会計事務所と顧問先をむすぶCLUE 第106号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『経理をもっと経営に役立てよう!…経営会議入門【4】』
 経営・財務・・・ 『中小企業に朗報 平成19年度税制改正』
 経理・税務・・・ 『役員報酬・役員賞与の有利な決め方』





 今月の特集

経理をもっと経営に役立てよう!
…経営会議入門【4】

これまで 経理・監査業務とは、『取引を正しく処理し、記録、保存、照合すること』が、その主要な役割と言われてきました。経理と言えば帳簿付けや金庫番のイメージしか湧かない経理や経営者は大きな間違いを犯しています。

経理本来の意味は『経営管理』の略語であり、中国では、社長のことを〔総経理〕と呼んでいます。現代の企業経理は、世界経済・日本経済を継続的に学びながら、企業の中のあらゆる部門・人間を知り、常に企業全体のことを念頭におきます。そして、固有の意見をもって財務諸表の内容の向上を目指し、企業が利益をあげ『収益性』育ち『成長性』リスクを極小する『安全性』のため、経営数値・計数を大切にしながら、事業部を中心とした他部門の経営活動に協力しています。更に、企業近代化に不可欠なそれらを的確に把握し、トップ層が全体を考えながら個々の事業を最適な方法で具体的に推進する行動をサポートします。今回は経理本来の役割を果たすことを目的にした経理システムとして【経営会議システム】という経営管理の方法を紹介したいと思います。

経営会議システムは、経理を経営者の意思決定に役立て、会社の業績アップにつなげようとする経理システムです。その仕組みは至って簡単です。


経理本来の役割は【経営管理】

経営会議システムの仕組み

1.まず経営陣に損益計画と資金計画 = 経営計画を立ててもらいます。

2.次に取引を経理処理し、月次決算を行い、月次決算書を作成します。

3. 経営計画と月次決算書を合算して、予想・実績損益計算書や予算・実績差異分析表、予想・実績資金繰り表等を元に経営陣が役員会や経営会議を開催し、経営の意思決定を行います。赤字になりそうであればその対策を、黒字になりそうであれば、税金対策、新規投資等を検討していただきます。

4. 会議が終われば必ず議事録を作成します。検討したこと・決定したこと・継続して宿題となったこと・その他を必ず記録し、会議参加者に配布しておきます。

以上のサイクルで会社を運営する方法を【経営会議システム】と言います。
では経営会議システムにおいて、経理担当者の役割は何でしょうか?

経営会議システムは企業のナビシステムです。


【経営会議システム】における経理の役割

【1】経営計画策定のサポート業務

1.前期損益計算書の推移提出

経営計画作成の基礎データとして、前期の月別損益の推移データを経営陣に提出します。これによって会社の月別売上の推移、人件費・経費等での突出月の原因等が判明します。


2.勘定科目決定書

通常経営陣は「○○費は○○勘定として処理をしている」ということが即座に理解できません。ですから、我が社は○○費は○○勘定で処理をしていることを一覧表で経営陣に回覧しておくと経営計画を立てる時に大変便利です。勘定科目決定書の作成は簡単です。総勘定元帳を整理し、○○勘定科目には○○費といった風に整理整頓するだけです。

例) 販売促進費・・・ おしぼり代、割り箸代、コースター代等
  消耗品費・・・・・ コピー用紙代、トイレットペーパー等
  備品費・・・・・・・ 30万円未満のパソコン、プリンター、机、イス、備品等
  車両費・・・・・・・ 車のガソリン代、車検代、高速代、駐車場代等


3. 経営会議作成の基礎資料として、借入金返済表、得意先別回収予定表、仕入先別支払予定表等があれば、より精度の高い資金計画が策定できます。

4. 各部門、各店舗別の人員配置表、賃金台帳等があれば、部門別、店舗別人件費計画策定に便利です。

5. 実務的には、経営陣に来期の売上達成目標、原価率目標、人件費上昇率、賞与支給額・支給月予定、経費計画(とりわけ・広告宣伝費・修繕費・交際費・福利厚生費等)を聞き、たたき台としての経営計画原案を経営陣に提出する仕事になります。


【2】.月次決算・経理処理業務

1. 会社の現在の経営成績、財政状態を正確に補足するためには月次決算は欠かせません。経営陣に間違った経営判断をさせないためにも1円たりとも誤差のない正しい会社の経営成績をつかむことは経理の責務です。1円の誤差は1億円の誤差にもなりかねません。

