●今月の特集
平成19年10月から保証協会が80%しか保証せず、残りの20%は金融機関がリスクを負うという「責任共有制度」の導入は、中小企業の資金繰りに大きな影を落としつつあります。これとビジネスローンの折り返し融資が手のひらを返すように審査基準が厳しくなり、平成19年7月以降中小企業の資金繰りが急速に悪化し、平成18年と比較して40%近く倒産が増加しているそうです。燃料費の高騰・原材料費の高騰・少子高齢化による人材難・経済成長の鈍化等中小企業を取り巻く経済環境は日ごとに悪化を辿っています。今後、特に年商5,000万円未満の小企業の倒産が増加していくとの予想が各種調査機関で出ています。 このような景気動向、資金調達難な時こそ経営者の真価が問われます。このような時期だからこそ会社が体質改善、商品開発、人材育成等プラス面が一杯あるのです。不況だからこそ消費者の財布の紐が硬くなり、本物、良い物、リピーターや常連さんでお店や商品が選択されます。不況だからこそ、良い物、商品力が問われます。また、本物であるからこそリピーターや常連さんで繁盛していき、資金調達難であるからこそ、中長期の損益計画と資金計画を立て、月次決算を励行し、実績と予定資金繰り表を毎月作成して、資金の先行管理を行うことが必要となり、経営管理がしっかりするようになります。 黒字経営のコツ…大きいことは良いことだ。 同業他社の動向を見ていれば分かると思いますが、会社は規模が大きく、かつ管理会計と財務会計がしっかりしていて、経営、特に資金の先行管理をしている会社は強いです。当たり前ですが、規模が大きく、先行管理していれば、経営者が打てる手、判断の選択肢が増えるからです。 飲食・小売業を例にとれば、多店舗展開していて、赤字の決算予測になった場合、
2. 店長等の人の入れ替え 3. 経営委託等に切り替える 4. 造作譲渡等で赤字店舗を売却する 5. 店舗を閉める 少し思いついただけでも5段階の手を打てます。 これが一店舗の小企業場合であれば、1.の借金した上での頑張りしか手がないのです。5.の店舗を閉めることは、生活の糧を失うことになり、もう一度借金を抱えたままでの再就職は物理的にも精神的にも非常にきついことです。そのため決断もできず、ずるずる借金が膨らみ、人間関係を壊し、夜逃げすることが起こります。 経営の先行管理を前提に、会社の規模を大きくし、経営判断の多様な選択にする(私はこれを「経営のダム」と呼んでいます)ことが必要です。経営者にはいろんな顔といざというときの備えを最低3段階は持ちたいものです。 資金繰りを改善する近道 改善ポイントをしっかりつかみ、優先順位を付けて実行すること。 「お金」が足りなくなったから銀行等に融資を頼む。こんな安易な会社や経営者であれば倒産街道一直線です。実績資金繰り表や資金運用表を作成して、資金不足の原因をまずしっかりとつかむことが大事です。 ●資金不足の原因 お金から経営というものを理解すればすべての企業は、まずお金を商品や原材料費に投入し、販売により売掛債権となり、それが現金として回収されて一循環を終え、再び製造販売の行程に投入されお金に戻ります。資金不足は、企業に投下された資金が運用の過程で正常に循環しなくなったときに生じる現象といえます。お金が不足するのは会社が病気ということで、お金を借りてくるというのは、対処療法に過ぎず、病気を治療するものではないのがお分かりになったはずです。 まず自社のビジネスがお金を増加させるビジネスかどうかを吟味してください。お金を減少させるビジネスであれば、そのビジネスを見直すかやめるべきです。さらに、お金の運用の中身であるすべての資産を吟味し、非効率とムダを排除して資産を圧縮し、その見返りとして借入金削減を図ること、これが現在の経営環境における重要課題ということになります。 ●資金不足の態様と対応 中小企業が資金不足に陥る主要な原因は次の5つに要約することができます。 1. 会社が赤字経営の場合 資金不足を招く一番大きな原因は利益の減少又は赤字の発生にあります。赤字体質から抜け出ることは簡単ではありませんが全力を投入して黒字転換を図らなければなりません。赤字が続きこれを借入金で補てんしていると経営は早晩破綻することになります。 《改善ポイント》 (1)売上増加対策。単価×数量の見直し、支店・新規出店等。 (2)売上総利益と利益率の向上を目指す。 売上額よりも利益率重視の経営体質の転換を図る。 (3)仕入原価、製造原価 原価コストの削減に取り組む。
