● 今月の特集
金融機関のつきあい方の疑問 バブル崩壊以降金融機関のルールは大きく変わりました。一番大きく変わった点は、不動産【土地】神話の崩壊です。不動産担保融資から、決算書・収益力重視融資への変更です。 土地や不動産・資産がどれだけあろうが、赤字企業や収益力のない企業には融資しないという金融機関の姿勢です。金融監督庁のガイドラインでも、借入金/返済力=15年という指標があります。資金使途と返済期間が重視され、企業の決算書の内容で格付する金融機関が増えました。これまで一律1.3%であった保証協会の保証料も、平成18年4月より、日本税理士連合会の中小企業会計チェックリストの添付を条件とした保証料の0.5〜2.2%までの9段階の格差を付けた動きはこの象徴です。今後も担保価値よりも決算書の真実性を前提とした収益性と税金納税の額を重視した融資姿勢は一段と強まるものと思われます。 《ポイント》
1.経営計画をどうやって作るのか 簡単に考えよう! 1年分の数字を並べてみる 《ポイント》 (1)経営計画なくして会社経営なし (2)まず簡単に前期の実績推移を眺めながら1年分の数字を並べる (3)まずたたき台を作成し後からみんなの意見も聞き、何度も作り替えよう (4)必要なのは経過月実績+未経過月予算だから常に予想売上、予想利益 経営計画とは、会社のこれからの売上・仕入・人件費・経費・利益の損益計画とお金の動きの資金計画とを合わせたものを言います。 経営計画 〜 損益計画 〜 資金計画 今後の売上はどの程度伸びるのか(1)原価は増加するか(2)減るのか(3)人件費や経費はどうなるのか(4)結果会社の利益を予想します。 最初は少し面倒かも知れません。しかし、経営計画を作成せずに会社経営をするのは暗闇の海を船出する船のごときものであります。「先のことなど全くよめない」という経営者の方もいらっしゃいます。しかし、前期の損益推移表【図1】を見ながら、来期の売上・原価・経費から利益予想をしてください。 極論すれば、経営計画は前期のままでもいいのです。【図2】 [図1] 前期損益推移表 [図2] 当期損益計画 必要なのは経営計画を作成することではなく、毎月の経過実績を正確に把握し、経過月実績+未経過月予算から常に予想売上・予想利益をつかみ、黒字経営の追求と計画的な節税対策なのです。【図3】 [図3] 予想決算 2.お金の借り方には順番がある! 《ポイント》 (1)自己資金300万円〜1,000万円固定資産部分は用意しよう (2)お金の借り方には順番がある (3)絶対してははいけない街金と親族・友人からの借入 会社を設立するときは、最低300万円〜1,000万円程度の自己資金を用意しましょう。それでも、設備投資や売上の増加に伴う売掛金の増加等で資金が枯渇します。その場合どうしても金融機関からお金を調達する必要があります。資金調達には借りる順番と絶対に借りてはいけない借入先があります。 資金調達の順番として第1位は、国民生活金融公庫です。無担保融資は最高2,000万円程度で、金利は2.65%です。【平成18年8月現在】第三者連帯保証人が出せない場合0.9%金利が上乗せになります。国家の機関で、様々な融資制度があり、まず最初に相談すべき機関です。 第2位は、都道府県の保証協会付き融資の中で、市町村の利子補給制度の活用です。これは保証協会融資に市町村、区などが小企業のために利子補給をしようとする制度で、金利は0.6%【平成18年8月現在】で1,000万円程度しか融資を受けられませんが、一番安い金利ですのでぜひご活用されてはいかがでしょうか。しかし、財政悪化で停止中の区市町村も増加しています。 第3位は、都道府県の保証協会付き融資です。銀行に借入依頼をすれば、銀行が保全のために都道府県の保証協会付きの融資をするもので、保証料は平成18年4月から会社の財務内容で変動します。これとは別に銀行の金利が2%〜3%上乗せとなります。最高8,000万円程度無担保枠が企業の規模、状態によって資金貸出可能です。 第4位は、各銀行の無担保ローンです。銀行によって様々な商品名があり、企業の決算状況によって、金利・返済期間・貸出金額等が違ってきます。 第5位は、過去の主流であった担保付融資です。主に定期預金・不動産担保ですが、この融資を受ける銀行は、保証協会付き融資や無担保ローンを利用していない銀行の利用をお勧めします。担保評価も銀行の一方的なもので、担保は最後の資金調達手段として活用したいものです。 