会計事務所と顧問先をむすぶCLUE 第94号

 ≪CONTENTS≫

 今月の特集・・・ 『小さな会社の簡単経理【1】』
 経営・財務・・・ 『「新会社法」いよいよ本年5月1日施行開始』
 経理・税務・・・ 『速報!平成18年税制改正中小企業狙い撃ち
【給与所得控除の損金不算入】』





  今月の特集

小さな会社の簡単経理【1】

I.経理の仕事の全容

書類の整理・整頓からパソコン会計・税金・資金繰りまで


1.経理の仕事はどこまでだろうか?

今はときめく世界のホンダやソニーも昔は町工場にすぎませんでした。小さな町工場が大きくなっていくには、経理がしっかりしていなければなりません。経理を狭く考えれば、帳簿づけや金庫番です。しかし、経理は営業・技術と会社の3本柱と考えれば、業務管理に近い、資料整理から資金繰り、経営助言業務として経営管理情報の提供まで広がります。下記の経理業務の全体図を参照していただければ明白ですが、経理業務の範囲は広く深いのです。しかし当社は小さな会社なのでこのような業務はありませんと言われるかもしれません。ちょっと待って下さい。「すべての会社は、誰かが規模の大小を問わず、会社を創っただけでこのような業務が発生します。請求書の発行・整理整頓・振込み・現金出納帳の記入・給料計算・試算表・決算書・資金繰り表の作成等の仕事は、社長本人か経理担当者・会計事務所・社会保険労務士等への外注等いずれにしろこのような業務が発生し、誰かが行っているのです。」もちろん1兆円規模の会社の経理と1億円規模の会社の経理は違います。乏しい経営資源、人的資源を上手に活用しながら、経理の広く、深い仕事を合理的かつ実質化していきたいものです。


【経理の仕事の全体像】
【経理の仕事の全体像】


2.どんな帳簿が必要か?

※ポイント
(1)会社には必要な帳簿がいくつかある。入・出金を記録。
(2)必要な帳簿には主帳簿と補助簿がある。
(3)帳簿はパソコン作成がよい。

会社は税務署・金融機関・株主等の利害関係者のために仕訳帳(仕訳伝票)総勘定元帳から決算書を作成しなければなりません。帳簿には主帳簿の総勘定元帳と補助簿があります。主帳簿は絶対に作成しなければなりませんが、補助簿は必要に応じて作成します。

帳簿は手書ではなくパソコン会計で作成することをお勧めします。パソコン会計で仕訳入力すれば、総勘定元帳はもとより各種補助元帳も自動的に作成でき、しかも集計・転記間違いが絶対ありません。


【帳簿の種類】
主帳簿 仕訳帳【仕訳伝票】取引の順に仕訳を記入
総勘定元帳・・・・・・仕訳帳から各勘定科目ごとに転記・集計
補助簿 現金出納帳・・・・・・現金の入・出金を記録
預金出納帳・・・・・・銀行口座別に入・出金を記録
受取手形記入帳・・受取手形別に、振出人・期日・決済金融機関・顛末等を記入
支払手形記入帳・・支払手形別に、受取人・振出年月日・期日・顛末等を記入
売上帳・・・・・・・・・・商品別等の売上明細を記録
仕入帳・・・・・・・・・・商品別等の仕入明細を記録
得意先元帳・・・・・・得意先ごとの売掛金発生・入金を記録
仕入先元帳・・・・・・仕入先ごとの買掛金発生・支払を記録
固定資産台帳・・・・ 土地・償却資産について各資産ごとに、取得年月日・取得価額・耐用年数等を記入


3.会計ソフトの選び方、使い方

※ポイント
(1)会計ソフトなら瞬時に会社の経営状況がリアルタイムで掴める。
(2)会計ソフトなら最初の仕訳入力を間違えなければ、正確な集計が可能。
(3)会計ソフトならデータ分析等が自分で出来る。
(4)会計ソフトを選ぶなら顧問税理士と相談しよう。


●使いこなすには知識が必要!

