会計事務所と顧問先をむすぶCLUE 第120号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『建設業の経営管理〜建設業は危険が一杯〜』
 経営・財務・・・ 『人件費こそ付加価値の分配』
 経理・税務・・・ 『税金よもやま話』





 今月の特集

建設業の経営管理
〜建設業は危険が一杯〜

通常、建設業というと単純に建物の建設会社を思い浮かべますが、経営管理の特徴としては、ソフト開発業、各種施工業等と似ています。

経営管理の大まかな手順は次の通りです。


1.建設業の損益・資金計画
ポイントは、売上計画の立て方にあり、簡易な方法として1月に一括して売上を上げる方法から、現場別・物件別・プロジェクト別等の予算を細かく立てる方法があります。

2.建設業の月次決算は、物件別・工事別・プロジェクト別管理、売上の計上基準、完成工事基準と工事進行基準、在庫、特に仕掛品・未成工事支出金の厳密な管理が大事になります。

3.経営管理は、経営の先行管理、受注・営業活動と経営計画の進捗管理が重要です。さらに、予定・実際資金繰りの管理、黒字決算予測の場合の利益の繰り延べ、赤字の場合の固定費削減、人件費コントロールが重要なポイントとなります。平成19年7月以降、建設業、不動産業の倒産が急増しており、経 営診断、資金繰り管理も欠かせません。

ここに中小企業庁の公表した最新の建設業一般の経営指標をあげます。建設業の建築工事一般では、売上、自己資本とも前年より減少しており、成長力に大きな陰りが見えます。また、売上高経常利益率はわずか1.5%、総資本回転数が1.9%と大きな投資の割に利益が少ないと言えます。また、自己資本比率が17.4%と他の業種に比して資本が過小であり、財務基盤の弱い業種と言えます。このように中小企業の建設業の経営は大企業に比べ様々な面で倒産・廃業の危険性を孕んでいます。だからこそ、建設業の経営者、経理担当者、顧問税理士等はその危険性を良く知り、自社の危険度を正確につかみ、その対策を心がける必要があります。建設業は危険が一杯です。だからこそどんぶり勘定ではなく、しっかりとした経営管理が必要なのです。


第一章
損益・資金計画を立てる
経営数値で目標を持たない会社は生き残れない


1.損益計画の立て方

(1)1分で出来上がる損益計画の立て方

予算作成は最初から緻密さを求めるのではなく、手順を追って精度を上げていくのが長続きするコツです。時間をかけて精度の高い予算を作っても、作り疲れで計画を活用せず、計画倒れになってしまっては何もなりません。一番簡単な売上計画の立て方は前期実績に何%かの増減・ 業態によって、受注先別、プロジェクト別、営業担当者別、支店別等の提案・入札金額の月別予算を作成します。過2年の実績推移から今後2年の受注目標を設定しています。

(2)詳細な売上計画の作成手順

年間・月別提案・受注目的の作成

業者によって、受注先別、プロジェクト別、営業担当者別、支店別等の提案・入札金額の月別予算を作成します。過去2年間の実績推移から今後2年間の受注目標を設定しています。

売上の流れは、提案…見積・入札…受注…施工…引き渡し…請求…入金という流れで、提案から入金の期間が長期に渡るものが多いため、提案・受注計画がまずあり、提案・入札見込みと実際の受注額との割合から逆算して、提案・入札予定金額を常に先行管理することが求められます。

(3)原価計画の立て方

1.簡易な原価計画…売上計画が出来上がれば、原価は予定原価率から作成すれば簡単です。材料費・外注費・製造経費は前年度の実績率と仕入先動向等を加味しながら作成します。

2.詳細な原価計画…プロジェクト別、売上先別等予定原価率を設定して、詳細な原価率を計画します。

(4)経費計画の立て方

建設業の経費計画は、勘定科目別に詳細に立てる方法もありますが、簡単に大きな経費だけを取り出して、その部分だけを詳細に立てる方法が実践的です。建設業の場合は、売上に変動する経費は、製造原価項目がほとんどであり、販売費及び一般管理費は大部分固定費としての性格を持っています。大きな金額としては、役員や営業、経理総務の人件費、事務所の地代家賃、交際接待費、減価償却費、消耗品費、車両費等が考えられます。人員投資配置計画をしっかりと立て、計画的に費用支出することが可能です。その他の費用は前期実績を考慮して作成すればよいでしょう。


2.資金計画の立て方

建設業の資金計画の立て方は以下の手順で立てます。


手順1.