2.経理業務の合理化に取り組む

経理業務にムダ・ムリ・ムラがあってはなりません。一般的に経理コストは売上総利益の3%以内と言われています。1億円の売上総利益で300万円しか経理にコストがさけません。経理専属者をおくには、(売上総利益=売上×50%とした場合)2億円以上の売上がなければおけないことになります。間接コストとしての経理費用をパソコン化、アウトソーシング等で合理化、変動費化することによって、利益を上げているのが、フランチャイズビジネスとも言えます。1店舗の経理が10店舗にもなったからといって経理コストが10倍にはなりません。


経理の合理化の方法

1.小口現金の精算は月1回、給与計算と一緒にする。

小口現金の精算業務は、(a)現金の用意(b)領収書の照合・計算(c)現金の授受(d)記帳業務 等々多くの作業時間が伴います。合理化のコツは精算回数の減少です。統計によると社員で月2万円以上の精算は実際あまりないようです。もし高額の社員がいれば仮払金を支払い、月1回精算する形でも良いと思います。

2. 経営者の現金使用を少なくするため、法人カードを活用する。法人カードなら使用記録が残り、処理も簡単です。

3. スイカ・パスネット等の使用で、交通費精算業務をなくす。パスネット等は使用履歴が残りますのでいちいち交通費精算する必要がなくなり、時間のムダがなくなります。

4. なるべく銀行に行く回数を減らす。そのためには、取引銀行の数を減らしたり、インターネットバンクを活用したり、小口現金の精算回数を減らすことです。

5. 給与を銀行振り込みにする。給与を現金手渡しする会社は多くのムダな作業があります。現金の引き出し、給与袋記入、現金の袋詰め等々です。また、税務的にも現金手渡し給与は架空人件費の疑いを持たれます。原則として給与は銀行振り込みです。


経理処理の合理化『NO伝票会計システムとは?』

 ◆ NO伝票会計とは、原資証憑を伝票に見立てて、パソコンに原資証憑から直接入力することです。

 ◆ 補助科目を活用します。科目内訳が必要と思われるものは、補助番号を入力し、補助簿をパソコン会計で作成します。

 ◆簿記一巡の流れ…パソコン会計の手順


1.取引…原資証憑収集 ファイリング管理を合理的に。

ファイリングの原則

自社発行請求書は、発行日順に一冊にファイリングする。多い場合は月別にファイリングする。入金があった場合、請求書に入金日を記入する。未入金の請求書だけをファイリングの前方に毎月締め日に集める。

請求書は、到着順に一冊にファイリングする。多い場合は月別にファイリングする。未払の請求書だけを毎月の締め日にファイルの前方に集める。

給与台帳・借入金返済表・貸付金・保険証券・賃貸契約書・リース契約書はそれぞれの区分ごとにファイリングする。

領収書は失敗コピーの裏紙に糊付けし、月、年ごとにとじひもでファイリングする。

・ファイリングは頭を使わず、種類・区分だけを正確に行う。

・書類は誰でも分かるように裏表紙等に区分・年月日を記入しておく。

  (例) 支払請求書○年○月分等


2.パソコン会計入力…原資証憑から直接入力する。

NO伝票会計処理のマニュアル

※預金通帳を見ながら直接入力

・預け入れ欄を見て

 普通預金 / 売掛金 得意先名【補助科目】
 普通預金 / 受取利息

・支払欄を見て

 買掛金 仕入先名 【補助科目】 / 普通預金
 借入金  / 普通預金
 支払利息

・給与台帳を見て

 役員報酬  / 未払金
 給与手当    源泉預かり金
 賃金       住民税預かり金
           その他預かり金

・自社発行請求書を見て

 売掛金 得意先名【補助科目】 /売上

・請求書を見て

 仕入・外注費 / 買掛金 仕入先名【補助科目】
 経費 / 未払金 購入先名【補助科目】

・現金出納帳

入金欄より

 現金 / 普通預金

支払欄より

 経費 / 現金


3.総勘定元帳・補助元帳を作成する。

4.勘定科目残高、補助科目残高と原資証憑を照合し、会計処理の適否を確認する。

(例)
 現金・・・・・・・・・・・金庫実際残高
 預金・・・・・・・・・・・通帳残高
 売掛金・・・・・・・・・未回収の自社発行請求書の合計金額
 貸付金・・・・・・・・・金銭契約書
 敷金・保証金・・・・賃貸契約書
 保険積立金・・・・・保険証券・計算書
 買掛金・未払金・・未払い請求書の合計金額
 借入金・・・・・・・・借入金返済表
 預り金・・・・・・・・・給与台帳

