会計事務所と顧問先をむすぶCLUE 第116号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『変化する金融機関のルール』
 経営・財務・・・ 『1分でわかる 決算書の見方』
 経理・税務・・・ 『知っていましたか?税務一口知識』





 今月の特集

変化する金融機関のルール

中小企業の経営者の皆さんは資金繰りに対する知識を正しく理解しておくことが求められています。なぜなら会社が倒産した場合の最大のリスクを背負っているのは経営者だからです。資金繰りを他人任せにしている経営者の将来はホームレスと言っても過言ではありません。

まず、バブル崩壊以降、金融機関の融資姿勢、ルールは大きく変わりました。土地の値上り神話に基づく担保融資が主流であった各金融機関はバブル崩壊後一転して、企業の収益力から返済力【長期・短期借入金÷減価償却費+税引き後利益=返済償還年数】を割り出し、最高でも10年〜20年という融資姿勢を取っています。これは土地担保=据え置き借入金としてあたかも資本金のように考えていた古い頭の経営者を震撼させました。その代表例が土地担保で転がし融資を受けていた、そごうやダイエーの経営破綻です。経営者の中にたくさんおられた、「借金も財産のうち、それだけ銀行の信用がある」とうそぶいていた方々も、今ではほとんど会社ごと姿を消しました。社会のルールの在り方が変わった場合、その変化についていけなければ経済社会から淘汰されます。日本版ビッグバンの大きな柱である『早期是正措置』は、中小企業に大きな方向転換を余儀なくしてしまいました。

資金は中小企業にとって経営の潤滑油です。資金が枯渇すると企業活動は何もできなくなります。たとえ利益は上がっていても、資金がなくなれば会社は潰れます。この点で、中小企業と金融機関との結びつきは重要です。

そして、何度も確認しますが、中小企業を取り巻く経営環境は大きく変わろうとしています。最大のポイントは、これまで担保至上主義をとっていた金融機関の融資姿勢が、経営状態の各種審査に基づく選別融資に変化したことであり、他人資本に偏ってきた中小企業の財務体質の自己資本型への転換であります。

経営者の方々によく理解していただきたいのは、金融機関は会社の経営実態に基づく融資姿勢を加速させているということです。簡単に言えば、金融機関は、会社の決算書、月次試算表の収益力から返済能力を重視し、返済能力に見合った融資を行うということです。

平成19年10月に始まった保証協会付融資の共有保証制度やミニバブル化の歯止めのための金融引き締め、米国サブプライム問題による景気後退は、ますます中小企業の資金調達を困難にしています。特に建設業と不動産業、運送業等には厳しい資金繰りを強いており、倒産件数も急増しているようです。


経営診断・金融機関格付による自社の経営診断

月次定例経営会議において、常に予想決算書に基づいた、経営診断・金融機関格付評価を検討する必要があります。顧問先企業の予想決算は、同業他社と比較して強み・弱みをしっかり経営者に理解していただき、同時に、経理・納税の重要性を認識していただく場となります。経理がしっかりしていないと正しい分析ができず、決算書が汚れてしまいます。
また、納税をしっかりして自己資本の充実に努めることが銀行への強いアピール・信用獲得になることを、融資話の時に理解してもらいます。


中小企業の資金用途を理解する

企業の資金使途にはどのようなものがあるのでしょうか。主に次の四つがあります。

1.運転資金…仕入代金や諸経費の支払資金など、日常の営業活動で必要になる資金。運転資金には、先行する仕入れの支払いと売上の入金までの時間差を埋めるための資金と、通常の在庫品を揃えておくための資金とに分かれます。企業が清算するまで回収できない種類の資金ですので、運転資金は返済不要な自己資本で賄うか、少なくとも長期借入金による調達を行うべきです。