最後に絶対借りてはいけないのは、商工ローンと呼ばれる高金利のお金です。これらの融資を受けている会社には、国金や保証協会、銀行は一切融資しなくなります。それらの融資に手を出す前に税理士・弁護士に相談され、会社整理・廃業も考えてください。冷静に考えれば、16%〜30%以上の金利を支払って成立するビジネスなどありはしないからです。 また、親族・友人からの借入も避けるべきです。会社が倒産・整理・廃業しても商売上の不義理、迷惑はお互い覚悟の上でしょうが、人としての信頼を担保にしたお金で迷惑をかけたら償いようがないのです。 3.銀行にお金を借りるときの注意点は 借入する場合は、資金使途と返済計画をしっかり立てよう 《ポイント》 (1)中小企業は、社長個人の連帯保証が不可欠 (2)返済実績が新たな借入を容易にする お金を借りる時の注意点として、第一に資金使途を明確にしておくことです。月次の貸借対照表をしっかり理解し、なぜ借入をするのか明確にすることです。 設備投資を1,000万円したい、売掛金が500万円増加したから、といった明確な資金使途があってお金を借りることです。赤字を埋めるという後ろ向きのお金は借りるべきではありません。最悪の場合は、経営再建計画を作成し、毎月決算を行い、月次単位で黒字経営へ舵取ることを前提にお金を借りることです。 次に、借入金の返済原資は、減価償却費+税引き後利益の合計しかないということです。 5,000万円を5年借りたら、金利3%として、毎月元金83万円+金利15万円、合計98万円程度の返済が発生します。金利を支払い、尚、減価償却費+税引き後利益83万円が出る会社の状態であれば、この借金の返済に目途が立ったといえます。減価償却費は経費となりますが、お金が出て行かず手元に残ります。また、1,000万円の利益が出ても税金で約40%無くなります。手元に残るのは減価償却費と税金を支払った残りの利益という訳です。この計算式通りにうまく経営がいかないと、また借入金を増やさなければ資金が回らなくなってしまいます。 計算式を借入前に要チェック等式を理解しよう! 年間借入金返済額 < 減価償却費+税引き後利益 土地の購入資金=自己資本 【資本金+利益剰余金】 4. 資金繰り表の見方 会社の命、資金が回るかどうか資金繰り表は重要な資料 【ポイント】 (1)3ヶ月先の資金繰り表を作っておく (2)資金ショートしそうな場合は事前の手当てが必要 (3)できれば売上高または売上総利益の5%の定期積金をしておく 会社を経営すると、あるいは経理の任についていると、資金繰りばかりで頭が一杯になります。資金繰りとは会社のお金の入出金のやりとりです。入りにはまず売上が必要で、次に売掛の回収や貸倒対策があり、出の方は、固定的な家賃・税金・社会保険料・水道光熱費や電話代・給料等があり、変動的な仕入・外注費等があります。 このような入出金の予定を一覧表にまとめたのが「資金繰り表」【図4】です。おおよそ3ヶ月の資金繰り予定表を毎月作成し、今後の資金の出入り、不足を常に把握し、金融機関との対応を準備することが大事な経営者、経理担当者の仕事です。 [図4] 3ヶ月予想・実績資金繰り表 ※営業収支・・・この金額が黒字になっているのが企業の前提です。ここが赤字であることは、バケツに穴が空いている状態と同じです。理想的な資金繰りとは、営業収支のプラスのお金で財務収支をまかなえる会社である。つまり、営業の入金マイナス出金のプラス分で毎月の借入金の返済・設備投資の購入・納税資金等を捻出できる会社です。 ※事例の会社のように、3月に大きく資金回収がなされ、他の月では営業収支がマイナスという会社は、建設・不動産・卸売・季節変動値の激しい業種によく見られます。 資金ショートをおこさないために、会社の口座がある金融機関で【定期積金】を行うことをお勧めします。毎月小さな金額でも、2年3年と続けると、まとまった金額になります。売上高や売上総利益の2%〜5%くらいを目安に貯めたいものです。今後融資を受けたいときに日々コツコツと貯めていく会社は、金融機関は大いに信用します。
事業にはさまざまなリスクが伴います。代表者に万が一のことがあった場合、経営悪化による資金繰り難等々。生命保険はこれらのリスクに備える役割のほか、勇退時の退職金原資や緊急時の資金確保等の役割も期待できます。 会社の経費となり、かつ解約返戻率の高い定期保険は、将来のリスクや資金不安に備えつつ、利益を減らし(繰り延べ)かつ帳簿外で資金を留保する効果が期待できます。 全額損金タイプの定期保険などもあり、解約返戻率の高い定期保険への加入により、将来の資金手当と節税という2つの効果を期待することができます。 《ポイント》 〔生命保険の有効利用〕 1.万が一の保障に備えられる 2.不測時の資金手当、退職金原資としての積立の役割 3.利益を将来へ繰り延べ平準化させる効果 短期前払費用の取り扱いのため、決算締め日1日前でも1年分が経費になります。 《注意点》