補助科目があったら便利なもの

 ・普通預金・当座預金
 ・売掛金(販売管理ソフトで管理しているなら不要)
 ・仮払金・立替金・貸付金・未収金
 ・投資有価証券・長期貸付金
 ・買掛金・未払金(仕入管理ソフトで管理しているなら不要)
 ・借入金
 ・租税公課・雑収入・地代家賃等


5.月次決算処理を行う。

月次決算には通常の月次の経理処理業務以外に以下の処理が必要です。

(1)月割経費の計上

減価償却費・繰延資産償却・賞与引当金繰入等の月次計上処理が必要です。

(2)費用・収益の見越し、繰延べ

法定福利費・支払利息等

(3)在庫計上

月末在庫の計上は必要


6.月次決算書を作成。


以上が毎月の経理業務の基本です。


【3】経営会議の企画・運営業務

1. 毎月定例日に経営陣の経営会議を実施します。(第三木曜日等)月次決算の終了具合等資料準備が出来次第、可能な限り経営判断が1日でも早くできるように実施します。

経営陣が策定した月次予算と、経理が作成した月次決算書から、経過月実績+未経過月予算=予想実積損益計算書・予想実績資金繰り表・予算実積差異分析表・予想税額表等を作成し、経営会議に提出します。

2. 経営会議でこれらの資料の説明をし、予算と実績の異常値については、その原因については総勘定元帳等を元に発生理由を説明します。

3.回収遅延債権について報告し、対応についての判断を経営陣に仰ぎます。

4.新規設備投資、修繕等の稟議について、判断を経営陣に仰ぎます。

5.黒字決算予測の場合、節税対策等を提案し、経営陣の判断を仰ぎます。

6.夏季・冬季等の賞与について、経営陣の判断を仰ぎます。

7.赤字決算予測の場合、益出し対策について経営陣の判断を仰ぎます。

8.各店舗、各部門別予算達成率を報告し、業績給の判断を仰ぎます。

9. 予定実績資金繰り表、金融機関預貸率等を提出し、借入・返済の財務判断を提出し、経営陣の判断を仰ぎます。

10.経理・財務上の課題を説明し、経営陣の判断を仰ぎます。


【4】経営会議の議事録を作成する

1.時間・参加者名を記入します。

2. 検討事項・決定事項・先送り宿題事項等を簡潔にまとめ参加者に閲覧、訂正等してもらいます。

これからの経理、本来の経理は以下の流れになります。

1. 計画・・・・・・・ 経営陣の経営計画【損益・資金計画】作成を支援する
2. 取引・・・・・・・ 原資証憑の管理、ファイリング
3. 処理・・・・・・・ 原資証憑から直接パソコン会計へ入力
4. 総勘定元帳・・ 予算との異常値を報告
5. 補助簿作成・・ 可能な限り補助科目設定をし、自動的に補助簿を作成
6. 照合・・・・・・・ 各勘定残高と原資証憑との照合する
7. 月次決算書作成
8. 経過月実績+未経過月予算から決算予測、予想税額、予想・実績資金繰り表作成・報告
9. 経営会議の報告資料作成
10. 資金対策・銀行交渉等
11. 節税・決算対策立案
12. 会議議事録作成





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中小企業に朗報 平成19年度税制改正

『事業継承・相続税対策は手つかずの中小企業が多い』

事業承継・相続税対策は手つかずの中小企業が多い

高度成長期に相次いで創業した中小企業が軒並み世代交代期を迎えています。ところが、中小企業の事業承継には問題が山積みです。事業承継はどうしても日々の仕事が優先されるため、先送りしがちです。後継者も親が健全な間には話題にしにくいという問題があります。現在の経営者が自覚を持って率先して取り組まなければ一歩も進まないのが実状です。何もしないうちに、会社の株を未公開のまま売ってしまえば会社の経営権を手放すことになり、売るに売れず、税金が多額に課せられ、どうにもならない事態を招くことになります。今回は事業承継、相続税対策を中小企業の事業承継を中心にまとめてみました。

相続対策を考えるには、

(1) 相続における現状「具体的には誰が相続人か?」「相続財産はどれぐらいか?」「相続税はどれぐらいかかるのか?」をよく知り、全体像をつかむ必要があります。

(2) 現状を把握したら、問題点を整理する必要があります。「相続税が多額だ」「納税資金がない」「不動産を多く所有し過ぎている」「未公開の売れない株式が多額だ」等々

