会計事務所と顧問先をむすぶCLUE 第114号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『いよいよスタート!平成19年度確定申告』
 経営・財務・・・ 『上位4位までの大きな経費をまず管理しよう!』
 経理・税務・・・ 『間違いやすい 消費税の注意点』





 今月の特集

いよいよスタート!平成19年度確定申告

今年も確定申告の季節がやってきました。平成19年度の確定申告について重要と思われるポイントをまとめてみました。確定申告の準備は大丈夫ですか。還付申告は2月16日以前からも受け付けています。

また、難しいと思われている電子申告について、会社ぐるみで実施されてはいかがでしょうか。経理担当者や顧問税理士にご相談ください。

所得税確定申告準備表



知っておきたい 確定申告の豆知識

1.電子申告で5,000円の小遣い稼ぎ

本年又は来年の確定申告時期に電子申告をすると、サラリーマンの場合5,000円の還付を受けられます。電子申告といっても、その送信内容は、年末調整後に会社からもらった源泉徴収票の内容とまったく同じものを、単に打ち込むだけのことです。本来確定申告義務者でない人{年末調整で終わっていた人}も適用可能です。

余計なことと言えば、還付を受けるための銀行口座を決めておく必要があるということぐらいです。ただし、そのためには、二つの準備と1,000円の先行投資が必要です。

第一に「電子申告開始届出書」を提出しておかなければなりません。提出には、国税庁のホームページの「提出コーナー」から送信する方法と、届出書用紙を入手して必要事項を書き込み、郵送等をする方法があります。「提出」すると、利用者識別番号と暗証番号が送られてきます。

第二に、電子証明書を取得しておくことが必要です。電子証明書の取得には自治体の公的個人認証サービスで1,000円のお金がかかります。


会社規模で行うと効率的

会社規模で全員の「電子申告開始届出書」を各人に配布し、各人が任意に提出すれば第一の準備が終わります。第二の準備も終わったとして、その次は、会社のどこかにICカードリーダを置いておき、各人がパソコンで国税庁の確定申告e−Taxコーナーにアクセスして電子申告を試みる、ということになります。ICカードリーダの置いてあるマンガ喫茶から申告してもかまいません。ICカードリーダを借りて自宅で試みるのも結構でしょう。


サラリーマンだけの朗報ではない

年金者の場合、とりあえず、紙ベースでの申告を済ませておいて、それと同じ内容を電子申告しても、それで年税額が5,000円分は減少します。そういう意味ではサラリーマンに限定されない朗報です。自治体などの公共スペースにICカードリーダ付き電子申告用パソコンが設置されると便利ですね。

最後に、この5,000円の還付は、平成19年度・20年度のみ1回限りの特典です。


2.地震保険料控除について

保険会社から送られてきた火災保険の保険料の通知書に、「この保険料は、平成19年度より、所得税の申告で損害保険料控除の対象にはなりません」と記載されていて、驚かれた方はいらっしゃいませんでしょうか? 平成18年の税制改正により、平成19年分からの損害保険料控除が大きく変わっています。

(1)平成19年分の所得税から、今までの損害保険料控除は廃止されました。


(2)地震保険料控除
平成19年より、新たに「地震損害保険料控除」が設けられました。

1)内容
特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料や掛金を支払った場合に、その保険料等の合計額(最高5万円)の所得控除を受けることができるという制度です。

2)控除の対象となる損害保険契約等
納税者や、納税者と生計を一にしている配偶者、その他の親族が所有している家屋で常時居住のように供しているもの、又は、所有している生活用の動産を保険や共済の目的としていること。かつ、これらの資産について、地震、噴火、又はこれらによる津波を原因とする火災、損壊等による損害の額を補てんする保険金や共済金が支払われる契約であること。


(3)経過措置

平成18年12月31日までに締結した「長期損害保険契約等」については、平成19年分以後も、今までの損害保険料控除と同様の金額(最高1万5千円)の控除を受けることができます。

(2)の控除も適用する場合は、両方合わせて最高5万円の控除額となります。


3.サラリーマン 給与以外の所得があった場合

所得20万円以下でも申告?

