●今月の特集
節税対策の優先順位の一番は、お金がかからず税金が安くなる対策を考えることです。これは、換金性のある正しい決算書を作成する作業でもあります。不良の売掛債権・価値のない固定資産・回収見込みのない貸付金・経費である仮払金・立替金・価値の下落した商品等の在庫・値下がりしている有価証券・返金されない敷金・保証金等、決算書を正しく作成する作業が結果として節税になるのです。企業の健全な経理をする意味でも最初に手をつけるべき決算対策です。 【1】売掛債権の中に不良債権はありませんか? 不良債権を見直し、個別貸倒引当金も設定が可能なものについても、漏れなく設定し、また回収見込みの立たないものは債権放棄等により貸倒れ処理を行ないます。 1.個別貸倒引当金の設定の条件 貸倒引当金の個別繰入は、まだ貸倒損失として計上するほどの事実は発生していないが、その債権の相当部分について回収不能と認められる事実の発生等がある場合に、実質的にその債権の部分的貸倒れを認めるものです。 その取扱いは、形式基準によるものと実質基準によるものとがあります。 2.貸倒損失の計上の条件 貸倒損失は、債務者の債務弁済能力を個別かつ具体的に検討し、債権が回収不能と認められる場合にその計上が認められます。 ★債権放棄・・・債権者の債務超過の状態が相当期間継続し、弁済が受けられない場合の書面による債務免除 債権放棄の内容証明書式サンプル 【注意事項】 (1)回収不能である客観的証拠、請求書、督促書、弁護士等による督促内容証明等を揃えておくこと。銀行取引停止や不渡手形、小切手の現物保管等を用意しておいてください。 (2)債務の免除は、全額免除だけではなく、一部免除でもかまいません。 (3)税務上の注意点としては、債務免除が贈与の扱い【寄付金課税】とならないように注意することです。資本関係、取引関係、役員の状態によっては、債務免除をしても貸倒損失/売掛金という処理を認めず、寄付金/売掛金となり、一定額を超えた寄付金については税務上の損金となる場合もあります。 (4)繰越欠損の関係で、債権放棄の時期が7年前か否かが問題になります。貸倒損失の時期判断との整合性を確認してください。 【2】棚卸資産による節税 1.低価法を採用し、評価損を計上する 不良在庫の評価損を計上する 2.バーゲン・廃棄処分を行なう〔不良在庫、陳腐化品、キズモノ等は、思いきってバーゲンまたは廃棄処分を行ないます。〕 3.消耗品等である貯蔵品を購入時の損金とする〔継続的に購入時に損金経理すれば購入時の費用として認められます。〕 <ポイント> イ)1で評価方法を原価法から低価法へ変更する場合は、事業年度開始の前日までに届出が必要です。 ロ)3の対象となる消耗品等とは、次のようなものです。
決算処分はなぜ節税になるのか? 例外的に季節品や流行遅れ商品は、評価損計上できます。 評価方法として低価法を選択すると、在庫の評価を少なくとも期末時の時価まで下げられます。しかし、その時価でも売れない商品というのはあるものです。この場合、低価法でもまだ棚卸資産を過大評価していることになり、利益も過大に計上されてしまいます。 1、「棚卸資産の評価損」を経費で落とす。 次のようなときには、低価法を採用していなくても「棚卸資産の評価損」を経費として計上し、利益が過大にならないようにするのが、ベストです。税法では、棚卸資産の評価損計上が認められる場合を定めており、それに合致すれば評価損を計上することが認められます。 売れ残った在庫を「評価損」として経費で落とす。 こういうときは、「評価損」を計上できる!