節税対策を行う際に生命保険を活用することは非常に有効な手段です。今の利益を将来に渡り繰延べること(含み資産の形成)により、将来事業で大きな損失が発生した場合や、従業員の退職金、取引先の倒産による貸倒れ損失が発生した場合に外部に積立されている生命保険の解約返戻金を活用することで、利益の平準化が計れます。また、昨今のバブル崩壊以降、以前は「土地」や「株式」によって「含み益」を形成することが可能でしたが、今や「土地」「株式」は全て「含み損」を抱えた状態になっています。現在では唯一生命保険だけが確実に「含み益」を形成することが可能なのです。 ●例えば・・・ ある製造業A社は長年B社と取引をしていました。この不況にかかわらずA社は利益を計上してきました。この間、A社は計画的に生命保険を活用して社外に「含み益」を形成してきたのです。しかし、この不況のあおりでB社が倒産してしまいました。A社にとってB社は主力取引先であり、売掛金は3,000万円もありました。このままでは貸倒れ損失が計上され、赤字転落は間違いない状態です。しかし、A社はこの局面を打開し、前年と同様の利益水準を保ったのでした。 決して売上が急増した訳ではありません。 いったいどのようにこの局面を打開したのでしょうか? それは・・・生命保険の解約返戻金を活用したのです! A社は5年前に自社の退職金作りのために、社長を被保険者とする逓増定期特約付き終身保険に加入していたのです。その解約返戻金を活用して、B社の貸倒れ損失と同額の解約返戻金を手に入れたのです。社長の頭をよぎったのは、最近の金融機関の態度の変化でした。ここで大きな損失を出してしまうと、融資も受けにくくなるうえ最悪の場合、金利交渉や融資引き上げもあり得ると考えたのでした。このような状況を回避するために、思い切って生命保険を解約してこの局面を打開したのです。解約返戻金が雑収入となり、貸倒れ損失と相殺することができたのです。つまり以下の処理ができたのです。 現預金/保険積立金 貸倒損失/売掛債権 雑収入 ●理想的な節税対策の条件は? これは、(1)合法的に(2)効率よく損金(経費)をつくり(3)戻ってくるおカネのあるもの ということになります。そんな都合のよい方法があるのでしょうか。 それが保険を使った節税対策、決算対策なのです。 生命保険に関する税務「保険税務」を活用すると、いとも簡単に効率の良い「節税」が可能になります。生命保険といえば「営業がしつこい」とか「自分が死んでからお金が入っても使えないじゃないか」といったことから生命保険嫌いな社長さんが少なくはありません。とはいえ、自分に万一の場合、残された社員や自分の家族のことや、会社の借入金の関係、仕事上の付き合い、といった事情で、たいがいの社長は多かれ少なかれ何らかの保険に入っています。 あまり前向きなイメージではない生命保険が、その商品、税務通達(税務当局が処理方法を明文化したもの)によって合法的な理想の節税手段になるのです。 こうした適切な保険活用を行うためには、保険の知識だけではなく、企業で成功した前例などの裏付けが不可欠になります。 1.生命保険の種類は大きく3つに分かれる 生命保険の種類は、大きく分けて養老保険、定期保険、終身保険の3つです。図解すると次のとおりです。 2.受取人の違いで経理処理に違いがでる 生命保険金の受取人の相違により、支払保険料を損金算入するべきか資産計上するべきかといった経理処理上の違いがあるので、次に、一覧表示します。定期保険でも、一定の条件を満たす場合、損金計上できない場合があります。実際の取扱いの際には保険会社・税理士等に確認して下さい。