(3) 問題点を解決する実施案とタイムスケジュールを税理士等の専門家のアドバイスを受けながら実施していく必要があります。

★話をもう少し具体的に検討してみましょう。


事業承継・相続税対策の手順 … 財産評価と相続税の概算金額をつかもう

【1】財産調査

事業承継にあたって最初にすることは、経営者の万が一のための相続財産評価をし、概算の相続税を計算しておくことです。

《現預金》・・・・・・・・・ 現在残高
《有価証券》・・・・・・・ 直近の株価
《貸付金等》・・・・・・・ その金額
《土 地》・・・・・・・・・ 路線価。自宅については、240平方メートルまで20%に減額
《建 物》・・・・・・・・・ 固定資産税評価額
《死亡生命保険金》・・ 保険証券 500万円 × 法定相続人数は非課税
《死亡退職金》・・・・・ 会社の規定等…最終給与 × 勤続年数×功績倍率【2から3倍程度】
500万円 × 法定相続人数は非課税
《未公開株価》・・・・・ 会社の決算書より評価
《財産計》・・・・・・・・
《債 務》・・・・・・・・・ 個人の住宅ローンや個人の借金B
《正味財産C》・・・・・ A ― B
《課税遺産D》=正味財産−基礎控除(5,000万円+法定相続人×1,000万円)

 【例】 妻、子供2人の場合。5,000万円+1,000万円 × 3人で8,000万円までの相続財産でしたら、相続税は0円となります。

基礎控除を超える課税財産があった場合、相続税が課税されます。

ただし、配偶者が取得した財産が1/2以内を取得した場合か、1億6千万円以内であれば、配偶者の相続税は0円に軽減されます。


【2】誰でもできる簡単な相続税対策

1.小規模宅地の評価減

自宅の敷地のうち240平方メートル、約72坪の部分については、80%引きとなるのが、『小規模宅地の課税価格の計算の特例』です。路線価が坪100万円として、72坪の土地が、7,200万円から一気に1,440万円に評価を引き下げることができます。どの土地で、どうしたら受けられるかを専門家である税理士とよくご相談ください。


2.事業用資産の評価減

自宅の敷地ではなく、事業用の敷地や貸していたアパートやマンションの敷地についても一定面積まで評価減が可能です。


3.配偶者の税額軽減

日本の相続税では、配偶者が取得した財産が全財産の1/2以内か、1億6千万以内なら全額非課税となります。これは、配偶者が支えて財産ができたということと、いずれ配偶者もそう遠くないときに死亡するのですから、その時に相続税が発生すると税務署は考えているのです。経営者の配偶者がご存命ならこの特典を使うのも一考です。


4.生命保険の活用

死亡保険金のうち、法定相続人×500万円までは非課税です。妻・子供2人なら、500万円×3人=1,500万円までは税金が課税されません。


5.退職金の活用

経営者への退職金は、一定額まで法人の経費にもなり、相続税も課税されません。 法人の経費となる退職金は、最終月給×勤続年数×功績倍率【おおむね2倍から3倍程度】規定や株主総会の決議等必要となります。

相続税は、500万円×法定相続人の数、奥さんとお子さん2人なら、500万円×3人=1,500万円までは税金が課税されません。


6.貸家建付地評価減・・・借金で不動産購入

自己資金や借金でアパート等を建設することによって、土地・建物の評価が下がり、預金のまま持っているより、借入金が控除できることにより、相続税が減額できます。この場合、アパート等経営の収益性、空室のないことを考える必要があります。一番いいのは会社の社宅として、社員に貸すことです。人材の確保にもなり多くのメリットがあります。


7.定期金に関する権利等

定期年金の受給権は、期間により20%まで評価を引き下げられるものもあります。


【3】実行

1. 調査や相続対策の基本スキームが出来上がったら、時間をかけて実行していきます。その場合、税制改正の動きやメリット・デメリット、リスク等を考慮し、慎重に実行していく必要があります。

2. まず相続財産の全容をつかみ、遺産の分割の仕方を事業承継、税金等の視点からおおまかに決める必要があります。

 例1)自宅を誰に継がせるのか?
 例2)会社を誰に継がせるのか?
 例3)それ以外の財産をどう分割するのか?

