会計事務所と顧問先をむすぶCLUE 第133号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『経営支援徒然帖』
 経理・税務・・・ 『「パソコン会計」のメリットを再確認しましょう』
 経営・財務・・・ 『商売に奇策なし 成長する会社には共通点がある』





 今月の特集

経営支援徒然帖

焼肉屋とお好み焼き屋(もんじゃ屋)との共通点は?

経営会議に参加して、会社の経営数値を毎月見ていると、業種・業態の共通点が見えてきます。一見共通項がないように思える焼肉屋とお好み焼き屋(もんじゃ屋)ですが、経営数字を見れば様々な共通項が見えてきます。

まず、この2業種の損益分岐点売上の低さです。損益分岐点売上とは、黒字経営に達するまでの必要売上ですが、からくりは簡単。人件費や経費のような固定的な経費を掴み、売上と直接連動する原価の率を捕捉しておきます。例えば、人件費が100万円、その他経費が70万円、原価率が30%の店の損益分岐点売上は、(100万円+70万円)が利益率(1−原価率)であればよいことになり、170万円÷0.7の243万円となります。

ではなぜ焼肉屋とお好み焼き屋は共通するのでしょうか。それは、この2業種が寿司屋、中華料理、居酒屋等の他の飲食業と違って、「お客が料理をする」つまり専門的な調理人がいらず、人件費が安い業態だということです。固定費として地代家賃は10%程度、人件費も30%以内、原価率も30%として、3大経費を最大でも70%以内に抑えこむことが可能だからです。

それに比して、回転寿司以外の寿司屋は大変です。寿司は他の飲食食材に比して生モノですので、原価率は40%と高く、地代家賃は10%程度と他の飲食と変わらず、職人を使用しての人件費を25%以内に抑えこまないと75%以内にならないからです。

単価が高い店、若い寿司職人の修業の場、家内経営等の工夫なくしては寿司店経営が難しいことが分かります。回転寿司は単価が安い、そして寿司職人は必要がないため、人件費が安くでき、チェーン店展開で原価率、仕入単価を安くして経営されています。他の外食産業も基本的には回転寿司と同じで、スケールメリットで仕入単価を下げ、専門的な料理人を雇わず、人件費を下げ、原価+人件費+地代家賃の3大経費を目標70%、悪くても75%以内、経常利益5%程度を経営目標されていると思われます。単価の高いフレンチ料理屋よりも焼肉屋、お好み焼き屋の方が、はるかに経営的には楽であることは経営数値を見れば分かります。


不況期の経営者がやってはいけないこと5カ条

第一条 世の中のせいにしないこと

会社の経営がうまくいかないことを世の中のせいにする経営者はいつの世にもいます。経営がうまくいかないのを誰かのせいにしても何も解決しません。こういう経営者は自分が可愛いだけで、会社の社会的責任、家族の生活、社員の生活、利害関係者の信頼を最初から引き受ける気がないのです。世の中の不況は新たなビジネスチャンスであり、会社の体質改善、社員や経営者を成長させてくれる試練という構えがまず必要です。

第二条 公私混同はしないこと

不況期で最初に倒産する会社のほとんどが経営者の公私混同がある会社です。経営が厳しい時ほど経営者を中心として、一丸となった会社の結束力が必要とされます。経営者の公私混同は、ほとんどの社員がしっかり見ています。経営者が私利私欲・公私混同していると見られていて、社員が残っているのは、[1]他の会社より飛びぬけて待遇がいい。[2]経営者の公私混同と比例して社員の公私混同も多めに見てもらえる[3]他の会社で使ってもらえない無能な社員である。等々の理由で、経営者も経営者なら社員も社員である場合が多いのです。給料を下げれば不平ばかり、遅配でもしようものなら一目散に退社となり、ある日会社に経営者が出社したら誰もこず、泣きながら会社の整理をした社長もいるのです。自業自得とはこういうことなのです。

