●今月の特集
8月〜12月が税務調査の本番です 税務署の年間予定は、7月に人事異動があり、前任者からの引継ぎと新しい職場での調査計画等で1ヶ月は調査を開始しません。7月中は、顧問先の選定(第一章で記載)等、本格的な税務調査のための準備期間に当てられます。その結果、本格的な税務調査は8月のお盆明けから始まることになるのです。もちろん税務署は国の機関ですから、税務調査にノルマや成功報酬といったものはないでしょうが、増差所得(税務調査の結果、修正等で増加した税額)の目標、五冠王(法人税は当然として、消費税、源泉所得税、印紙税、重加算税等)の税目の多さが評価され、結果、税務署職員の昇進等につながるようです。8月〜12月の間でほぼ八割の税務調査の目標を消化していないと、1月〜6月までの期間は大変です。なぜなら、1月は正月明けで2月15日の確定申告前までが税務調査のできる時期になります。人情としても年明け早々の税務調査は、法人・個人問わず不機嫌極まりないでしょう。2月16日〜3月15日までの確定申告の時期は顧問税理士が忙しく、よっぽどのことがない限り税務調査は自粛します。ただ2月前後は飲食・小売り等は2.8(ニッパチ)といって一番売上げが落ちるときですので、現金実査を伴った、抜き打ち調査がある時です。 3月16日〜5月上旬までに税務調査を終了しておかなければ、6月末までの移動に合わせた引継が不可能となります。このような年間スケジュールを冷静に考えると、八月初旬に各人に調査目標件数が割り当てられますので、12月までに8割は調査を終了しておかないと年間目標件数をクリアできないということがよく分かります。 第1章 税務調査先はどのように決定されるか? 調査先の決定は最終的には、税務署の統括(通常の会社の課長職)が決めますが、一般的な任意調査においては、次のような業種やケースに当てはまる納税者が調査対象として選ばれやすいと言えます。 (1)業績が特に良い業種 確実に調査があります。業績が良いと負担税額が多くなります。業績が良い納税者はそれだけ重税感を持ちやすくなるので、ごまかしたくなるのでは、という理由によるのでしょう。 (2)不正申告の割合が高い業種 過去の例から、他の業種に比較して不正が多かった業種は調査の対象になりやすいと言えます。パチンコ店やバー・クラブ・不動産業・建設業などがこれにあたります。 (3)過去に不正行為があった納税者 税務署は調査の度に、調査記録と会社の納税態度の評価をします。前回の調査時に不正行為があって修正申告していたり、営業活動していながら申告のなかった場合は、調査が多くなります。 (4)今まで黒字であったのに赤字になっている場合 赤字をはじめて出した、または2期以上赤字申告が続いている会社。赤字の原因が不自然と考えられるとき (5)財務諸表に異常な数字がある場合 事業規模が同じ程度の同業者と比較して、その利益率が目立って低いとき。売上や仕入れなどのバランスが悪い場合や、逆に財務諸表がきれいに出来すぎているとき。 (6)その他 税務署に情報の提供があるケース等。経理担当者を解雇した場合は要注意です。 税務調査の実地調査の状況(調査があると70%以上修正となる) 国税局の発表によると ◎最近の年度においては、不正計算が想定される法人など調査必要度の高い法人14万3,000件について実地調査を実施。 ◎実地調査を行った法人のうち何らかの非違があったものは10万4,000件で73%。 ・仮装、隠蔽による不正計算のあったものは3万1,000件。その不正発見割合は21.7%。 ・法人税と同時調査を行った消費税の調査件数は13万件で、そのうち何らかの非違があったものは6万8,000件。 ※税務調査の日数は何日ぐらいか? 日数は1日〜2日が一番多いようです。また、調査にあたって、事前通知あり・なしも示しました。税理士会のアンケートでは以下になっています。(平成17年十1月)