パソコン会計なら自社で決算まで可能となり、日々入力すればリアルタイムで会社の経営状況を正確に掴めます。複式簿記ですから、最初の仕訳入力さえ間違えなければ、正確で迅速に日次決算まで可能となります。会計ソフトの選び方は、顧問の会計事務所に相談されることをお勧めします。簡単になったとはいえ、パソコンの操作・複式簿記の知識が必要です。担当者が退職して会計ソフトを使える人がいなくなったということを良く聞きます。顧問の会計事務所のお勧めソフトなら経理が退職しても問題ありません。

また、会計事務所に帳簿作成を依頼することも一考です。小さい会社で専門の経理を雇用することが困難な場合は、会計事務所で記帳代行をすることも経理の合理化になります。

経理のための資料には以下のものがあります。

(1)現金出納帳
(2)預金通帳
(3)売上伝票・請求書控
(4)仕入伝票・請求書
(5)場合により見積・納品書
(6)領収書
(7)借入金返済表
(8)給与台帳
(9)賃貸契約書


●間違えやすい取引

(1)給料を支払ったときの所得税等の処理

借方

役員報酬   /
給与手当
  預金等
  預り金【所得税】
  預り金【住民税】
  預り金【社会保険料】


(2)売掛金の入金

預金等    /  売掛金【得意先補助科目】


(3)自動車等の固定資産を売却した場合

預金等    /   車両
  固定資産売却益&【固定資産売却損】


(4)減価償却費の計上

減価償却費 /   建物付属設備
  什器備品


4.会計事務所の選び方、使い方、費用は?

顧問税理士は決算書・税金の申告書を作成し、会社の強み・問題点を指摘してくれる会社のドクター。

※ポイント
(1)会計事務所は、経理・税務の顧問。
(2)決算書の作成や税務申告が主な仕事。
(3) 中小企業の100%が顧問契約を結んでいるのは税理士だけ。人脈が豊富なあらゆる事に相談できる税理士を探そう。

会計事務所とは、会社の経理や税務の顧問を行う事務所のことで、税理士が経営しています。会社に経理や税務にとても詳しい人がいて、決算書や申告書を作成できれば、顧問税理士の必要がないと考える経営者もおられるかも知れません。しかし、税制は毎年細かく改正されます。消費税の課税・非課税等細かいチェックが必要です。何よりも外部からの帳簿監査・税務調査の対応・経理の不正チェック・決算書の問題点等様々なアドバイスをしてくれます。

会社が大きくなると、法務や登記・人事や労務に問題が出てくることもありますが、弁護士や司法書士・社会保険労務士・弁理士・行政書士等その道の専門家を紹介してくれる窓口にもなります。

また、日本税理士連合会の中小企業チェックリストに税理士の監査・署名があれば融資可能な金融機関が毎月のように増加しており、都道府県の保証協会もこのチェックリストを使って保証料のパーセントを変動させることになりました。

会計事務所にもいろいろなタイプがあります。昔ながらの【先生稼業】で行っている事務所もあれば、【若手】で動きのいい事務所、また何十人ものスタッフを抱えている事務所から1人で行っている事務所まで様々です。専門医もあれば総合病院もあり、1人のクリニックもある医者の世界に似ているかも知れません。

会計事務所に対しては、会社のお金の流れや財産管理・債務・銀行借入対策まですべてをさらけ出すこととなります。末長く信頼でき、相性のいい、厳しい事務所を前提に探すことがよろしいと思います。


5.経理担当の雇い方、選び方

※ポイント
(1)経理担当者を雇用できるのは売上総利益【粗利】の5,000万円が目安。
(2)会計事務所に経理・帳簿作成を依頼する。
(3)専門知識、資格は二の次。信頼できる人を探そう。

帳簿作成がわずらわしいということで経理担当者を雇用しようとする経営者の方もいらっしゃいます。では、少しコスト計算をしてみましょう。

時給1,000円で、1日7時間(7,000円)1ヶ月を22日として154,000円。これに社会保険料や交通費等諸経費が3割として、1ヶ月200,000円程度がパート採用でもかかります。さらに【守秘義務・信頼】等の条件等が必要です。派遣では、最低2,500円ですので、385,000円にもなります。やっと慣れてきたと思ったころに退職となったら目もあてられません。

この場合、まず顧問をしてもらっている会計事務所に別料金で帳簿を作成してもらう方法があります。請求書・レシート・領収書・通帳のコピー・給与台帳など帳簿をつくるのに必要な資料の一切を預けて、あとは帳簿一式を作成してもらう方法です。会計事務所は帳簿を作成する専門家ですので、資料を渡せばOK。資格者であれば、【守秘義務】がありますので、会社の秘密は守られます。粗利5,000万円以下の会社では会計事務所に外注することも一考です。

採用する場合は、【信頼できる人物】を一番のポイントで採用することです。経理はお金を扱います。毎日のように横領等の経理の不正が発覚しています。会計事務所のチェックがしっかりしていても発覚してからでは遅いのです。一般公募であれば前歴紹介、保証人をもらうことは最低限の保全です。縁故採用・親族・会計事務所等の信頼できる人の紹介をまず検討しましょう。