「どういう場合に」「どのような会社の」「どういうところが」、調査の【課題】となるのでしょうか。特に注目されるのは、前年同期比で著増・著減の数字です。その「事情」についての説明と証拠が、税務調査の要なのです。 ●どのような会社に税務調査があるのか? 一般的に見て、次のような場合に該当する会社は、実地調査があると見てよいでしょう。 (1)毎年のように更正決定を受けてきた (2)役員の金銭関係と会社の金銭関係にケジメがないような公私混同の経理をしている (3)大きな売上計上漏れや仕入の架空計上をしたことがある (4)経理の水増し伝票を切ったり、個人の費用を会社の費用のように処理している (5)とかく税法に疎く、同族関係者によるワンマン経理を行っている (6)欠損を初めて出した、あるいは二期以上続けて欠損を計上している (7)社長だけしか会社の収支状況を知らない (8)売上の前年比が著しく高く、または、申告所得の伸びが著しい (9)好況で世間から注目されている業界で、これまでの税暦をみると経理部門が弱い (10)企業内で不正がよくある (11)青色申告を取り消された
(18)各地に共通する調査重点管理対象業種として、次のような業種がある 1.宅配、引越サービス 2.OA機器の賃貸 3.自動車の賃貸 4.ソフトウェア業 5.持ち帰りのすし、弁当 6.人材派遣業 7.学習、趣味の教室 8.スポーツ用品、娯楽用品の賃貸 9.テニス、ゴルフ練習場 10.サラリーマン金融 11.産業廃棄物処理業 12.デザイン業 以上の事項に該当することのある会社は、毎年のように税務署の実地調査が繰り返されることでしょう。あるいは、合計残高試算表が毎月作成できる経理能力があるかどうかを金融与信の一つの前提にしている銀行は多いようですが、これは、「税務与信」の場合にも言えると思います。 ●いつ税務調査があるのか? では、いつ調査にやって来るのか?という点も気になるところです。この点は税務当局以外の人は誰もわかりません。しかし、12月10日〜1月10日頃までの暮の多忙期や正月早々には、税務の指導はともかく、実地調査にはやってこないというのが普通です。 まして決算中という時に、前期以前の会計年度の調査があったということは聞いたことがありません。もし調査があるとすれば、よほど信用されていないか、仕入先や得意先の反面調査でしょう。しかし、長期間未接触であった法人で、申告の実態についてチェックする必要があるときは、期末直前に調査に入る場合もあります。 普通、調査が頻繁になる時期は、税務署の会計年度が4月1日から始まりますから、年度末追込み調査ということで、「成人の日」直後から桜の咲き始める頃までと考えてよいでしょう。 そうこうしているうちに3月決算の申告期限である5月末になり、6〜7月は税務官庁の人事異動期に当り、引継ぎやその他で錯綜するため、新年度の事務が起動に乗るのは7月中旬に入ってからということになるでしょう。 そして、8月の夏休みが終わり9月から年末を目指して実地調査は各地で活発化します。 以上が大体のサイクルです。申告後1年たっても調査がないとか、電話での照会内容も単なる会計処理上の問題という程度のものであれば、机上でのチェックだけで実地調査は省略されたと考えて良いでしょう。 ●現況調査の注意点 現況の調査というのは、帳簿調査の会社訪問の前に、その会社の現況を確認しておこうというものです。高額所得法人・好況法人・現金小売業・料理飲食店・パチンコ店などが現況調査の対象とされた例が多いようです。特に繁華街の現金小売業が注目されていると伝えられています。 この現況調査は、調査日現在の現金調査、棚卸商品の調査に重点が置かれます。その着眼点は、次のようなものです。 (1)金庫やレジの内容物を確認し、記帳外の現金・証券・その他の証書等がないかチェック
以上の現況調査の結果、現金が出納帳と合わない、商品の在庫管理もズサンであったということになれば、このあと実施される帳簿調査が思いやられます。現況・抜き打ち調査は納税者に税理士のいない場での調査になりますので、絶対に現金実査以外させず、税理士の立ち会いのない所での質問に一切答えないことを厳守してください。税理士には、納税者は代理人署名をしており、税理士の立合いがない税務調査は納税者不利になりかねないので、現況調査である現金実査以外は帰ってもらってください。 ●税務調査のための勘定科目別注意点 《科目ごとの税務調査時のチェックポイント》 実際の税務調査は、取引内容を確認したうえで、申告内容の妥当性をチェックするのが目的ですが、ここでは、いくつかの具体的な科目を基に、税務調査時に問題となりやすい点をあげています。従って、逆にいえばこれらの勘定科目について、日常業務のうえで常に問題が生じないように適正に処理しておくことが大切です。
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