● 今月の特集
給料についての疑問 今月は小さな会社の給料についての疑問点をまとめてみました。給料の中でも役員に支払われる給料である役員報酬については、税法で厳しいルールがありますので注意が必要です。株主・役員が、ほとんど身内だけの同族会社は、第三者の株主や役員がいる法人より一段と厳しい客観的視点が必要とされます。そのことを肝に銘じて慎重に処理する必要があります。 1.社長の給料はいつどこで、どのように決めたらいいのか? 《ポイント》 (1)株主総会で限度額を決め、取締役会で具体的に決定 (2)年度始めに決めた役員報酬を増額してはいけない (3)社長の報酬は高い金額で設定し、いざというとき覚悟が必要 社長の報酬をいくらにしたらいいのかという質問を受けます。会社と社長は全く別物であることを理解してください。会社のお金を社長が私的に使うと法律的には業務上横領になります。まず、会社の仕組みを理解してください。 法人は、株主の所有物です。株主は株主総会で法人の実務を取り仕切る取締役と監査役、会計参与を選任し報酬の最高限度額を決めます。その選任された取締役たちが取締役会を開催、代表取締役を選任し、具体的な報酬を決めることになっています。 日本の多くの法人が、この仕組みに無知なうえに、大株主と代表取締役が同じであることが多いので、会社と社長の区別がつかなくなっているのが実像です。このような認識でいる会社や株主や役員が多いため会社は株主のものであるという大原則に反れて、ライブドアのような粉飾決算や商法違反が起こるのです。 ☆役員報酬の上手な決め方 平成18年度経営計画
この場合、利益を0にするには、2,400万円の役員報酬を支払えばいいのですが、昨今銀行の格付が厳しいこともあり、一定の利益を計上する必要があります。利益を800万円計上するとすれば、この会社は、2,400万円−800万円=1,600万円が役員報酬となります。 このように実現性の高い経営計画を策定し、その一環として役員報酬を決めるのが一番上手な方法ではないでしょうか。 反対に、問題のある役員報酬の決め方は、経営者が例えば、「生活費として月々120万円必要なので、年1,440万円の役員報酬にした」というケースです。毎月役員報酬を支払う前の利益が100万円しかない場合、月々120万円の役員報酬を支払えば月々20万円足りません。足りない年240万円は会社の赤字となり、月々借金も240万円膨らむことになります。まず、生活費を月々100万円に下げる。さらに経営努力で売上増収や原価・経費節減し、月々20万円の利益が生み出せる会社になったら、報酬を月々120万円にするといった前向きな経営判断が欲しいものです。このような経営者には倒産は無縁です。 実務的には、役員報酬を多めに設定し、業績が悪くなったら減額することが一般的です。これは税法では利益操作を認めないという観点から役員報酬の増額を禁止していますが、減額するのは業績が悪化し、経営責任をとるために下げたという理由であれば是認せざるを得ないため認められています。増額した場合、増額した分は役員賞与として法人の損金と認められません。先ほどの法人の仕組みを理解していれば、すぐに理解できますが、役員報酬を引き上げることができるのは株主総会においてだけです。会社の業績は、決算を終えて判明しますから、期中では増額することが原理的にできないことを理解してください。減額は代表取締役が株主に責任を取るのですからやむを得ません。そのため始めに多めに役員報酬を設定し、業績を睨みつつ下げていくことが小さな会社ではよく行われています。 役員報酬はなるべく多くとっておきます。小さな会社では、いざとなったら社長の貯金を取り崩して会社の資金繰りに流用することも必要ですし、増資資金の準備も考えておかなくてはなりません。 2.役員へのボーナスを出すことに問題はないのか? 問題はないが、一定の条件以外は経費とならない。 《ポイント》 (1)取締役へのボーナスは一定の条件以外は法人税がかかる (2)使用人兼務役員の使用人部分の賞与は経費となる
会社の役員は株主に委嘱されて、定められた役員報酬で会社の経営を執行し、決算で予想以上の業績が上がったら、ご褒美としてボーナスがもらえる仕組みになっています。決算から3ヶ月以内の株主総会の利益処分で役員の賞与が支給されます。株主への配当と同じく、利益の分配ですから、会社の経費とは認められません。これは上場会社であろうが中小企業でも全く同じ扱いです。ですから、仮に100万円の役員賞与を支給したとすれば、法人税と共に役員個人の所得税や住民税もかかってきます。 しかし、役員でも代表取締役や監査役以外の一般の取締役で、実際の実務に従事し、社員と同じ立場で仕事をしている方については、その使用人部分の賞与については、他の使用人と同時期かつ同条件【支給月数や計算基準】であれば、会社の損金としても良いとされています。