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『新会社法』いよいよ本年5月1日施行開始

― 中小企業にはこんな影響があります ―

今まで商法・有限会社法・商法特例法の各規定に分かれていた会社に関する法律を「会社法」としてまとめ再編成するものです。

「会社法」について、中小企業への影響という観点からポイントを解説していきます。


(1)有限会社がなくなる

まず、一番大きな変更は、有限会社と株式会社が統合されます。つまり平成18年5月以降は有限会社を設立することはできません。すべて株式会社です。ただし現行の有限会社は株式会社にすることも、そのまま有限会社で存続することも自由です。

※特例有限会社といって、有限会社の名称をそのまま使い続けることが認められていますので、これまでどおりに有限会社の名称を継続するという方法です。名称は同じままでも中身は株式会社に変わることになりますが、有限会社の特徴である「役員の任期がないこと」及び「決算公告をする必要がないこと」を継続適用できます。

※もう一つの方法は、株式会社に名称を変更することです。会社法施行後は商号変更と同じような感覚で、簡単に有限会社から株式会社に名称を変更することができるようになります。ただし、株式会社設立登記の登記費用がかかります。また、先述した有限会社の二つの特徴は適用できなくなり、名実ともに株式会社になります。


(2)役員1名でも可

株式会社ですが、有限会社がなくなる分ハードルが低くなります。出資範囲内で上場・非上場が決められ、規模などに応じて柔軟な設計ができるようになります。現行では取締役の数が3名以上いなければなりませんが、改正では1名でも良いことなります。


(3)役員の任期が延長

従来の株式会社では2年ごとに「役員の再任」の登記をしなければならず、その度に数万円の登記費用がかかりましたが、今後は10年ごとの登記で済むことになります。


(4)最低資本金制度が撤廃

最低資本金制度が撤廃されます。現在、株式会社1,000万円、有限会社300万円が最低資本金となっていますが、改正後は資本金額を自由に決めることができ、現行の有限会社の簡易さで株式会社が設立できるようになるというわけです。

資本金が1円でも会社を設立することができるようになり、決められた期限までに増資しないといけないというような規制もなくなるのです。一方、最低資本金制度が撤廃されるということは、減資するのも自由になるということを意味します。たとえば株式会社であれば、資本金を1,000万円以下に減資することができるようになります。減資が効果を発揮するのは、欠損金がある場合です。貸借対照表の資本の部の中にマイナスがあるのは、財務上あまり見栄えがよくありませんが、減資することで欠損金を消すことができるのです。こうした活用も、今後は多くなっていくのではないでしょうか。


(5)払込金保管証明書不要

さらに、これまでは会社設立時に資本金の「払込金保管証明書」を添付する必要がありましたが、これが廃止され、残高証明書を添付すればよくなります。今までは、登記が終わるまで資本金を動かすことができませんでしたが、今後は残高証明書を取得した後は、その資本金を自由に使うことができるわけです。

ただし、発起人以外の株主を募って会社を作る「募集設立」の場合には、従来どおり払込金保管証明書が必要です。また保管証明の廃止は、増資を行なう場合にも適用されます。


(6)類似商号禁止規定が廃止される

最低資本金制度が撤廃されることも、会社設立が簡単になる理由の一つですが、その他にも、類似商号禁止の規定が廃止されるということがあります。

類似商号禁止の規定とは、同一登記所管内(同一市区町村内)で同一の営業目的で、他の会社と類似する商号を登記することはできないという規定のことです。

今までは、会社設立や本店移転・商号や目的の変更をする際に類似商号を調べる必要がありましたが、今後はその必要がなくなります。企業活動が広域化した現在では、同一市区町村内だけで類似商号をチェックしても、あまり意味がなくなったということでしょう。では、類似商号禁止はなくなり、誰もが自由に商号を使用できるのでしょうか。そんなことは全くなく、これからは民事訴訟を起こされ賠償責任が発生します。


(7)配当がいつでもできる

会社法施行後は、株主配当をいつでも、年何回でもできるようになります。これまでは、配当は基本的に年1回で中間配当をすることも可能とされていましたが、今後はそうした制限がなくなります。

また配当は金銭に限らず、現物配当もできるようになります。ただし、純資産額300万円未満の会社は、配当をすることができません。


(8)利益処分がなくなる

配当や資本の部の振替がいつでもできるようになると、取締役が年1回利益処分案を作成し、それについて株主総会で承認を得るという利益処分には、あまり意味がなくなってきます。そこで会社法では、利益処分(案)を廃止しました。配当金や役員賞与、準備金や各種積立金の積立は株主総会において個別の議案として決議されることになります。従って、会計上の仕訳の仕方なども変わってきますが、具体的な方法はまだ明らかになっていません。役員賞与などは従業員への賞与と同様に、損益計算書に入るようになるのではないかと思いますが、税務上は従来と変わらず損金不算入となります。