◎最近の税務調査の傾向と留意項目は? 最近の法人税調査は、95%に事前通知があり、85%は税理士に通知がありますが、5%は事前通知なしに行われます。調査日数は、2日間が多く、84%は4日以内に終わります。調査の結果は、75%が何らかの修正があり、悪質な重課税処分がその内21%であるというのが平均的な税務調査のパターンのようです。(東京税理士会税務調査アンケート) また、調査修正項目では(1)費用(2)売上・収益(3)利用資産等(4)その他資産の計上誤り、の順で多いようです。最近の税務調査の主な留意点を挙げると次のようになります。 第2章 税務調査の重点調査事項 1.法人税の要注意事項 (1)現金 現金の調査は約9%の確率で実施され、現金の実際有高を実査し、帳簿残高と突合します。この作業で両者が一致しなかった場合、調査官は記帳全体の真実性に疑問を持ちます。さらに金庫の中の、ハンコ、鍵、プリペイドカード等の使われ方や、所有者等で不正の手がかりを見つけようとします。例えば、ハンコがあれば調査官は、そのままハンコを押して、よく使われて朱肉が残っているものの使用理由を追求してきます。 (2)預貯金 決算書に計上されていない「隠し口座」等のチェックがされます。税務調査では、事業所や代表者の住所近辺の金融機関に関係口座の内容等を問い合わせ、「隠し口座」が無いか確認することがあります。 (3)卸商品、仕掛品等 期末近辺で購入した商品等が計上されているかチェックします。特に、製造業やサービス業等で人件費部分の仕掛品計上を忘れがちなので注意しましょう。 (4)有形固定資産 期中の資産の増減と減価償却、用途等がチェックされます。購入、売却時の価格や付帯費用が適正処理されているか、除却時は除却の要件を満たしているか等です。減価償却では使用開始は何時か、耐用年数は適切か、等チェックされます。 (5)役員借入金 借入の裏づけをチェックします。借入の原資はきちんと役員の資金から出ているか、売上の計上漏れを借入としてないか、社長個人に財産が不当に移転してないか等が確認されます。 (6)売上 売上の計上漏れが無いかは調査の大きなポイントです。期末の締め後の売上が計上されているか、今期に計上されるべき売上が翌期に繰延べされていないか等、翌期首近辺の売上が徹底的に調査されます。 (7)人件費 支払額が妥当か、架空の人件費は無いか、源泉所得税の納付書記載総額と一致しているか、非居住者等の源泉徴収が妥当か等チェックされます。 (8)保険料 養老保険等の一部が資産に計上されているか、保険会社の証明書と合致するか、さらに給与、福利厚生費になるもの等の区分が適正かチェックされます。 (9)交際費 費用の修正項目の中で一番多いのが交際費です。会議費等他科目に混入している交際費は無いか、通常要する額を超えていないか等必ずチェックされます。 (10)広告宣伝費 不特定多数の者を対象にしているか、前払費用や貯蔵品、繰延資産になるものはないか等チェックされます。 (11)改正税法関係 同族会社の給与所得控除の損金不算入、減価償却の特別償却、耐用年数の適用が妥当か等チェックされます。 2.消費税の要注意事項 消費税はある程度の売上規模があれば、必ず数100万円単位で納税が発生します。さらに、年間売上5,000万円以下の簡易課税事業者は別として、原則課税はどうしてもミスが発生しがちです。その為、調査の内容も細かくなってきます。 消費税の処理については、解釈の相違などで争う余地が少なく、処理が正しいか否か、課税か課税対象外か、結果がはっきりしています。金額が数千円程度でたまたま間違えたというような場合には指導扱いとなることもありますが、2万〜3万円レベルの金額になると修正申告を要求されます。 税務調査では、経費にかかる消費税の処理について課税対象外のものを仕入税額控除していないか、というような基本的なところを細かく見られます。 具体的には、交際費や福利厚生費の中の香典・見舞金・祝い金、商品券やビール券などが課税仕入になっていないか、また手数料勘定のカード手数料、福利厚生費で処理している退職掛金・共済掛金が課税仕入になっていないかなどが挙げられます。 その他、海外取引がある場合には、海外出張旅費や現地経費の処理が課税仕入になっていないか、輸入の場合の運送業者に対する支払いの処理(課税と課税対象外が混じっているケースがほとんど)がきちんとされているかなども細かくチェックされます。 消費税は一件当りの金額は少額ですが、大量に反復継続するものについて誤りがあると金額がかさんでくるので、基本をしっかり押さえておく必要があります。 3.源泉所得税の要注意事項 源泉所得税も消費税と同様に赤字でも発生するものですので、念入りな調査が目立ちます。 (1)給与等からの源泉徴収漏れ 調査官はひと通り賃金台帳と年末調整の資料について確認します。