例えば季節もので売れ残った商品があって、今後、とても普通には売れそうにないことが明らかなときは、評価損を計上できるわけです。具体的には、商品の取得価額と、仮に売るとした場合の売却見込額との差額を評価損として経費処理します。 この場合、売却見込額はスクラップとしての処分価額ではなく、あくまで商品として売った場合の見込価額です。そこで問題になるのが、適切な売却見込額の決め方です。一体いくらなら適切なのか、根拠のある見積もりをするのは実務上困難ですし、客観性を求めればなお難しくなるでしょう。 2、評価損の正当性を示す根拠をつくるには? 売却見込額を決める、とっておきの方法をご紹介しましょう。実際に著しい低価額で売れた(あるいはそれでも売れなかった)という実績をつくるのです。 つまり、決算時のバーゲンセールと一緒に、はんぱ物、見切り処分品として売りに出します。売れたらそのレシートが売却見込額の根拠になり、売れなくてもバーゲンの広告チラシ等が根拠になります。これらを帳簿書類とともに保存しておけば、後日税務署から問い合わせがあったときに、経費計上した評価損の正当性を示すよりどころになります。 売れ残った季節品等の評価損の計算方法
↑この計算で出た金額が、評価損として損金処理できます。 <ポイント> レジシートやバーゲンセールの広告などを証明資料として保管しておくこと。 【3】固定資産による節税 1.償却方法としては定率法を採用する 2.特定設備の取得、中小企業者の機械取得等特別償却、特別控除、新築貸家住宅等の割増償却を実施する 3.機械等のうち現在使用していないもので、将来も使用する見込みのないものは当期内に除却処理する 4.固定資産台帳と現物とをチェックして、過年度における除却漏れの有無を調査する 使われてない机やパソコンは、除却できないのか? 実際に使われていなければ、スクラップ価格を引いた値段が除却できる? 会社の事務所の片隅や倉庫に積まれたままになっている、古い事務机やロッカー、パソコンなどはありませんか。もう使うあてはないが、引き取ってもらうにも費用がかかるので、とりあえず放置してある減価償却資産。これらは、事業の用に供していないので、減価償却費は計上できません。かといって現物はあるのだから、帳簿から消すこともできないとあきらめているのでは?しかし、税法では、このような状態の減価償却資産については、実際には存在していても、「除却損」を計上することを認めています(有姿除却)。つまり、使用をやめて今後通常の方法では事業に使用する可能性がない減価償却資産は、現物を解体・破砕・廃棄などしなくても、除却損として経費に計上できるのです。昨今、スクラップ処分の費用はかかりこそすれ、売却見込価額はほとんどゼロに等しいですから、残された簿価はほとんど除却損として計上できるはずです。放置された減価償却資産にまだ簿価が残っていないか、一度、資産台帳を見直してみてください。 「特別償却」「特別控除」は、どのような場合に認められるのか? いろいろな特別償却制度があるので、事前によく調べておこう。 税法では、産業・経済政策の一環として、特定の業種、地域、設備について、特別に減価償却の増加枠(特別償却)を認めることが行なわれています。減価償却費の増加は法人税の負担軽減となるので、特定の業種・地域の支援や、特定の設備の償却を早めて設備投資を促進することが目的です。 このような制度は「租税特別措置法」という時限的な法律で定められ、毎年の税制改正で制定・改正が行なわれています。その数は30以上にものぼり、適用対象もさまざまです。ですから、設備投資の計画があるときは、前もって特別償却制度を調べてみましょう。適用条件に合った設備投資にすれば、大きな節税になるはずです。 以下にあげたのは、比較的、適用条件が緩やかで、中小企業が利用しやすいものの1つです。 ●機械等を取得した場合の特別償却とは? 「中小企業者が機械等を取得した場合の特別償却又は特別控除」 (1)対象となる法人 資本金1億円以下の青色申告を行なっている法人(単一の大規模法人(資本金1億円超の法人)に資本の50%以上を所有されているもの、複数の大規模法人に資本の2/3以上を所有されているものを除く。「中小企業等」という)。 (2)適用対象となる期間 平成21年3月31日までで、対象資産を事業の用に供した日を含む事業年度 (3)対象となる資産(いずれも新規に限る) イ)1台の取得価額が160万円以上の機械および装置 ロ)1台の取得価額が100万円以上の器具および備品 ハ)その他 (4)対象となる業種 一部のサービス業を除く、ほとんどすべての業種 (5)特別償却額 取得価額×30%(船舶については取得価額×75%×30%) (6)特別控除 特別償却に代えて、次のいずれか小さい額をその年分の法人税額から控除することも選択できる。 イ)取得価額×7% ロ)この特別控除前の法人税額×20% (7)リースの特別控除 対象となる資産を取得でなくリース契約により利用している場合は、次のいずれか小さい額をその年分の法人税額から控除できる(※リース期間は5年以上ですのでご注意ください。) イ)リース総額×60%×7% ロ)この特別控除前の法人税額 × 20% 【4】未払金等の節税 1.債務が漏れなく計上されているかを確かめ、すでに債務が発生しているにもかかわらず未請求のものについては、請求書を要求する等して未払計上する。 2.給料・社会保険料の未払計上も忘れずに行なう。 〔例えば、20日締め月末払い条件の給与の場合、21日から月末までの10日分を未払計上できます。役員については計上できません。〕 3.消費税の会計処理について、税込処理をしている場合は未払計上を行なう。