第三条 経営の大局を見失わないこと

不況の時こそまず考えなければならないこと、それは判断の基準が自社は何業かということです。飲食や小売、製造業等々の会社が不動産投資に走ったり、株に手を出したりと、本業と関係のない仕事に手を出さないことです。
新銀行東京がいい例です。東京都という公務員組織が銀行業に手を出した結果、大きな損失を出しています。これは、[1]簡単そうに見えても、商売において、餅屋は餅屋であること。[2]利益を追求すべき銀行業務に何のリスクも考えてたことがない公務員が出て勝負になるわけがない。[3]都内の中小企業への貸し渋り防止なら信用保証協会の活用で充分対応できた。[4]都市銀行への地方税課税に負けた腹いせの感情的な動機があった。等々です。

第四条 儲け話に乗らないこと

不況の時こそ詐欺師の出番です。色々な儲け話が跋扈しています。第一に儲け話は人に言わないということが原則です。第二になぜ自分のところにそんな話が来たかを考えることです。
資金繰りが苦しい会社ほど、街金や手形割引屋からのファックスや電話、メールが来るものです。「不況の時にはうまい話はない」を肝に銘じ、紹介以外の仕事は受けないことです。現金引き換え以外はしないことです。

第五条 安売りはしないこと

利益は売上−原価−経費です。売上を下げることは利益を下げることになります。利益とは経営者、社員の創造力の総和です。安売りは自分を安売りしているようなものです。安売りをしないと売上が下がるなら、まずやるべきことは、売上が減少していることの原因分析、特に同業他社の儲かっている会社の徹底調査です。例を挙げると、飲食では「餃子の王将」は前期よりも既存店の売上が好調であり、「マクドナルド」も元気、小売では「ユニクロ」等々です。儲かっている会社には何か違うものがあると思います。それらを徹底的に学び、検証し、自社にそれらを真似てでも取り入れるべきです。人の話を聞こうとしない、反論ばかりする経営者、自社は違うと言い訳ばかりする経営者、新しいことに挑戦しない経営者・社員等々。不況は会社の弱いところ、経営課題をあぶり出してくれます。


経営者の一番難しい判断・・撤退、廃業

採算悪化で、事業からの撤退、廃業する会社が増えてきています。戦争でも一番難しいのは敗戦時のしんがり、撤退時の戦いだそうです。豊臣秀吉が武威を高めたのは、信長の朝倉攻めで味方と思った近江の浅井氏が背後から攻めてきた際、決然としんがりを志願し、みごとに織田軍を無傷で京都へ撤退させた時です。実際は徳川軍や明智軍も頑張ったと言われていますが…。商売も全く一緒です。儲かっている時、繁盛している時、経営者はその波に乗って余計な事をしなければいいのであり、経営者の真価が試されるのは、儲かっていない時、不況の時、今までのやり方ではやっていけない時なのです。

ここで経営管理面から撤退、廃業の判断を見てみましょう。

[1]まず月次決算書、年次決算書を正しく見ることです。そして自社の損益分岐点をつかむことです。赤字であれば、まず、固定的な経費、自分の人件費をいくら削減できるかを数値化し、絶対的に最低限必要な固定費を算出します。例として、これ以上削減できない毎月の固定的な経費が100万円だとしましょう。次に、原価等売上に比例して発生する原価を30%としますと、この会社は、毎月最低143万円の売上げが必要となります。(100万円÷固定費比率(1−変動費率)=142.8万円≒143万円)
この売上が現実的に可能かどうか考えてください。何か月でこの売上に達するか見積もり、それまでお金が続くか、耐えられるかを考え、撤退、廃業の判断をする必要があります。

[2]減価償却費を入れずに、経常利益がマイナスになった場合は、撤退、廃業も考えなければなりません。減価償却費はお金のかからない経費です。万が一経常利益が赤字でも、減価償却費を入れずに黒字になったとすれば、お金の面では何とか持ちこたえることは可能です。これが減価償却費を入れずに経常利益が赤字となれば、お金が出ていきます。このような会社はいずれ倒産します。改善する見込みがなければ一日も早く商売を畳む勇気が必要です。