一般にサラリーマンの場合(正確には給与所得者)は、年末調整によって所得税額の清算が行われていますので、通常は確定申告の必要はありません。


(1)所得税においては確定申告不要

しかし、給与所得者でも、不動産の貸付による賃料・講演料・原稿料・勤務先からの表彰金(給与とされるものを除く)等、少額ながらも所得を得ることがあります。これらの所得(収入金額からこれらの所得を得るために通常要した経費の額を控除した金額)が20万円以下の場合、所得税法では申告不要の扱いになっています。

正確には、1ヵ所から給与等の支払を受けている人で、給与所得以外の所得金額の合計額(源泉分離課税、一定の所得で申告分離課税の対象となった譲渡所得等、退職所得の金額を除く)が20万円を超える人は確定申告しなければならないことになっています。従って、逆読みすれば、20万円以下の人は申告不要ということになります。

最も、給与所得者であっても、その給与収入が2,000万円を超える人、2ヵ所以上から一定額以上の給与収入及び所得を得ている人、同族会社の役員等で当該同族会社から給与以外に不動産等の貸付による賃料等の収入を得ている人は、確定申告をしなければなりません。


(2)住民税においては申告義務

ところが、住民税では、給与以外の所得が20万円以下であっても、それらの所得についても給与所得と合わせて申告することとされています。

住民税の規定は規定として理解できるのですが、所得税の確定申告を毎年行なっている人であれば、その手続きも容易ですが所得税で申告不要を選択しているときは注意が必要です。


4.不動産貸付が事業的規模となるとメリットが多い

不動産貸付が事業的規模になると、次のようなメリットがあります。

1)青色申告特別控除は、事業的規模であれば複式簿記による帳簿記入を条件に65万円の控除が受けられます。(事業的規模でなければ10万円の控除しか受けられません。)

2)税務署に青色事業専従者として届けてある配偶者その他親族に対して給与を支払った場合、適正額が全額必要経費になります。(白色申告の場合には、事業専従者に給与を支払っても配偶者は86万円、それ以外の親族は1人50万円までしか必要経費になりません。)

3)建物の取り壊し等によって損失が出て不動産所得に赤字が生じた場合は、他の所得から赤字を控除できます。(事業的規模でない場合は、損失の必要経費算入は不動産所得金額が限度で他の所得から控除できません。)


事業的規模の判定は如何にするのでしょうか。

不動産貸付か事業的規模かどうかは社会通念によって判定をしますが、判定が困難な場合には、形式基準を参考に判定します。

(1)社会通念による事業的規模の判定

1)貸付資産の規模

2)賃貸料の収入状況

3)貸付資産の管理に係わる特別の人的・物的施設の設置等により判定します。

(2)判定が困難な場合の形式基準(建物を賃貸している場合。)

1)貸間・アパート等については10室以上

2)独立家屋については5棟以上

3)共有者がいる場合は、共有持分で按分した室数・棟数ではなく、実際の室数・棟数により判定します。

4)貸室と貸家を両方所有している場合は、貸室2室を家屋1棟として判定します。





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上位4位までの大きな経費をまず管理しよう!

細かい経費は後で…
まず大きな経費の管理から始める


どのような業種でも共通しますが、管理すべき経費は金額が多い上位3位〜4位までの経費です。

飲食・小売であれば、原価・人件費・家賃・広告宣伝費であり、建設業では、材料・外注費・人件費・リース料、IT産業であれば、外注費・人件費・家賃、医療であれば、薬剤材料・人件費・家賃等でしょう。細かい経費に目をやるのではなく、大きい4つぐらいの経費の削減にまず手をつけることです。

電気代や水道代をケチケチする会社は、飲食業等ならいざしらず、販売管理費の1%にも満たない経費を管理するだけ時間と手間がムダであり、何よりも精神的に疲れるのではないでしょうか。ゴルフでも80台で回る人の1打を縮めるのは至難の技ですが、130台のうちの1打は簡単です。同じように経費のうち、売上に対する構成比上位3位か4位あたりをまずしっかり管理するのが、経営改善の早道です。飲食・小売業が典型的ですが、原価・人件費・地代家賃で、経費の75%〜80%程度占めています。