特にアルバイトやパートが多い会社は、扶養控除等申告書の提出のない人については源泉徴収漏れを指摘されるケースがあります。扶養控除等申告書の提出があって初めて税額の低い甲欄が適用できるのです。乙欄で源泉していれば問題ありませんが、実際は甲欄を適用していることが多いのです。また、外国人労働者の源泉課税漏れも厳しくチェックされているようです。 (2)報酬等からの源泉徴収漏れ 日常的に報酬等の支払いがある場合を除き、中小企業ではいわゆる「所得税法二〇四条の報酬、料金」に対する源泉徴収がされていないケースが目立ちます。弁護士やデザイナーなど、請求書に源泉所得税の金額が明記されていなくても、支払い側に源泉徴収義務があるので要注意です。 4.印紙税の要注意事項 印紙税は法人税や消費税に比べて軽視されがちですが、必ずチェックされます。税務調査では契約書等の提示を求められますから、印紙が必要な文書か否か、消印はしてあるか、金額(税額)は正しいかを確認しておく必要があります。貼り忘れ等があった場合には過怠税(最高で不納付税額の三倍。過怠税は損金不算入)が課せられることになっていますが、悪質でない限り実際は1.1倍の納付になるケースが多いようです。 印紙税に関しては反復・継続して大量に脱税していない限りは、それほど大きな問題とはなりませんが、日頃から正確な処理を心がけたいものです。
経営者は変わることができるのか? 中小企業の資金調達が非常に厳しくなっています。特に業種別では、運送・建設・不動産業への金融機関の融資は一段と厳しくなっているのが実状です。 平成20年8月現在、各金融機関の融資は、平成19年10月から始まった保証協会付き融資の部分保証制度の導入により、保証協会付き融資の斡旋にも慎重な姿勢を取り始めています。また、無担保・無保証のいわゆるビジネスローンが、都市銀行では、みずほ銀行、りそな銀行、中央三井信託銀行に続いて三菱東京UFJ銀行も撤退し、唯一残っている三井住友銀行についても、原則的には運転資金の融資は行わない等により、実質折り返し融資が全面ストップしているようです。 唯一の朗報は、国民生活金融公庫の無担保・無保証融資が2,000万円枠から4,000万円枠まで拡大されたことでした。この融資については、上乗せ分の2,000万円部分については、これまでの第三者保証人融資ではなく、社長のみの連帯保証人融資であり、金利は通常の金利に0.65%上乗せとなるようです。(平成20年8月1日現在2.55+0.65の3.2%)しかし、この融資上積み制度は、審査基準がこれまでの国金融資と比較して、大変厳しく、他の金融機関で融資を断られた企業では審査に通りそうもないことが実態のようです。公共事業の削減、10年連続給与減少による国内消費の減速、少子化による労働力不足、原料高、ガソリンの値上げ等々の上に、資金調達の困難さと中小企業の経営環境は政府・日銀等の景気動向判断よりもはるかに厳しさを増しています。 現在の銀行の融資姿勢は、昔から言われている「天気だと傘を貸し、大雨だと傘を貸さない。」つまり、お金が有り余り、必要のない会社や個人には「借りてください」と銀行側が日参しています。差し引き営業収支の範囲で借入金が可能な優良顧客には、新規設備投資資金として、1.5%程度の低金利で融資しています。それに比して、営業収支はプラスであるが、それ以上に借入金の返済額が多く、折り返しのつなぎ融資の申請には、銀行だけではなく信用保証協会も慎重になっています。これらが倒産、信用収縮を中小企業の中で引き起こしています。では、そのような会社はどのようにして対応していけばいいのでしょうか? 資金繰りに見通しが立たない場合の緊急対策 営業収支はプラスであるが、年間返済額が多額で、折り返し融資の見込みも立たない会社の場合。 この場合の対策は以下の手順が必要です。折り返し融資が不可能であれば、条件変更交渉以外に手段はありません。 [手順1] 年間の損益計画と資金計画を立てることです。結果、営業収支がプラスになり、元金の10%程度の借金を減らすことが可能かどうかを見極めてください。 償還返済可能年数が十年を越える場合は、金融機関の返済条件の了解を得ることは困難となります。