社長の仕事は営業や物づくりだけではありません。会社の経営数値が分かって初めて社長なのです。そうは言っても世の中には会社の経営数値を理解せず経営をしている社長も多く、経理でも会社の経営数値を理解している人ばかりではありません。しかし、決算書、特に月次の決算書は会社の危険情報を迅速に知る大きな武器です。各種統計でも月次決算をしておらず、年一回程度の決算書しか作成していない会社の倒産率は、はるかに高いとのことです。銀行の審査でも毎月試算表や決算書を作成しているか否かを融資の判断材料としている金融機関があるほどです。会社の経営数値を熟知していれば、危険情報を早期に読み、早々と色々な手を打てます。漠然としたイメージでしかつかんでいないので、経営判断が遅くなり、気がついた時は手遅れということになりかねません。なかには、会社の利益を現預金の残高で判断されている経営者や借入金の返済が会社の経費になると思っている経営者もおられます。売上は現金入金された時や受注した時、注文があった時という経営者もおられます。経営者の方々には会計や税金の知識をもっと理解していただきたいと思います。毎月定例日に役員会議や経営会議を開催し、経理担当者や顧問税理士から月次決算書を提出してもらい自社の問題点、課題を報告してもらっている会社には倒産は無縁です。商売の基本は己を知ること。その最初の第一歩は自社の決算書を読めることです。 今回は以下の3つ程度の決算書の読み方を知っていただき、ぜひ御社の決算書を手に取り電卓を叩いてください。 【1】固定長期適合率=固定資産は長期資金で 企業の安全性を図る指標に固定長期適合率と言うものがあります。 固定資産を自己資本と固定負債の合計で割ったものをパーセントで表示したものです。企業の固定的な資産とその資金の出所が適正にバランスしているかを見る指標です。ですから、100%以下で低い方が安全性が高いということになります。この値が100%を超えている場合は、短期的に調達した資金で固定的な資産を購入しているということになります。 貸借対照表 固定資産とは 固定資産は以下のように区分されます。 1.建物や車両等の形のある有形固定資産 2.借地権や特許権・ソフトウエア等の知的財産等の形のない無形固定資産 3.子会社株式等売却予定のない有価証券や長期の貸付金等の投資その他の資産 4.費用の繰延である繰延資産 いずれも直ちに、資金化される見込みのない資産です。 固定負債とは 固定負債はあまり種類がなく要は流動負債とならないものですから、以下のようなものがあります。 社債・長期借入金・引当金等です。しかし1年以内に償還期限が来る社債や1年以内に返済する借入金の一部や1年以内に支払わなければならない賞与引当金などは、流動負債となります。 総資産と負債+資本は必ず一致いたします。 総資産は流動資産と固定資産の合計です。負債+資本は分解すると、流動負債+固定負債+資本です。ですから固定長期適合比率が100%を超えている場合は、流動比率が100%以下となって、企業の安全性が疑問視されます。 【2】流動比率=(流動資産÷流動負債)×100 支払不能の可能性は?企業の安全性を計る経営指標の一つに流動比率と言うのがあります。 これは流動資産を流動負債で除したものをパーセントで表したものです。 何を意味するかと言うと、直ぐに資金化できる資産と、直ぐに支払わなければならない負債との比率です。ですから流動比率は100%を超えていれば、1年以内に支払不能になる確率が低いとされています。 なにが流動資産に属するか? 流動資産には、まず既に資金として使える現預金が上げられます。金銭債権では、受取手形や売掛金や未収金・貸付金・有価証券等が該当します。棚卸資産も不良在庫でない限り流動資産となります。非金銭債権では、前渡金や前払費用等が該当します。 但し1年を超えないと満期がこない定期預金や、全く売れる見込みのない有価証券(子会社株式等)や1年以内に返済の見込みのない貸付金等は除かれます。要は1年以内に資金化又は費用化される資産を流動資産と言います。これをワンイヤールールと言います。 なにが流動負債に属するか? 流動負債には、支払手形や買掛金や未払金等で通常の商取引に基づいて発生した債務や預り金・前受金・引当金等が含まれます。但し流動資産同様のワンイヤールールが適用されます。ですから最終返済期限が5年後の借入金であっても1年以内に返済しなければいけない分は流動負債に表示する必要があります。 連年比較で傾向を掴む 中小企業の場合かかる表示の曖昧性は否めませんが、毎期同じ基準で処理された決算書であれば、連年で比較することによって流動比率が良くなっているのか、すなわち資金に余裕が出てきているのか? 余裕がなくなってきているのか? の傾向は掴めます。 【3】自己資本比率=企業の安全性を計る経営指標に自己資本比率があります。 貸借対照表の左側(借方)の資産の部は企業の財産の状況を表しており、その総額を総資産と言います。一方右側(貸方)の負債の部と資本の部はその財産を取得する為の資金の出所を表しておりその総額を総資本と言います。