会計事務所と顧問先をむすぶCLUE 第100号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『小さな会社の簡単経理【7】』
 経営・財務・・・ 『経営者必見! ますます必要!金融機関格付の見方とその対策』
 経理・税務・・・ 『トラブルを未然に防ぐ!経営者はこれだけは知っておきたい!同族会社と役員間の取引と税金』





  今月の特集

小さな会社の簡単経理【7】

税金の疑問

1.税務署への届け出はどんなものがあるのか?

最重要届出【青色申告の承認申請】届け出1枚でこんなにお得!

《ポイント》
(1)会社を設立したら税務署等へ開業届出が必要
(2)企業の存亡に関わる【青色申告の承認申請】
(3)青色欠損金の繰越は7年間可能

会社を設立すると、税務署及び都道府県税事務所、市町村役所に各種届出書を提出しなければなりません。代表的なものは、

(1)法人設立届出書
(2)青色申告承認申請書
(3)給与支払事務所の開設届出書
(4)源泉所得税納期の特例の承認に関する届出書等です。

法人を設立したら速やかに提出してください。

特に、(2)青色申告承認申請書は、設立後3ヶ月を経過した日と決算前日までのいずれか早い時期までに提出しなければなりません。もし届出を忘れれば青色申告が認められません。

青色申告をする場合は義務として、帳簿の作成があり、特典として、

(1)各種減価償却費の割増
(2)30万円未満少額資産の即時損金化
(3)赤字を生じた場合7年間持ち越せる制度などがあります。

特に、(3)の青色欠損金の7年間の繰越は大事です。例えば今期800万円の赤字をした場合、この赤字についてその後7年間で黒字が生じた場合に相殺できるという制度です。今期800万円の赤字が生じた場合、7年間黒字800万円までは税金がかからず、この届出を出していなかった場合、800万円×40%で320万円の税金が余計に出るという訳です。たった1枚の書類を出し忘れただけで、320万円の損得が生じます。設立当初の1年〜2年は特に赤字が出やすいものです。

会社を設立する際には専門家である税理士にご相談ください。相談せず勝手に会社を創り、決算期が来て初めて税理士に決算の相談に来られる経営者がたくさんおられます。その時ではもう遅いのです。出だしからこのようなマイナスを背負って出発されたら目もあてられません。必ず専門家である税理士にご相談され、【青色申告の承認申請】を出し忘れないでください。


2.会社の税金はどれぐらい納めるのか?

納税額は利益の40%と考えておく。

《ポイント》
(1)儲けに対してだいたい40%の税金がかかる
(2)納期限は決算から2ヶ月以内
(3)税金は企業の年輪、自己資本が増える源

会社が儲かってくると税金の負担がずっしりと堪えます。800万円以内なら法人税率が22%、住民税等合算して、約32%の税金がかかり、800万円以上ですと、法人税率が30%と上がり、約40%の税金負担となります。税金の負担の大きさに経営者は節税を考え、一部の経営者は脱税に手を出す人もいます。

しかし、考えて見てください。脱税は、(1)見つかった場合の罰則は非常に厳しい(法人税等 約40%、重加算税 35%、認定役員賞与の場合所得税 約40%計税率105%)(2)毎年税務調査が来る (3)金融機関等の信用失墜 (4)社員が離反、不正、気力が萎える (5)脱税資金は残ったためしがない等々のデメリットばかりです。また、節税対策も、お金が出ない、ムダがない、税務調査で否認されない等々のものを採用してください。

何よりも、中小企業の財務基盤は脆弱です。純資産の部とは、返済義務、支払金利のいらない調達コストが一番安い資金です。この純資産の部の充実こそ経営者に課せられた大きな義務です。純資産の部の充実は基本的には2つしか方法がありません。1つは資本金を増やす増資という道です。2つめは利益から支払った税金の残りの部分をコツコツと貯めていくことです。1年1年コツコツと税金を支払い、その残りの60%を繰越利益=利益剰余金として自己資本に組み込んでいけば、1年800万円×60%として480万円貯まり、10年で4,800万円と年輪のように自己資本が貯まっていきます。売上10億円以下の会社の場合、まず800万円の利益、納税320万円、利益積立金480万円を目標に経営計画を立てられることを お勧めします。


3.ムダな税金を払わない方法は?