借入金の返済計画を立てます。月々の返済額を借入返済表通りにすれば、簡単に作成できます。


手順2.

入金回収計画をたてます。建設業の入金回収サイトは様々です。一番簡単な入金回収計画の立て方は、前期末の決算書の売掛金残高を年間売上で割り、12ヶ月を掛けて平均回収期間を算出する方法です。期末売掛金÷年間売上金額×12ヶ月=回収月数

[  例  ] 期末売掛金 1億円 年間売上金額 8億円

[計算式] 1億円÷8億円×12=1.5ケ月

例の場合、1.5ヶ月分のサイトで回収されており、月別に管理するのであれば入金は2ヶ月かかることになります。

より詳細な回収計画を立てたいならば、プロジェクト別、件名別、相手先別に入金計画を立てることが必要です。公共事業や役所の仕事であれば、より正確な回収サイトが立てられるはずです。


手順3.

仕入・外注費等の支出は、支払期間で現金支出する金額を計画します。

支払期間は、決算期の買掛金残高÷年間仕入金額×12で計算すれば、概算で求められます。例として、決算書の買掛金1千万円 年間仕入金額1億円であれば、1千万円÷1億円×12=1.2ケ月となり、支払期間は36日サイトとなります。月に直せば2ヶ月サイトとなります。


手順4.

設備投資計画があれば、予定金額を支払予定月に計画してください。


手順5.

その他、消費税の予定納税、中間法人税等も資金繰りに影響しますので、予定金額を予定月に計画します。


手順6.

資金計画のコツは、売上少なめ、経費多めに見積もり、実際の資金ショートを防ぐことが肝心です。少なくとも期待値で資金計画を立てることのないようにしたいものです。


3.損益計画と資金計画の最終調整で経営計画を完成させる

資金計画を使って、年間営業収支の金額で年間返済金額、設備投資金額がまかなえるかどうかを検討します。

1)営業収支>年間返済額等…無借金経営で全くお金の心配がない。

2)営業収支≦年間返済額…
  [対策1] 金融機関に必要額を事前に通知し、融資を受ける。
  [対策2] 損益計画を見直し、利益拡大の可能性を追求し、再予算を立てる。
  [対策3] 金融機関と返済条件の交渉をする。


第二章
建設業の経理・月次決算のポイント


1.建設業の経理…売上の計上と仕掛かりが大事

建設業の経理の流れを追ってみましょう。

A 売上の流れ

 見積・入札…受注…施工…引き渡し…請求…回収

B 仕入・外注の流れ

 発注…請書…施工…検収…請求…支払

C 人件費の流れ

 タイムカード…給与計算…現場別配布…支払


2.経理処理は原始証憑から直接パソコン会計へ

以下に例を提示します。

売上は自社発行の請求書を見ながら以下の仕訳をパソコン会計へ直接入力します。

売掛金(補助科目として相手別管理) / 売上(補助科目として現場別・支店・プロジェクト別管理)

建設原価は届いた請求書を見ながら以下の仕訳をパソコン会計へ直接入力します。

材料費(補助として商品名等) /  買掛金 (補助科目として仕入先別管理)
外注費(補助として現場別・支店別・プロジェクト別) / 買掛金 (補助科目として仕入先別管理)
各費用(補助として現場別・支店別・プロジェクト別) / 買掛金 (補助科目として仕入先別管理)

賃金台帳を見ながら以下の仕訳をパソコン会計へ直接入力します。

労務費(補助として現場別・支店別・プロジェクト別)
 
 / 未払金
 / 預かり金


販売費及び一般管理費

製造原価以外の経理処理には、給与台帳からの役員報酬、営業、総務の給与関係処理と借入返済表からの借入金処理、預金通帳からの自動引き落としの水道光熱費、リース料、社会保険料等があります。

