会計事務所と顧問先をむすぶCLUE 第125号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『経営支援・徒然帖』
 経理・税務・・・ 『できる人の税金滞納法』
 経営・財務・・・ 『危ない会社を見抜く…実践財務分析』





 今月の特集

経営支援・徒然帖

平成20年年末を迎えて、中小企業は厳しい試練を迎えています。原料高による原価率の上昇、公共事業の削減や人件費下落による消費の激減、世界同時不況、これらの原因による歯止めのかからぬ売上減少、さらに止めを刺すかのような金融機関の貸し渋り。新聞、テレビ、雑誌の見出しに、倒産・不況の文字の躍らぬ日々はありません。このような状況の中で中小企業の経営者の皆さんはピンチをチャンスに変えるべく、(聞き耳をそば立て)経営のかじ取りを間違えないでください。


不況こそ新たなビジネスチャンス

日経平均株価が1万円を割り、米国平均株価が1万ドルを割り、世界同時不況がいよいよ現実味を帯びてきました。今回の世界的不況、最初の原因は、米国の不動産バブル・・・サブプライム問題ですが、日本のバブル時と同じく、不動産の下落・金融機関の倒産・信用収縮・実態経済の縮小・リストラ・解雇・賃金下落・消費減退・不況という循環に陥りつつあります。世界市場にがっちり組み込まれている日本にとっても、米国の不況は、直接には輸出産業の不振に始まり、米国市場に向けて世界一の工場となりつつあった中国やインド経済も失速し、結果日本に跳ね返ってくる事態になりつつあります。もちろん大恐慌時と違い、世界銀行や各国の協調システムが作られており、公的資金の注入による金融システムの保全や資本注入もされるでしょう。しかし、実態経済の悪化は、内部留保、資金力に乏しい中小企業が2年程度耐えられるかを問うています。

中小企業では、昨年7月頃から金融機関の貸出姿勢に変化がみられ、10月の保証協会の8割保証以降、平成20年に入り、一層の選別融資が始まったという実感があります。つまり、お金や担保力があり、業績も良い中小企業への積極貸し出しに対し、不動産・建設・運輸行等の不況業種や自転車操業的な資金繰りをしている会社へ資金が全く流れない構造が進行しています。

(1)月次試算表の現預金残高が1か月分の販売費・管理費以下の会社。
(2)前期より売上、売上総利益、営業利益が2割以上減少している会社。
(3)月商の6倍以上の借入残高のある会社
(4)(借入金−預金)÷(営業利益+減価償却費)が10年以上の会社。
(5)債務超過、2期連続赤字決算の会社。

上記に該当する会社の資金調達は厳しくなっています。

次に景気実感で見ますと、不動産業・建設業等は全く資金が流れず、新規案件がないと聞きますが、飲食・小売は商売の原点を守り、しっかり商売をされている所は、前期より売上が増加している所も結構あります。不動産でも、首都圏ではマンション価格が下落したことにより、年収250万円程度の方々でもローンが組め、中古マンションを35年ローンで購入した方が現在の家賃より安いとのことで結構売れているそうです。不況をチャンスととらえ、新たなビジネスモデルに挑戦するぐらいの前向きな経営姿勢を持つことも必要ではないでしょうか。これから暮れにかけて厳しい時期に入ろうとしていますが、まずは自社の商売の原点、顧客中心主義で、商品力、技術力、サービス力を点検し、会社のモチベーションを挙げることを最優先すべきではないでしょうか。


資金調達をスムーズにする方法

前述しましたが、銀行からの資金調達が厳しくなっています。スムーズに銀行から資金調達するためには財務・経理の力がいります。資金調達の手立てとしては、創業間もない企業は、まず第一に10月から組織変更した日本政策金融公庫や保証協会付き融資を使い、3年以上業歴のある会社は三井住友銀行等が手掛けているビジネスローンや銀行の無担保のプロパー融資を獲得したいものです。そこで必要な段取りを準備しておくことが肝要です。

(1)最も重要なのは直近の決算書です。銀行審査の8割方は決算書の審査です。営業利益・経常利益・税引き後利益が黒字であり、債務超過でないこと。中小企業では税金対策で赤字にしたり、役員報酬を多額に取り、利益を少なくしている企業は、資金調達には不利になることを知っておかれた方がよいです。また、決算書については当社(株式会社プロフィット)でも販売している金融機関格付ツール等を使用し、自社の金融機関格付を行い、銀行からの見られ方を知り、問題点を改善することが必要です。銀行は利益と減価償却費をしっかりと見ており、返済可能年数が10年を超えたら極端に審査が厳しくなることを知っておきましょう。