1.まず原価率の見直し、コストダウンを図ることです。

経営会議での事例では、原価のコストダウンは調査から始まります。

 1) 売上の目算違いで商品のムダな廃棄をしていないか。
 2) 賄い料理に高い食材が使用されていないか。
 3) 商品の横流し等の不正はないか。
 4) 同業他社と比べて、原価率が適正か。
 5) 仕入調達先の合い見積もりを取っているか。安く手に入る方法の模索。
 6) 売価が適正か。

 等々の検討がなされています。


2.次に人件費のコントロールです。

人件費が適正かどうか、生産性の調査がまず必要です。売上総利益を社員数で割ってみることです。売上総利益8,000万円の会社では、社員{常勤役員を含め}が8人以下であれば、優秀な会社と言えます。1人1,000万円の売上総利益があれば、平均給与500万円前後が可能です。

しかし、10人以上であれば、1人800万円以下の売上総利益しかなく、平均給与も400万円程度となり、ギリギリの状態ではないでしょうか。もちろん業種や業態、社員の年齢構成、社長の給与水準、男女比とのかねあいも考慮して判断する必要がありますが、自社の客観的水準を1人あたりいくらの売上総利益があるのかを常に知っておくことは重要です。

また、人件費を変動費化することは重要です。つまりお客さんや仕事の多い時に人を多く配置し、少ない時に必要人数しかおかないという人事配置が必要です。これには過去のデータを取り、分析することです。まず月ごとの売上推移・曜日ごとの売上推移・イベント等の売上変動をつかみ、それに応じてアルバイト・パートを適正に配置することです。そんな都合のいいアルバイトやパートはいないとおっしゃる経営者もいます。しかし、低い時給で長時間勤務よりも、必要な時だけ短時間勤務で時給を高くした方が、より従業員が集まります。

また、経理や総務・業務等で季節変動のある場合、ちょっと高くても、人材派遣を活用することも人件費を変動費化するコツです。営業日報にアルバイト・パートの1時間あたりの売上を記載し、時間売上を算出しておき、ムダな人件費をなくす努力が必要です。


3.地代家賃

昔から1ヶ月の家賃は3日分の売上が適正といわれていますが、売上の約9%〜10%が丁度それにあたります。月家賃20万円の店舗であれば、月売上最低200万円が必要となります。家賃の10倍を稼げるかどうかが、新規出店の目安となるようです。

広告宣伝費も最近は大きい経費となっています。いくら位広告にお金をかけていいのかと聞かれることが多いですが、まず同業他社の実態をよく調査することです。おおむね売上の2%以内が広告宣伝費の限度といわれています。


●事例報告

平成8年から経営会議を導入されている下記の会社は、食品小売業ですが、原価・人件費・家賃の3大経費が75%に収まることを目標にすべきといつも経営会議で言っています。そこで過去20年近い3大経費の構成比を出していただきました。多くの会社がそうかもしれませんが、この20年バブルもあり、大きな時代の転換期でもあった訳ですが、自分の会社をこういう視点から分析すれば違った見方もできるのではないでしょうか。

この会社では、平成13年・14年に75%を切っておられ、それぞれ1,000万円を超える利益を出されています。また、昭和64年・85%、平成5年・84%と75%を大きく超えている年はそれぞれ1,000万円近い赤字を出されています。3大経費は75%以内に抑えるという格言は立証された形です。

また、ここ20年の推移で3大経費の構成を比較すれば、中小企業の現状が見えます。平成3年と平成18年の比較では、原価率が39%から35%、人件費が32%から30%へ、家賃が7%から13%へ増大しています。家賃は売上額が下がったことにより、固定費である家賃の比率があがり、その分のしわ寄せを原価と人件費の削減で埋め合わせている実態が垣間見れます。

ぜひ参考にし、自社を分析して、経費の見直し、削減、管理に役立ててください。




総売上高






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間違いやすい 消費税の注意点

消費税の処理については、解釈の相違などで争う余地が少なく、処理が正しいか否か、課税か課税対象外か、結果がはっきりしています。金額が小額でたまたま間違えたというような場合には指導扱いとなることもありますが、税額が2万〜3万円レベルの金額になると修正申告を要求されます。

消費税は一件当りの金額は少額ですが、大量に反復継続するものについて誤りがあると金額がかさんでくるので、基本をしっかり押さえておく必要があります。


1.加盟店のクレジット手数料は、仕入控除できません!




