●今月の特集
中小企業を取り巻く環境は、常に危険と隣あわせで、安定した利益を計上し順調に成長の道を歩むことなどあり得ません。山や谷があることを十分に予想し覚悟される必要があります。これに備えて、利益と資金のことを常に考え、会社の経営計画を絶えず見直し、さらにその一環としての「資金計画」を立てるべきです。予想資金繰り表を作るためにも、過去の実績資金繰り表の作成が欠かせません。 実績資金繰り表は多くの会計ソフトから自動的に作成することができます。しかし、「初期設定等が面倒くさい」「銀行に提出する実績資金繰り表の作成を急に作る必要がある」「概算の資金繰り表でよい」等々の場合、月次決算書や試算表からも簡単に資金繰り表を作ることができます。 簡単に実績資金繰り表を作る方法 手順1 合計残高試算表〔月次決算書〕を用意する。 手順2 3ヶ月実績資金繰り表の書式を用意する。 それでは、合計残高試算表〔月次決算書〕を基に実績資金繰り表を作成していきましょう。 サンプル合計残高試算表〔月次決算書〕
手順3 非資金的取引の消去。 当月の 賞与引当金繰入 /賞与引当金 消費税引当金繰入/消費税引当金 各種引当金繰入 /各種引当金 減価償却費 /減価償却累計額〔直接法では備品等〕 の非資金的取引については、試算表から消去してください。 手順4 資金繰り表を計算で埋めていきます。 ◎前月繰越 いつでも現金化可能な現金・普通預金・定期預金・定期積金等の前月末の金額を合計入力してください。資金繰り表上、流動性預金のみが資金繰り可能資金として、前月繰越として表示されます。 ●営業収入 売上入金…以下の推定仕訳を考えてください。 1.現金 /売上 売掛金 2.現金 /売掛金 受取手形 3.現金 /受取手形 4.現金 /雑収入等 5.現金 /前受金 結果…資金繰り表の記入金額の計算式 ・現金売上 当月売上高 ― 当月売掛金借方となります。 ・売掛金回収 当月売掛金貸方 ― 当月受取手形借方となります。 ・受取手形取立 当月受取手形貸方となります。 ・前受金回収 当月前受金借方となります。 ・その他収入 営業外収益・特別利益の合計となります。 ※留意点 月次決算書で、売掛金/売掛金という擬制仕訳がされている場合、売掛金借方以下の売上が計上されていることになります。結果、現金売上がマイナスとなります。このような場合、最終的には、資金繰り表で、売掛金回収額 ― 現金売上として修正記入してください。仕入の現金仕入がマイナスになる場合も同様の処理をしてください。 ●営業支出 経費の支払い…以下の推定仕訳を考えてください。 1.仕入 /現金 買掛金 2.買掛金 /現金 支払手形 3.支払手形 /現金 4.人件費 /現金 預り金借方 /預り金貸方 5.販売費及び一般管理費/現金 未払金 6.未払金 /現金 7.支払利息 /現金 結果…資金繰り表の記入金額の計算式 ・現金仕入 当月仕入 ― 当月買掛金貸方となります。 ・支払手形決済 当月支払手形貸方となります。 ・買掛金支払 当月買掛金借方 ― 当月支払手形貸方となります。 ・未払金支払 当月未払金貸方となります。 ・人件費支払 当月人件費科目合計 ― 源泉預り金、各種引当金 等繰入は控除。 ・諸経費支払 当月諸経費 ― 当月未払金貸方〔給与月ズレの場合は上記人件費についても当月未払金貸方控除〕 各種引当金等繰入・減価償却費等は控除。 ・支払利息支払 当月支払利息・割引料となります。 ●財務収支 以下の推定仕訳を考えてください。 1.現金 /短期借入金 長期借入金 2.現金 /定期積金・預金 3.短期借入金/現金 長期借入金 4.定期積金・預金/現金 5.固定資産 /現金 6.仮払金・立替金・未収金等/現金 7.現金 /仮払金・立替金・未収金等 結果…資金繰り表の記入金額の計算式 ●財務収入 ・短期借入金収入 当月短期借入金貸方となります。 ・長期借入金収入 当月長期借入金貸方となります。 ・定期性預金取崩 当月定期性預金貸方となります。 ・貸付金回収 当月貸付金貸方となります。 ・仮払金戻り 当月仮払金貸方となります。 ・その他収入 上記以外の当月前払費用・立替金・前途金等の流動資産科目の貸方+当月仮受金等の貸方となります。 ●財務支出 ・短期借入金返済 当月短期借入金貸方となります。 ・長期借入金返済 当月長期借入金貸方となります。 ・法人税等支払 当月未払法人税等貸方+当月仮払税金の合計となります。 ・消費税支払 当月仮払税金貸方+当月未払消費税貸方の合計となります。〔法人税等の中間を除外〕 ・定期性預金預入 当月定期性預金借方となります。 ・決算資金支払 未払役員賞与・未払配当金の貸方合計となります。 ・固定資産等購入 当月有形・無形固定資産借方となります。 ・その他支払 当月前払費用・立替金・前途金等の流動資産科目の借方+当月仮受金等の借方となります。 ・次月繰越 いつでも現金化可能な現金・普通預金・定期預金・定期積金等の当月末の金額を合計入力してください。資金・流動・実績資金繰り表の作成は金融機関の融資申請に欠かせないものです。実績資金繰り表を12か月連続してつなぎ合わせれば決算概要が見えてきます。 営業収入計=売上高+雑収入営業外支出=原価+販売費−減価償却費+支払利息よって営業収入−営業外支出=差引営業収支は減価償却費+利益となるはずです。金融機関は資金繰り表から粉飾決算をすぐ見つけることができます。
