●今月の特集
これまで 経理・監査業務とは、『取引を正しく処理し、記録、保存、照合すること』が、その主要な役割と言われてきました。経理と言えば帳簿付けや金庫番のイメージしか湧かない経理や経営者は大きな間違いを犯しています。 経理本来の意味は『経営管理』の略語であり、中国では、社長のことを〔総経理〕と呼んでいます。現代の企業経理は、世界経済・日本経済を継続的に学びながら、企業の中のあらゆる部門・人間を知り、常に企業全体のことを念頭におきます。そして、固有の意見をもって財務諸表の内容の向上を目指し、企業が利益をあげ『収益性』育ち『成長性』リスクを極小する『安全性』のため、経営数値・計数を大切にしながら、事業部を中心とした他部門の経営活動に協力しています。更に、企業近代化に不可欠なそれらを的確に把握し、トップ層が全体を考えながら個々の事業を最適な方法で具体的に推進する行動をサポートします。今回は経理本来の役割を果たすことを目的にした経理システムとして【経営会議システム】という経営管理の方法を紹介したいと思います。 経営会議システムは、経理を経営者の意思決定に役立て、会社の業績アップにつなげようとする経理システムです。その仕組みは至って簡単です。 経理本来の役割は【経営管理】 経営会議システムの仕組み 1.まず経営陣に損益計画と資金計画 = 経営計画を立ててもらいます。 2.次に取引を経理処理し、月次決算を行い、月次決算書を作成します。
以上のサイクルで会社を運営する方法を【経営会議システム】と言います。 では経営会議システムにおいて、経理担当者の役割は何でしょうか? 経営会議システムは企業のナビシステムです。 【経営会議システム】における経理の役割 【1】経営計画策定のサポート業務 1.前期損益計算書の推移提出 経営計画作成の基礎データとして、前期の月別損益の推移データを経営陣に提出します。これによって会社の月別売上の推移、人件費・経費等での突出月の原因等が判明します。 2.勘定科目決定書 通常経営陣は「○○費は○○勘定として処理をしている」ということが即座に理解できません。ですから、我が社は○○費は○○勘定で処理をしていることを一覧表で経営陣に回覧しておくと経営計画を立てる時に大変便利です。勘定科目決定書の作成は簡単です。総勘定元帳を整理し、○○勘定科目には○○費といった風に整理整頓するだけです。
【2】.月次決算・経理処理業務
2.経理業務の合理化に取り組む 経理業務にムダ・ムリ・ムラがあってはなりません。一般的に経理コストは売上総利益の3%以内と言われています。1億円の売上総利益で300万円しか経理にコストがさけません。経理専属者をおくには、(売上総利益=売上×50%とした場合)2億円以上の売上がなければおけないことになります。間接コストとしての経理費用をパソコン化、アウトソーシング等で合理化、変動費化することによって、利益を上げているのが、フランチャイズビジネスとも言えます。1店舗の経理が10店舗にもなったからといって経理コストが10倍にはなりません。 経理の合理化の方法 1.小口現金の精算は月1回、給与計算と一緒にする。 小口現金の精算業務は、(a)現金の用意(b)領収書の照合・計算(c)現金の授受(d)記帳業務 等々多くの作業時間が伴います。合理化のコツは精算回数の減少です。統計によると社員で月2万円以上の精算は実際あまりないようです。もし高額の社員がいれば仮払金を支払い、月1回精算する形でも良いと思います。
経理処理の合理化『NO伝票会計システムとは?』
◆簿記一巡の流れ…パソコン会計の手順 1.取引…原資証憑収集 ファイリング管理を合理的に。 ファイリングの原則
・ファイリングは頭を使わず、種類・区分だけを正確に行う。 ・書類は誰でも分かるように裏表紙等に区分・年月日を記入しておく。 (例) 支払請求書○年○月分等 2.パソコン会計入力…原資証憑から直接入力する。 NO伝票会計処理のマニュアル ※預金通帳を見ながら直接入力 ・預け入れ欄を見て 普通預金 / 売掛金 得意先名【補助科目】 普通預金 / 受取利息 ・支払欄を見て 買掛金 仕入先名 【補助科目】 / 普通預金 借入金 / 普通預金 支払利息 ・給与台帳を見て 役員報酬 / 未払金 給与手当 源泉預かり金 賃金 住民税預かり金 その他預かり金 ・自社発行請求書を見て 売掛金 得意先名【補助科目】 /売上 ・請求書を見て 仕入・外注費 / 買掛金 仕入先名【補助科目】 経費 / 未払金 購入先名【補助科目】 ・現金出納帳 入金欄より 現金 / 普通預金 支払欄より 経費 / 現金 3.