上記計算式について次の(1)(2)の検討をして、10年以内の償還返済可能年数を現実化してください。 (1)遊休資産の売却による借入金返済を追求します。16,720万円(上記表の返済年数10年を超える部分の金額)の資産処分をしてください。 (2)足りない3.3年分の期間圧縮を追求します。損益計画の一段深いリストラを検討してください。上記説例の場合、年に1,672万円の営業収支増加策を検討します。 [手順2] 上記損益計画と資金計画を持って金融機関と返済条件の変更を交渉します。 金融機関との返済条件交渉にあたっては、借入金を以下の4種類に分類してください。 (1)国金の無担保融資… 原則として毎月返済していれば、再び折り返し融資可能な制度です。他の金融機関と別扱いのため正常返済も考慮してください。但し、他の金融機関で条件変更していることを知られたら、折り返し・追加融資は困難になります。 (2)保証協会付き融資… たくさんの銀行を経由して保証を受けており、保証協会には一括して返済額の減少、返済期間の延長をお願いします。この場合、十年程度で返済可能となれば、ほとんど応じてくれるのが実態です。 (3)無担保銀行融資・ビジネスローン融資… 現状、各銀行はなかなか返済条件の変更に応じず、3ヶ月以上の返済ストップで、関連会社のサービサーへ貸付債権を売却してしまうケースがほとんどです。サービサーに債権が譲渡されれば、「元金の半分程度でいいから一括返済してください」と言われる話が多いですが、社長の個人資産処分を含めていろいろなケースがあり得ます。何もせず返済もしないのであれば、強硬に売掛債権等を仮差押えされることもあり得ます。 (4)担保付き融資… 担保資産の売却を求められます。会社の実状が知られず、足下を見られてから処分するケースが多く、結果、もっと高く売却できても低額で任意売却することになります。また、競売物件になれば、任意売却よりもさらに七割程度の価格になりがちです。 平成20年8月現在、金融機関の条件変更姿勢に大きな変化は見られません。多くの経営者からは、不況の中で必死に経営の舵取りをしているのに銀行は足を引っ張ることしかしないという「恨み節」が聞こえています。しかし、国金の公的融資枠は現在も維持されており、ビジネスローンという決算書格付審査による融資はもともと折り返し融資(返済すればまた貸してくれる)を前提としていないということは周知の事実であったことです。ほとんどの会社はビジネスローンを設備投資資金として、リース料より安い資金調達方法として活用されていました。 今回のビジネスローンの停止、審査の厳格化に伴う実質折り返し融資のストップは、上記のような資金調達を考えられて、活用されていた会社は全く影響を受けていません。 以上の返済条件交渉でのデメリットは、 (1)今後一切の融資が不可能であり、完全な無借金経営が求められる。 返済条件が当初条件に戻り、取引が正常に行なわれれば、融資再開の可能性もあります。 (2)売掛金、工場等の差押え等で倒産する場合もあり得る。 金融機関に誠意を示し、弁護士等を代理人にたて、条件変更交渉する事が強行措置を防ぐコツです。 (3)口座への入金は即返済にまわされる。 入金口座は別の借入銀行以外で行う必要があります。借入先の支店ではなくても、同一金融機関であれば、借入金の返済にまわされます。 (4)第三者保証人である代表取締役の連帯保証が入っている場合がほとんどですが、その場合、連帯保証の履行が求められ、自宅の任意売却や競売もあり得ます。(自宅ローンの残債や評価額等も関係する)この場合、親族・友人・知人等に自宅を任意売却し、その後、賃貸で借りることも検討事項となります。 ※経営者の自宅を守るためにも、配偶者を会社債務の連帯保証人にせず、名義を配偶者にしておくことが肝要かと思われます。 [手順3] いつ条件変更をするか 1)お金が会社に一番残っている時期が望ましいでしょう。5年程度の長期損益計画と資金計画、2年程度の短期損益計画と資金計画を作成し、一切の融資がなく無借金で会社が運営可能かどうかのシミュレーションを立てます。 2)年間予定資金繰り表を作成し、資金がショートし、つなぎ融資の見込みが立たないと判断されたら、その日その日をやり繰りするのではなく、最低1ヶ月前から、金融機関との条件変更を申込み、入金口座変更等の準備をしておいて、銀行と返済交渉に入るのがベターです。 営業収支が大きく赤字であり、改善する見込みのない会社 廃業の準備をすべきです。商売を続けていく意味がなく、日々周りに迷惑をかける比重が高くなるばかりです。この場合、絶対にしてはならない行為があります。 (1)家族・親族・友人からの借金…会社を失うだけではなく、人間関係も失ってしまいます。 (2)街金等の高利貸しからの借入…金融機関だけなら自己破産せず、やり直せる可能性が残されていますが、これらの借入先は取り立てがあこぎなため、自己破産をしたり、夜逃げをしなくてはならないことになります。 (3)増資や私募債等による資金調達…事業再生が出来なければ、詐欺行為として訴えられる可能性があります。 専門家である顧問税理士・弁護士とよく相談して、企業再生に向けて出発してください。