※各仕訳に補助科目を追加入力するだけで、手書の必要がなく、補助簿【預金出納帳・当座出納帳・得意先元帳・仕入先元帳・預り金元帳・仮払元帳・未払金元帳等一切の補助元帳】をパソコン会計で作成することができます。

※各補助科目残高一覧表にて、様々な集計表が作成できます。手書きの集計表は一切作成しないことです。パソコン会計からデータをエクセルに取り出し加工すれば余計な集計業務はなくなります。


3.建設業の月次決算・監査のポイント

月末仕掛工事の計上

このなかで、特に月末仕掛工事の把握は、月次の期間損益の正確な算定のみならず、在庫管理の適正化に資するためにも重要です。

建設業の仕掛工事の計上方法は段階的に精度アップしていくことが必要です。

[第一段階] 推定原価率で仕掛工事を概算計上する方法

見積書等により推定原価率を算定し、売上に原価を掛け、それ以上の原価が発生していれば、未成工事支出金として在庫計上する方法です。

売上 3億円 概算原価率 70% 製造原価 2億5千万  推定未成工事支出金 4千万円
として計上します。

[第二段階] 大きな工事だけを正確に追う方法

完成工事基準…現場の進捗状況にかかわらず、特に引き渡し時点で売上を計上する方法です。請求書の発行により売上計上と原価計上を同時に行います。

経理処理として以下の方法があります。

(1)毎月発生する原価を一旦貸借対照表に計上し完成時に損益に振り返る方法

  未成工事支出金  / 現預金
  当期完成工事原価 / 未成工事支出金

(2)発発生する原価を一旦損益に計上し、月未に完成工事を資産に計上する方法

  完成工事原価   / 現預金
  未成工事支出金  / 完成工事原価

金額や重要度の高い工事、プロジェクトを決めておき、その工事だけはしっかり管理します。金額百万円以上や五十万円以上の工事については、見積もりに基づく予算をまず作成し、実際の原価を請求書、賃金台帳、作業日報より集計し、完成の有無を月次決算で確認し、未完成工事については、実際の支出金を在庫・仕掛品として計上します。実行予算書は結果的に工事台帳になります。


第三章
建設業等の経営管理…半年先を見通した経営を!


月次予算を作成した会社が、毎月正しい決算を行い、経営会議や役員会で、計画が達成されたか否か、予算・実績比較し、経過月実績+未経過月予算に基づき、毎月予想決算、予想・実績資金繰り表等を確認しながら経営を管理していく「経営会議システム」は景気の変動を受けやすい建設業等には必須の経営管理です。

ある建設関連業の経営会議で行われている先行管理を紹介したいと思います。

この会社では一年先までの現場別予算進捗シートを作成しています。建設業等では、見積もり、受注、着工、完成、入金まで早くて3ヶ月、遅い場合は2年もかかります。

経営計画を実現し、黒字決算を迎えるためには、少なくとも半年先までの見積残や受注残を把握し、毎月の経営会議や営業会議で受注に向けた進捗管理をする必要があります。

現場別の進捗管理は、受注…契約済み A…内定 B…後一歩  C…見積提案段階 と四段階で行なわれ、経営計画の実現に向けて管理されています。

見積もりから受注率を考慮し、見積もりの50%が受注しているのであれば、経営計画数値の約2倍の見積・提案を営業が目標に出来るはずです。

  9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 中間
決算
4月 5月 6月 7月 8月 9月 後半
決算
年間
決算
月次予算                                
受注残高                                
月次差異                                
累計差異                                


成り行き経営では黒字経営も運次第…予算達成に創意工夫を

年間の売上計画を漠然と立て、成り行きで経営するのではなく、以下のような表で、物件ごとに受注・内定・営業中・提案中等ランクづけし、月次予算の先行管理をし、毎月不足分を確認し、目標達成に向けて全社一丸となって進んでいく仕組みづくりが必要です。





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人件費こそ付加価値の分配

1.付加価値とは?