(9)会計参与が新設される

会社の新たな役員として「会計参与」が新設されることになりました。会計参与の設置は会社の任意ですが、会計参与が置かれた場合には、みなさんの業務にも大いに影響すると思われます。会計参与になれるのは、公認会計士・税理士・監査法人・税理士法人の4種類で、いわゆる会計のプロのみです。その役割は様々ですが、主に取締役等と共同して計算書類(決算書等)を作成すること、株主総会においてこれを説明すること、さらに会社とは別に計算書類を保管し、株主や債権者からその閲覧を要請された場合は、これを開示する必要があることなどが挙げられます。

会計参与は、株主代表訴訟の対象にもなりますから、かなり重い責任を負っている立場といえますが、それだけに中小企業にとっては、自社の会計の健全性を保証する存在になります。特に金融機関等に対して健全性をアピールすることに、その有用性が求められていくのではないでしょうか。会計参与が設置された会社では、経理担当者の皆さんにも当然、より厳しい会計処理が求められることになるでしょう。


(10)株券は発行しないのが原則

今までは株券を発行するのが原則でしたが、会社法施行後は株券を発行しないことが原則になります。つまり、定款に定めがある場合にのみ、株券を発行することができるということです。また、株式の譲渡制限を設けている会社は、株券発行会社であっても株主から請求があるまでは、株券を発行しなくてもよいことになっています。

今回の改正で、少ない資金で会社は設立できる様にはなりますが、商売をする厳しさは同じでなんら変わっていません。資本金が要らなくなったとはいえ、新たに開業するにはそれなりの資金が必要です。何をやるにしても少なくとも300万円は必要でしょう。





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【速報!平成18年税制改正】

中小企業狙い撃ち「給与所得控除の損金不算入」

経営・財務でもお知らせしたように、平成18年5月より新会社法が施行され、株式会社が簡単に創れるようになる。それに伴い平成18年4月開始事業年度の一定の法人について、【給与所得控除相当額の損金算入】が認められなくなる。

所得税の定率減税の廃止やタバコの増税ばかりがクローズアップされた平成18年度の税制改正だが、そこには多くの中小企業に大きな打撃を与える改正もひっそりと隠されていた。

平成18年4月以降に開始する事業年度から予定されている「同族会社役員給与の所得控除額の損金算入制限」である。


【改正点】

同族会社の業務を主宰する役員及びその同族関係者が、発行済株主総数の90%以上の株式を有し、かつ、常務に従事する役員の過半数を占める場合等には、当該業務を主宰する役員に対して支給する給与のうち給与所得控除に相当する部分として計算される金額は、損金の額に算入しない。ただし、当該同族会社の所得等の金額(所得の金額と、所得の金額の計算上損金額に算入された当該給与の額の合計額)の直前3年以内に開始する事業年度における平均額が、年800万円以下である場合及び当該平均額が年800万円超3,000万円以下であり、かつ、当該平均額に占める当該給与の額の割合が50%以下である場合には、この措置の適用が除外 される。

これはどういうことかというと、実質一人オーナー会社の社長の給与については、今後、給与所得控除分には税金を掛けますと言っているのだ。実質一人オーナー会社とは、(1)家族だけで営んでいる会社 (2)資産管理会社等である。財務省は全国6万社程度が影響を受けると言っているが、東京税理士会では62万社が影響を受けかねないとのことである。

では、どのような影響を受けるのだろうか。ある中小零細企業を例にとって、その影響を見てみよう。給与所得控除分か法人所得に上乗せ、この会社は有限会社で夫が社長、奥さんが専務を務めている。役員は二人で出資はすべて社長本人である。税引前利益が10万円。経費のなかには、社長の給与1,000万円、専務である奥さんの給与600万円が含まれているとしよう。

売上 100,000,000円
役員報酬 10,000,000円
その他経費 89,900,000円
税引き前利益 100,000円
《現行のまま》
法人税等(税率30%) 30,000円
《改正後》
税引き前利益           A 100,000円
(役員給与 10,000,000円)
       給与所得控除額  B 2,200,000円
課税所得(A+B) 2,300,000円
法人税等(税率30%) 690,000円
差し引き増税分 660,000円

