事業所や代表者の住所近辺の金融機関に関係口座の内容等を問い合わせ「隠し口座」が無いか確認することがあります。

【3】棚卸商品、仕掛品等
期末近辺で購入した商品等が計上されているかチェックします。特に、製造業やサービス業等で人件費部分の仕掛品計上を忘れがちなので注意しましょう。在庫に関しては、実地棚卸の原票を保管しておきましょう。不良品、長期滞留品などデッドストックの処理もよく問題になります。安易な破棄や処分は避けましょう。廃棄する場合、廃棄現場写真や廃棄業者の廃棄証明書を発行してもらってください。

【4】有形固定資産
期中の資産の増減と減価償却、用途等がチェックされます。購入・売却時の価格や付帯費用が適正処理されているか、除却時は除却の要件を満たしているか等です。減価償却は使用開始が何時か、耐用年数は適切か等、チェックされます。

【5】役員借入金
借入の裏づけをチェックします。借入の原資はきちんと役員の資金から出ているか、売上の計上漏れを借入としていないか、社長個人に財産が不当に移転していないか等が確認されます。

【6】売上
売上の計上漏れが無いかは調査の大きなポイントです。期末の締め後の売上が計上されているか、今期に計上されるべき売上が翌期に繰延べされていないか等、翌期首近辺の売上が徹底的に調査されます。また、「何に基づいて売上が計上されているか」請求書・納品書・受領書・引渡報告書・完了報告書・通知書・営業日報・レジペーパー等、自社の売上計上基準を明確に記載したものを用意しておきましょう。

【7】人件費
支払額が妥当か、架空の人件費は無いか、源泉税の納付書記載総額と一致しているか、非居住者等の源泉徴収が妥当かがチェックされます。また、役員給与の増減もチェックされます。

【8】保険料
養老保険等の一部が資産に計上されているか、保険会社の証明書と合致するか、さらに給与、福利厚生費になるもの等の区分が適正かチェックされます。

【9】交際費
費用の修正項目の中で一番多いのが交際費です。会議費等他科目に混入している交際費は無いか、通常要する額を超えていないか等、必ずチェックされます。

※「1人あたり5,000円」の条件を満たしているか?
平成18年税制改正で、「1人当たり5,000円以下の飲食費は、税務上の交際費に該当しない」ということが明確になり、チェックが厳しくなりました。「誰」と「何人で」等が重要になります。この規定の適用条件は、あくまで社外の人との交際費です。社長個人の飲食代は、もとから交際費ではないため、この規定の外にあり、役員賞与として、法人税も所得税も課税されます。

【10】貸倒損失の否認
貸倒損失の計上時期は、「全額回収不能が明らかになった場合」には、その事実が生じた年度において損金経理を条件に認められています。証拠書類・原始証憑類・貸倒の時期の判断根拠書類を準備しておく必要があります。

【11】海外取引
不正の多い海外取引も要注意です。「外国の書類で、専門用語が使用されており、調査官も理解できないだろう」などと高をくくっていると、とんでもない目に遭います。海外取引については、原始証憑・取引実態を必ず点検しておきましょう。

【12】賄い
飲食業等々で問題になりやすいのは、「賄い」です。会社が社員に食事補助する場合、社員が半分以上負担し、かつ会社が月間3,500円以下となっており、それ以上は給与課税で源泉税を負担してもらわなければなりません。面倒ですが、1食あたりの直接材料費平均×食事回数を計算し、確認しておく必要があります。
例)20日20食として、一食原価175円以内であれば非課税です。ある程度、論理性をもった計算のしくみと資料を作っていれば、大きな問題にはなりませんが、何もしていなかった場合、否認されます。むしろ食事手当1万円と給与課税している会社もあります。


消費税の要注意事項

消費税はある程度の売上規模があれば、必ず数百万円単位で納税が発生します。さらに、年間売上5,000万円以下の簡易課税事業者は別として、原則課税はどうしてもミスが発生しがちです。そのため、調査の内容も細かくなってきます。
消費税の処理については、解釈の相違などで争う余地が少なく、処理が正しいか否か、課税か課税対象外か、結果がはっきりしています。金額が数千円程度でたまたま間違えたというような場合には指導扱いとなることもありますが、2万〜3万円レベルの金額になると修正申告を要求されます。

税務調査では、経費にかかる消費税の処理について課税対象外のものを仕入税額控除していないか、というように基本的なところを細かく見られます。
具体的には、交際費や福利厚生費の中の香典・見舞金・祝い金、商品券やビール券などが課税仕入になっていないか、手数料勘定のカード手数料、福利厚生費で処理している退職掛金・共済掛金などが挙げられます。