売掛債権などは売上に上げて収益としていますから、どうせ回収できないのであれば税金を払う前に損金として落としてしまいたいのが人情です。回収不能の条件を満たしていない場合は、税務上損金として認められませんのでご留意ください。 貸倒損失の計上の条件 貸倒損失は、債務者の債務弁済能力を個別かつ具体的に検討し、債権が回収不能と認められる場合にその計上が認められます。 そして、税務上は下記の図の三3つの形態に区分してその取扱いを定めています。 通常、倒産と呼ばれているのは、手形・小切手等の2回以上の不渡りによる「銀行取引停止」になることですが、税務上の貸倒損失の計上時期は、それとだいぶ異なります。各種法務手続きによる判決や決定に至った時に計上可能となるのです。中小企業の経営破綻による支払債務の回収期間及び配当率は通常早くて5年の2%程度と言われています。つまり100万円の売掛金の回収は5年もかけて2万円しか回収できないということです。中小企業の破綻による回収の優先順位は、(1)税金・社会保険料滞納の公共債権 (2)従業員の未払賃金及び退職金、退職手当等の労務債権 (3)買掛金・未払金等の一般債権 となっています。土地・担保等は銀行の抵当権が付いています。 つまり、一般債権と呼ばれる売掛債権への配当はほとんど期待できないのが実状です。 実務上、「夜逃げ」「銀行取引停止状態」の売掛先であれば、「債務者の資産状況、支払能力等からみて、その全額が回収できない場合」に該当し、損金経理(経理処理をして決算書に反映させる)条件で全額貸倒処理が出来ます。しかし、税務調査に対応するためにも、実務的には、決算日までに「債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、弁済が受けられない場合の書面による債務免除」にしておく方がいいでしょう。
※債権放棄… 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、弁済が受けられない場合の書面による債務免除 下記のような書面を内容証明郵便で送付します。夜逃げ等により「宛先人不明」で戻ってきても、同一内容が郵便局に保存され、第三者の証明となり、税務上有力な税務資料となります。 【注意事項】 (1)回収不能である客観的証拠、請求書・督促書・弁護士等による督促内容証明等を揃えておくこと。銀行取引停止や不渡手形、小切手の現物保管等を用意しておいてください。 (2)債務の免除は、全額免除だけではなく、一部免除でもかまいません。 (3)注意点としては、債務免除が贈与の扱い(寄付金課税)とならないようにすることです。資本関係、取引関係、役員の状態によって、親子会社と認定されれば、債務免除をしても貸倒損失/売掛金という処理を認めず、寄付金/売掛金となり、一定額を超えた寄付金については税務上の損金となりません。 (4)欠損の関係で、債権放棄の時期が七年前か否かが問題になります。貸倒損失の時期判断との整合性を確認してください。 遅い分ならかまわないのか? 逆に、今期は赤字なので、回収不能が明らかとなったが来期に落とす分には遅いのだから問題はないだろうと、そのままにしておいて次の期に損金に落とした場合はどうなるのでしょう。 結論から言えば、その場合も損金としては認められません。貸倒損失は、「回収不能であることが明らかになった事業年度において損金処理することが出来る」とありますので、明らかになった事業年度以外では損金処理はできませんので気を付けてください。黒字になり税金が出そうな時には前もって『債権放棄』しておくことが適切と言えます。詳細は顧問税理士にご相談ください。 |
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