節税対策には4つある。

《ポイント》
(1)節税対策は4つの方法がある。
(2)節税対策の順番を間違えないようにする
(3)800万円以上の利益が出たら節税を考える

節税対策には色々ありますが、理論的には4つの方法しかありません。

1. 一番してはいけないのは、税金を払うのなら何でも買ったり、飲んだりといった冗費に使ってしまうという考えです。本末転倒としか言えませんが、恐いのは贅沢の習慣がついてしまい、赤字の時に切り替えできず、利益も積み立てていないので、一気に倒産してしまうことです。アリとキリギリスの例ではないですが、ムダなお金はビタ一文使わないことがビジネスの原点です。

2. 次に利益が出たので、生命保険等投資物件を使っての含み益を使う節税対策です。バブル前は不動産、株、ゴルフ会員権等を使っての節税対策が多かったのですが、今は生命保険を使っての節税が多いようです。生命保険の事例で見ますと、期末に生命保険料1,000万円を払い、短期前払費用の全額損金の規定を使い、全額損金あるいは1/2損金の保険に入ります。

注意点は、(1)安全性の高い保険会社かどうか (2)解約返戻率の高いもの(4年で解約返戻率が80%以上等) (3)解約返戻金―保険積立金=雑収入で課税されます。課税については対策はあるのか考えておく必要があります。好不況の激しい業種、新事業計画、退職金支払目的等の理由がないと保険転がし【解約即新規加入】するしかないので注意しましょう。

3. 設備投資、次期必要な広告チラシの印刷、DM、宣伝、モデルルーム造り、新店舗開設、その細かい費用の計上等当期の費用をもって来期の売上を確保したり、リース料、家賃の1年分前払金を短期前払費用の規定で費用化します。これは積極的な姿勢で冗費にならぬよう計画・見積もりを綿密にして実行しましょう。

4. 今期利益が出ても役員賞与を支払わず、来期の役員報酬を上げることによって全額経費にする方法。交際接待費の中身をよく精査し、会議費・広告宣伝費等の隣接費用とします。売掛債権の不良債権を整理・放棄します。不良在庫をバーゲン・廃棄・評価損処分します。平成18年4月以後開始の会社は、5,000円以下の非課税交際費を使う。固定資産の耐用年数の見直し、不良固定資産の廃棄、敷金等の償却もれ、月ズレ給与・法定福利費の未払計上等々これらの節税対策は、お金の出ない、財務基盤を浴する、本来の節税対策です。このような節税に心がけることが大切です。


4.間違えやすい消費税のポイント

消費税は届出関係に注意。

《ポイント》
(1)資本金1,000万円未満は設立2期目まで消費税は免税
(2)3期目以降は2期前の売上1,000万円超なら課税
(3)2期前5,000万円未満なら簡易課税選択可2年間続行

平成18年4月現在の消費税の基本的な制度を確認しておきましょう。

資本金1,000万円未満は設立2期まで【免税事業者】といって消費税の納税の義務はありません。新会社法が平成18年5月から施行され、最低資本金規定も撤廃されましたので、今後株式会社でも免税事業者が増加すると思われます。

しかし、居住用不動産を購入し、不動産賃貸を始める会社は要注意です。まず購入不動産のうち土地以外には消費税5%はかかっています。1億円で500万円の消費税です。支払った消費税の方が多いと消費税が還付されますので、届出書を提出してあえて消費税の課税事業者を選択する方が有利です。更に面倒なのは、消費税の課税事業者を選択したら2期は継続しなければなりません。2期目の決算日までに消費税の課税事業者をやめる届出を忘れることが多いのです。ここでポイントは2期目の決算日だということです。2ヶ月後の申告日ではないのです。不動産賃貸会社の多くは小規模で、会計事務所には決算のみを依頼している会社が多く、決算日がとっくに過ぎてから書類を持参されることになり、期限が過ぎているということが往々にしてあります。

また、消費税は、簡易課税か原則課税を2期前の売上が5,000万円未満であれば、選択できます。しかし、これも新規事業への進出や設備・投資が多額になれば、どちらが有利か分かりません。人材派遣などのように人件費率が高く、業態も当面変わらないという会社であればともかく不確かでかつ簡易課税の選択が絶対納税が少ない以外は原則課税の選択が望ましくなります。なぜなら原則課税は、お客から預かった消費税と会社が支払った消費税の差額を税務署に支払うだけですから、儲かりもしなければ、損もしません。簡易課税は得することもありますが、損することもあります。そのあたりを良く考え判断を間違えないことです。


5.税務調査は何年であるのか?