2.設備投資…文字通り設備のための資金ですが、以下の設備のどれに該当するのかを明確にしておくべきです。

(1)既存設備の老朽化などによる更新
(2)生産力増強のための設備強化
(3)合理化または新分野に参入するための新たな設備

3.季節資金…業種によっては季節によって売上と仕入れが大きく変動するため、一時的な仕入資金の増加などに対応するための資金です。3ヶ月6ヶ月程度の期間が普通です。

4.賞与資金…従業員賞与の支払資金です。年2回の賞与であれば、6ヶ月以内の短期融資となります。


銀行の融資姿勢…4つの評価ポイント

中小企業が銀行と取引する際、「融資」「決済」「預金」という三つの機能を求めるのが普通です。中でも中小企業にとって最も重要で、銀行間で対応が異なるのが融資の機能です。各金融機関の融資に対する姿勢を見極めて取引銀行を選択しないと、中小企業の生命線とも言える資金調達に支障をきたすことになってしまいます。金融機関の融資姿勢を評価する場合、以下の4つのポイントを判断材料にしましょう。

1.プロパー融資の金額…これは保証協会付きではない、銀行直接の融資額を指します。この金額の多い銀行は会社の内容を評価して、積極的に支援をしようという意識が高いと言えます。逆に保証協会付きの融資しかしてくれないような銀行は、その会社に対してリスクを取る考えがないということなので、取引をする意味があまりありません。

2.担保の設定額…前述1.と、この担保の設定額で、無担保融資の額を割り出すことができます。プロパー融資の金額が大きな銀行でも、担保がガチガチに設定されていれば融資にあまり積極的だとは言えないでしょう。

3.融資の形態…銀行が一番融資しにくい形態が、証書貸付による長期資金です。これが多い銀行は大切にすべきです。一方、銀行にとって最も簡単な融資形態が手形割引です。しかも、手形の銘柄を優良企業だけに限定しているような銀行は、優良企業の信用力に頼っているだけで、取引している中小企業の信用力などほとんど評価していないことになります。

4.預金残高…預金は質権設定していなくても、返済が滞った場合には差し押さえることができるので、銀行にとっては一定の債権保全効果が見込めます。預金残高よりも借入残高が上回る場合は、その銀行がリスクを取る考えがないことがうかがえます。


金融機関別取引状況の分析

企業の金融機関との取引状況の分析と、知識、見られ方、今後の対応のアドバイスを見ておきましょう。

すべての企業の資金調達は以下のように分類できます。

1.公的資金…保証協会・国民生活金融公庫等

2.プロパー無担保融資…通常ビジネスローンと称する商品

3.不動産・定期預金等の担保付き融資

4.その他

中小企業の銀行融資はほぼ上記の取引です。
次にそれぞれの融資枠・特徴を知っておきましょう。


1.公的資金

(1)国民生活金融公庫融資

国金の融資資金は国の財政投融資資金です。国金は銀行が一切関知しないので、余計なつきあい定期預金・拘束預金、グループ提携保険、投資ファンド加入見返り強要や給与振込み、入金指定口座等の強要もありません。無担保融資は企業の業績等で2,000万円まで融資枠が広がる可能性があります。最近は第3者保証人不要融資も2,000万円の枠で商品化されています。【第三者保証人不要の場合、金利が0.65%割り増しとなります】新規開業では、300万円〜1,500万円程度の融資が受けられます。

【ポイント】

新規融資の際の手続きには時間もかかり、煩雑である。会社訪問・実態調査・2期分の決算書・総勘定元帳・事務所契約書・運転免許書・代表者個人の納税証明・運転免許書等が必要。資金需要がなくても300万円程度の新規融資を受け、返済しておくと次の折り返し融資が簡単である。