総勘定元帳・補助元帳を作成する。 4.勘定科目残高、補助科目残高と原資証憑を照合し、会計処理の適否を確認する。 (例) 現金・・・・・・・・・・・金庫実際残高 預金・・・・・・・・・・・通帳残高 売掛金・・・・・・・・・未回収の自社発行請求書の合計金額 貸付金・・・・・・・・・金銭契約書 敷金・保証金・・・・賃貸契約書 保険積立金・・・・・保険証券・計算書 買掛金・未払金・・未払い請求書の合計金額 借入金・・・・・・・・借入金返済表 預り金・・・・・・・・・給与台帳 補助科目があったら便利なもの ・普通預金・当座預金 ・売掛金(販売管理ソフトで管理しているなら不要) ・仮払金・立替金・貸付金・未収金 ・投資有価証券・長期貸付金 ・買掛金・未払金(仕入管理ソフトで管理しているなら不要) ・借入金 ・租税公課・雑収入・地代家賃等 5.月次決算処理を行う。 月次決算には通常の月次の経理処理業務以外に以下の処理が必要です。 (1)月割経費の計上 減価償却費・繰延資産償却・賞与引当金繰入等の月次計上処理が必要です。 (2)費用・収益の見越し、繰延べ 法定福利費・支払利息等 (3)在庫計上 月末在庫の計上は必要 6.月次決算書を作成。 以上が毎月の経理業務の基本です。 【3】経営会議の企画・運営業務
経営陣が策定した月次予算と、経理が作成した月次決算書から、経過月実績+未経過月予算=予想実積損益計算書・予想実績資金繰り表・予算実積差異分析表・予想税額表等を作成し、経営会議に提出します。
3.回収遅延債権について報告し、対応についての判断を経営陣に仰ぎます。 4.新規設備投資、修繕等の稟議について、判断を経営陣に仰ぎます。 5.黒字決算予測の場合、節税対策等を提案し、経営陣の判断を仰ぎます。 6.夏季・冬季等の賞与について、経営陣の判断を仰ぎます。 7.赤字決算予測の場合、益出し対策について経営陣の判断を仰ぎます。 8.各店舗、各部門別予算達成率を報告し、業績給の判断を仰ぎます。
10.経理・財務上の課題を説明し、経営陣の判断を仰ぎます。 【4】経営会議の議事録を作成する 1.時間・参加者名を記入します。
これからの経理、本来の経理は以下の流れになります。
事業承継・相続税対策は手つかずの中小企業が多い 高度成長期に相次いで創業した中小企業が軒並み世代交代期を迎えています。ところが、中小企業の事業承継には問題が山積みです。事業承継はどうしても日々の仕事が優先されるため、先送りしがちです。後継者も親が健全な間には話題にしにくいという問題があります。現在の経営者が自覚を持って率先して取り組まなければ一歩も進まないのが実状です。何もしないうちに、会社の株を未公開のまま売ってしまえば会社の経営権を手放すことになり、売るに売れず、税金が多額に課せられ、どうにもならない事態を招くことになります。今回は事業承継、相続税対策を中小企業の事業承継を中心にまとめてみました。 相続対策を考えるには、
★話をもう少し具体的に検討してみましょう。 事業承継・相続税対策の手順 … 財産評価と相続税の概算金額をつかもう 【1】財産調査 事業承継にあたって最初にすることは、経営者の万が一のための相続財産評価をし、概算の相続税を計算しておくことです。
【例】 妻、子供2人の場合。5,000万円+1,000万円 × 3人で8,000万円までの相続財産でしたら、相続税は0円となります。 基礎控除を超える課税財産があった場合、相続税が課税されます。 ただし、配偶者が取得した財産が1/2以内を取得した場合か、1億6千万円以内であれば、配偶者の相続税は0円に軽減されます。 【2】誰でもできる簡単な相続税対策 1.小規模宅地の評価減 自宅の敷地のうち240平方メートル、約72坪の部分については、80%引きとなるのが、『小規模宅地の課税価格の計算の特例』です。路線価が坪100万円として、72坪の土地が、7,200万円から一気に1,440万円に評価を引き下げることができます。どの土地で、どうしたら受けられるかを専門家である税理士とよくご相談ください。 2.事業用資産の評価減 自宅の敷地ではなく、事業用の敷地や貸していたアパートやマンションの敷地についても一定面積まで評価減が可能です。 