設立後3年目ぐらいで【任意調査】が入る可能性。

《ポイント》
(1)中小企業は設立3年目の税務調査が目安
(2)調査の多い業種、税暦が悪いと毎年税務調査がある
(3)帳簿をしっかりし、調査をスムーズにすると税務調査が減る

会社が設立して3年〜5年で税務調査が来る確率が高いと言えます。これも確率にすぎず、10年たっても1度も来ない会社もあれば、設立2年目から毎年来る会社もあります。

経営者や経理担当者にとって、税務調査は何もなくても気分的にイヤなものです。感じのいい調査官ならまだしも、意地悪な人もたまに見かけます。税務調査は概ね3年周期といわれていますが、税務調査の効率を上げようと、前回何もおかしいところがなかった、帳簿がしっかりしている、業界、取引先とも健全と認めた会社には調査が少なくなりつつあります。最近の調査でも、調査件数が減り、修正の税額は増加していると統計がありますので、税務調査は年々厳しくなっていると思われます。


●税務署は、業界・業種を重視しています。

医療機関・美容整形・人材派遣・ソフト業界・産業廃棄物処理・建設・不動産・パチンコ・バー・飲食等、これらの業界の税務調査は頻繁にあります。現金商売・架空人件費・仕入調整等やりやすく、過去の脱税も多いからでしょう。真面目な業者は大迷惑です。


●過去に重加算税を受けたり、脱税に近いことをした。

当たり前ですが、税暦の良くない会社には頻発に税務署の税務調査はあります。大きな脱税に近いことをすれば、3年連続調査もありえます。


※税務調査を簡単に済ませる方法

調査官が調べやすく、総勘定元帳とそれの証拠書類である売上計上の根拠となる請求書控え、外注費・仕入等の支払った請求書控え、通帳・金銭消費契約書・領収書、給与台帳、1人別源泉徴収簿、社会保険加入台帳、履歴書等が即座に提出でき、整然と見やすく整理整頓されいれば調査が早く終了します。会社の経理の能力が高いと分かれば調査官もこれ以上調査しても仕方ないとして、調査は短期間で終了し、問題点の調整で終了できます。





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経営者必見! ますます必要!金融機関格付の見方とその対策

1.自社の【格付】を知るだけで、金融機関対策の50%はOK

バブル崩壊前の金融機関が企業に融資する際に重視したことは、取引実績・担保・業界動向・企業の社会的信用・銀行間のシェア等でした。しかし、現在の金融機関は、【格付】を最重要視しています。

いくら企業の将来性があるとか、技術力がある、歴史がある、長年貴銀行と付き合ってきたといっても、決算書をコンピュータにかけ、【格付】した結果で、融資をするのかしないのか・貸付金額・金利・返済期間、すべて判断します。特に近年中小企業の間で著しく増加した【ビジネスローン】は、【コンピュータ審査】のみで判断する商品です。決算書2期分もしくは3期分をコンピュータに入力したら自動的に、融資の有無・貸し出し上限額・返済期間・利率等が算定され、税理士先生の【中小企業チェックリスト】があれば若干の金利が優遇されるというものです。とりわけこの商品の先駆けである三井住友銀行とそれを追撃する三菱東京UFJ銀行がしのぎを削っている状態です。

コンピュータが決算書をどのように判定するのかを【スコアリング】と言い、決算書を点数化して【格付】するのです。三井住友銀行等のように融資を受けなくても格付判定サービスをしてくれる銀行もあります。自社を客観的に評価するという視点からも毎期決算期には自社の金融機関の格付を行い、強み・弱みを知り、次期の経営活動で改善していきたいものです。

金融機関格付

上記の【金融機関格付】は複数の信用金庫の格付をモデルに作成したものですが、この格付方法を参考にして、金融機関が経営数値をどう分析しているかを学び、その対策に心がけることがこれからの財務の大事な仕事です。

格付には定量分析と定因分析の2つがあり、定量分析は経営数値分析であり、定因分析とは数値化できない企業の実態・取引分析のようです。


2.金融機関は何を重視しているのか?