会社の必要経費といっても色々ありますが、企業活動にとって最も大きな割合を占めるのが、金額的にも人件費です。そして人件費こそはまさに「獲得した付加価値の分配」なのです。

そもそも付加価値という言葉自体、人が労働によって付加した価値という意味です。


2.幾ら人件費にあてるのか

ここで労働分配率が問題になります。人件費を獲得した付加価値の分配だとした場合には、獲得した付加価値の何%を人件費にあてる、と決めておけば労働意欲(近頃はモチベーションと言われていますが)が上がります。このように事前に労働分配率を決めておけば限度はありますが、ある程度の業績の悪化でも赤字にはなりません。


3.適正労働分配率

では労働分配率は何%が良いのかということなのですが、これは業種・業態によって全く違いますし、個々の企業によっても違うでしょう。しかし、企業にとって、利益の出る適正な労働分配率は把握しておく必要があります。ここでは、大企業や理論上の話ではなく、中小企業での身近でかつ簡単な労働分配率のつかまえ方を伝授します。労働分配率とは

理論的には労働分配率算式は以下と言われています。人件費÷付加価値(賃率+他固定費+利益等)

売上
mPQ

vPQ 変動費
 
付加価値
mPQ
F(1)
人件費
F(2)
他固定費

利益

変動費とは売上に比例して発生する経費を言います。
固定費とは売上が0円でも発生する経費を言います。
利益は会社の目標利益です。

しかし、中小企業の場合、固定費・変動費分解は容易ではありませんし、また通常変動費と呼ばれる経費も価格決定権や調整ができないため、固定費になってしまうものも少なくありません。


5.面倒な計算はイヤだ

そこで、会社の過去2年分程度の損益推移表を用意し、月別の売上と発生が連動しているものを勘定科目の中で探してください。損益推移表で毎月金額が一定でないものをピックアップします。飲食業では、食材仕入・酒仕入・雑給・外注人件費・広告宣伝費等ですが、修繕費、保険料等の発生のうち、売上と関係ないものを省きます。また、運送業では、外注費・燃料費・レンタル車両費等、製造業では、材料費・外注費・雑給・社員の残業代等、医療では、薬剤材料費・臨時医師人件費等があげられます。

経理処理で、これら売上に連動する要素の高い勘定科目を売上原価項目の中に入れてしまうのが解りやすい試算表や月次決算書をつくるコツです。こうすれば、経営者は、変動費・固定費等の難しい経理用語を勉強しなくとも簡単に把握できます。仮に自分の会社は、売上が0円でも毎月幾らぐらい会社を維持する経費がかかるのだろうかが、販売費及び一般管理費+支払利息で、一目で分かります。


6.中小企業の労働分配率

右記の経理処理をした中小企業の簡単な労働分配率は、人件費÷売上総利益という簡単な算式に変わります。人件費の範囲は通常給与+賞与+通勤費+法定福利費+福利厚生費で、会社によっては福利厚生費を人件費に入れていない会社もあります。また、経営者報酬を利益の調整弁に使用されている会社も少なくありませんので、その場合は金額調整してください。

業種・業態によって人件費÷売上総利益の割合は様々ですが、過去の業績好調時の労働分配率が目標労働分配率と考えます。通常五十%程度が平均です。

中小企業の労働分配率は以下の算式で読み変え可能です。

B÷A(人件費÷売上総利益)

売上高  
期首棚卸高
仕入高
外注費
雑給
広告宣伝費
期末棚卸高
売上原価
変動費的な費用
売上総利益
役員報酬
給与
賞与
法定福利費
通勤費
福利厚生費
 
人件費計
消耗品費
手数料
交際接待費



雑費
販売及び一般管理費
固定費的な費用


7.一人当たりの売上総利益

労働分配率を金額面で検証する指標の一つに、一人あたり売上総利益というものがあります。日本の中小企業の男女平均給与年収が300万円〜600万円程度であること、この金額が過去九年間連続して下がっていることは周知のことだと思います。労働分配率が50%だとすれば、一人あたり1千万円の売上総利益が経営者の一つの指標になるかと思います。一人あたり1千万円あれば、500万円程度の人件費を社員に支払えます。この場合、通勤費+労働保険・社会保険料の会社負担分等を加味して、年俸400万円程度社員に支払えます。年俸平均400万円あれば、都市部は無論のこと地方では相当な高額給与と言えそうです。