民法の遺留分等を考慮し、子供達が仲違いしないように、可能な限り公平に分配をする必要があります。

3.右記の遺産分割基本案に基づき、遺産の生前贈与、遺言書等の作成を考慮します。

4.生前贈与には2つの方法があります。

 (1) 贈与財産の価額から毎年110万円を控除することがきる制度

(贈与税の課税価額−110万円)×贈与税率=贈与税額。この場合の贈与税率は非常に高く、(2)の相続時精算課税制度が導入されました。利点としては、多額の財産のない人には、基本的に有利にはたらくことです。

 (2) 相続時精算課税制度【親子間の贈与】

納税者の選択により、一定の要件をもとに、20歳以上の子供が65歳以上の親から贈与により財産を取得した場合には、その財産の価額の累計額のうち2,500万円までは非課税、2,500万円を超える部分については20%の税率で贈与税を納付すればよく、親が死亡した場合は、その贈与で取得した財産を相続財産に取り込み、相続税の計算する際、すでに納付済みの贈与税と相続税とを相殺し、精算することができる制度です。

これを活用して、値上がりしそうな不動産や株を早めに子供に贈与しておくことで、値上がり部分の相続税はかかりません。また、現在収益が出ている不動産等があれば、早めに贈与しておけば、今後その収益は全て子供に帰属しますので相続対策にもなります。

注)  平成19年度税制改正(案)により、未公開株の相続時精算課税はより活用しやすくなりました。


●改正点
非上場株式にかかる相続時精算課税制度の特例
  現 行 自社株式を後継者である子どもに贈与する場合の特例
贈与者 65歳以上 60歳以上
受贈者 20歳以上の子ども 20歳以上
非課税枠 2,500万円 3,000万円
贈与税率 非課税枠を超過した
金額に対して一律20%
非課税枠を超過した金額に対して一律20%
   
発行済株式等の総額が20億円未満の会社であること
受贈者が代表者でかつ株式の50%超保有となることが条件で、特例選択後4年経過時点で判断





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役員報酬・役員賞与の有利な決め方

3月決算、5月・6月株主総会の季節となり、次年度の役員報酬をどうしようかと考えている会社も多いことでしょう。今回は役員報酬の有利な決め方、税務上の注意点をまとめました。


【質問】

同族会社については、役員の報酬や賞与の決め方が難しいとのことですが、どの点を注意すればいいのでしょうか?


【回答】

役員報酬については、過大に支給した場合、過小に支給した場合、いずれの場合も貴社は不利益を被ります。また、役員の賞与については原則として経費になりません。


◆解説

役員に対して、一定額を定期的に支給されるのが役員報酬です。そして定額ではなく、臨時に支給される給与が役員賞与となります。

【1】役員報酬の過大の判定

役員報酬が過大か否かの判定として、まず定款や株主総会の決議等で役員の報酬支給限度額を超える支給額は経費になりません。実務上、定款や株主総会で定める役員報酬支給額の枠を、思いきって多めに設定することがコツです。次に、その役員の職務内容、同業種同規模程度の他社の実例と比較して高額すぎると認められる額についても経費になりません。

実務上、過大役員報酬で問題になるのが、社長個人の役員報酬を、名義だけ役員実態のない家族に所得を分散させることです。特に月85,000円 年間1,030,000円以内ですと、所得税が0円、扶養控除も受けられ、社会保険にも加入しなくて良いとのことで、家族役員に報酬を支払っている会社が多いのが実態ではないでしょうか。

(事例)
社長個人の報酬が1,000万円の場合
所得税 1,158,000円
社長個人の報酬が600万円
妻100万円、子供3人 300万円の場合
  課税される所得税の総額 424,500円
  税金減少額733,000円 約64%減額

事例の会社では、社長個人の報酬を分散させるだけで、所得税だけでも64%の減税効果があり、住民税、社会保険料等の節減効果を含めれば、70%を超え、実質手取りアップが見込めます。

しかし、この場合、妻・子供を役員登記し、実質的に会社経営に従事してもらうことが条件になります。会社の実態も知らず、名義だけの役員であれば当然税務上否認されてしまいます。


【2】役員報酬を過小に支給した場合

この場合も不利になります。当然支給すべき報酬を支給しないと、支給不足分については、法人税の負担が増加するからです。中小法人では、法人所得が800万円以内で22%、800万円を超える分は30%の税率となっています。所得税の税率は900万円以下で23%の税率です。同族会社の役員報酬の上手な決め方は、

(1) 可能な限り家族を役員にし、会社の経営に携わってもらい、適正な役員報酬を支払う。

(2)経営計画を作り、次年度の利益予想に基づき役員報酬を決定する。

役員報酬前 法人利益 2,000万円であれば、軽減税率適用範囲の800万円を法人利益目標とし、役員報酬を1,200万円として、家族で仕事の内容に応じて、社長700万円、妻300万円、子供200万円等に按分し、役員報酬を決定することが合理的かつ税務上有利ではないでしょうか?