(5)大きな経費の削減に取り組む。通信費、募集費、広告宣伝費、交際費等。 (6)売上総利益/社員数 で800万円を割り込んでいる場合、人員削減が必要。 2.売上債権の滞留又は不良債権の発生 売上債権は、最終的に現金化されない限り資金とはなりません。決済されない売上債権の増大は資金不足を招きます。 回収を成り行き任せにしていると、当然売上債権は増加し、これは不良債権の温床ともなります。 《改善ポイント》 売上債権の回収を円滑に進めるには、回収方法、条件等についての明確な基準を作成することです。毎月定例の経営会議、役員会、営業会議等で売上債権の年齢調べを行い、1.再請求書発送 2.督促状発送 3.回収行動 4.販売停止 5.法的手続き 6.貸し倒れ処理等、与信管理の徹底含めて管理すべきです。特に決算期をまたぐ不良債権は税金負担を伴うことを理解することです。 3.在庫の過剰 動きの止まった在庫品の増加は資金の不足をもたらします。現金であれば倉庫に落ちている1万円札を拾わない人はいないはずです。ところがいったん在庫となってしまうと、100万円の在庫品が何年も倉庫に放置されることは珍しいことではありません。在庫とは札束の固まりなのです。在庫管理の出発点は、在庫とは「お金が眠っている状態」であるという認識を企業内で徹底することです。 《改善ポイント》
(2)適切な在庫量で仕入管理する…ムダな仕入をしない。 (3)不良在庫の処分を決算期前にする。 4.過大な設備投資 設備投資は通常多額の資金(借入金)を要し、しかも長期間固定します。投資の長期的採算性が予定に達しないと、それは過大投資となり経営に大きな打撃を与えます。 投資に当たっては綿密な計画をたて、投資金額は必要最小限に抑え自己資金と借入金バランスをとることが肝要です。借入金の返済計画については、事業別、店舗別等の損益計画と資金計画を立て、税引き後利益+減価償却費で何年で返済可能かを立てることです。通常、店舗で7年、不動産賃貸で10年で返済可能かどうかが判断基準と言われています。自己資金不足や返済の見込みがたたないときは、投資の縮小や延期の決断も必要です。 特に土地は減価償却しませんので、自己資金、自己資本=資本金+利益剰余金の範囲で購入すべきです。 5.自己資本(資本金と剰余金の合計)の不足=資本の部÷総資産 中小企業は通常、設立に必要な最低の資本金でスタートしますから、自己資本は始めから不足しているケースが普通です。どの程度の自己資本が必要かは一概に言えませんが、自己資本比率でみると中小企業の黒字企業平均は、卸売業20%台、小売業は35%前後で安定しています。製造業は上昇傾向にあり30%台を保っています。 自己資本比率を向上させるには、分子の資本の部を増加させるのが望ましいのですが、中小企業は株主の数も少なく増資には限界があります。また、利益の内部留保も一般的に積み増しには時間を要するのが現状です。結局自己資本比率を向上させる実際的対策は、売掛金や在庫、固定資産等の分母である資産の圧縮にあるといえます。銀行に走るだけが資金繰りではありません。資金に非効率とムダが生じないよう、日常的に経営のあらゆる場面できめこまめな資産管理を実施することが広義の資金繰りなのです。 与えられる時間は少ない、急ごう、企業体質の転換。 バブル崩壊以降、再び私たち中小企業は厳しい経営環境に突入しつつあります。経常利益の出せない企業、返済不可能企業は、市場からの総退場要求をされています。「自社の正しい経営数値を知る」「経常利益を1円でも出す」「借入金の月々の返済額が減価償却費+利益の範囲にする」等々、何よりも儲かる、ムダのない経営体質への改善が迅速に求められています。 《体質改善の手順》 1.自社によるパソコン会計を導入することです。 会社の経営実態を迅速に正確につかまずして経営の舵取りができるでしょうか。毎日、会計処理し、瞬時に自社の経営状況を見ることです。 2.今後1年間の、経営計画を作成し、人件費・家賃等の固定費が出るか検討することです。 特に1人あたりの売上総利益を注意し、最低800万円から1,000万円を確保すべきです。それ以下だと人員削減も検討せざるを得ません。 3.毎月、予算と実績を比較し、利益がマイナスであれば、原因と対策を、皆で検討することです。
6.遊休資産等は値上がり期待を一切捨てて即時処分していくことです。 ことわざにもありますが、「捨ててこそ浮かぶ瀬もある」。自宅や自己資産の売却も視野に入れて会社の再建を考慮すべきです。資産等は会社が存続していれば再度、購入すればいいのです。不況期や赤字経営の時ほど積極的な経営改善、投資や廃業まで思い切った転換をすべきなのです。 経営判断を迅速にせず、だらだら、ずるずると判断を引き延ばすことは、結果として事態を悪化させるだけです。 長期損益計画、長期資金計画を作成して、強い意志を持って実行することです。