以下それぞれの分析の中身を見ていきます。


●定量分析について

(1)売上高増加率・・・当期売上高/前期売上高

金融機関は売上高の増加を気にします。もし売上高が減少した場合は、その理由を明確にすることが大事です。赤字部門からの撤退、収益性の高い部門への経営資源の集中等、減収増益があれば問題ありません。

(2)経常利益額・・・営業利益+雑収入―支払利息等がプラスであること

金融機関が最終的に損益計算書で一番重視するところだと思います。臨時的な損益である特別利益・損失の前で本業での商売が成り立つかどうかは、売上―原価=売上総利益から販売管理費を引いた営業利益から雑収入―支払利息等を差引した経常利益が出ているかが勝負です。たとえ税引き前利益がたくさん出ても、肝心の経常利益がプラスになっていなければどうしようもないからです。

(3)売上高の額

金融機関は規模の基準として売上高の額も重視します。100億円以上の企業と1億円規模の企業ではいろんな面で扱いが違ってくるのと同じです。大きいことは必ずしもいいとは限りませんが、それでも売上高が大きいことは一つの安心材料なのです。

(4)売上高経常利益率…経常利益÷売上高

利益率は色々な指標がありますが、最終的には売上高と経常利益の関係です。収益性が高い、付加価値が上がっている等の判断になります。この数値は業種によっても変わってきますので同業他社の売上高経常利益率を常に知っていることが重要です。飲食・小売業は2%程度と言われています。

(5)金融余力・・・税引き後利益+減価償却費

次の償還返済年数に連動しますが、借入金返済の原資は、税引き後利益+減価償却費しかありません。金融機関は貸したお金を返済できるのかを見るのがこの金融余力です。例え利益が出ていても規定通りの減価償却をしていなければ返済能力が低いと見なされます。

(6)償還返済年数・・・借入金÷金融余力【年】

何年で現在の借入金を返済できるのかは、借入金÷金融余力で計算できます。バブル前の多くの企業は、借金も財産だとうそぶき、担保があるから貸してくれると考え、売上高以上の借金を抱えていることは、装置産業である製造業や病院等多く見られました。償還返済年数が100年を超える企業も幾らでもありました。バブル崩壊で一番変わったのはこれらです。

金融庁のマニュアルでもこの年数が重視され、最大20年を超えた企業は破綻懸念区分となり、多くの企業が倒産に追いやられたことはご存じと思います。

(7)自己資本比率…資本の部÷総資本

これも有名な比率になりましたが、資本の部=資本金+法定準備金+利益積立金+未処分利益等

が会社の全資産=総資本の何%を占めるかを数値化したものです。逆に言えば会社の資産のうち何%は会社自身で賄っているかを表したものです。個人で考えても財産がいくらあったとしても借金が多くては仕方がありません。企業の安全性・健全性を見る指標として自己資本比率は重視さ れています。


●定因分析について

経営数値で評価できないメンタルな部分について、都市銀行等はいざ知らず長年その街で根付いてきた信用金庫等は定因分析項目として格付評価しているようです。

(1)業歴の長さ

10年以上存続した企業は1割という統計もあります。業歴の長さは1つの信用として評価されます。

(2)経営者・経営方針

経営者の風評も大事です。難関資格者や地域の有力者、私生活の評判も大事です。逆に倒産・破産者は時効があっても付き合いたくないのは当たり前です。サラ金・街金のブラックリストに乗ったらまともな融資は止まります。経営計画を作成し、毎月経営会義・役員会で経営チェックしている会社の信用度も高くなります。

(3)経常利益動向

経常利益が常に黒字を出し続けている会社かどうかは格付に影響します。3期連続赤字では会社の継続はおぼつきません。思い切った企業判断、廃業・転業・リストラ等の計画なしに融資は難しいでしょう。

(4)資産力

中小企業はほとんど同族会社で個人と法人、資本と経営が一体です。無担保融資といっても代表者個人の連帯保証人は避けて通れません。そうだから会社の資産力も大事ですが、個人の資産力も会社の格付に影響します。代表者個人の資産力、自宅、ローン残債、個人の定期預金、個人の源泉徴収票、確定申告書の写しをくださいという金融機関もあります。

(5)市場動向

業界の先行きも企業の格付に影響します。医療だと医療費の抑制、先行不安があり、印刷等はデジタル対応、バブル崩壊後一時、建設・不動産・内装業等の融資全面禁止等があったように金融機関は先行不透明、不景気業種の融資を見直す可能性があります。自社の市場動向、先行きについてたえず目を開き、新規分野の進出等を常に念頭に置き、リスク分散に心がけるべきでしょう。


