会計事務所と顧問先をむすぶCLUE 第128号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『再びの悪夢…世界同時不況』
 経理・税務・・・・ 『決算業務・税務判断の勘どころ』
 経営・財務・・・・ 『「作業」と「仕事」とを明確に区分する』





 今月の特集

再びの悪夢…世界同時不況
輸出25%減、失業率2%増へ 襲いくる未曾有の危機

今回の根源的な問題は何か?

日ごろ、税理士や会計事務所職員の方々は、中小企業の経理実務に携わっていると、業種別や規模・地域の景気動向に関心や問題意識を持ちますが、世界経済や日本経済の動向と言われても直接関心を持たないのが実情ではないでしょうか。かく語る筆者もそのうちの1人です。バブルの時もそうでしたが、全くバブルの恩恵を受けていない、無関係だと思っていた人の多くが、バブル崩壊の後、売上の減少・会社の倒産・給与の減額と、世界経済・日本経済のあおりを受けました。
そこで「バブルでいい思いをしてないぞ!!」とか、「なんでこんな目に合うのか!!」といくら嘆いても仕方ないので、今回は景気動向の行方を米国の根源的問題から整理し、サブプライムローン問題に端を発した世界不況による日本経済の今後の対策について考えていきます。


誰が何と言おうが、お金は儲かるところへ行く

今回の発端は米国の大幅な経常赤字です。つまり、他の国ではありえない経常赤字を垂れ流し続け、その赤字を世界中の黒字国が埋めてきたという世界市場の「いびつな構造」に原因があります。米国は国も家計も大幅な赤字であり、国は他国からの借り入れで、家計は土地を担保にして銀行から借り入れ消費しており、その大盛な消費のために、日本・中国・インド等が米国にモノを輸出して利益を得てきた仕組みがありました。そして、サブプライム問題とは、米国の大きな赤字を埋めるために世界中から金をかき集めるための高利な金融商品が信用下落したことであり、オイルマネー等の黒字、金余り資金はより儲かる原油・穀物等へ流れているのが実態です。

日本を襲う大不況の津波
日本経済はと言うと、2002年以降の景気回復は、トヨタ・ホンダ・キャノン等々の輸出産業の好調によるもので、突詰めれば円安と米国の過剰支出に支えられていました。

しかし、世界市場の「いびつな構造」の限界と破たんが訪れ、スマトラ沖の大津波のような世界不況が日本にも到来しようとしています。このゆがみの是正は、2009年以降の課題であり、日本の中小零細企業は必死の知恵を出して生き延びる方法を模索しなければなりません。

連鎖ゲームのように世界経済は失速中


危機は3年続く…大切なのは3年後の会社の姿を考えること

米国の経常収支赤字が消えるまで、お金は世界中で暴れまわります。人間が作ったロボットに人間が苦しめられているようなものです。しかも、米国の世帯あたりの借金を返済するのに20年以上かかると言われています。米国人がこれまでの消費を節約し、借り入れ返済にお金をまわすとなれば、世界中不況になります。経済学者の野口悠紀雄先生によれば、日本のGDPは輸出の減少で7.5%減少し、設備投資が10%減少します。「以上から判断すれば、経済危機が収束するまでに、日本の実質GDPが10%程度落ち込む覚悟が必要」と『ダイヤモンド新年合併号』で詳細に分析されています。この言に従えば、おおむね景気回復に3年かかるとして、日本経済はマイナス3%成長を3年間続けることになります。

輸出産業はお先真っ暗という時期が相当続くのではと考えざるを得ません。その影響を受けて、今後、中小企業も何が起こるか分かりません。だからこそ、いざと言う時の備えを怠ってはいけないのです。

大切なことは、景気回復した時に日本経済の姿、貴社の姿がいかなるものになっているかを想像することです。具体的に言えば、経理の合理化、業務の合理化、危機に対処した商品、サービス力、社員の成長した姿等々です。