生命保険の基礎知識 基本は定期保険と養老保険 生命保険の構成は、大きく定期保険と養老保険の2種類となっています。 定期保険には平準定期と逓減定期と逓増定期の3種類があります。また養老保険のうち男性の満期を105歳、女性の満期を108歳として保険料を計算したものをいわゆる終身保険といいます。 その他にも、公的サービスを補うものとして、年金保険や介護費用保険があります。 法人を契約者とした場合の税務上の取扱は原則以下となっています。 養老保険はいわゆる積み立て型の保険です。ですから基本的に保険積立金として資産に計上することが原則です。 また定期保険はいわゆる掛け捨ての保険です。ですから満期保険金というものはありませんので、基本的に保険料という経費で落とせます。 しかし現実は複雑です。 養老保険も福利厚生目的であれば、保険料の2分の1を経費として認めることや、満期保険金の受取人が法人でない場合には、その受取人の給与になる等、その取扱は複雑です。 逆に、定期保険でも長期平準定期保険や、逓増定期保険については、満期保険金はありませんが、解約返戻金といって、解約すると今まで支払った保険金の80%〜90%が戻ってきますので、様々な条件がついてしまいなかなか経費として処理することを認めていません。 法律は変っていませんが、その解釈については様々に変遷をしてきているのです。 現在も進行中です。 国税庁は昨年の12月26日にホームページで、逓増定期保険の取り扱いに関する法令解釈通達の変更に関する意見を公募しています。 現在もその解釈をめぐって税務当局と保険会社の攻防が続いているようです。 中小企業の資金調達方法あれこれ 急速な景気悪化を受けて、政策公庫のセーフティーネット貸付の拡充、自治体の制度融資枠の拡大や融資条件の緩和等が実施されていますが、資金調達には次の方法もあります。 少人数私募債 社債の一種ですが、大企業のように不特定多数を引受先とするのではなく、身近な少人数の縁故者(役員及びその親族、従業員、取引先等)に直接引き受けを依頼するものです。特徴は次の通りです。 (1)取締役会の決議で発行でき、発行金額、償還期間や利率を自由に決められます。 (2)無担保、社債券の発行不要、官庁への届出義務もなく、比較的簡単に発行可能です。 (3)募集できるのは49人まで、社債1口の最低額が発行総額の50分の1より大きいこと、など一定の制限があります。 (4)定期預金利息よりも高い利率を設定することなどで、従業員の福利厚生制度としても活用できます。 (5)利息は20%(所得税15%、住民税5%)の源泉分離課税ですので、確定申告の必要はありません。社長個人からの借入金があれば、少人数私募債に切り替えてもよいでしょう。 (6)社債利息の一部に対し、補助金を支給する制度のある自治体もあり。 流動資産担保融資(ABL) 不動産以外の動産(在庫、機械設備等)・債権(売掛金等)など流動性の高い資産を担保として融資を受ける制度です。不動産担保や第三者保証に依存せず、事業収益の源泉となる様々な資産を資金調達に活用できる制度として期待されています。 また、昨年、中小企業信用保険法が改正され、担保対象に売掛債権のほか、商品・製品、原材料等の棚卸資産が追加され、信用保証協会において「流動資産担保融資保証制度」が取り扱われることとなりました。 棚卸資産の場合、簿価の30%までが融資限度額とされていますが、金融機関との協議次第で最大70%まで引き上げが可能です。必要に応じて、取引金融機関にお尋ねいただくと良いでしょう。 どちらが得か?税込経理と税抜経理 選択はいつでも任意 消費税の経理処理としては、税込経理と税抜経理どちらの方式を選択してもよいことになっています。 そして、どちらの方法を選んでも年間に納付すべき消費税の金額は同じになります。 また、税込経理でも、期末で確定する消費税の額を未払金として計上すると、税抜経理の時の会計上の利益の額と、基本的には同じになりますので、損得はありません。 ただし、税込経理、税抜経理という経理方法自体にはそれぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。 例えば税込経理では・・・ 《デメリット》 ● 交際費損金不算入額が大きくなり不利。 ● 償却資産税の課税標準が大きくなり、税額も増加するので不利。 ● 少額減価償却資産等の30万円(または20万円or10万円)未満の判定では不利。 