(2)保証協会付き融資

全国都道府県にある各保証協会が信用力に欠ける中小企業の融資に寄与するための公的保証制度です。

保証協会の保証付き融資とは、銀行が中小企業に融資する場合、会社が返済不能となった時に肩代わりするものです。注意点は、お金は銀行から出て、万が一の場合には、保証協会が、企業に代わって返済してくれるということ。無担保枠として1億円〜5千万円程度ですが、月商の3倍程度という枠も設けられています。しかし、新規開業や設備資金等では弾力的な扱いもあります。もちろん担保付きもありますが、ここでは無担保扱いをまず確保することです。

保証協会付き融資は、返済に問題(遅延等)がない場合は、資金の必要性に応じて一定の枠内であれば再度保証してくれる融資です。いわゆる折り返し融資が可能です。近年の銀行の貸し渋り対策として現在は全額保証しているとのことですが、金融緩和が進み、バブル気味の気配もあり、平成19年10月より元の八割保証に戻りました。


2.プロパー無担保融資…格付けによるスピード融資

金融機関では大手銀行を中心に、かつてのように中小企業の事業内容や将来性、または不動産担保を評価して融資を行うようなことはなくなってきています。金融機関は、各融資先に対して債務者区分を決め、機械的に融資の審査を行っているのが現状です。

債務者区分は、主に財務内容、つまり決算書で形式的に判断されます。即ち、どのような決算書を作ったかが問われてしまうのです。債務者区分とは、優良な融資先から順に「正常先」「要注意先(要管理先)」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」となっています。実際には、もう少し細分化して格付けを行っていますが、格付けが上位であるほど安い金利で融資が受けられます。正常先とは、債務超過でなく利益体質であり、融資の返済も当初の契約通り進んでいる状態です。赤字が続いたり、一時的ではあっても本業で多額の赤字を計上したり、欠損や債務超過になると、要注意先に判断される可能性が高くなります。売上に対して借入過多といった状況も、要注意先の候補となり得ます。要注意先と破綻懸念先とでは、銀行にとって必要な貸倒引当金が全く異なるため、どちらに区分されるかは金融機関の融資姿勢に大きな影響を及ぼします。つまり、破綻懸念先と判断されては、追加の融資はほとんど不可能ということになるのです。

基本的な考え方としては、業種や地域を分散させた同規模の企業の中から、さらに一定基準を満たした百社を集めます。そして上限金額を決めて、百社全てに融資を行います。百社のうち数社が破綻しても、それをカバーできるだけの金利を百社から取っていますし、コストもかけないのでそれなりに利益が上がるという手法です。

中小企業が融資を受けるためには、この百社の中に入らなければならないわけですが、その条件は

1.債務超過ではない
2.経常利益がマイナスではない
3.税金の滞納がない

の3点ぐらいです。これをクリアしたら、決算書をコンピューターにかけて融資の内容を決めるというシンプルなもので、事業計画や資金繰り表などがほとんど反映されない融資です。


【ビジネスローンの落とし穴】

怖いのは、金融機関の融資審査基準の変更で折り返し融資が困難になり、融資制度そのものがなくなることです。平成18年4月にりそな銀行が原則ビジネスローンを廃止しましたし、最大手であった三井住友銀行も平成18年9月に審査基準を厳しくし、これまで融資が受けられた会社も追加融資を断られたケースも増えています。最近では三菱UFJの審査が厳しくなっているようです。ビジネスローンは折り返し融資が必要な運転資金ではなく、折り返し融資を必要としない設備資金等で利用するのが原則と言えます。


3.担保付き融資…

一般的には銀行で最も多い融資パターンでしたが、ここ10年の資産デフレですっかり変わってしまいました。定期預金はまだしも、不動産担保の場合、価値の目減りは著しく、追加担保要求や上記保証協会融資の枠で埋めようとする、銀行の貸し剥し、貸し渋りが最も激しかった融資といえます。

しかし、会社の業績が悪化し、公的融資もビジネスローンも貸してもらえない時、最後の頼みの綱はやっぱり担保付き融資と言えます。いざという時に備え、1.公的融資 国金2,000万円 保証協会付き融資 8,000万円 2.ビジネスローン 2億円 合計 3億円の無担保融資が最大で可能となっています。【業種・業歴・規模・利益等によって差異があります】

担保付き融資は、原則として上記融資枠確保後にすべきであり、現在担保付きの借り入れがあるのであれば、他の銀行で無担保融資を受け、返済し、担保をはずしておくのが上策です。

担保のついていない不動産を所有していれば、(1)担保付き融資が受けられ、(2)いざという時売却し、資金を確保できるというメリットがあります。

そうは言っても最後は「資産担保を持っていること」です!