(※注意)
平成18年4月開始事業年度から、1人オーナー会社で、役員が家族だけ等の一定の会社については、社長の給与+利益が800万円超える場合、給与所得控除分については、経費とし認めないという制度が始まりました。さすがに全国の中小企業から不満が噴き出し、平成19年4月開始事業年度から800万円を1,600万円に引き上げることになりました。社長の役員報酬を決定するには、この制度も判断材料にして決定してください。対策として、頑張っている社員を役員に登用し、半分以上が家族役員でなくなれば、この規定は外れます。詳細は顧問税理士にご相談ください。


【3】役員報酬の改定時期

役員報酬とは、株主総会で取締役に選任され、役員報酬限度額が決まり、取締役会で代表取締役等が決定し、その職務に応じて役員報酬の具体的な額が決定するという流れですので、株主総会の日の属する月より役員報酬が改訂されるのが原則です。これまで見過ごされていた、株主総会での役員報酬決定で、事業年度開始月まで遡及して、差額を支払ったり、始業年度開始月より役員報酬を改定していた会社は、定期同額でないため否認される恐れがあります。


【4】役員報酬を減額した場合

定期報酬の額につき、法人の経営の状況が著しく悪化した等の理由により減額した場合は可となります。

(条件)
当期の改定前の役員報酬が一定であること。当期の改定後の役員報酬が一定であること。
税務上、臨時取締役会を開催し、決議し、議事録を作成しておくこと。


【5】経済的利益は役員賞与や役員報酬となる。

1. 会社が役員の「生命保険料」を経常的に負担する場合の経済的利益は定期同額の役員報酬扱いとされますが、この場合、月払いはもとより一年間分を一括前払いしても役員賞与とされず、定期同額給与として扱われる模様です。

2. 税務調査で個人経費を会社経費として処理していた場合、役員賞与となり、法人の経費とされず、法人税が課税されるばかりか、役員個人に所得税を課税される恐れがあります。


【6】職務上の地位の変更等による改定給与

職務上の地位の変更等により改定がされた定期同額の役員給与についても,損金の額に算入されます。

国税庁のホームページで役員の給与について明確な基準が明記されています。

平成19年3月決算、5月・6月の株主総会開催法人も多いと思いますが、役員給与について明確にすることが税務上求められています。

役員給与の明確化

制度概要
役員給与の新体系 要件 取扱い 適正額
定期の給与 定期同額給与 役員報酬 損金○
定期同額以外 役員賞与 損金×
臨時の給与 年に数回の臨時 事前届けあり 役員報酬 損金○
事前届けなし 役員賞与 損金×
退職を起因 事実上の退任 役員退職金 損金○
形式上の退任 役員賞与 損金×


◆定期同額給与の明確化◆

以下の定期同額給与については事前届出も不要であり、無条件に損金算入できます。

但し、役員報酬改定の決議(株主総会または取締役会)は必要となります。

◆定期給与

その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり(定期給与)、かつ当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与。

◆会計期間3月経過日改定給与

定期給与の額につき当期の会計期間開始の日から3ヶ月を経過する日(会計期間3月経過日)までに改定された定期給与その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり(定期給与)、かつ当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与当期の改定前の定期給与が一定であること。

 ・当期の改定後の定期給与が一定であること。

◆減額改定給与

定期給与の額につき、法人の経営の状況が著しく悪化した等の理由により減額した場合の定期給与(会計期間3月経過後でも可)

 ・当期の改定前の定期給与が一定であること。
 ・当期の改定後の定期給与が一定であること。

◆定期経済的利益

継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額がおおむね一定であるもの。

◆職務上の地位の変更等による改定給与

職務上の地位の変更等により改定がされた定期同額の役員給与についても,損金の額に算入されることを明確化する。

◆事前確定届出給与の届出期限

◆現行制度

その給与に係る職務の執行を開始する日と会計期間3月経過日とのいずれか早い日まで。

◆改正

役員給与にかかる定めに関する決議をする株主総会等の日から1月を経過する日とし、その日が会計期間の開始の日から4月を経過する日以降であれば4月を経過する日まで。


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