(2)経営計画、特に年間予定資金繰り表をつくり、実績の数字を追いかけている企業には銀行は安心して貸しやすいのです。経営の先行管理をしていれば、経営のかじ取りを間違える率が低いからです。借入金が全額返済可能な10年程度の長期資金繰り表があれば更に万全です。

(3)法人税・道府県民税はもちろん、消費税・源泉所得税等の納税はしっかりしておくことです。融資には納税証明書が必要な場合がほとんどです。税金滞納は資金調達の致命的な傷になります。

金融機関格付


借りることよりも返済期間を 延長してもらう

平成20年の年末にかけて、銀行融資は一段と厳しく、不況も進行することが予想されます。資金繰りが厳しくこのままでは倒産してしまうと危機感をもっておられる経営者も少なくはないはずです。まず、はっきりしなくてはならないのが、「資金繰りではなく利益が出ているか」です。

資金繰りが回らないので赤字覚悟で仕事を受注しているなら本末転倒です。まず経理をしっかりさせて月次決算を早期提出させ、会社が赤字か黒字か早く、はっきり知ることが出発点です。会社が赤字なら、たとえどんな融資を受けてもいずれ倒産します。黒字であれば、資金繰りは何とでもなります。
まず、黒字経営ですが、借入返済資金が足りなくて月末資金不足が起こったら、新規融資を申し込みます。並行して、遊休資産の売却等も進めておきます。この場合、絶対してはいけないことは、

(1)商工ローンや消費者金融に手を出してはいけません。これらは金利が高く、表に出せないので社長個人が借入をしている場合が多く、金利が会社の支払利息にならない場合は、税金が課税されます。冷静に考えれば、20%近い高利を支払って成り立つ商売などありません。

(2)人件費の遅配や買掛金の未払い。社員の給与の未払いは労務倒産を引き起こす可能性があり、買掛金の遅延は仕入れができない可能性を起こします。何よりも信用失墜は必至です。ではどうすればいいのでしょうか。思い切って、銀行に返済条件の変更をお願いすることです。

毎月黒字経営にもかかわらず過去の銀行返済が厳しい会社は、返済条件を変更してもらうことで資金難は解決するはずです。毎月300万円返済していたものを100万円に減額してもらえれば、5年融資と考えても、月200万円×60回=1億2千万円の融資を受けたと同額の効果があります。もちろん、「ああそうですか」という銀行は少ないでしょう。ポイントは、会社の資金繰り表、経営計画を作成し、経営改善をして、「今後このような予定で返済しますので、1年間は50万円返済、2年目以降は100万円返済で」とお願いしてみることです。新規融資は難しくても、条件変更では返済期間が延びるだけであり、金融庁も中小企業への貸し渋りはやめてくださいと言っているそうなので、銀行も話にのりやすいと思います。もちろん約束を破ったわけですから、お詫びをし、直近の月次決算書・中期資金繰り表・経営改善計画書の3点セットを作成して社長が銀行に頭を下げ、経営改善を実行する必要があります。もちろん条件変更中は新規融資が一切不可能ですから、無借金経営の覚悟を据えた経営をしていくことは言うまでもありません。銀行の方も会社が倒産してしまえば元も子もないので協力してくれるはずです。筆者の経験では、自宅以外の換金性のある不動産を売却したり、経営改善したり、条件変更をした企業の方が、お金を大事に管理するようになったケースが多々見受けられます。どんぶり勘定経営を改善するいい機会かも知れません。
条件変更には2か月程度かかりますので、決断するのであれば早い方がいいでしょう。銀行によっては、「今月分はちゃんと返済してください、今月の返済がないと本部へ稟議がかけられないので」という銀行も多いです。条件変更は顧問税理士等の専門家の意見をよく聞いて実行して下さい。


◎◎緊急速報◎◎

保証協会 審査緩和か
資金繰りを応援する、緊急保証制度が、10月31日からスタート。

政府は景気低迷、貸し渋り対策として、緊急保証制度を10月31日よりスタートさせました。制度の概要は、

【対象】
指定業種545業種に属し、売上減少等について市町村長(東京都は区長)の認定を受けた中小企業者

【効果】
2億8千万円(うち無担保8千万円)までが別枠で保証可能
責任共有制度の対象外(保証協会が100%保証)

【期間】
10月31日から1年半。この間6兆円の利用を想定

▼対象業種は3か月に1回見直し。

▼審査に当たって、中小企業の経営実態を勘案すること。

▼対応・審査に不満があれば、経済産業局等の緊急相談窓口で徴取・対応。

▼要件
 過去3か月平均で売上前年比−3%
過去3か月の平均仕入価格が前年比+10%以上、販売価格の上昇率が仕入価格の上昇率の50%以下。

▼手続き
 市町村等の商工窓口で、認定申請申請書を入手。

▼必要書類
・会社登記簿謄本 (3か月以内に発行されたもの)
・法人事業概況説明書(税務署の受付印のあるもの・コピーで可)
・今期と前期の月次試算表(税理士等の確認印があるもの・コピーで可)

