二極化する給料
カテゴリ:07.プレジデントニュース 
作成日:11/15/2005  提供元:プレジデント社



 1567万円と240万円――。

 プレジデント誌が調査した上場企業3780社の最高平均年収と最低平均年収である。日本の企業は二極化が進んでいることが給与面から見ても鮮明になってきた。

 最高年収はフジテレビ。ランキング上位常連のテレビ業界各社だが、今年は激震が走った。ライブドアによるフジテレビ買収騒動で最も不安におののいたのは社員たちだったに違いない。ライブドアの平均年収は501万円で、買収先とは3倍の開きがある。

 何とか難を免れたフジテレビ社員だが、今度は楽天によるTBSへの経営統合提案が勃発。TBSの平均年収は1443万円、楽天の平均年収は575万円。これまた3倍近い開きがある。楽天の三木谷浩史会長兼社長は「社員の処遇は変えない」と言っているが、同じくTBS株を取得している村上世彰・村上ファンド代表は経営改善要求事項に「報酬制度の改革」を突きつけている。

 短期決戦を予想させた楽天の電撃株取得だったが、ここにきて楽天とTBSの攻防は長期化の様相を呈してきた。バブル崩壊後の不況下でも一人勝ちを続けるテレビ業界の高年収ももはや「聖域」ではなくなりつつあるようだ。

 これまで高給批判の的だった銀行と総合商社の勝ち負けがハッキリしてきた。銀行の持ち株会社の平均給与は1000万円を超えるが、傘下の銀行の平均給与はかなり低くなっている。東京三菱銀行の781万円を筆頭に、三井住友銀行の771万円、みずほ銀行の683万円、ボーナスカットのUFJ銀行は666万円。りそな銀行は544万円。

 急落する銀行に比べ、総合商社は元気だ。商社トップの三菱商事は1277万円、住友商事1264万円、三井物産1229万円。丸紅1048万円……。双日、トーメンなど経営再建中の商社の給料も急回復している。

 一方、平均年収300万円以下の企業も23社存在する。
 209万円――。
「これはミスです。ありえない数字」

 と、本誌の取材で有価証券報告書の平均給与記載の誤りに気づいたのは、東北で和風レストラン「まるまつ」「カニ政宗」などを展開するカルラ。同社は再計算してジャスダックに訂正の報告を行うという。

 最低年収と名指しされて喜ぶ企業は少ない。これまでもあの手この手で、ワーストランキング圏外に上昇してしまった会社が多い。

 たとえば「半農半タク」で本誌編集部内では有名な第一交通産業。今回取材してみると、タクシー事業部門を分社化したことで平均給与が126万円上昇して387万円となり、ランキング圏外へ去ってしまった。「ああ、来年は取材できなのか……」と担当編集者も元気がない。

 平均年収が少ない企業には特徴がある。

1.新人がすぐに辞めてしまうなど、社員の平均勤続年数が短い
2.年金受給者やパート比率が高いため年収を抑えている
3.地方が拠点で給料が安い

 などがそれだ。業種的にはメーカーの製造現場への人材派遣を行う会社や美容院などは低い給料を余儀なくされている。

 また都市生活者なら自身の働き方を考えさせられるのが地方に拠点を置く企業だ。たとえばカラカミ観光は主に北海道の各所で観光ホテルを経営している。

 「社宅は月1万5000円~2万円。1万円を加えれば、ホテルの風呂はおろか、家族全員が地下食堂で三食食べられる。交通費も不要。周辺には遊ぶところもないので、貯金する社員もいる」

 何やら、田舎には都会では味わえない心の豊かさがありそうな気もする……。

 さて、あなたの給料は安いのか、高いのか。サラリーマンなら誰もが気になる「給料」の実態を徹底検証したプレジデント(11月14日発売)「日本人の給料」特集)をご参照ください。

〔プレジデント編集部 editor's letter〕