これと同じく平成18年4月より、使用人兼務役員でない役員についても、あらかじめの定めに基づいて、確定した時期に確定した金額について支給する役員の賞与は、届出をすれば、会社の損金となるよう改正になりました。 ただ、普通は役員賞与を支給しなくて済むように、経営計画をしっかり立て、常に利益を予想し、社長の毎月の報酬を合理的に算出する必要があります。 ☆怖い役員の現物給与課税 税務調査で経費性が否認された場合、役員の臨時的給与=役員賞与となり、会社への法人税課税と役員の所得税課税の両方課税されるケースが増加しています。例えば帳簿がずさんで、簿外売上2,000万円が税務調査で発見された場合、(借方)役員賞与2,000万円/(貸方)売上2,000万円となり、売上2,000万円に40%の法人税等800万円、個人所得税約40%として所得税800万円、消費税100万円の計1,700万円もの税金が課税されます。更に過少申告加算税・延滞税等もあり、ほぼ2,000万円全額税金といったケースも十分考えられます。しっかりした帳簿の作成と監査を行い、絶対に役員の現物給与課税がないようにしたいものです。 3.給料を支払う時の源泉所得税の差し引き方、納税の仕方について 源泉徴収税額表を見て差し引き、翌月税務署に納付!! 《ポイント》 (1)給料の所得税は、「源泉徴収税額表」による (2)「扶養控除等申告書」の提出により「甲」で徴収 (3)納税は届出を出しておけば年2回となる 会社が給料を支給するときには、所得税等を差し引きます。 給与を支払うときは以下のような経理処理をします。 給料 / 現預金 預り金 【源泉所得税】(a) 預り金 【住民税】(b) 預り金 【社会保険料】(c) (a)源泉所得税 控除する金額は、給料から社会保険料を控除した後の金額と扶養親族の数により、「源泉徴収税額表」という一覧表で求めます。給料は月給で支払う場合は、所得税の差し引き方は2通りあります。給料を支払う人が主たる業務に従事していて「扶養控除等申告書」を提出している場合は、「甲欄」で徴収します。また、2箇所以上の会社で働いている人については、2箇所目以降の給料の場合は、「乙欄」で差し引きます。「甲欄」で差し引く方が所得税が少なく、手取り金額が増えます。会社は預かった所得税を、原則として翌月10日までに金融機関や税務署に納税する義務があります。3月に社長に給与50万円を支払った場合【社会保険を除外】、扶養が2人なら、預かる所得税は20,900円です。これを翌月4月10日までに納税することになります。10日が土・日曜日の場合は、11日または12日が期限となります。 ただし、社員10名未満の会社ならば、税務署に届出書を提出することにより、1月から6月までの所得税を7月10日までに、7月から12月までの所得税を1月20日までに納税すればOKとなっています。 そして会社は年末に「年末調整」を行う必要があります。給料を支払った各人ごとに、1年分の給料・賞与を集計して、社会保険料や生命保険料などの所得控除を差し引き所得税を計算し、預かった所得税との差額を清算する手続きを「年末調整」といいます。会社が多く預かっていれば、還付し、不足であれば追加徴収することになります。 (b)住民税 1月末までに市町村に各人の源泉徴収票を送付した結果、各人の住民税額が市町村から通知されます。その金額を毎月の給料から天引きし、翌月10日までに市町村に納付します。(特別徴収の場合) (c)社会保険料 給料から【表】を見て、健康保険料、厚生年金料の本人負担分を控除します。40歳以上の人には介護保険料も合わせて徴収します。 4.社長の家族に給料を出してもいいのか? 勤務実態が必要。家族役員が有利。 《ポイント》 (1)家族に給料を分散させる方が税金上有利 (2)実際の勤務実績、高額な報酬は否認されている (3)取締役や監査役は役員報酬で支払う 会社の節税対策で一番多いのは家族を社員にして給料を支払うことでしょう。日本の税制は法人税・住民税率が約40%の固定税率で所得税・住民税は所得に応じて税率が上がる累進税率【15%〜50%】です。そこで、会社の法人税を減らし、社長の個人の税金も減らすのは、家族を社員にして月85,000円 年103万円以下であれば、所得税は0になり、法人税は103万円×40%=42万円減額します。5人の家族がいれば、200万円以上の節税になります。 しかし、家族を社員にすることは、勤務実態や仕事の内容からみて給与が正当であるかを税務調査で厳しく追及されます。名前だけの社員と分かれば、過去7年間に遡って給与を否認され、重加算税等の罰金が科せられます。