金銭債権には、消滅時効という制度があります。税理士の先生もご存知の通り、この制度は、一定期間の経過によって権利を消滅させるという制度です。
この消滅時効によって、金銭債権が消滅した場合、その消滅した金銭債権について貸倒れとし無条件に損金にできるのかという点について、今回は説明します。
まずは、消滅時効の期間を見てみましょう。
(1) 金銭債権の時効期間
債権者が権利を行使できる時から
債権の種類 | 消滅時効期間 |
一般民事債権(民法167条1項) | 10年 |
賃料(民法169条) | 5年 |
業者の貸金等の商事債権(商法522条) | 5年 |
診療報酬(民法170条) | 3年 |
「工事」請負代金(民法170条2号) | 3年 |
売掛代金(民法173条1号) | 2年 |
運送料金(民法174条3号) | 1年 |
上記の職業別の短期消滅時効が廃止され、一部の例外を除いて
となります。
(2)時効の援用
ただし、消滅時効は、上記期間の経過のみを持って債権を消滅させるものではありません。債務者の「時効の援用」が必要になります。
時効の援用とは、債務者の債権者に対して、時効制度を利用する旨の意思表示となります。
さて、消滅時効により消滅した債権ですが、法律的に債権が消滅しますので、貸倒れとして、損金としたいところです。
ただし、これも単に放置して債務者に時効を援用されてしまったという場合等には、寄附金とされる可能性があります。
これまでの記事でも書いてきたように、その回収過程等から、実質的にやむをえない必要性と相当な理由がなければ寄附金とされるおそれがあるのです。
今回押さえておいていただきたいポイントの1つ目は、消滅時効は債務者の援用がなければ、債権は消滅しないというです。
2つ目は、債権が時効で消滅した場合でも、それを貸倒れとして損金とすることが無条件に認めれるわけではない点です。債権も回収できない上、貸倒れとして損金とできないとなると、なかなか厳しいものがあります。ですので、重要なことは、債権についてしっかりと管理し、さらに必要な回収行為をしていることの証拠を残しておくことが重要です。