3.配偶者の税額軽減 日本の相続税では、配偶者が取得した財産が全財産の1/2以内か、1億6千万以内なら全額非課税となります。これは、配偶者が支えて財産ができたということと、いずれ配偶者もそう遠くないときに死亡するのですから、その時に相続税が発生すると税務署は考えているのです。経営者の配偶者がご存命ならこの特典を使うのも一考です。 4.生命保険の活用 死亡保険金のうち、法定相続人×500万円までは非課税です。妻・子供2人なら、500万円×3人=1,500万円までは税金が課税されません。 5.退職金の活用 経営者への退職金は、一定額まで法人の経費にもなり、相続税も課税されません。 法人の経費となる退職金は、最終月給×勤続年数×功績倍率【おおむね2倍から3倍程度】規定や株主総会の決議等必要となります。 相続税は、500万円×法定相続人の数、奥さんとお子さん2人なら、500万円×3人=1,500万円までは税金が課税されません。 6.貸家建付地評価減・・・借金で不動産購入 自己資金や借金でアパート等を建設することによって、土地・建物の評価が下がり、預金のまま持っているより、借入金が控除できることにより、相続税が減額できます。この場合、アパート等経営の収益性、空室のないことを考える必要があります。一番いいのは会社の社宅として、社員に貸すことです。人材の確保にもなり多くのメリットがあります。 7.定期金に関する権利等 定期年金の受給権は、期間により20%まで評価を引き下げられるものもあります。 【3】実行
例1)自宅を誰に継がせるのか? 例2)会社を誰に継がせるのか? 例3)それ以外の財産をどう分割するのか? 民法の遺留分等を考慮し、子供達が仲違いしないように、可能な限り公平に分配をする必要があります。 3.右記の遺産分割基本案に基づき、遺産の生前贈与、遺言書等の作成を考慮します。 4.生前贈与には2つの方法があります。
●改正点
3月決算、5月・6月株主総会の季節となり、次年度の役員報酬をどうしようかと考えている会社も多いことでしょう。今回は役員報酬の有利な決め方、税務上の注意点をまとめました。 【質問】 同族会社については、役員の報酬や賞与の決め方が難しいとのことですが、どの点を注意すればいいのでしょうか? 【回答】 役員報酬については、過大に支給した場合、過小に支給した場合、いずれの場合も貴社は不利益を被ります。また、役員の賞与については原則として経費になりません。 ◆解説 役員に対して、一定額を定期的に支給されるのが役員報酬です。そして定額ではなく、臨時に支給される給与が役員賞与となります。 【1】役員報酬の過大の判定 役員報酬が過大か否かの判定として、まず定款や株主総会の決議等で役員の報酬支給限度額を超える支給額は経費になりません。実務上、定款や株主総会で定める役員報酬支給額の枠を、思いきって多めに設定することがコツです。次に、その役員の職務内容、同業種同規模程度の他社の実例と比較して高額すぎると認められる額についても経費になりません。 実務上、過大役員報酬で問題になるのが、社長個人の役員報酬を、名義だけ役員実態のない家族に所得を分散させることです。特に月85,000円 年間1,030,000円以内ですと、所得税が0円、扶養控除も受けられ、社会保険にも加入しなくて良いとのことで、家族役員に報酬を支払っている会社が多いのが実態ではないでしょうか。
事例の会社では、社長個人の報酬を分散させるだけで、所得税だけでも64%の減税効果があり、住民税、社会保険料等の節減効果を含めれば、70%を超え、実質手取りアップが見込めます。 しかし、この場合、妻・子供を役員登記し、実質的に会社経営に従事してもらうことが条件になります。会社の実態も知らず、名義だけの役員であれば当然税務上否認されてしまいます。 【2】役員報酬を過小に支給した場合 この場合も不利になります。当然支給すべき報酬を支給しないと、支給不足分については、法人税の負担が増加するからです。中小法人では、法人所得が800万円以内で22%、800万円を超える分は30%の税率となっています。所得税の税率は900万円以下で23%の税率です。同族会社の役員報酬の上手な決め方は、