これからの企業のかたち

堺屋太一さんの言ではありませんが、日本は今、高度成長期のような大量生産・大量消費の時代ではありません。むしろ良いものをちょっと高くても消費したいという時代に入ったと言っていいでしょう。日本の製造業各社も、新製品や付加価値の高い商品を日本で作り、普及してきたら海外生産に切り替えると言っています。世界の亀山モデルと言っていたシャープの液晶テレビも、亀山から中国へ行くそうです。このように大量生産物は今後ますます海外生産され、日本国内では、第4次産業ともいうべき「人材」を活用したサービス業がますます増えていくでしょう。いや、サービス業、開発業以外、生き残ってはいけないと言った方がいいでしょう。

サービス業に欠かせないのは「社員のモチベーション」です。会社は社員のモチベーション、開発力、想像力、創造力を最大限引き出すことを考える必要があります。なぜなら社員の創造力こそが付加価値の源だからです。では、社員の創造力、モチベーションを上げる労働環境とはどのようなものでしょうか。

[1]会社やその商品に誇りをもつこと
社会的有意義性や顧客からの信頼、支持が大きいこと。感謝された、褒められた等々。

[2]会社が心地よい、働きやすい環境であること
精神的にも物理的にも明るいこと。人間関係でイジメがない。尊敬する経営者や上司がいる。窓が開放的で明るい。事務所や机は高価ではなくても清潔であること。整理整頓がきちんとされている。意見や主張が言いやすい雰囲気がある。経営者に直言できる。経営者に私利私欲・公私混同がない。

[3]経理の公開、透明性と成果主義賃金体系の導入
社員の創造力が付加価値の源泉と考えれば、社員の創造力が給与に反映する仕組みがこれからの企業経営に必要である。その前提として、経理の公開がある。先月いくらの売上があり、売上総利益、営業利益がこれだけあったという報告を働く人に知ってもらうのが前提である。
そしてみんなの働いた成果を働いた分に応じて可能な限り分配していく仕組みづくりが大事である。成果主義賃金体系に反対する人もいるようだが、制度の不備をあげつらって、結局保守的な既得権擁護に陥ってしまうことになる。成果主義賃金体系のシステムを維持しつつその評価や分配の仕組みを改善する必要がある。


大倒産時代の到来 危ない会社の見抜き方

底なしの不況の中にあるのは不動産・建設・製造業界だけではありません。飲食・小売・サービス業等、すべての業種が巻き込まれつつあります。景気は悪化の一途で、金融機関は保証協会のセーフティネット頼みで、プロパー融資は厳しさを増しています。企業の経営成績、財政状態を記した決算書。粉飾決算も何のその、きちんと決算書を見れば、粉飾決算の兆候も分かりますし、会社の実態も見えてきます。
会社の実態を探る代表的手法の一つが「財務分析」です。その際のポイントは、業種・業態で異なりますが、共通の確認事項が「危険な数値がないこと」です。
自己資本比率(資本の部÷資産計)が低い企業は、有利子負債等の銀行借入金が多く、財務的に不安定な会社だと分かります。もし、自己資本比率がマイナスなら債務超過であり、1ケタ台なら要注意です。なぜならば、まず銀行が融資に応じてくれないからです。

流動比率(流動資産÷流動負債)が100%以下の企業も要注意です。買掛金や未払金、短期借入金の決済資金が不足しているはずです。

当座比率(通常当座資産÷流動負債ですが、現預金÷流動負債の方が不良資産を排除できるので確実です)が、50%をきっている企業は資金が自転車操業になっています。また、短期借入金が多い企業も要注意。銀行が次に折り返し融資をしてくれなかったら即倒産になるからです。
また、固定比率(固定資産÷自己資本)が100%以内であれば、建物や土地、機械設備等が返済の必要のない資本金等で賄われているので財務的に安全だと分かります。そのような会社はめったに無いので、通常比較的安定的な長期借入金をプラスした固定長期適合率(固定資産÷自己資本+長期借入金等)が100%以内であれば良いとされています。これが100%を超えていれば、短期資金で長期の固定資産を購入したことになるので財務的に不安定になります。 中小企業の財務を長く見ていた体験から言えば、財務分析は幾分かの注意事項があります。

