トヨタ・プリウスで注目のリコール税務
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:02/19/2010  提供元:エヌピー通信社



 人気のハイブリッドカー「プリウス」を含む4車種に不具合が見つかった問題で、トヨタはリコールに踏み切った。全世界で44万台程度が対象となり、リコールにかかる費用は約1千億円にも膨れ上がる見通し。

 一般的に自社商品にリコールが発生した場合、商品の回収費用や修理費用、配送費用など、さまざまな費用がかかる。これらは「リコール」という臨時的な事象により発生する費用であるため、金額が大規模なものであれば、営業外損失や特別損失として処理することができる。この場合、かかった費用は、税法上の損金の額に算入する。一方、リコール費用が少額であれば、販売費に含めて処理するのが一般的だ。

 リコールは、何も自動車や家電商品に限った話ではない。たとえば、食品であれば、「消費者が食中毒になった」「商品に異物が混入していた」といった場合に、企業はリコールすることになる。

 食品リコールの場合、その性質上、商品を修理・改善することはできないため、対象商品と同日、同工場で生産された商品を、在庫も含めてすべて廃棄処分とするケースが多くみられる。商品を廃棄処分する場合には、商品廃棄損を計上し、その金額を損金算入することが可能だ。また、商品を回収し、購入代金の返還を行う場合には、通常の返品があったときと同じく、「売上戻し」として処理する。

 ところで、今回のリコール問題に対しトヨタは、「製品保証引当金」を取り崩して対応するようだ。

 製品保証引当金とは、当期の売上に起因し、製品販売後の無償保証契約などによって発生する回収・修理費用に対する引当金のこと。将来のリコールを見越して、引当金を計上しておくことは、リスク回避の観点からみれば非常に有効な手段といえる。そのため、会計上では費用として認められている一方で、税法上の損金として取扱うことはできない。「実際に支出していない金額を税務上の費用として認めるわけにはいかない」(当局)。