金融機関の格付は色々な判定基準があり、金融機関の数だけあるといっても過言ではありません。以前、「三井住友銀行では2.8%の金利を提示されたのに、みずほ銀行では5.5%の金利と言われ、どうなっているんだ」という経営者にお会いしました。銀行に聞いてみると、みずほ銀行は前述の償還返済年数を重視しており、その数値が悪かったため前記の金利になったという話もあり、その逆の話もあります。それぞれの金融機関の格付、評価の力点の置き方で対応が変わっていく結果になっています。しかし、どんな格付であろうと、経常利益がプラスとマイナスでは天地の開きがあり、債務超過では融資もありません。1つでもスコアリングを上げていく決算=経営を目指すことが原則です。

次回は経営努力ではなく、決算書の見栄えをよくする方法を勉強したいと思います。





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トラブルを未然に防ぐ!経営者はこれだけは知っておきたい!
同族会社と役員間の取引と税金

同族会社とは、少数の株主や出資者に株式や出資が集中している会社を言います。具体的には、株主等とその同族関係者(親族など特殊な関係にある個人や法人)を1つのグループとし、持株数の多い順に3グループまでが所有する株式の総数が、その会社の発行済株式総数の50%以上を占める場合を言います。日本の会社の95%以上が同族会社と言われています。


公私混同は避ける第三者間より厳密に!

1.役員と同族会社間の金銭消費貸借のポイント

同族会社においては、会社とその役員との間で様々な取引が行われています。特にオーナー支配の強い会社では、通常の市場取引では考えられないような内容の取引もあるようです。税法では課税公平の見地から一定の規制をしているので、特に事例の多い金銭の賃貸についてポイントを整理してみます。


1)会社が役員にお金を貸す場合、役員貸付金/現預金のケース

(1)認定課税有り

会社は、利益の追求を目的とする営利法人ですから、取引をする場合には、常に経済的合理性が要求されます。したがって、会社が役員にお金を貸すときは、適正な利率により利息を徴収すべきであり、仮に無利息または低利による貸付を行ったときは、会社の経済的合理性に反する行為として、適正利息との差額に相当する部分については、税務上は受け取ったものとみなされ、会社の収益に計上されます。これを認定課税といい、法人の場合には認定課税があります。

(2)適正な利率

資金が他から借り入れたものである場合にはその借入利率、その他の場合には貸付をした日の属する年の前年11月30日現在の公定歩合に年4%の利率を加算した利率(現在4.1%)によります。実務的には4.1%の金利をとるか、調達金利の根拠を示せるようにして調達金利以上にすることが重要です。

(3)契約上のポイント

会社が役員にお金を貸す場合には、少なくとも契約書に次の事項を明記しておく必要があります。

1.当事者の氏名
2.貸付金額と交付日
3.返済期限・返済方法
4.利率
5.契約日
(雛形書式参照)

金銭の貸借に関する確認書


(4)商法上の問題

会社が、その役員との間で金銭消費貸借契約を締結するという行為は、商法上、会社とその役員との間の「自己取引」となります。したがって、会社が役員にお金を貸す場合には、あらかじめその自己取引について、取締役会の承認を得ることが必要になります。

なお、取締役会で自己取引に賛成した取締役は、会社が損害を被った場合、連帯して損害賠償しなければならないので注意が必要です。

(雛形書式参照)

取締役会議事録


(5)利息をとらなくともよいケ―ス

次のような場合には、役員に対して無利息または低利による貸付けがあったとしても、適正な利息との差額が「報酬」とされることはありません。

1. 災害、疾病などにより、臨時的に多額の生活資金が必要になった役員に対して行う貸付
2. 適正な利率により計算した利息相当額が、会社の一事業年度、5千円以下である貸付


2.役員が会社にお金を貸す場合

1)認定課税、原則として無し

個人の場合は、会社と異なり、常に経済的合理性に基づいて取引をするのではありません。したがって、役員が会社にお金を貸付けても、当然利息を徴収すべきという考え方はとられませんので、特殊事情がない限り認定課税はないと思われます。

2)利率が高いケース

役員に対して、通常より高い利率により利息を支払った場合、適正な利息部分【上記貸付の場合の認定利息に準ずるものと思われます。】については支払利息となりますが、それを超える部分は法人税の計算上「役員報酬」となり、会社側にその役員報酬に対する源泉徴収の問題が発生します。また、この役員報酬を加えたところで、その役員報酬が過大であるかどうかが判定されることになります。


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