まず、利益を経営者等の役員報酬で調整しているケースが多いことです。利益が10万円と利益が100万円の会社があっても、役員報酬が1,000万円、300万円であれば、どちらの会社が稼いでいるか分かりません。利益+経営者報酬で会社の収益力を見なければならないと思います。

また、自己資本ですが、経営者からの借入金が長期借入金に含まれていることがよくあります。これらは固定負債ではなく自己資本に入れて財務分析しないと会社の実態に迫れません。
最後に、営業上の収入から支出を差し引いた営業収支(キャッシュフロー)が大事です。本業から現金を稼ぐ力が赤字だと、損益計算書が黒字であったとしても資金繰りが厳しくなります。
このような会社は粉飾決算の可能性も高くなります。粉飾決算は、売掛金/売上、在庫/仕入 等々様々な手口がありますが、現金の増減はごまかしようのない事実であり、いくらお化粧をしても嘘がばれるのです。





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「パソコン会計」のメリットを再確認しましょう

はじめに

パソコン会計が世に普及してから、10年以上が経ちました。

それ以前の経理業務といえば、帳簿を手書きで一行ずつ記入し、そろばんや電卓を片手に、書いた数字が合っているか確認し、その手書きの帳簿を集計して完成させる試算表を更に手書きで作成し…という具合に、今から考えてもとにかく非効率的で面倒でした。
しかし事業を行う以上は所得税や法人税などの税金を計算するためにも決算書が必要ですから、いやでも帳簿の作成をしなければなりません。

こうした時代背景のなか、「パソコン会計」が登場します。

パソコン会計が導入され、経理業務は飛躍的に効率が上がりました。時間の短縮、経理知識が少ない従業員でも処理が可能、集計も楽など、いろいろなメリットがあります。

今回は改めて、このパソコン会計を利用する「効果(メリット)」と、そのメリットを最大限に発揮する「効果的な使い方」を、再確認していきたいと思います。

※自社で行うパソコン会計(=自計化)を前提としています※


「パソコン会計」導入のメリット

▼帳簿の作成が簡単かつ楽
経理の入力作業のほとんどは「定型的な処理」です。人間がこの作業を手で行えば「人間だから間違えても仕方ない」となります。そこでパソコン会計を使用してみましょう。パソコン会計は手作業とは比べものにならないようなスピードで入力と集計、転記を行うことが可能です。

▼試算表が早く出来るから、業績がすぐにわかる
いままでは会計事務所にお願いして帳簿や試算表を作成し、数週間、場合によっては数ヶ月が経ってようやく試算表が完成し業績を確認していたのが、パソコン会計により自社でタイムリーに 経営成績が見えるようになります。

▼入力したデータを加工して、エクセル等でグラフ化できる
現在の会計ソフトはそのほとんどが、「テキストデータ」「CSVファイル」等により、試算表等のデータを表計算ソフトに転記することができます。
このようにデータを取り出してExcelなどに移し、その数値を使って見やすくグラフを作成すれば、今まで気が付かなかった会社の現状がビジュアルで見えてきます。

▼経営的な資料も作成できる
あなたの会社には「経営計画」や「予算」はありませんか? もしあるのなら、是非会計ソフトに予算を登録してみましょう。
パソコン会計なら、毎月々で売上や給与手当、広告宣伝費や通信費などの勘定科目ごとに計画値の登録が可能で、しかもその月の実績と比較することが可能です。

『当初計画した予定と実績とでは、どれくらいの差があるのだろうか』
『予算は達成しているのだろうか』
『このままの業績が続くと、決算は黒字になるのだろうか』

このように、予算と実績との差異分析がパソコン会計なら難なく行うことができ、計画的な会社経営が可能になります。


パソコン会計の便利な使い方

▼固定仕訳の利用
会計データの入力は、その約80%が定型的なものと言われています。例えば給与支給時の仕訳も、一度その仕訳を登録してしまえば、翌月からは「給与支給」を選べば自動的にその仕訳が画面に現れ、数字だけ入力すればいいといった機能(固定仕訳)が付いています。何度も同じことを繰り返す作業は、一度だけ会計ソフトに覚えさせれば大幅にその作業を短縮化することができるのです。