(2)経営計画を作り、次年度の利益予想に基づき役員報酬を決定する。 役員報酬前 法人利益 2,000万円であれば、軽減税率適用範囲の800万円を法人利益目標とし、役員報酬を1,200万円として、家族で仕事の内容に応じて、社長700万円、妻300万円、子供200万円等に按分し、役員報酬を決定することが合理的かつ税務上有利ではないでしょうか? (※注意) 平成18年4月開始事業年度から、1人オーナー会社で、役員が家族だけ等の一定の会社については、社長の給与+利益が800万円超える場合、給与所得控除分については、経費とし認めないという制度が始まりました。さすがに全国の中小企業から不満が噴き出し、平成19年4月開始事業年度から800万円を1,600万円に引き上げることになりました。社長の役員報酬を決定するには、この制度も判断材料にして決定してください。対策として、頑張っている社員を役員に登用し、半分以上が家族役員でなくなれば、この規定は外れます。詳細は顧問税理士にご相談ください。 【3】役員報酬の改定時期 役員報酬とは、株主総会で取締役に選任され、役員報酬限度額が決まり、取締役会で代表取締役等が決定し、その職務に応じて役員報酬の具体的な額が決定するという流れですので、株主総会の日の属する月より役員報酬が改訂されるのが原則です。これまで見過ごされていた、株主総会での役員報酬決定で、事業年度開始月まで遡及して、差額を支払ったり、始業年度開始月より役員報酬を改定していた会社は、定期同額でないため否認される恐れがあります。 【4】役員報酬を減額した場合 定期報酬の額につき、法人の経営の状況が著しく悪化した等の理由により減額した場合は可となります。 (条件) 当期の改定前の役員報酬が一定であること。当期の改定後の役員報酬が一定であること。 税務上、臨時取締役会を開催し、決議し、議事録を作成しておくこと。 【5】経済的利益は役員賞与や役員報酬となる。
【6】職務上の地位の変更等による改定給与 職務上の地位の変更等により改定がされた定期同額の役員給与についても,損金の額に算入されます。 国税庁のホームページで役員の給与について明確な基準が明記されています。 平成19年3月決算、5月・6月の株主総会開催法人も多いと思いますが、役員給与について明確にすることが税務上求められています。 役員給与の明確化 制度概要
◆定期同額給与の明確化◆ 以下の定期同額給与については事前届出も不要であり、無条件に損金算入できます。 但し、役員報酬改定の決議(株主総会または取締役会)は必要となります。 ◆定期給与 その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり(定期給与)、かつ当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与。 ◆会計期間3月経過日改定給与 定期給与の額につき当期の会計期間開始の日から3ヶ月を経過する日(会計期間3月経過日)までに改定された定期給与その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり(定期給与)、かつ当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与当期の改定前の定期給与が一定であること。 ・当期の改定後の定期給与が一定であること。 ◆減額改定給与 定期給与の額につき、法人の経営の状況が著しく悪化した等の理由により減額した場合の定期給与(会計期間3月経過後でも可) ・当期の改定前の定期給与が一定であること。 ・当期の改定後の定期給与が一定であること。 ◆定期経済的利益 継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額がおおむね一定であるもの。 ◆職務上の地位の変更等による改定給与 職務上の地位の変更等により改定がされた定期同額の役員給与についても,損金の額に算入されることを明確化する。 ◆事前確定届出給与の届出期限 ◆現行制度 その給与に係る職務の執行を開始する日と会計期間3月経過日とのいずれか早い日まで。 ◆改正 役員給与にかかる定めに関する決議をする株主総会等の日から1月を経過する日とし、その日が会計期間の開始の日から4月を経過する日以降であれば4月を経過する日まで。 |
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