8.適正労働分配率

適正労働分配率は企業経営にとって非常に重要な考え方です。社員にとっての人件費とは基本給や諸手当等様々な規定の積み上げで決定され、生活の再生産の糧ですが、企業の経営者にとっては、総額として適正な労働分配率の範囲で人件費を支払い、利益を確保していくことが最大の仕事です。


9.リスクとリターンの明確化

会社と社員が一体となって利益を上げるために、経営者は一切の取引に連帯保証人という形でリスクを背負っていますが、社員も適正なリスクと成果報酬の仕組みが必要です。成果主義賃金体系的な考えが会社には必要になってきています。

(1)成果主義賃金体系には経理、経営のガラス張り的な透明性、公開性が必要です。

(2)社員、経営者の生活再生産のため、必要な最低生活給的な固定賃金をまず決めておきます。
(例:月額20万円や30万円としておき、現行給与との差額を仮払賃金としている会社もあります。)

(3)労働分配率を50%なりと決めておき、実績の成果に応じて、差額の成果主義賃金を2ヶ月や3ヶ月に一回精算支払をします。仮払賃金はその都度精算します。これによって、固定費的な人件費を変動費化することができ、社員も働いた成果が分配されるメリットがあります。

(4)成果主義賃金体系には評価が困難と言われていますが、それは現在の実際の給与体系でも同じです。現行の各人の給与額を決めている訳ですから、成果に応じてまず付加価値の成果をもらうことが重要なのです。予想以上の実績が出た場合には、仮払分+生活給を上回る成果給与が支給され、予想以下の実績であったら、生活給は現状のままでも仮払分の精算が出来ない訳ですから、減俸等もありえるのです。

(5)付加価値の分配を各人に行う時の問題は、現行の給与体系が問題なのです。ここでは、評価システムが問題となっています。とりあえず経営数値に落しやすい社員と落としにくい間接要員とに区分することから始めます。営業等は経営数値で評価しやすいので、数値+上司評価で査定できますが、間接要員については上司評価になりがちです。これを避けるために評価を同僚評価で一次査定し、上司が再評価している会社もあります。





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税金よもやま話

犬税

世論調査によれば、ペットの種類は犬と猫が全体の92%を占め、その内の3分の2が犬だそうです。以下、犬税についていくつかあげてみました。


将軍綱吉の税

犬公方・将軍綱吉が課した犬税は「犬金上納」という名の目的税で、一年間で約10万両もかかったと言われている中野などの野犬収容施設維持費用に使われ、農民、町民、大名からそれぞれ徴収していました。


昭和の犬税

昭和30年のデータでみると、実に2686もの市町村で犬税が課せられていたようです。昭和57年を最後に廃止になっています。最後の犬税は一頭当たり年額300円でした。


現在の犬税

今でも、生後91日以上の犬は、狂犬病予防法により、生涯一回の登録と年間一回狂犬病予防注射を受けることが義務付けられていますので、年額約3000円程度の事実上の犬税があるとも言えます。


ドイツとオランダの犬税

ドイツでは、飼い犬の数に応じた累進税が市町村税としてその飼い主に課されます。犬はフンなどによって街を汚すので、地方自治体がその清掃等の費用をまかなうために課すものです。

同様に、オランダでも犬税があり、例えばアムステルダムでは一頭あたり年109ギルダー(約1万5000円)支払うそうです。オランダではこの犬税の為に、飼い主はフンをしても堂々と置き去りにします。


中国の犬税

中国では犬を連れた人をほとんど見かけません。犬税の高いことが理由の一つです。
犬の登録費用は、北京では、犬一頭に対して初年度1000人民元(約1万4000円)、2年目以降は500人民元(約7000円)が必要です。


猫税

犬に対して課税している国がある一方で、猫に対して課税している国は見当たりません。日本においても猫には課税したことがありません。猫に対する税金が見当たらないのは、犬と違って猫は誰が所有しているのかはっきりしないから、と言われています。