▼固定摘要の利用
入力した科目に応じてしばしば使用する摘要語句があります。これらを自動的に画面に表示する「固定摘要」という機能も使えます。摘要のワープロ入力は非常に面倒です。固定摘要を利用すれば効率よく入力を行うことができます。固定摘要は自社で独自に登録も出来、登録数も多く、かつ随時登録することが可能です。「相手先名+取引内容」と、複数の固定摘要を重ねるなどして、取引を詳細に記帳できます。

▼補助科目の利用
売掛金や買掛金・未払金は相手先ごとに、仮払金は例えば支払者ごとに、と、特に貸借対照表の勘定科目にその内訳がわかる補助科目を設定することにより、勘定科目の残高の中身が一目でわかるようになります。決算書に添付する「勘定科目明細書」もあっという間に完成です。

▼摘要残高の集計
摘要残高とは、仕訳の作成時に入力する摘要について、その文言(例えば相手先、支払内容等)が同じものを抽出して金額を集計する機能です。例えば売掛金という勘定科目について、補助科目で相手先ごとに区分しつつ、摘要欄に商品名を入力しておくと、「どの相手先にどの商品がいくら販売されたか」といった販売管理ソフトのような利用方法も可能になります。

▼部門別損益計算書の利用
上級を目指す経理担当者であれば、部門別損益計算を行うこともパソコン会計なら可能です。
例えば店舗別や、または営業部門・製造部門・間接部門といった部門設定により、管理会計としての損益計算書の作成が可能です。

▼会計事務所とのデータ連動
自社で入力した仕訳データをインターネットのメール機能を利用して会計事務所に送信したり、また最近では経済産業省が主導しているサービス「Saas(サース)」にみられるように、ネット上の会計ソフトに直接仕訳データを入力したりすることによって、リアルタイムで会計事務所のアドバイスを受けることが可能となりました(インターネット会計)。これにより、不安な仕訳も瞬時に自社で修正することが出来ます。


終わりに

パソコン会計による二大効果として、

[1]『作業の効率化』・・・時間が短縮される、経理初心者でも試算表作成が可能になる等
[2]『経営のための経理の確立』・・・必要悪でしかなかった帳簿作成から、管理会計分野へのシフト

があるのではないでしょうか。
パソコン会計の導入と更なる活用により、「経理を経営に活用すること」を実感していただきたいと思います。
最後に、パソコン会計の落とし穴として、「帳簿作成が簡単であるがための【原始証憑の軽視化】」があげられます。仕訳のおおもとの資料である原始証憑(領収書や請求書等)のファイリングが疎かになり易いのです。
税務調査では帳簿の裏づけとして原始証憑を必ずチェックします。また取引の詳細を確認するためにも原始証憑の保管は必須です。
「作業の効率化」や「管理会計に有益」などのメリットを最大限に利用する前提条件として、その根拠となる原始証憑の管理に充分注意してください。





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商売に奇策なし
成長する会社には共通点がある

本業とは何か?自分たちの会社が何業か明確である会社

経験上、倒産する会社は、赤字が徐々に膨らみ、最後にうまい話に引っかかり倒産に至ることが多いと思います。これは、本業がうまくいかず、長い取引先に愛想を尽かされた現実と向き合うことを避け、新規顧客やうまい儲け話に引っかかり、結果として騙されることになるケースが多いことが原因ではないでしょうか。会社の業績が落ち込んでいるのに、新規事業を立ち上げようとする会社は倒産する確率が高いのです。なぜでしょうか?それは、新規事業を立ち上げる前に、「なぜ本業がダメになったのか」その原因と改善をまず実行して、収支トントンになってから新規事業を立ち上げることをしないからです。バブルの教訓の第一は、「自分の会社が何業かを見失った会社は、安易なもうけ話に乗る」ということでした。きれい事を言う訳ではありませんが、「自分の会社の本業は何か?」「社会的役割、使命とは何か?」を常にはっきりさせていかないと、船場吉兆、産地偽装等の「金儲け主義」に陥り、会社は内部から倫理的に崩壊していきます。どんなに苦しくとも「ここだけは譲れない」という一線を全社員が共有する会社だけが結局生き残れるのです。