月85,000円でも、7年間で700万円を超え、罰金・延滞税・法人税等から役員の賞与として社長の所得税までとられると105%と近い税率となり800万円以上の納税となり、更に支払った税金は翌年の損金にもなりません。家族を社員にする場合、タイムカード・勤務記録、及び仕事の内容と同業他社の給与等から判断し、不相当でないことを証明しておかなければなりません。 家族を取締役や監査役として役員報酬を支払うことについては、役員の責任がありますので、それに見合った報酬であれば問題はありませんが、これについても不相当に高額の役員報酬は損金としないと税法で定められています。また、未成年・学生等であれば、役員の実態について取締役議事録等の詳細な記録が必要と思われます。顧問税理士と良く相談されることが必要です。 5.実質的な一人会社オーナーの役員報酬の給与所得控除部分損金不算入 《ポイント》 (1)実質1人会社の代表取締役には、給与所得控除の損金を認めない (2)増税覚悟の家族経営か、社員に開かれた会社かを判断する必要がある 新会社法が施行され、簡単に法人が設立できるようになりました。個人事業者が法人成りをすれば、オーナーの役員給与について、法人段階では損金算入ができ、個人段階では給与所得控除が利用可能となり、経費の二重控除となります。そこで、新たに次のような規制がかけられることになりました。 同族会社の業務を主宰する役員及びその同族関係者等が、発行済株式総数の90%以上の株式を所有し、かつ、常務に従事する役員の過半数を占める場合には、その業務を主宰する役員に対して支給する役員給与のうち給与所得控除に相当する部分として計算される金額は、損金不算入とされます。 ※株・出資金の11%以上を第三者【家族以外の社員や取引先、友人】に譲渡。実質的かどうかは厳しく調査される恐れがあります。実際の売買代金のやりとりや、議決権等必要です。 ただし、その同族会社の所得等の金額(所得金額と所得金額の計算上損金の額に算入されたその給与の額の合計額)の直前3年以内に開始する事業年度における平均額が年800万円以下である場合及びその平均額が年800万円超年3,000万円以下であり、かつ、その平均額に占める主宰役員の給与の額の割合が50%以下である場合は、適用除外となります。 ※利益【所得金額】+役員報酬が800万円以上である場合に適用されます。 《適用期日》 これらの改正は、平成18年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。
予定・実績資金繰り表の見方 資金繰り表を資金運用に十分に役立たせるためには、予定・実績資金繰り表が重要です。資金繰り表は、予定(見積り)と実績が比較され、予定通り資金の回収・支払いの実績があったか、予定(予測)と結果(実績)を常に比較検討し、将来に備える心がけが大切です。会社の経営、存続とは、結果としてお金が廻っているかどうかです。売上〜回収、仕入・経費〜支払、借入〜支払等会社が計画・予定通り順調に動いているかをお金だけに注目している経営者も多数おられます。予定・実績資金繰り表は、会社の経営計画と正しい月次決算から出来ています。経理が正しく機能しているか一目で判断出来ます。しっかりとした予定・実績資金繰り表を創り、経理を経営に活用していきましょう。 本業で資金を稼ぎ出しているか?営業的な収支に着目する 資金繰り表からは、「何が資金繰りを苦しめているのか?」「どうすれば資金繰りがラクになるのか?」など、さまざまなことを読み取ることができます。 経営的には営業的な収支を見ていくことが非常に重要ですからこの様式が便利です。 上記の図を見て下さい。 1.営業収支全体のバランスを見ます これは、貴社が営業活動によって得た資金で営業経費を支払うと幾ら残るかを見ることができます。企業経営では、この営業収支が黒字でなければいけません。幾ら損益上黒字であってもこの営業収支が赤字であれば、その原因を徹底的に探る必要があります。 損益上黒字であっても、営業収支が赤字の会社の原因として、(1)売掛金の回収が順調でない。(2)在庫が増加している。などが考えられます。対策として、(1)売掛債権年齢調べを行い、不正常の得意先に対して回収計画の立案、債権放棄による損切り等検討。(2)在庫増加について、原因調査・在庫処分等検討をしてください。 上記の結果、損益上の黒字が赤字になることも十分ありえます。会社の本当の姿を直視してください。 2.臨時の支出の調達方法は健全か? 設備投資や法人税の支払など臨時の支出は額がかさみますから、資金の調達方法をあらかじめよく考えておく必要があります。短期の借入金や手形割引などで対応すると、将来の資金繰りが苦しくなってくることが予想されます。設備投資の資金調達は、長期借入金やリース・利益や増資による自己資本が望ましい。