《メリット》 ● 特別償却や税額控除の判定では×××万円以上という要件が多いので有利。 ● 売上金額を大きく見せるのに有利。 ● 経理処理方法が簡便なので有利。 ● 控除対象外消費税が生じないので、その知識が不要につき有利。 損得が著しいケースとは 高額な資産、例えばマンション一棟買いをした場合などを想定してみましょう。 税込価格10億5千万円で取得、減価償却計算の基準となる建物の耐用年数を50年とします。するとそれぞれ以下のような処理となります。 <税込経理の場合> 建物10億5000万円 /現金10億5000万円 未収金5000万円 /還付消費税5000万円 減価償却費2100万円/建物2100万円 <税抜経理の場合> 建物10億円 /現金10億5000万円 仮払消費税5000万円 / 減価償却費2000万円 /建物2000万円 減価償却費と還付消費税を考えると 税込経理の場合、消費税還付金5千万円が収益として処理され、法人税・所得税計算上、課税所得となります。逆に、減価償却費が増えて、当初の課税を後の耐用年数期間で取り戻していきます。長期的には損得ないことになりますが、金利的・資金計画的には明らかに損です。 高級絵画を購入した場合を想定すると、絵画は減価償却できませんから、売却するまで消費税部分は費用にならず、売却がないとすると、永久に取り戻せません。 (提供:デイリーコラム)
決算書を読めるようになるには・・コツは「大きな目」 社長から、「決算書がよくわからん」と言われます。確かに、損益計算書は上から足し算と引き算で理解しやすいのですが、貸借対照表は簿記や会計を少しかじっていないと理解しづらいと言えます。では社長はきちんと簿記や会計を勉強しなければいけないのでしょうか。そんなことはありません。筆者の知る限りでも、簿記に知識のない社長が、しっかり貸借対照表を理解し、経営判断に活用されています。 そのような社長の共通項は何でしょうか。筆者は、そのような社長は、「大きな目」をもっておられると思います。「大きな目」とは、細かいことではなく、まず決算書を大きく見ることができるかどうかです。まず損益計算書は、売上原価・売上総利益、人件費、営業利益、経常利益の5つの数字を見ます。次に、懸念の貸借対照表ですが、まず現預金残高を見ます。現預金残高が純資産の部以上か以下かを見て、その差額を理解します。銀行の融資姿勢が厳しい現在、現預金の残高を確認することが大事です。次に、売掛金と在庫を見ます。これを前期・前月と比較して増減を見ます。増加していれば危険信号ですので原因をよく調査し、売掛金と在庫を減らす計画を立てましょう。次に固定資産÷固定負債+純資産の部を計算し、可能な限り低くする努力をします。これが100%を超えれば倒産は近いです。最後に、純資産の部、自己資本と呼ばれていますが、資産に対して何%かを計算します。当たり前のことですが、限りなく100%に近い方が、会社は倒産しません。借金がないのですから。 結論・・決算書を読める社長は細かい数字よりも前に「大きな目」で決算書を見ています。まず、決算書の大きな数字、ポイントを見る訓練をするべきです。 決算書の読めない社長は、海図の読めない船長と同じ 「社長にとっての決算書」とはよく「船長にとっての海図」や「登山家にとっての地図」に例えられます。海図や地図は何処かに行くときに絶対必要なものです。ですから、経営という人生最大のリスクを賭け、たった1人で荒海に乗り出した社長が決算書を読めなければ、経営をどうしてよいのか分からず、100%難破するのも当たり前のことかも知れません。人には得意分野がそれぞれあります。成功している会社を見れば、営業・技術・経理の3本がしっかりしている会社が多いのは頷けます。オムロンの陣川公平氏は、まだ町工場にすぎなかった立石電気に入社され、企業経理・財務の優れた業績を残されました。若き日の筆者は、陣川先生の著書を頼りに経理・財務・経営管理を無我夢中に学んだ経験があります。その影響かも知れませんが、京都の企業、例えば、京セラやワコール、任天堂等は経理・財務がしっかりしている印象があります。ライブドアなどの新興企業が破綻したのは、言葉の真の意味で、経理や財務を大事にしなかったからだと思います。いくら営業や技術があっても、正しい決算書の持つ意味をしっかり理解できる社長でないと破綻はすぐにやって来ます。特に、業種別に見ると、飲食・小売業は現金商売でどんぶり勘定になりやすく、建設業は原価管理と進捗管理、不動産業は好不況対策としての利益の平準化と日銭稼ぎの仕組み作り、卸売・印刷業は売掛回収管理と在庫管理、製造業は原価計算と在庫管理、といったそれぞれ業種別の危険度を理解した経理体制が必要です。経理を経営に活用するには、まず社長が決算書を読めるようになるべきです。会社を起こそうと思う人はまず経理を勉強して決算書が理解できるようになりましょう。
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