「何業か」にイメージの広がりを感じるか

同じような建設会社が二つあります。一つの会社は「家を建てること」を経営目的に掲げ、もう一方の会社は、「快適な住空間を提供すること」を掲げているとしましょう。その3年後の姿は明確です。後者の会社は全社一丸となって、快適な住空間のための、日照・デザイン・配色・内装・ガーデニング等々家の付加価値全部が自社の経営目的と考えています。前者は、ただ家を建てることだけに限定されてしまう。結果として、後者の会社や社員は、住空間のあらゆる問題を自分たちの課題として、研究し、データベース化していくでしょう。
旧来のビジネスモデルのまま続けていては、顧問先のニーズや市場の条件を考え、知恵を出すことを追求している企業に勝てるわけがないのです。赤字企業には単に人件費や経費の圧縮ではなく、新たな付加価値創出のためのビジネスモデルを確立することが求められます。その時のキーワードは「何業か」の明確化と社会的な広がりのイメージなのです。


本業の改善は、時間軸と空間軸で

本業が厳しくなってきた企業の取り組むべき課題を、時間軸と空間軸で考えます。

空間軸とは、本業の利益率が落ちた場合、間接コストの削減を多店舗展開、フランチャイズ等で乗り切り、薄利多売で突破することを検討することです。今般のマクドナルド・セブンイレブン・吉野家・餃子の王将等の新規出店ラッシュは、既存店売上の減少を、新規出店と赤字店の閉鎖で乗り切ろうとしているためです。多店舗展開や薄利多売を図ることで、間接コスト比率を下げ、結果的に増収・増益を図ろうとする経営手法です。

時間軸とは、その業態の顧客ニーズの変化に合わせて、サービス変更を図り、付加価値を付けることで中長期的時間をかけて戦略的に突破しようとするものです。単なるカルタ業者であった任天堂がテレビゲームの最大手になったのはその一例なのです。


本業の改善が第一

経験的に、本業で赤字になった企業が新業態へ移行して成功した例がありません。理由は、本業で赤字になるということは、その会社自体の経営管理・経営体質・経営戦略そのものがおかしいということでしょう。もっと辛らつに言えば、経営者が経営者失格なのかもしれません。本当に優秀な経営者であれば、本業の寿命等を常に考え、次の事業展開の先を読んで、黒字のうちに新事業展開を準備しているでしょう。多くのベンチャー企業の一発屋を私たちはなんと多く見てきたでしょうか。資本主義社会には、「溺れる者は藁をも掴む」という格言がふさわしいのかもしれません。資本の脆弱な、足元を見られた異業種からの安易な参入では、余裕ある同業他社に勝ちようがないのです。


新規事業は、本業の延長上にある

顧客のニーズの変化、市場の飽和状態に直面して新規業態に進出する場合、現在の業態の周辺及び延長上に設定することが成功の秘訣です。かつて、鉄鋼メーカが余熱でうなぎの養殖に乗り出したりして10年たらずで失敗した例があります。多くの企業経営者は隣の芝生は青いと思いがちです。しかし、どんな業種でもその渦中にいなければ知りようのない厳しい現実があります。人の商売はどんなものであれ、楽なものはありません。また、楽だ、儲かりそうだという気持ちで新規事業に乗り出すこと自体が、出発点からして間違っていると考えてよいでしょう。自社が何業かを明確にしている企業がその業を達成していくために新たな事業を立ち上げていく、それが一番なのです。例えば、建設業が提供するその快適な住空間の充実のために、建材・ガーデニング・デザイン等の業態に進出し、飲食業がその食材の充実のために食材業へ進出する等です。
本業からの必然的な新業態の進出で、例え短期で利益を生まなくても、社員の会社への求心力が低下することはありませんし、よしんば失敗しても社員の納得も得やすいのではないでしょうか。バブル崩壊の後、本業と無縁な株や不動産投資で失敗し、幾ら稼いでも営業利益が支払利息と元金返済へ資金が流失していく多くの企業、それを10年も続けていては社員がついて来ることはありません。


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