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1分でわかる 決算書の見方
−あなたの会社は銀行から査定されている−

決算書の見方については、巷に多くの本があふれています。自社の決算書を財務分析されるのもいいでしょう。しかし、決算書をパラパラとめくって十分に理解し、会社経営陣に簡単なコメントができたらと思いませんか。ここではそんな場面を想定して、大胆かつ簡単に決算書の見方を考えたいと思います。


【1】 まずは損益計算書を見る

決算書をめくると、まずは貸借対照表(いわゆるB/S)があります。ついつい貸借対照表に目がいきがちですが、もう一ページめくって、損益計算書(いわゆるP/L)をまず見るようにしましょう。

売上高(何をいくら売っているのだろう)
売上原価
売上総利益(いわゆる粗利) C(A−B)
販売費及び一般管理費(どんな経費を使っているのだろう)
営業利益(ここがポイント!会社の本業の利益 E(C−D)
営業外収益
営業外費用(銀行借入金の利子等)
経常利益(会社の本当の実力) H(E+F−G)
特別利益
特別損失(固定資産の売却損や前年度の経理の間違い等)
税引前当期利益 K(H+I−J)
法人税等
税引後当期純利益(最終的な会社の利益) M(K−L)

損益計算書の1番のポイントは営業利益です。ここが黒字か赤字を第一に見てください。営業利益はその会社のビジネスが成り立つかどうかを見る判断材料です。ここが赤字である限り事業の継続性が望めませんし、何かが間違っているのです。

営業利益を増やすためには、(1)売上高を増加させる(2)原価を下げる(3)経費を削減する、の3つしか手がありません。


◎営業利益増加ポイント…大きく3つに絞って経営改善を進める

(1)売上アップ
(2)原価引き下げ
(3)経費削減


◎金融機関の貸借対照表の見方

貸借対照表で金融機関が最初の見るのは会社の安全性といわれています。つまり自己資本比率と流動比率です。


貸借対照表の構成

貸借対照表はバランス・シートとも呼ばれ、一定時点(期末、中間期末月末)における会社の財政状態を表し、「資産の部」「負債の部」「純資産の部(旧、資本の部)」の3つから構成されます。「資産の部」は「負債の部」と「純資産の部」の合計と常に等しくなります。これがバランス・シートと呼ばれる理由です。その3つの構成を図と式で表すと次のようになります。

資産の部 負債の部
純資産の部(旧資本の部)
「自己資本」

「資産の部」=「負債の部」+「純資産の部」

「資産の部」は会社の資金がどのように運用されているかを表し、一方「負債の部」と「純資産の部」はその資金をどのようにして調達しているかを表します。この「資産の部」の合計は「総資産」も呼びます。

自己資本とは他人資本(つまり負債)に対する言葉ですが,要は返済義務のない資本です。純資産の部合計額が,総資本の何パーセントを占めるかを算出します。

自己資本比率 = 自己資本/総資本×100(%)

金融機関はまず在庫と売掛金に注目します。在庫がすぐ適正な価格で販売できるのであれば問題ないのですが、不良在庫がないかを見ます。売上の増加に伴う在庫の増加は問題ないですが、見せかけの利益を出すために在庫を増加させているのではと疑っています。

