税務と法務の接点

税理士業界にフォーカスした“税務と法務の接点

第5回 貸倒れと債権放棄(債務免除)の方法2
    〜内容証明郵便の相手が不在の場合〜


 前回は、内容証明郵便の相手方(債務者)が郵便の受取を拒否した場合について書きました。今回は、内容証明郵便の相手が不在の場合について書いていきたいと思います。

 前回書きました通り、その内容証明郵便の内容である意思表示の効力は相手方に到達したときから効力を生じます(民法97条第1項)。
 そして、この「到達」とは、相手方によって直接受領されることまでは必要なく、意思表示を記載した文書が相手方の支配権内に置かれればよいとされています(最判昭和43年12月17日)。

 この点、内容証明郵便において、相手が不在の場合、不在票が投函されます。そして、通常は1週間程、郵便局で保管されます。相手が不在票を見て再配達の依頼等があればよいのですが、保管期間が経過した場合には、内容証明郵便は、返却されてしまいます。
 この場合、保管期間が満了した時点で到達されたと認定した判例(最判平成10年6月11日)があります。ただし、この判例は、その事案における個別事情より、「支配権内」に置かれていると判断したものです。
 ですので、この判例があるからといって必ず「到達」が認めれるとまでは言い難い面があります。

 そこで、このような場合、再度内容証明を送るのと一緒に、普通郵便でも同じ内容の文書を送付しておくとよいです。
 そうすれば、内容証明の受け取りを拒否されても、普通郵便は相手のポストに入れられ、「相手方の支配権内」に文書が届いたことになりますので、意思表示が到達したことになります。
 注意していただきたいのは、内容証明の文書の最後に「なお、念のため同内容の文書を普通郵便でも発送したことを申し添えます」と記載し、普通郵便の封筒に日付を記載して、コピーをとっておいてください。
 これにより、後に内容証明が不在等で返却されたとしても、相手方に普通郵便がポストに入れられたことを証明することができます。