その他、海外取引がある場合には、海外出張旅費や現地経費の処理が課税仕入になっていないか、輸入の場合の運送業者に対する支払いの処理(課税と課税対象外が混じっているケースがほとんど)がきちんとされているか、なども細かくチェックされます。
消費税は一件当りの金額は少額ですが、大量に反復継続するものについて誤りがあると、金額がかさんでくるので、基本をしっかり押さえておく必要があります。





  経理・税務 ページのトップへ

「不動産を買ったとき、売ったとき」の経理と税務

リーマンショックから1年が経ちました

「100年に一度の経済危機」と言われ続けてきた今回の不況ですが、確かに労働分配率は下落の一途をたどり、また今年7月の完全失業率は5.7%と過去最悪を更新しました。

不況に歯止めをかけるため、今年度の税制改正でも多くの規定が策定され、その中でも特に「不動産を購入した場合の税制上の優遇措置」が創設されたことは記憶に新しいところです。

今回は、会社が不動産を購入した、又は売却した場合の経理処理と課される税金について再確認しつつ、税務上認められる有利な経理処理、そして不動産関係の税制改正を確認したいと思います。(税率は平成21年9月現在のものです)


不動産の購入

【1】購入時にかかる税金

不動産を購入する場合に必要となる税金には、印紙税・登録免許税・不動産取得税・消費税があります。

▼印紙税:不動産売買契約書に貼付します。金額は不動産の売買価格に応じて増減します。例えば6千万円の場合の印紙税は4.5万円です。

▼登録免許税:購入した不動産の名義を移転(所有権移転)するために法務局に納付する税金です。売買による移転ではその不動産の固定資産税評価額×2%(土地は1%)が課税されます。また抵当権を設定する場合には債権金額×0.4%が課税されます。

▼不動産取得税:不動産を取得した場合に課税される税金です。購入後2〜3ヵ月後に都道府県から納付書が郵送されます。(固定資産税評価額の2分の1)×4%が課税されますが、居住用など用途により税額は増減します。

▼消費税:建物等には通常通り消費税が課税されますが、土地等には消費税は課税されません。なお建物等へ課される消費税は建物等価格の5%です。


【2】購入時の経理処理(原則)

不動産の購入に付随する費用は原則としてすべて取得価額に含まれます。購入代価の他、上記に記載した印紙代、登録免許税、不動産取得税、消費税(税込経理の場合)が取得価額に算入され、付随費用である仲介手数料、登記手数料も同様に取得価額を構成します。

なお購入する不動産が土地付建物であるような場合には、これらの付随費用はそれぞれに按分されることになります。

【仕訳】
土地建物6千万円を購入した場合(うち土地の価格は4千万円)

1.手付金600万円の支払い時
  前払金600万円 / 現預金600万円

2.残金5,400万円の支払い時
  土地4,000万円 / 前払金  600万円
  建物2,000万円 / 現預金5,400万円

3.付随費用(仲介手数料300万円)の支払い時 → 按分が必要です。
  土地200万円 / 現預金300万円
  建物100万円


【3】税務上有利な経理処理

法人税法(基本通達)では、【1】や【2】に掲げた不動産の付随費用のうち、印紙代・登録免許税・登記手数料・不動産取得税については取得価額に含めずに経費処理することができるとしています。つまりこれらの経費については、購入時の仕訳で「土地」や「建物」といった取得価額とせず「租税公課」や「支払手数料」等の勘定科目を使用して経費処理をすることにより、税法上も損金として取り扱うことになり、結果として節税効果が生じます。


不動産の売却

【1】売却時にかかる税金等

不動産を売却する場合には、法人税(個人であれば所得税)と消費税が課税され、また付随的な税金としては、契約書に貼付する印紙税が課税されます。ほとんどの場合、登録免許税その他の登記費用は買主側が負担することになるため、売主である当社は支払う必要がありません。
消費税は、購入時と同様に売却時にも土地には課税されず、建物等の売却価格に5%が課税されます。
法人税は、現在では以前のような土地重課制度が凍結されており、通常通り売却益に対して30%(中小企業は一部18%)の税率で課税されます。
なお、不動産業者へ支払う仲介手数料等は譲渡費用として経費になります。