危機に備える…現預金を持つ

業種にもよりますが、最低限の備えとして、月商1か月分(理想は3か月分)程度の現預金を持っておく必要があります。1か月分の売掛入金がなくてもやっていけるからです。

また、以前13銀行もあった都市銀行が現在3銀行に集約されています。メインバンクと勝手に思い込んでいるのは会社だけで、銀行は業績が悪いとあっさり融資を止めるのが現実です。銀行の担当者が何とかしたいと思っても、上司や本部はOKしないケースがほとんどだからです。都市銀行、地方銀行、信用金庫とバランスをとりつつ、複数の銀行と取引するのが賢明です。特に地場の信用金庫との関係が重要です。新しい銀行と取引を始めるのには顧問税理士の力を借りることが得策です。なぜなら銀行は飛び込みの顧客との取引を嫌がるからです。紹介者がいなければ、口座を開き、取引の実態を作って、銀行員が会社へ来てくれる関係を作ることです。


間違えてはいけない。お金の借りる順番

資金調達が厳しくなっています。スムーズに資金調達するためには財務・経理の力がいります。資金調達の手立てとして創業間もない企業は、第一に2008年10月から組織変更した日本政策金融公庫や保証協会付き融資を使い、3年以上業歴のある会社は三井住友銀行等が手掛けているビジネスローンや銀行の無担保のプロパー融資を獲得したいものです。そこで必要な段取りを準備しておくことが必要です。

1)最重要なのは直近の決算書です。銀行審査の8割方は決算書の審査です。営業利益・経常利益・税引き後利益が黒字であり、債務超過でないこと。中小企業では税金対策で赤字にしたり、役員報酬を多額に取り利益を少なくしている企業は、資金調達には不利になることを知っておいた方がよいでしょう。

また、決算書ツール(決算資金診断・金融機関格付)を当社でも販売していますが金融機関格付をして、問題点を改善することが必要です。銀行は利益と減価償却費をしっかりと見ており、返済可能年数が10年を超えたら極端に審査が厳しくなることを知っておきましょう。

2)経営計画、特に年間予定資金繰り表を作り、実績の数字を追いかけている企業には銀行は安心して貸しやすいのです。なぜならば経営の先行管理をしていれば、経営のかじ取りを間違える率が低いからです。借入金が全額返済可能な10年程度の長期資金繰り表があれば更に万全です。

3)法人税・道府県民税はもちろん、消費税・源泉所得税等の納税もしっかりしておきましょう。融資にはほとんどの場合で納税証明書が必要です。税金滞納は資金調達の致命傷になります。

お金の借りる順番ですが、まず銀行の無担保ビジネスローンを優先し、保証協会や国金の融資枠を空けておくことが賢明です。この場合、保証協会や国金を使っておくことも大事です。国金や保証協会は新規取引に時間がかかるので最初は100万円から300万円程度の小口融資で返済実績を作っておくことが今後の大きな枠の確保につながります。


金貸しの誘惑に乗ってはいけない!!倒産寸前の会社にうまい話など来ない

2008年9月のリーマンブラザーズの破たんで本格化した米国発の世界同時大不況は、中小企業の融資を一段と困難にしています。更に今後も厳しく、不況も進行することが予想されます。資金繰りが厳しくこのままでは倒産してしまうと危機感をもっておられる経営者も少なくないと思います。
まず、はっきりしなくてはならないのが、「資金繰りではなく利益が出ているか」です。資金繰りが廻らないので赤字覚悟で仕事を受注しているなら本末転倒です。
経理をしっかりとして、会社が赤字か黒字かはっきり知ることが出発点です。

会社が赤字なら、たとえどんな融資を受けてもいずれ倒産します。黒字であれば、資金繰りは何とでもなります。
まず、黒字経営ですが、借り入れ返済資金が足りなくて月末資金不足が起こるとなったら、まず新規融資を申し込むことです。並行して、遊休資産の売却等も進めておきます。

この場合、絶対してはいけないことは、

1)商工ローンや消費者金融に絶対手を出してはいけない
これらは金利が高く、表に出せない場合が多く、社長個人が借り入れをしている為、金利が会社の支払利息にならない場合は、税金が課税されています。20%近い高利を支払って商売は成り立たちません。

2)人件費の遅配や買掛金の未払い
社員の給与の未払いは労務倒産を引き起こす可能性があり、買掛金の遅延は仕入れができない可能性を起こします。何よりも信用失墜は必至です。

3)うまい儲け話に乗るな
会社が苦しい時は必ず悪い人間が現れます。「手形を割ってあげる」「得意先を紹介してあげる」「安い金利の融資を紹介してあげる」等々のうまい話を金融コンサルタント、経営コンサルタント、議員秘書等々の名刺を持って現れます。それらは100%詐欺師です。苦しい会社の情報を聞きつけてハイエナのように寄ってくるのです。うまい儲け話は絶対に倒産寸前の会社に来るはずはありません。