【 注意点 】
(1)試算表の1枚ごとに税理士の押印が必要となっています。
(2)不動産・建設業等も融資対象になっています。
(3)資金繰りが厳しい、融資が困難、年末資金がいると思われる顧問先は、混雑や審査の厳格化がありますので、できるだけ早急に申請されることがいいかと思います。

・その他、市町村、区等によっては、小規模企業向けに500万円程度の融資に利子補給行い、金利が0.1から0.6%の低利率融資あっせんを実施しています。

 本店所在地の市町村・区役所等のホームページで検索されてみてはどうでしょうか。





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できる人の税金滞納法

税金を払う金がない!!と思ったら

このところの不景気で売上が急激に伸び悩み、資金繰りが急激に悪化している会社は御社だけではないと思います。そういう中、税金を滞納してしまい税務署から督促状が届いてしまった会社も意外に多いのではないでしょうか。法定の納期限から1ヶ月経過しても税金が納付されない場合、税務署から督促状が送られてきます。督促状には差し押さえをする場合もあると書かれています。払えるものならすぐに払った方が良いのは当然ですが、それができないのが現実です。


さて、どう対処すればよいでしょうか?

まず税務署に督促状を持参して相談に行くべきです。忙しい場合は、税務署に電話をかけて担当官にアポイントをとっておくとよいでしょう。税務署での税金の納付相談は、けっこう親切に対応してくれます。
滞納している会社は、滞納額を正確に把握していない場合が多いようです。

滞納額がはっきりと分からない場合は、税務署に滞納税金目録を発行してもらってください。その上で滞納額を把握し、支払について納税の管理課等へ行かれると良いかと思います。

滞納した税金の支払いは、どの税金を優先的に支払うのかが最も重要です。延滞税には延滞税はつかないので、本税から支払っていくということがポイントです。そして、税務署に対しては納付できない合理的な理由を伝えて下さい。例えば「○○社からの入金が遅れているため」、「突発的な○○の支払いがあったため」と説明できるようにしておくことが必要です。

それと、今後の納付計画を書面等で提示することも必要です。通常は一括払いが原則ですが、分割払いの相談にも応じてくれます。ただし分割期間は6か月が最大のようです。これ以上の延長はなかなか応じてもらうのが難しいので注意してください。

税務署での納付相談は、相談内容を記録しておくと良いでしょう。税務職員と話し合った事項について後でお互いズレが生じた場合は、この記録で立証することができます。日付、担当者名、内容を書くようにしましょう。記録をとっていない場合の『言った』『言わない』の水掛け論は避けたいところです。納付相談の際に顧問税理士に同行してもらうと気分的には安心できるのではないでしょうか。

なお、滞納税額が1千万円を超えると管轄は税務署から国税局に移ります。その場合は国税局と相談という形になります。


では差し押さえはどのように行われるのでしょうか?

税務署からの督促状を受けてもなお納付しない場合、さらに税務署から文書などで催告されるようになります。その催告をほうっておくと、現金預金・売掛債権・土地建物などの差し押さえの措置が行われます。法人口座が差し押さえされれば、入出金の自由が失われ従業員や取引先への支払いに支障をきたしたり、取引金融機関から借り入れができなくなる可能性が出てきます。

売掛債権を差し押さえされるということは、税務署がお客様に対して回収に入ることになります。当然お客様に迷惑がかかり、会社の信用に傷がついてしまい取引が停止する可能性もあります。また、事務所の保証金や敷金を押さえられることになれば、大家へ回収に入ることになり、事務所を追い出されかねないということで、今後の経営にも影響が出てしまいます。

昨今では、金融機関から借り入れをする場合は、納税証明書の提出は必ず求められてきます。法人税・事業税・消費税等を完済していなければ納税証明書を手に入れることはできません。よって税金滞納分の支払いを理由に金融機関から借り入れをすることは非常に困難です。ただし、政府系金融機関の一部では、税務署と話し合いがなされ、その条件どおりに滞納税金を支払っているのであれば融資可能としているところもあるようです。


差し押さえは税務署だけとは限りません

公的権力として差し押さえを実行してくる機関は税務署だけではありません。

これだけの機関があります。

・都税事務所…法人都民税、法人事業税
・区役所、市役所…法人住民税、従業員の住民税、固定資産税など
・社会保険事務所…健康保険料、厚生年金保険料
・労働基準監督署…労災保険料、雇用保険料