そして財産の取得結果を表した総資産と取得原因を表した総資本はその合計額が必ず一致します。 自己資本とは 総資本の内、いずれ返済したり、支払ったりして他人に支出しなければならないものを、負債の部に表示し、これを他人資本と呼びます。残りの返済や支払の必要のないものを資本の部として表示し、これを自己資本と呼びます。 自己資本は大きく株主から出資を受けた資本金と、利益の積立である剰余金とに区分されます。 自己資本比率は(自己資本÷総資本)×100で計算されます。 この自己資本比率が高いと言うことは、返済の必要のない自分のお金で資産を取得していると言うことを表している為、安全性が高いと評価されております。 ちなみに、全国約2.5万社の財務省のアンケートによる、平均の自己資本比率は30.1%です。(平成18年3月発表) しかし中小企業の財務指標(平成17年度版 経済産業省編)では、建設業 14.1%・製造業13.1%・情報通信業 22%・運輸業 13.5%・卸売業 13.2%小売業 7.1%・不動産業 11.9%・飲食業1.3%・サービス業 16.7%となっております。かなり低い数字ですが、日本の中小企業には、同族会社が多く、社長や親族からの実質的に返済不要の借入金が負債に含まれていることが想定されます。
「宙に浮いた5,000万件の年金記録」は、年金に対する大きな不安を国民に与えた事件となりました。社会保険庁は、5,000万件の名寄せの結果、(1)記録が結びつくと思われる年金受給者や今後年金受給者となる人については、平成19年12月〜平成20年3月を目途に、(2)それ以外の年金受給者に対しては、平成20年4〜5月を目途に、(3)すべての被保険者に対しては、平成20年6〜10月を目途に年金加入履歴のお知らせ「ねんきん特別便」を送付することになりました。 送付される書類については、8月現在(原稿執筆時)、社会保険庁では詳細が決まっていないとのことですが、35歳時、45歳時に送付される「ねんきん定期便」もしくは58歳時に送付される「年金加入記録のお知らせ」のような形式ではないかと思われます。ご自身の加入履歴について、加入の年月日の確認、転職された場合は、すべての会社の記録が入っているかなど調べて見て下さい。 加入履歴ではなくもっと詳細な内容が知りたい場合は、社会保険事務所の相談窓口で入手できます。また、年金ダイヤル(0570−50−1165)に電話をして記録を郵送してもらうことができます。加入記録はどんな事が記載され、その内容をどう読むのか、知っておくと便利です。基本的な部分を解説しました。 まずは国民年金の記録です。記録には次の2つの種類があります。 昭和61年4月からは、サラリーマンや公務員の妻(夫)であった(健康保険の被扶養者である場合)ときは、国民年金の第3号被保険者となります。現在は、夫(妻)の勤めている会社で手続きを行いますが、当時は、妻(夫)自身が市区町村で手続きをすることになっていました。例えば、第3号被保険者であったけど、その後保険の外交員として少しだけ勤めた。保険の外交員となった時点で厚生年金に加入しているのですが、外交員を辞めたとき、第3号被保険者の届を忘れていたという話を聞いたことがあります。届出忘れの第3号被保険者期間については、特例届出を提出することにより、第3号被保険者期間とすることができます。 次は厚生年金の加入記録です。 初めて厚生年金に加入した日が、昭和47年4月5日です。事業所は、「2155− −000」。種別は、2(女性)。月・賞の欄に045とあるのは、この時の給料が4万5千円(標準報酬月額といい、健康保険・厚生年金保険の等級に当てはめて決定されています)です。この等級での加入月数は6カ月でした。 昭和47年10月1日に給料が変わり5万2千円になりました。通常は1年に1回、定時に決定されます。昇給や降給で2等級以上変わった場合は年の途中でも変更することがあります。原因の「3」は、給料の定時の届出、年の途中での報酬の変更、厚生年金基金への加入、喪失などを表します。 昭和52年7月16日に「原因4(資格喪失)」で、その前日の昭和52年7月15日この会社を退社しています。 次の「2155− −○○○」は新しい会社の記録です。昭和56年8月1日に報酬月額が5万6千円で再就職しました(「原因2」)。昭和59年2月29日にはこの会社を辞めています(59/3/1に資格喪失)。 このように、加入記録の年月日を見ると、加入中の給料や加入月数などがわかり、この記録だけでも年金額を出すことが可能です。ただし、当時の給料を現在の物価に換算しなければならず、専門的な知識が必要となります。 消えた年金記録については、複数の年金手帳を持っていて基礎年金番号に統合されていない、住所変更の通知を行っていなくて記録の確認が郵送されていないなど他にも様々なケースが考えられます。総務・人事担当者にとって手続きの漏れは雇用管理上の問題となります。年金は社員個人の事だから、会社とは関係ないでは済まされない事にもなりかねません。雇用ステージの中で、例えば労災事故が発生した場合、年金との併給になるケースもあります。これを機会に年金について理解を深めていただければ幸いです。
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