4)新規事業は本業の立て直しの後で
本業が苦しいと「隣の芝生はきれいにみえる」のか、儲け話、新規事業に取り組む会社があります。それらは100%失敗しています。本業を立て直し、ヒト・モノ・カネに余裕のある時、長期ビジョンと調査、経験を重ねて、本業の延長上に新規事業を構想するのが原則です。本業の長年の経験・信用・人脈を大事にせず、見知らぬ業界に出て行って成功した例等はないのです。むしろ社会的に信用ある会社のフランチャイズに加入する方がよっぽど安心と言えます。


最後の手段は借りるより簡単な返済期間の延長

黒字経営で、資金調達が困難の場合最後の手段は何をすればいいのでしょうか。それは思い切って、銀行に返済条件の変更をお願いすることです。毎月黒字経営で、過去の銀行返済が厳しい会社は、返済条件を変更してもらうことで資金難は解決するはずです。
毎月300万円返済していたものが100万円に減額してもらえれば、5年融資と考えても、月200万円×60回=1万2千万円の融資を受けたと同額の効果があります。もちろん「ああそうですか」という銀行は少ないです。ポイントは、会社の資金繰り表・経営計画をつくり、経営改善をして、今後「こういう予定で返済するから、1年間は50万円返済で、2年目以降は100万円返済で」とお願いしてみることです。

新規融資は難しくても、条件変更で返済期間が延びるだけであり、銀行も話にのりやすいです。もちろん約束を破ったわけですから、お詫びをし、直近の月次決算書・中期資金繰り表・経営改善計画書の3点セットを持って社長が銀行に頭を下げ、経営改善を実行することです。
条件変更中、新規融資は一切不可能ですから、覚悟を据えた経営をしていくことは言うまでもありません。銀行の方も会社が倒産してしまえば元も子もないので協力してくれるはずです。

条件変更は2カ月程度かかるので、決断するのであれば早い方がよいでしょう。銀行によっては、「今月分はきちんと返済してほしい、今月の返済がないと本部へ稟議がかけられない」という所も多いようです。
条件変更には顧問税理士や弁護士等の専門家の意見をきちんと聞いた方がよいでしょう。





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決算業務・税務判断の勘どころ
〜3月決算法人のために〜

3月に入り、3月決算法人では、いよいよ決算業務、そして税務申告へと多忙な時期に突入します。しっかりと段取りよく業務をこなすことが肝要です。
会計事務所の協力で月次監査が行われている法人であれば、基本的に毎月の試算表は確定していることと思われますが、それでも決算期の業務や決算整理仕訳、そして各勘定科目についての振替仕訳等の決算特有の処理や仕訳も生じることから、注意して取り掛からなければなりません。

以下には、主な決算期の業務と税務上の判断に関する注意点を記載しました。今一度確認をしていただきたいと思います。


主な決算業務

1.預金残高の把握(残高証明書の取得)

相変わらず預金金利は年1%未満の状態が続いていますが、それでも一定額以上の定期預金等については相応の経過利息が生じます。特に定期預金関係については残高証明書の取得をし、既経過利息の計上をする必要があります。

2.締め後売上の確認(売掛金の確定)

日々、掛売上を計上している場合には問題ありませんが、月に一度の締日に一括して掛売上を計上している場合については、締日の翌日から期末日までの掛売上を計上しなければなりません。例えば2月16日から3月15日までの作業分を3月25日に請求する場合であれば、3月16日から31日までの作業分についての請求書は4月にならないと発行されません。しかし作業自体は当期中に行われているのですから(発生主義)、当然その半月分も当期の売上に計上する必要が生じます。

なお、税務上の売上計上基準は原則として「引渡基準」とされており、商品の引渡時や役務提供を行った時に売上を認識することとしていますが、この商品引渡についても「出荷時」で認識する場合と「検収時」で認識する場合が存在します。いずれの時点も売上計上時点として認められていますが、当然、恣意的に変更することはできません。

3.棚卸し(売上原価の把握)

