税務と法務の接点
税理士業界にフォーカスした“税務と法務の接点

第7回 貸倒れと債権放棄(債務免除)の方法3―(2)
    〜内容証明郵便の相手の所在が分からない場合
     (意思表示の公示送達の注意点)〜

 前回は、内容証明郵便の相手の所在が不明の場合に利用できる「意思表示の公示送達」という制度があることを解説しました。今回は、「意思表示の公示送達」を利用する際の注意点等を解説したいと思います。
(詳細な提出書類等は、東京簡易裁判所: http://www.courts.go.jp/tokyo-s/saiban/l3/Vcms3_00000347.html

1.報告書の提出

 申立ての際、相手の所在がわからないことについての調査報告書を提出する必要があります。
 この報告書には、「色々調査したけれど、結局相手がどこにいるかわかりません」という内容を記載する必要があります。
 調査の内容としては、住民票上の住所地の現地調査や、相手方の電話番号を知っている場合、電話をかけてもつながらなかった等の事情を記載する必要があります。
 ただ、この報告書に何をどこまで記載するかは、裁判所によって運用が若干異なるので、実際に申立てをする前には、申立てをする裁判所に電話等で確認することをおすすめします。

2.無効となる場合があること

 相手方の所在を知らないことについてこちら側に過失があった場合、公示送達は無効とされます(民法98条3項ただし書き)。
 「過失があった場合」の典型例は、相手方の所在について調査が不十分な場合です。
 ただ、上記のように、申立ての際に、調査した結果の報告書を提出することになっており、裁判所も調査不足であれば追加の調査を指示します。
 裁判所の指示にしたがって調査を行えば、基本的には調査不足という問題は起こりにくいといえるでしょう。
 また、過失があったことを証明する責任は、公示送達の効力を否定する側にあります。債権放棄(債務免除)の有無について、裁判所が認めたものを、税務調査において、調査官が証明することは現実的にはないでしょう。

3.到達証明書

 到達証明申請書を提出しておけば、裁判書書記官により到達証明書が作成されます。
 到達証明書の郵送を希望する場合には、返送用の切手が必要になりますので、申請時に提出しておくと良いでしょう。
 この証拠により、調査時に調査官から、債権放棄(債務免除)がされていないという指摘への反論が可能となります。

 以上が、税務調査の貸倒れ損失計上の際に、債権放棄(債務免除)のために意思表示の公示送達を利用する場合の注意点になります。