2年間程度の決算書を並べて、売上の伸びと在庫の伸びを比較すれば簡単に分かります。
同じように売上が前期とあまり変わらないのに売掛金残高を増えている決算書も疑われます。
架空の売掛金/架空の売上が粉飾決算の一番多いパターンだからです。

次に負債の部では、この会社がどれぐらい借金をしているかを見ます。短期借入金と長期借入金を合計して損益計算書の売上高を比べてください。売上高の3分の1以上の借入金があれば要注意と思われます。最後に純資産の部では資本合計を見ます。ここがマイナスであると債務超過という状態です。債務超過とは、その会社の全資産を処分したとしても会社の負債を返せない状態ですから、会社としては失格という烙印が押されていることになります。

簡単に決算書を見るなら、(1)営業利益 (2)自己資本比率 (3)在庫・売掛金の前期比較(4)借入金の4点を自己チェックしましょう。1分もあれば簡単にチェックできます。

債務償還返済年数
長期・短期借入金−運転資金「売上債権−仕入債務+現預金」
利益×50%+減価償却費

最近の金融機関の審査では、債務償還返済年数というものが一つのキーポイントになっています。債務償還返済年数は上記の算式で算出されます。
これは企業の持つ債務を企業の返済能力でもって何年で返済できるかの指標です。金融機関でも、この指標を一番に考えているところもあります。一般的な格付判定では

 ○…十年以内   正常先
 △…二十年以内 要注意先
 ×…二十年超   破綻懸念先

と言われています。

では債務償還年数を改善するには会社はどうしたらいいのでしょうか。
答えは簡単で算式の分子を減らすか、分母を増やせばいいのです。

まず分子から見ていきましょう。ここは借入金を減らすのが一番良いので、まず検討することは会社の遊休資産の売却と経営者の個人資産を使うことです。
分母は何が何でも利益を増加させることだと分かります。


◎業績改善がわかる決算書

決算書にもいろいろありますが、金融機関が評価かる決算書とはどんな決算書か見ていきましょう。

(1)在庫が前期より減少している。
(2)遊休資産を処分・売却している。
(3)短期借入金や長期借入金が減少している。
(4)短期借入金から長期借入金へ変わっている。
(5)役員借入金を債務放棄して、債務免除益を計上している。


◎危険と見られる決算書

(1)貸付金・仮払金・立替金等の科目が多額…使途不明金や社長個人や関連会社への貸付金等はほとんど不良債権化していると見られます。

(2)投資等の勘定科目が多額…実質的な価値、時価に換算するとほとんど価値がないものとみられます。

(3)買掛金や未払金が急激に減少し、銀行からの借入金だけが急増している場合、倒産の可能性を考えて経営しているのではと見られます。仕事上の債務だけきちんと支払い、銀行にはいくら迷惑をかけてもかまわないと思っているのではと疑われます。

(4)売上高が急激な伸びをしている場合…会社の体制や資金繰りがついていけるかと懸念されます。





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知っていましたか?税務一口知識

一般にサラリーマン(正確には給与所得者)の場合は、年末調整によって所得税額の清算が行われていますので、確定申告の必要はありません。


1.所得税においては確定申告不要

しかし、給与所得者でも、不動産の貸付による賃料、講演料、原稿料、勤務先からの表彰金(給与とされるものを除く)等、少額ながらも所得を得ることがあります。これらの所得(収入金額からこれらの所得を得るために通常要した経費の額を控除した金額)が20万円以下の場合、所得税法では申告不要の扱いになっています。

正確には、1ヵ所から給与等の支払を受けている人で、給与所得以外の所得金額の合計額(源泉分離課税、一定の所得で申告分離課税の対象となった譲渡所得等、退職所得の金額を除く)が20万円を超える人は確定申告しなければならないことになっています。したがって、逆読みすれば、20万円以下の人は申告不要ということになります。