検索サイトYahooで「不正経理」と入力してみると、184万件もの結果が飛び出しました。このように、社内の経理を始めとする社内不正は驚くほど多いものです。筆者の経験上でも様々な経理やお金にまつわる不正がありました。不正は、行った本人自身の人生を狂わせるのは当然としても、残った社員たちにとっても、疑心暗擬な気持ちにさせる「イヤ」なものです。不正経理の手口を紹介し、その対策を伝授しますので、ぜひご参考にしてください。 不正経理の手口 1.領収書の二回使用 これは一度精算した領収書を翌月もう一度現金精算したように見せかけ、現金を引き出す手口です。現金出納を一人の経理だけに任せている場合にはなかなか発見できず、月一回の会計事務所の監査でも、仮払精算がずさんな会社の場合、発見は難しいことがあります。小口現金の毎月の借方、貸方の金額に注意し、貴社の毎月の小口現金の必要金額を概算でつかんでおくことが必要かと思います。 2.領収書の改ざん これは昔から現金不正のもっとも多い手口です。領収書の金額10,000円に1をつけたして、110,000円と改ざんしたり、白紙領収書に金額を書きいれたりと多くの事例があります。また、領収書がもらえない、交通費、冠婚葬祭のお祝い金、お香典の金額を多くして、会社からお金を引き出す手口です。この手口は、脱税の手口にもよく使われていますが、経理や経営陣が領収書をチェックし、支払を厳密にすれば防げる事例が多いようです。また、使う人の限度額等を決めておくこと、経理を公開して会社の数字を風通しよくしておけば、みんなの目があり、不正が防げます。少なくとも、現金支出には2人以上の承認を必要とすることです。 3.簿外現金の不正流用 アルバイトがアルバイト料を取りにこないから金庫等に入れておき、雑給/現金処理してしまうと、簿外現金【帳簿の記録がない現金】になります。目の前に何の記録もないお金が存在してしまうと裏金の始まりです。使いこみが一番多いケースで、発見が遅れます。これと同じケースで、お客さんから送料をもらい、「簿外現金にしておいて使いこまれた」「社員の旅行積立金を簿外で預かり使い込んだ」等々。簿外現金は、一人だけの頭の管理になり、他の人も一時は覚えているが、段々と記憶から消え、簿外なので、会計事務所の監査対象にもならず、不正流用に至るケースが多くあります。 4.切手・回数券・商品券等の換金横領 会社の切手・交際用の商品券・新幹線等の回数券等を流用し、金券ショップ等で換金する。 これを防ぐには、高額な切手、収入印紙、回数券等の受払い簿を作成して管理する。ストック量の上限を決めることで対応している会社が多くあります。 5.仕入・外注費等の横領 仕入、外注費等の不正は、上記のケースに比較して、金額が大きくなる場合が多い。経営陣、経理担当者が最も注意深くチェックする必要があります。不正流用のケースを事例で見てみます。 (1)経営者に水増した買掛金支払表を作成して、小切手を作成してもらい、経営者がいない時に小切手に裏印を押印して、銀行で現金化し、実際の買掛金を現金振り込みして、差額を着服するケース。 仕入先は請求書通りの金額を支払ってもらって何も問題がなく、相手から絶対発覚しない犯罪です。実際の請求書をちゃんと閲覧し、確認して小切手を切ることです。集計表に基づく経理や支払いは一切せず、原始証憑を確認することが全てです。 (2)経営者が請求書を一切見ないことをいいことに、実在しない会社の支払いがあるように仮装して、小切手を切らせ、その小切手を自分の口座に入金していたケース。 年一度の残高照会、請求書と買掛金残高の実査で発見できました。 (3)仕入先や外注先からの不正なリベート。 最初は盆暮れの贈答ではじまった仕入担当と出入業者の付き合いが、バックリベートという多額な金銭の授受に発展していくケースです。今話題の山田洋行のケースもこれにあてはまります。担当者の交代、リベートが見込まれる業者とは契約段階で書面ではっきりさせておくことが必要です。常に相見積もりを心がけ、同業他社の原価率等にも注意を払うことです。経理を公開して、業績賞与制度等を取り入れれば社員間から発覚します。裏リベートが発生するケースは経営者が公私混同している会社に起きやすいからです。 6.商品の横流し これも不正が多いケースです。事例を挙げると、 (1)酒の卸業者の社員が、配達先の居酒屋の隣の八百屋にビール等を横流しした例。 この業者が実地棚卸しをしていないことから不正が発覚しないと社員は考えました。抜き打ちの担当者以外での棚卸し、原価率の異常値管理する必要があります。 (2)焼き肉屋、寿司屋等での店舗食材の横流し、自宅への流用。会社の備品等まで広げると、これはすべての会社に言えますが、会社の在庫・備品・消耗品の横流し、使い込みは日常茶飯事です。原価率による管理、社員相互の志、プライドの保持、情報の集収、社員の生活管理、特にサラ金等の借金の有無は重要事項です。 (3)最近インターネットのオークション等で会社の在庫の横流し、換金化がしやすくなったと言われています。在庫管理、会社備品の管理の徹底が求められています。 7.