税金滞納も利息がかかってきます

会社は原則として事業年度終了後2ヶ月以内に法人税、法人住民税、法人事業税、消費税等の確定申告をし、税額が算出されればその税金を納付しなければなりません。もしそれが出来ない場合は、借金の利息や契約違反の罰金のように付帯税がかかってきます。

税金延納に関する付帯税には、延滞税・利子税・不納付加算税があります。

a)延滞税とは

税金の一部、または全部を滞納、納付期限までに納税しない場合に課せられるのが「延滞税」です。
延滞税は原則的に、納付期限の翌日から完納された日までの日数に応じて年率が決められていて、納期限の翌日から2ヵ月までが、前年の11月30日の公定歩合+4%で、平成20年は4.7%となっています。また、納期限から2ヶ月以上経過した場合については14.6%と決められています。

b)利子税とは

法人税で、申告書の提出期限の延長が認められた上で税金を滞納した場合は、延納日数に応じて延滞税ではなく課されるのが「利子税」です。
利子税の年率は、延滞税の2ヵ月以内の納付と同じ前年の11月30日の公定歩合+4%で平成20年は4.7%となっています。

c)不納付加算税とは

正当な理由がなくて源泉徴収により納付すべき税金を納期限までに納付しなかったときに課せられるのが、「不納付加算税」です。
不納付加算税は、「不納付税額×10%」で計算されます。ただし、調査等で見つかったから納付ということでなければ5%の割合での課税となります。


まとめ

税金を滞納した場合、一番まずいのは、滞納したまま何もしないことです。何もしなければ、差し押さえされてしまいます。まず、税務署へ連絡し納税する意思を表明することが大切です。そして何より決算前に事前に年間の税額をシミュレーションし、納税資金を準備するに越したことはありません。





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危ない会社を見抜く…実践財務分析

企業の実態をつかむ代表的手法の一つが、決算書を使用した「財務分析」です。ポイントは業種や事業内容で異なりますが、まず確認したいのが「危険数値」がないことです。年1回の健康診断を受けている人も多いと思いますが、診断結果はAからEまであり、結果が悪いと二次検査を受けることになります。それと同じように、年2回の決算書が出来上がったら、会社の健康診断を受けたいものです。


会社の経営成績を記した決算書。安全性指標を分析していけば、倒産の危険度が見えてくる。

●自己資本比率…純資産の部÷総資本

会社の総資本に占める自己資本が高いほど、会社の財務体質が安全であることは言うまでもありません。この数値は、建設・製造・飲食・小売り等の装置産業よりサービス業の方が高いです。自己資本比率がマイナス「債務超過」や1桁台なら要注意です。銀行借り入れも難しくなり、倒産の危険性は高いです。

●流動比率…流動資産÷流動負債

支払能力を見る代表的指標。一般的に200%あれば良いとされます。この数値が100%以下の企業は要注意。買掛金・未払金や短期借入金の返済能力が不足していることが多いです。

●固定比率…固定資産÷自己資本

100%以下であれば、建物、土地等の固定資産が返済の必要のない自己資本で賄われている安定的な状態。設備、車両、備品や保証金等が必要な中小企業には不可能な話です。その場合、比較的安定的な長期借入金等を加算した以下の固定長期適合率で見ます。

●固定長期適合率…固定資産・投資等÷固定負債+純資産の部

限りなく小さい方が、固定資産に対して返済の必要性の少ない固定負債で賄えていて財務体質が良いとされます。この数値が100%を超えた場合、固定資産を短期資金で購入したことになり、資金繰りを圧迫するので、要注意です。

●売上高経常利益率…経常利益÷売上高

収益力評価の代表的指標 業種別に異なり、同業他社との収益力評価に使います。安全性分析にも会社の継続性を考えれば、稼ぐ力がなければ企業の安全性を担保できません。


同業比較で企業の実態をつかむ

同業他社と比較すると自分の会社の良し悪しが見えてきます。(株)プロフィットで発売している「決算・資金診断・金融機関格付」では、中小企業庁の900種以上の業種と決算数値が比較・分析できるようになっています。成長力・収益力・活動力・支払能力・安全力・生産力の大区分6区分と、12区分の小項目で同業他社比較できるようになっており、自分の会社のどこが優れ、どの点が弱点か一目で分かる仕組みになっています。

▼サンプル会社(下図参照)
・サービス業・会計事務所
・強み…自己資本比率・総資本経常利益率・売上高経常利益率・当座比率・人件費対売上高比率。 サンプル会社は、同業他社と比較すると、収益力と支払能力及び安全力に優れている。
・弱み…総資本回転数が低いこと。これは古い会社に多い傾向で、会社の総資産が多い割には、売上額が少ないということ。企業の資産活用力が低い。また、1人当たりの粗付加価値額が低く、生産力に問題がある。



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