期末に残っている棚卸資産(商品・製品・切手等の貯蔵品)を実際に数えて帳簿残高と合致しているかを確認します。特に売上原価を構成する商品や製品については、「棚卸し」は売上原価の額に直接影響を与えます。そして数の数え方や先入先出法等の評価方法の違いで期末棚卸資産の金額は簡単に上下します。税務署にも注意して見られる部分ですので明確な計算根拠に基づいて処理を行ってください。

4.貸倒れ処理

取引相手の倒産などで債権が回収できなくなることを貸倒れといい、貸倒損失勘定で処理します。税務上、貸倒損失勘定として処理できる要件は非常に厳しくなっています(以下を参照ください)。税務調査でもトラブルになる可能性が高いところなので、計上要件と損失額についての確認をしてください。

税務上、貸倒損失が計上できる主な事由

1)会社更生法若しくは金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生計画認可の決定又は民事再生法の規定による再生計画認可の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額

2)債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

3)その他一定の場合

5.減価償却台帳の整理

減価償却費の計上は、簿記上では決算時だけの処理です。しかし近年の月次決算監査では、経営的見地から毎月々で年間見積り額を按分計上しているのではないでしょうか。決算ではこれらの概算計上を正確な金額に修正する必要があります。

また、期中における備品等の購入で資産計上されるものはないか、一括償却資産と中小企業の即時償却とではどちらが有利か等を調べることも行います。当期中に売却や除却した資産については固定資産売却損益(または除却損)も計上します。

6.経過勘定等の計上

「中小企業の会計に関する指針」にも記載がありますが、最近では前払費用や未払費用等の経過勘定の記載が、正確な決算書作成の点からも重要視されています。税務上では「短期前払費用の損金算入」に関する通達や、経過勘定ではありませんが消費税の継続的な未払計上等、期間損益計算の観点からの税務上の取扱いも存在しますので、疎かにできない部分です。

7.人件費関係の資料整理

従業員の社員名簿を作成したり、履歴書・タイムカード等を保存することは重要です。企業としての最低限の情報管理とも言えますが、税務上の「架空人件費」の疑いを払拭するためにも必要な事項です。

最近では給与を現金支給する法人は随分減少しましたが、それでも「賞与くらいは現金で渡したい」等をおっしゃる法人も一部残っています。現金支給が存在する法人は、せめて「領収書」「受領書」等の事実確認のための書面を残してください。

経理業務効率化・税務調査の観点からは当然、銀行振込みに越したことはありません。一度登録しさえすればPCやATMで簡単に振込みができますし、振込先も明細を見れば明らかであり税務署からの無用の疑いも生じません。

8.役員給与の確認

ここ数年で役員給与に対する税制が様変わりしています。平成18年の税制改正で「定期同額給与」「事前確定届出給与」等の制度が施行されてから今日に至るまで、毎年の改正の都度その補足がなされ、また国税庁の質疑応答等でもその取扱いについての具体的説明が行われています。上記の改正後、数年が経っていますのでそろそろ税務調査での論点となってくるでしょう。
特に定期同額給与(役員報酬)の減額については実務上でも数多く、例えば、1)株主総会で確定したその期の役員報酬について、その後むやみに減少させた場合には当初金額と減少額との差額は損金不算入となる、2)「著しい業績悪化」の場合に限り減額を認める、3)「著しい業績悪化」とは具体的に金融機関の融資返済の条件変更等が該当する、等々の内容が明示されてきています。

9.経費に関する確認

1)交際費
資本金1億円以下の中小企業では交際費について、年400万円までは10%、そして年400万円超はその超えた部分の金額が損金不算入となる「交際費課税」はよく知られています。
平成18年の税制改正では、1人あたり5千円以下の飲食代(社外の人間を接待する等一定の場合に限られます)については原則として交際費課税の適用除外とされました。
特に接待の経費については、誰と誰が、といった詳細を保存することにより課税を受けなくなります。稟議書の作成や領収書の裏面への記載等、可能な限り記録を残すようにしてください。

2)従業員の昼食代
従業員に支給する昼食代は、その半額を従業員が負担し、かつ月額3千5百円以下である場合には従業員への給与課税は行われません。
例えば、1ヶ月に20回食事を支給される場合(3,500円÷20回=1回175円)、1回の食事代原価(直接費)が350円未満なら課税なし、または350円以上の原価がかかる場合には「その原価−175円」の金額を従業員が負担している場合には課税なし、となります。