この影響は中小企業だけではない。ワンルームマンション等の投資不動産を持っていれば、「不動産管理会社」「サブリース会社」などのプチカンパニー(有限会社)をつくって節税している人は多い。不動産からの所得をダイレクトに申告するよりも、給与所得控除分の節税ができるからだ。実額経費を控除した上に、給与所得控除を認めるのは二重経費控除であり、それの廃止は個人事業主と同レベルにしただけという見方はある。しかも日本の法人の7割がこれら所得の分散による節税対策のための法人だという調査結果もある。

しかし、中小企業のオーナーには、家族ぐるみで会社を支え取引先や金融機関との付き合い上、会社組織にしている人も少なくない。融資を受ける際には、私財をなげうって個人保証するのが普通だ。特に中小零細企業にとって非常に重い改正であるので、その対策をいくつか検討された方がいいだろう。第一にすべきことは、貴社がこの規定に合致する会社かどうかを検討することである。


以下の判定をしてください。

法人税申告書別表(2) 同族会社の判定で確認してください。

(1)オーナー一族の持株割合が90%以上か?

いいえ
除 外
 はい      
(2)オーナー一族が常勤の役員の過半数を占めているか?
会社謄本と決算内訳書の役員報酬明細の常勤・非常勤欄で確認してください。


いいえ
除 外
 はい    
(3)過去3年間の所得金額と役員報酬の平均が800万円超か?
法人税申告書別表1の(1)と決算内訳書の役員報酬明細で確認してください。


いいえ
除 外
 はい    
(4)平均額が3,000万円超か?

いいえ

【3年間平均給料
/右記平均額の
50%超か】
 はい  
該当 課税される   除 外


【対策1】 株式の10%以上を一族以外に持ってもらう

従業員や顧問税理士など一族以外の人で、かつ会社の事情に精通し信頼のおける人に株式の10%以上を渡すことによって「損金算入制限」から逃れることができる。なお一族以外であっても、婚約者、愛人などは身内と見なされる。

ただし、この場合でも契約書・取締役会議事録による譲渡承認・代金の授受には気をつけてもらいたい。間違っても形式上の手続きだけで、実態が伴っていないことのないようにしていただきたい。税務調査では実態が伴っていないと間違いなく否認され、場合によっては「仮想・隠蔽」ととられ重加算税の対象となってしまう場合もある。


大事なポイント 株価評価

ここでいちばんのポイントが、譲渡価格である。赤字会社や設立したばかりの会社であればよいが、老舗や不動産等の資産がある会社になると、その株式評価によっては思わぬ税金が発生する場合があるので、顧問税理士に株価評価をしてもらう必要がある。

たとえば、株主である譲渡会社の社長が、時価1,000万円の株式を100万円で譲ると、差額の900万円は譲渡費用とならず譲受人に対する寄付金となる。また、譲受人は差額の900万円は贈与を受けたことになるので、191万円の贈与税が掛かってくる場合がある。
 

【対策2】 常勤役員の過半数を同族以外にする

オーナー代表社長の一族【同族関係者】の役員が「常務に従事する役員」の半数以下であれば、この規定の適用対象外となるので、従業員を役員に引き上げるなどして「常務に従事する役員」を増やすという方法もある。考えなければならないのは、名目上の役員をいくら増やしても意味はないことである。たとえ役員登記を形式上したり、タイムカード・出動簿等があっても、実態が「常勤」でなければ認められないことである。


給与所得控除額の計算方法
給与の収入金額
給与所得の
源泉徴収票の
支払金額
給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%
65万円に満たない
場合には65万円
180万円超
360万円以下
収入金額×30%

18万円
360万円超
660万円以下
収入金額×20%

54万円
660万円超
1000万円以下
収入金額×10%

120万円
1000万円超 収入金額×5%

170万円
【対策3】 役員給与支払前所得を抑制する

この対策は、オーナー社長の役員報酬+課税所得が800万円以下なら適用除外という規定に対するものであり、決算期になり、決算を組んでみて初めて損金不算入が判明する可能性がある。これを避けるには、事業年度開始前に年間経営計画を立て役員報酬の金額を決定し、課税所得+役員報酬を絶対に800万円以下にする節税対策をきっちり行うことが必要です。月次の業績をしっかり管理しながら節税対策を実行していくことです。

最後に、会社をつくることによる節税メリットには、給与所得控除だけでなく法人による生命保険の加入及び退職金や社宅制度の活用などがある。従って、なるべく適正かつ有利な保険への加入や社宅制度を創設することによって、法人所得を抑えるのも一つの方法である。しかし、所得を低く抑え過ぎると、いざというときに借り入れができないなどデメリットもあるので、顧問税理士によく相談することが大切である。


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