戦争は新税の生みの親

一般的に、戦争の遂行には莫大な費用がかかるので、戦費調達や戦後の財源に充てるために増税や、新税創設のなされることが多く、税と戦争には深いつながりがあります。


印紙税

印紙税を発明したのは、1624年オランダです。スペインとの独立戦争で窮乏した財政のための財源調達方法を賞金公募したところ、これに応募してきたアイデア新税でした。1660年デンマーク、1673年フランス、1694年イギリスでも採用され、日本では1873年に採用されています。


所得税

世界初の所得税創立は、1799年イギリスです。ナポレオン戦争で膨張した戦費をまかなうために、総所得に10%の比例税率を課するという制度でした。次いでスイスで1840年、イタリアで1864年に導入されています。

アメリカでは、1862年南北戦争のときに導入されましたが、翌年には憲法違反との理由で廃止され、第一次大戦中に復活しています。イギリスでも、1816年に一度廃止になっています。

日本では、日清戦争に備えての軍艦建造費用調達などの必要で1887年に導入されました。世界で8番目の導入で、当初は年収300円以上の人だけを対象とし、全国で約12万人、当時の人口の0.3%が納税者に該当しました。そのため、別名「名誉税」とも呼ばれたそうです。


湾岸戦争税

最近の事例では、1991年の湾岸戦争に際し、日本の国際協力の名目で90億ドルの資金提供を行うため、法人臨時特別税と石油臨時特別税が創立されました。


身血を租税とする

極めつけは血税の創設でしょう。血税とは「身血を租税とする意」と広辞苑にあります。1872年(明治五)大政間官告諭に「西人之を称して血税とする。その生血を以て国に報ずるの謂なり」とあります。献血の義務付けではありません。

「国民皆兵の制」の告諭で徴兵制のことをこう性格付けしたのです。徴兵とは「身血による租税」だと認識していたのでしょう。翌明治6年から徴兵反対の血税一揆が西日本一帯で勃発しています。


赤字は売れる財産だった

M&Aでの欠損法人利用節税策に封じ手

買収された欠損法人で、買収後五年以内に、従前の事業を廃止し、その規模を大幅に超える事業を開始した等、一定の事実が生じた場合には、その欠損金の損金算入は制限され、3年以内(買収後5年を限度)に生じる資産譲渡損失も損金不算入とされています。
節税目的M&Aに対して封じ手が打たれた、ということです。この改正は、平成18年4月1日以後買収された欠損法人について適用されています。

赤字法人の発生は不可避

赤字会社は黒字会社があることによって生じます。利益追求の市場競争の中で、より有利な価格競争をするために、不等価交換・不対等取引・情報不均衡取引・独占寡占取引価格取引などなどはむしろ意識的に追求されています。資本主義社会では「他の人々が『想定外』に置く事柄をいち早く『想定内』にしてしまった人が儲ける」のであり、高い給料の社員を抱えて、これを養うために、暴利や不当利得と思えるような企業報酬を求めて市場に参入しています。サービス産業、大企業ほど、その傾向が顕著です。中小企業の多くが赤字法人になるのも不可避なことです。

赤字法人の売却は租税回避幇助か

税金は黒字法人からとります。しかし、その黒字は相当部分赤字法人の犠牲の上にあります。 赤字法人の赤字は七年以内の自社の黒字と相殺できますが、それだけでなく黒字法人と赤字法人の合併で赤黒の相殺ができてもよいはずです。
赤字の犠牲に乗った黒字と相殺できることによって、赤字法人は価値が生じ、M&Aで売却もでき、赤字の痛手はいくらかなりとも救済されたのです。
赤字法人のこの行為を否定し、赤字の痛手からのささやかな治癒を否定することは、赤字会社の犠牲に乗った租税制度といわざるを得ません。
赤字会社の買収による節税策は租税回避なのではなく、赤字会社への救済策だったのです。課税は、黒字と赤字を相殺し、その上でなお残る社会の価値の増加部分にのみなされればよいのですから。


【 提供・デイリーコラム 】


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