売掛金の回収・売上金の使い込み これはすぐに発覚する犯罪ですが、社員が逃亡する際に一番多いケースです。 不動産業・建設業・製造業・卸売業等で多く、未だ銀行振込ではなく、現金や手形の回収が多い会社に発生しやすい。対策としては、 (1)現金回収はできるだけ避け銀行振込にさせる。 (2)領収書に連番を打って管理する。 (3)年一度は残高確認状を出す等々が考えられます。 8.労働力やノウハウの横流し 会社を通さずサービスを提供して報酬を得るケースで、本来会社に入った収入を自分の懐に入れてしまうケースであり、中には不正と思っていない人もいます。副業禁止の企業も多いですが、5月頃届く住民税の特別徴収額が変更になった人については、確定申告等があり、年末調整の変更、別の副収入があった可能性があり、確定申告の控えを提出させる等で副業の有無が発見できます。
節税対策には、会社の仕組みや役員体制、減資等、事前準備や経営の根幹の変更を伴うものがあります。メリット、デメリットを判断し、長期的な見通しを持ち、しっかりと事前準備をして節税対策を実行してください。 資本金1億円以下だと税務上さまざまなメリットがあります。 会社本来の目的は利益をあげることですから、元手となる資本金の額は大きいほど有利です。そこで、留保された利益の額が大きくなったときや、出資者が現れたときなど、チャンスがあれば資本の拡充―すなわち増資を目指すのは当然のことです。 ただし、法人税では資本金1億円以下の中小法人には、さまざまな有利になる規定を設けています。それらのメリットを検討した上で、増資の是非を考えることが必要です。 では、資本金1億円以下だとどういうメリットがあるのか紹介しましょう。 1.資本金1億円以下の法人は税率が軽減される 本来30%の法人税率が、所得800万円以下の部分については22%に軽減されています。法人税・法人住民税を合計しても30%強の実効性率であり、800万円の利益に対して、240万円の税金、560万円が内部留保できます。 2.交際費の経費算入限度額が有利になる 資本金が1億以下であれば400万円までの交際費のうち90%が損金に算入することができます。 3.特別償却、特別控除が適用される 政策上、中小企業には各種の特別償却、特別控除が認められています。これらの制度のほとんどは、資本金が1億円以下の青色申告法人に適用されるものです。 4.30万円未満の小額減価償却資産は即時経費処理できる 資本金1億円以下の中小企業については、平成18年4月1日〜平成21年3月31日に取得・使用開始した30万円未満の減価償却資産は合計額が300万円までは即時経費処理できます。 5.法人住民税の均等割額が少ない 法人住民税には、法人税額に比例する部分(法人税割)と、法人税額に関係なく課税される部分(均等割)があります。均等割額は資本金の額が小さいほど少なくなります。 6.外形標準課税の不適用 法人事業税については、資本金1億円超の法人を対象とする外形標準課税制度が創設され、平成16年4月1日以後開始事業年度から適用されています。資本金が1億円以下の法人は不適用でおおむね3%の節税効果があります。 7.特定同族会社の留保金課税の不適用 同族会社の場合、利益が出ても、株主として受け取る配当金に対する所得税の課税を免れるために、あえて配当をせず社内留保するなど、税負担の軽減を図ることが比較的容易です。そこで、同族会社が所得のうち一定の金額を社内に留保したときは、通常の法人税とは別に、その留保金に対して特別に課税することとされています。 しかし、中小企業については、資金調達能力が不足しており、内部留保を充実させていく必要から、平成19年度の税制改正では、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の「中小特定同族会社」については、留保金課税の適用対象から除外されることになりました。 この改正により、中小企業にとって、不可欠な内部留保の充実が図られることになります。 8.管轄が原則国税局から税務署管轄となる。 1億円以下の法人の管轄は税務署が原則です。 上記の優遇措置は資本金が1億円以下の中小企業に適用されます。では実際1億円超の法人の減資手続きはどのようにすればいいのでしょうか。赤字であれば、資本金/原資差益、減資差益/繰越損失という無償原資で処理できますが、債務超過でなければ、資本金を株主に返金する有償原資となり、資本金/現預金として処理します。法的手続きとして、株主総会の特別決議等が必要で、利害関係者への公告等も必要ですから、顧問税理士、司法書士さんとご相談してください。 ●付録 平成19年度用の確定申告チェック表を掲載しました。確定申告の最終チェックにご活用ください。
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