【2】売却時の経理処理

売却した不動産が土地建物である場合、実務上は土地と建物それぞれの価格の算定が問題となりますが、原則は「売却時の時価」ということになります。具体的には、それぞれの固定資産税評価額や相続税評価額で按分する方法や、まず建物価格を固定資産税評価額とし、売却額からこれを差し引いた額を土地の価格とする方法等がありますが、いずれにせよ公正妥当な範囲で決めなければならないため、会計事務所への確認が必要でしょう。

【仕訳】
上記に例示した不動産を8千万円(土地5,500建物2,500)で売却した場合

1.手付金800万円の入金時
  現預金800万円 / 前受金800万円

2.残金7,200万円の入金時
  現預金7,200万円 /
  前受金  800万円 /
 土地    4,200万円
 建物    2,100万円
 土地売却益1,300万円
 建物売却益  400万円
  

【3】売却時の注意点

不動産の売却の場合、土地と建物とに関わらず売却益には法人税が課税されます。しかし消費税は、前述のとおり売却した建物の対価だけに課税され土地には課税されません。したがって、【1】建物の対価の額が小さいほど預り消費税の額も少額となり、結果として納税額が少額となる可能性があります。反面、当然土地の対価の額が大きくなりますが、この場合には消費税の課税売上割合が95%未満となる可能性があり、その場合には結果として消費税の納税額が多くなるといったケースもみられます。税務調査でも問題が生じる部分ですので注意が必要です。


今年度の税制改正

今年度の税制改正は、次に記載したように「不動産を流動化させる」ことを主眼に置いたものとなりました。更に、単に不動産を「譲渡した場合」に税率を下げるといった改正では結果として不動産市場が値崩れを起こしデフレが進む可能性があるため、今回の改正では先行取得つまり「購入すること」を要件に適用できる規定が創設されました。

【1】長期譲渡所得の1,000万円特別控除の新設

★主な適用要件
・平成21年又は22年中に土地等を取得すること
・その土地等を譲渡した場合に、譲渡年の1月1日において所有期間が5年を超えること

★効果
・譲渡益から1,000万円の特別控除が可能
(今の税制なら、1,000万円×20%=200万円の減税)


【2】土地等を先行取得した場合の課税の特例

★主な適用要件
・平成21年又は22年中に所定の土地等を先行取得すること
・この適用を受けることを証する届出書を提出すること
・その土地等の取得後10年以内に、所有する他の土地等を売却すること(結果として買換えとなる)

★効果
・売却した土地等に係る売却益の80%(平成22年中の取得の場合には60%)が繰延べられる【売却益の20%(同40%)のみに課税される】





  経営・財務 ページのトップへ

会社の価値…幾らで売れるのか

時価純資産価額が目安、会社の将来性があれば上積み

中小企業の価値の計算は複雑です。絶対的な基準などはありません。最終的には専門家による企業価値の算定と社長の決断・交渉力によることになります。ここでは大体の概算を検討します。一番簡単な最低価額は、貸借対照表の「純資産の部」に含み益、含み損、リース残債や現社長に支払う退職金等の隠れ債務を加減した「時価純資産価額」となります。


結論から言うと、多くは、上場企業と違って株価の時価もなく、専門家に査定してもらっても余り高額な値は付かないのが実情です。買い手としては、全資産を処分して幾ら残るかを最低限として、中古でも使えるならこれくらいの値段でと考えます。専門的な社員が残り、得意先や技術が引き継げるならと金額を加算します。
売るほうからすれば手塩をかけた会社。その苦労を実感しているから、どうしてものれん的価値や営業権が相当あると考えがちですが、現実にはそれを評価してくれることは少ないのです。同業他社を上回る収益性があるなど、よほどのことがあれば、税引き後利益の3年から5年分の上乗せの可能性があるでしょう。


急げば買い叩かれるのは不動産と同じ

社長が急死し、後継者がいないとなれば「会社の価値=社長の価値」となり、一銭にもならない場合も考えられます。急げば足元を見られるのは、不動産や店舗、工場も同じです。逆に言えば、社長が元気なうちに会社の売却を図ることが一番高く売れる方法です。会社の企業価値を高め、売却し、数年間は顧問的立場で、得意先と従業員のスムーズな引継ぎを行うことが売り手・買い手双方にとって一番良いのです。

★レッツチャレンジ! M&Aにおける会社の売却価値を試算してみましょう!
 参照URL >>> http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei20/q16.htm



バックナンバーメニューへ戻る


Copyright PROFIT CORPORATION 2009, All rights reserved.
Copyright SEIKO EPSON CORPORATION 2009, All rights reserved.