もっとも、給与所得者であっても、その給与収入が2,000万円を超える人、2ヵ所以上から一定額以上の給与収入及び所得を得ている人、同族会社の役員等で当該同族会社から給与以外に不動産等の貸付による賃料等の収入を得ている人は、確定申告をしなければなりません。


2.住民税においては申告義務

ところが、住民税では、給与以外の所得が20万円以下であっても、それらの所得についても給与所得と合わせて申告することとされています。

所得税の確定申告を毎年行っている人であれば、その手続きも容易ですが、問題は、年末調整で所得税額の清算が完了している人です。わざわざ住民税の申告のために市役所や区役所に申告用紙を取りに行き(休暇をとって)、必要事項を記入し、納税する人が何人いるか?です。住民税の規定は規定として理解できるのですが、この辺も少し検討してみてはどうかと考えます。


◎建物と建物附属設備は、どう違うの?

税法上、建物とは?
土地に定着した工作物のうち、原則として屋根、柱、壁があって、人の居住、作業またはものの格納の用に供されているものを建物とし、その他のものを構築物としています。

なぜ建物と建物附属設備とを区分したの?
本来は建物そのものに含まれるのですが、その構造及び使用状況等からその使用可能期間が建物本体の使用可能期間と開きがあり、また一般的に建物附属設備の使用期間の方が短いことから、建物本体に含めて償却するのは費用の配分上合理的でないとして、耐用年数上建物と区別して一項目設けられたものです。


◎耐用年数では建物本体と建物附属設備には大きな差がある!

■建物の耐用年数
例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造りの場合、事務所用50年、住宅用47年、店舗用39年となっています。

■建物附属設備の耐用年数
例えば、電気設備(蓄電池電源設備を除く)、給排水、衛生、ガス設備、冷暖房設備(冷凍機の出力22KW以下を除く)は、いずれも十五年となっています。

減価償却償却方法は?
建物については、特殊な場合を除き、法人も個人も定額法によらなければならず定率法は選択できません。

建物附属設備については、法人は原則、定率法によらなければならず、個人は定額法により計らなければなりません。個人で節税対策のため定率法を採用して早期に減価償却をしたい場合には税務署に定率法の選択届出書を提出する必要があります。


3.繰越欠損金の切捨て回避策

青色欠損金の切捨て

青色申告法人には、7年間の欠損金(赤字)の繰越しが認められています。すなわち発生した欠損金は翌事業年度から7年間の間に生じた所得(黒字)と相殺し課税所得を減らすことができます。

しかし、7年を経過した欠損金は切捨てられてしまいます。

欠損金の切捨ては、節税の機会を永久に放棄する一大事ですから、合法的な範囲で何とか対策を講じたいものです。


切捨て回避策の具体例

法人税法上、損金算入が任意とされている項目を計上しない方法。(ただし、会社法上、(1)(2)(7)の方法は妥当ではないようです。)

(1)減価償却資産の減価償却を実施しない。

(2)繰延資産の償却を実施しない。

(3)償却方法を定率法から定額法に変更。

(4)少額資産を取得時の一時の費用にせず減価償却資産に計上する。

(5)固定資産を修繕した場合、修繕費か資産計上すべきか微妙な時には資産計上する。

(6)滞り債権の貸倒れ処理を慎重に行う。

(7)貸倒引当金や返品調整引当金などの引当金を計上しない。

(8)海外投資損失準備金などの準備金の繰入れを行わない。

(9)買換え資産などによる固定資産譲渡益を減額する圧縮記帳を行わない。

(10)棚卸資産の評価方法を変更する。

(11)資産の評価損の計上を慎重に行う。


■売上の計上時期を変更する方法

(1)売上基準につき割賦基準や延払基準を採用している場合、引渡し基準に変更する。

(2)工事進行基準を採用している場合、工事完成基準に変更する。


■その他

(1)含み益が生じている有価証券、土地、会員権などの売却を行う。

(2)支払不要となった債務の戻入れを行う。


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