比較的細かい取扱いと思われがちですが、チリも積もれば山となるように、特に飲食店等において各従業員が賄いで食事を受け、数年間にわたって食事代を負担していないような場合には大問題となりますので、ご注意ください。





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「作業」と「仕事」とを明確に区分する

「作業」とは、繰り返しの業務であり、誰が行っても大して変わらない業務…ルーティンワークのことを言います。例えば、パソコンの入力業務は、実際に時間をかけて経験すればするほど技術が向上し、スピードも早くなります。「作業」は一定のマニュアルがあれば、判断することなく業務が遂行できます。このような業務は会社の業務の8割を占めていると言われています。残り2割が何らかの創造的な業務であり、判断を伴う「仕事」と言うわけです。その為、小さな会社の社長は自分自身で「作業」せずに「仕事」をしなければいけません。

例えば、パソコン会計の入力業務を時給1,000円のアルバイトがしても、月給60万円(時給5,000円)の社長がしても結果は全く変わりません。ところが社長の時給はアルバイトの5倍もしていることになかなか気がつかない社長が多いのではないでしょうか。

コストが5倍もかかっているからといって5倍の単価はもらえません。社長の一番大事な仕事は「仕事」のできる社員を育てることと、「業務」と「仕事」を明確に区分し、「業務」を標準化・マニュアル化して、パート、アルバイトを使いこなせる社員を育てることです。

社長が雑用に追われて、てんやわんやになっている会社、整理整頓されていない会社、社長が朝から晩まで怒鳴っている会社は根本から間違っています。社長の仕事は、どうしたら年間粗利1,000万円を最低確保する社員が育つかを考えることです。時間があるからと言って、パソコンにせっせと入力業務をしている社長、自分で法務局へ行って役員変更をしたと自慢しているような社長では会社は成長しません。時間があるなら時給5,000円の10倍も20倍もの「お金」を生み出す仕事をすべきなのです。


社員1人あたり年間粗利1,000万円を稼ぎ出す為に何を考えるべきなのか?

社員が1人あたり1,000万円を稼ぎ出す為にはいろいろな事を考えなければなりません。
例えば社員が10名いるのに年間売上3億円、粗利は2割の6,000万円しかないとします。1人600万円しか粗利がない会社を想定してください。経費は人件費とその他経費に区分するとほぼ40〜60%の間、平均50%程度です。仮に50%とすれば、人件費に使えるのは1人300万円しかありません。300万円から通勤費、社会保険料等の法定福利費約15%を差し引けば、実際の社員の年俸は255万円しかありません。これでは会社の雰囲気は暗くなってしまいます。平成19年度の中小企業の平均年収は430万円程度と言われていますから、最低1人あたりの粗利は860万円必要と言えます。
そこで第一段階として、1人あたり粗利860万円まで引き上げる事をまず絶対に追及すべきです。そこで考えられる方法は簡単には2つです。

1つは、6,000万円で10人ですから、3名の人員削減をして7名であれば、858万円となるので、上記の場合で会社が運営できる方法を考えることです。

次に、10名の社員を維持するなら、年間8,600万円の粗利をだすことです。それには2つ方法があります。1つは現状2割の粗利を維持するのであれば、売上を4億3千万円まで引き上げることです。次に売上3億のままでは、粗利を現状の2割から28%へ引き上げる為の商品・サービスの付加価値を創出することです。社長の本来の仕事とは、このように「一番イヤな人員削減や人の新陳代謝を促進したり、営業戦略を考えること」にあるのです。社長がパソコンの入力や法務局へ行ったり、商品を配送したり、荷物の上げ下げをしたりしていては決して「儲かる会社」になることではありません。そうした「単純軽作業・反復仕事」はアルバイトや新入社員にお願いすればよいでしょう。よく「忙しくて経営計画が作れない」「予定資金繰り表を作る暇がない」という社長に出会いますが、本末転倒です。社長にしかできない仕事、社長が最初にすべき仕事は「経営計画・資金繰り表の作成」なのです。

小さな会社ほど「忙中閑」を見つけ、会社が儲かるための「戦略、人事、標準化、作業工程の改善」につとめ、それを経営計画〜損益計画や資金計画までにまとめ上げ、社員のやる気を引き出す様々な環境づくりや給与体系まで落とし込める必要があるのです。


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