(1)加盟店は10,500円(消費税込)の商品を消費者に販売した際に、消費者から現金の代わりにクレジットカードの提示をうけます。

(2)加盟店は(1)の商品代金10,500円を信販会社に債権譲渡します。

(3)信販会社は、その債権を商品代金の95%の9,975円(10,500円×95%で買取ります。)

(4)信販会社は、消費者より10,500円を回収します。

加盟店の取引を仕訳で示すと

1)商品販売時
売掛金 10,500 / 商品売上 10,500

2)債権譲渡時
信販会社未収金 9,975 / 売掛金 10,500
債権譲渡損失525
(10,500−9,975)

3)債権譲渡代金回収時
現預金 9,975 / 信販会社未収金 9,975

上記2)の仕訳の際に、消費税計算上で仕入控除の対象にしている場合があります。

加盟店が信販会社に売掛債権を譲渡することは、消費税上では「有価証券に類するものの譲渡」として、非課税取引に該当します。従って、その際に生じた売却損(=クレジット手数料)は、仕入税額控除の対象にはなりません。


2.給与? 外注費?

会社の支払う人件費として、主に給与と外注費がありますが、この二つ、税務上の取扱いには大きな違いがあります。


(1)取扱い上の違い

 1)給与
 ・源泉所得税の徴収対象となります。
 ・消費税は非課税
 ・労働保険、社会保険の対象となります。

 2)外注費
 ・仕事の内容によっては、源泉所得税の徴収対象にはなりません。
 ・消費税の課税対象

以上のように、どちらに該当するかによって、消費税や、社会保険料の負担が大きく変わってきますので、両者の違いを理解しておく必要があります。


(2)給与と外注費とは

 1)給与
 ・俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与による所得。
 ・雇用契約、委任契約によります。

 2)外注費
 ・支払を受ける側からみて事業所得又は雑所得請負契約によります。

 3)外注費とされる要件
 ・請け負った契約の内容が他人の代替ができること。
 ・使用する材料や道具が、請け負った側が用意することとなっていること。
 ・ 台風、火災等により請け負った仕事が完遂できなかった場合、報酬が支払われない契約となっていること。
 ・作業を進めていく上で、依頼者側の指揮監督を受けないこと。

さらに、外注費として認められるためには、業務委託契約書を取り交わしておくこと、請求書、領収書の保存等により、外注費であることを明確にしておくことが、大切です。


3.課税対象とされない通常会費

何々会、××会、はたまた○○会と乱立しています。そんな中で、会費が消費税の対象か、或いは非課税かと判断に迷うのが会社の経理担当者の悩みの一つだと思います。こんなときの判断基準の一つとして、受取先が課税取引として扱っているか否かが一つの基準です。

しかし、それだけで判定できない場合もあります。支払先が課税事業者であれば課税取引と扱っているかで判定することができます。

消費税基本通達では、「同業者団体・組合等の通常会費は、同業者団体等がその構成員に対し特別の給付等を行うものでない限り対価性が認められないことから、消費税の課税対象となりません。」と言いますが、やはり難しいと思います。


課税対象となる会費

会費として徴収する場合でも、それが実質的に出版物の購読料、職員研修の受講料又は施設の利用料等と認められるときは、その会費は資産の譲渡等にかかる対価に該当し、課税の対象となります。

会費のまとめ
同業者団体の会費
 1)通常会費
 ・課税売上、課税仕入にならない

 2)対価性のある特別会費
 ・課税売上、課税仕入となる

 3)判定が困難な会費
 ・団体が課税仕入としているときは課税仕入


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