短期借入金で設備投資はもってのほかです。 3.借入金返済と投資のバランスはとれているか? ここで借入金返済と投資のバランスに着目してみましょう。 たとえ毎月40万円の利益が上がったとしても、必ずしも同額の返済が可能になるわけではありません。利益が40万円出れば税金が20万円かかりますから、実際に残るのは半分の20万円です。減価償却費が毎月5万円しかなかったとしたら、利益が即、現金で入金されたとしても、月々25万円しか返済に充てる事が出来ません。 借入金の1番確実な返済原資となるのは減価償却費です。減価償却費は実際には支払っていないお金が費用になっているので、課税されることなく丸々借入金の返済に充てる事が出来るからです。無借金経営の算式とは、長期借入金返済=利益の半分+減価償却費です。貴社は大丈夫ですか。 4.銀行の融資枠と担保の問題 資金調達の順番をよく聞かれますが、それぞれの特徴を考慮し、以下の順番を厳守してください。(1)国民生活金融公庫の無担保融資 (2)各金融機関の無担保融資【ビジネスローン等】 (3)保証協会付融資 (4)担保付融資です。資金調達の順番と与信枠を常に把握することが、経理・財務の基本的業務です。 5.長期・短期の借入れバランス 貴社が、資金不足に陥って、結局、1年がかりで返済した金額を再度借り入れることにしたとします。このときの借入れは短期資金です。長期分で返済していた元金も短期資金となると、翌期から毎月の返済が増えて、いっそう資金繰りが圧迫されることになります。 こうした会社は、長期・短期の借入れのバランスと銀行の返済方法を見直し、短期資金を長期資金に変更してもらったり、5年返済を10年返済にしてもらうように交渉するなど、無理なく支払いが出来るように改善していく努力が必要です。 こうした点に注目して、投資を行なうときは、資金繰り表をにらみながら、無理のない返済計画を立てたいものです。 6.資金繰り表を将来に生かす 前記のように資金繰り実績表を簡単に見てみました。せっかく資金繰り表を作るのですから、有効に使っていかなければ意味がありません。 通常、資金繰り表は、現金不足の場合にはどう手当し、現金過剰の場合にはどう運用するかを決定するために使います。しかし、さらに、そこから一歩進めて結果を分析し、検討を繰り返すことで、現在だけでなく将来の経営に役立てていくことが大切です。 最近では、『会社が活動した結果、いかにしてお金を生み出していくか』ということが大きな課題になっています。そのために、資金繰り表は大変重要な役割を持っているのです。 資金不足の原因とその対策 最後に、資金不足の原因とその対策について例示します。 貴社でも参考にしてください。
平成18年7月に税務署も新年度を迎え、7月・8月中に税務調査対象会社の選定が行われ、8月のお盆明けから3月決算5月申告の法人を中心として、本格的な税務調査の季節がやってきます。税務調査と聞くと、ほとんどの経理担当者は緊張してしまいます。しかし、不正のない経理をしていれば、そんなに心配することはありません。法人の税務調査では、法人税は無論のこと、消費税、源泉所得税、印紙税まで調査されます。 ●税務調査は日々経理業務の卒業試験のつもりで望みましょう!! 1.法人の税務調査の要注意事項 売上、仕入・外注費、たな卸・仕掛は最初に調査の対象となる項目です。特に決算期末の前後は重点的に、請求書・領収書・総勘定元帳・補助元帳などを細かく見ていきます。例えば決算期末に仕入れた商品や外注費として計上したものがいつの売上になっているか、たな卸資産や仕掛に計上されているか、というように流れを追っていきます(逆に決算直後の売上に計上されているものから追っていく場合もあります)。 決算時は期末に意識が集中しがちですが、実は翌期首も視野に入れておかないと大きなミスにつながるケースもあります。 人件費も調査の対象となっています。役員報酬については非常勤取締役や監査役の職務の内容等が質問されます。まれに未成年で学生の子供を名義だけの役員にしていたり、日本に住んでいないなどのケースが見受けられるからです。 社員については給与台帳、タイムカードのほかに組織図や従業員名簿、座席表の提示が求められることが増えています。会社で資料を作成していない場合もありますが、期末在籍の社員について説明できれば問題ないでしょう。 調査官は架空人件費がないか、支払金額が妥当という観点から確認をしているようです。「通勤交通費が出ていない」「社会保険に加入していない」「毎月定額の支払い」といったケースでは、住所や名前をメモして実在するか等を調べられることもあります。 経費については、総勘定元帳をひと通り見ながら付箋を貼っていきます。そして、領収書を突き合わせているやり方でチェックすることが多いようです。具体的には交際費の中身についてリベートの有無、福利厚生費・会議費・諸会費等のなかに交際費に該当するものがないか、(会社の規模によりますが)個人的な費用が入っていないかどうかの観点からも調べられます。特にデパートの領収書などは内容を明らかにしておく必要があるでしょう。 その他、金額が大きいものについてもチェックされます。福利厚生費であれば社員旅行の内容や参加メンバー等、消耗品費や修繕費であれば資産計上すべきものがないかという観点で調べられます。 貸倒損失があると、貸倒れの要件に該当するかどうかの確認がされます。法的な整理によるものについては、裁判所からの通知や弁護士からの通知など資料を整えておく必要があります。 また、事実上の回収不能ということで貸倒処理した場合には、事実経過を明らかにした社内記録を作成しておく必要があります。 特別損失の項目も要注意の項目です。固定資産の除却損については廃棄処分した事実がわかる資料を整えておきます。廃棄業者に廃棄証明を出してもらったり、社内で廃棄決定の記録を作成して写真を撮っておくとよいでしょう。 2.消費税の要注意事項 消費税はある程度の売上規模があれば、必ず数百万円単位で納税が発生します。さらに、年間売上5,000万円以下の簡易課税事業者は別として、原則課税はどうしてもミスが発生しがちです。そのため、調査の内容も細かくなってきます。 消費税の処理については、解釈の相違などで争う余地が少なく、処理が正しいか否か、課税か課税対象外か、結果がはっきりしています。金額が数千円程度でたまたま間違えたというような場合には指導扱いとなることもありますが、2万〜3万円レベルの金額になると修正申告を要求されます。 税務調査では、経費にかかる消費税の処理について課税対象外のものを仕入税額控除していないか、というように基本的なところを細かく見られます。 具体的には、交際費や福利厚生費のなかの香典・見舞金・祝い金・商品券やビール券などが課税仕入になっていないかや、手数料勘定に含まれるカード会社への手数料・福利厚生費で処理している退職掛金・共済掛金が課税仕入になっていないかなどが挙げられます。 そのほか海外取引がある場合には、海外出張旅費や現地経費の処理が課税仕入になっていないか、輸入の場合の運送業者に対する支払いの処理(課税と課税対象外の取引が混じっているケースがほとんど)がきちんとされているかなども細かくチェックされます。 消費税は一件当りの金額は少額ですが、大量に反復継続する取引について間違えた判定をしていると金額がかさむので、基本をしっかり押さえておく必要があります。 3.源泉所得税の要注意事項 源泉所得税も消費税と同様に赤字でも発生するものなので、念入りな調査が目立ちます。 ※給与等からの源泉徴収漏れ 調査官はひと通り賃金台帳と年末調整の資料について確認します。特にアルバイトやパートが多い会社は扶養控除等申告書の提出のない人については源泉徴収漏れを指摘されるケースがあります。扶養控除等申告書の提出があって初めて税額の低い甲欄が適用できるのです。乙欄で源泉していれば問題ありませんが、甲欄を適用していることが多いからです。また、外国人労働者の源泉課税漏れも厳しくチェックされているようです。 4.報酬等からの源泉徴収漏れ 中小企業ではいわゆる「所得税法204条の報酬、料金」に対する源泉徴収がされていないケースが目立ちます。弁護士やデザイナーなど、請求書に源泉所得税の金額が明記されていなくても、支払い側に源泉徴収義務があるので要注意です。 5.印紙税の要注意事項 印紙税は法人税や消費税に比べて軽視されがちですが、必ずチェックされます。税務調査では契約書等の提示を求められますから、印紙が必要な文書か否か、消印はしてあるか、金額(税額)は正しいかを確認しておく必要があります。貼り忘れ等があった場合には過怠税(最高で不納付税額の3倍。過怠税は損金不算入)が課せられることになっていますが、悪質でない限り実際は1.1倍の納付になるケースが多いようです。 印紙税に関しては反復・継続して大量に脱税していない限りは、それほど大きな問題とはなりませんが、日ごろから正確な処理を心がけたいものです。 6.絶対避けたい重加算税 重加算税が課税されますと、税率35%の重税は無論のこと、支払った重加算税は損金不算入となり再度40%の税金が課税されます。問題が多い会社として税務調査も毎年実施されます。絶対に重加算税は避けたいものです。 重加算税の対象となる「仮装・隠ぺい」の具体例が表示されました。法人において、仮装隠ぺいとみなされるケースは次のとおりです。
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