行き詰まるアベノミクス再延期しても増税は不可能?
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:06/03/2016  提供元:エヌピー通信社



 安倍晋三首相が、来年4月に予定する消費税率10%への引き上げ時期を2年半延期すると表明した。「新興国経済の減速で世界経済が大きなリスクに直面している」と理由を説明したが、参院選を7月に控え、「有権者受けしない増税を回避したかった」(政府関係者)のが本音。一方、アベノミクスが大規模な金融緩和を受けた円安・株高効果に大きく依存するばかりで、増税に耐えられる経済環境を作ることに失敗したことも事実で、「アベノミクス失敗」との批判は免れない。

 「内需を腰折れさせかねない」。首相は記者会見で、予定通り実施すれば停滞する個人消費が底割れする可能性があることを認めた。
 2012年12月に発足した安倍政権は、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間投資を促す成長戦略――の「三本の矢」を掲げ、当初は円安・株高の進行や企業業績の改善など大きな成果を上げた。しかし、円安による食料など輸入品の値上がりが家計を圧迫。14年4月に消費税率が8%に引き上げられると、消費低迷が深刻化。首相は同年11月、「デフレからの脱却を確かなものにする」と、15年10月に予定した増税時期を17年4月に延期した。

 ただ、その後も実質賃金のマイナスが続き、消費者の節約志向は強まったまま。今年1月以降実質賃金は増加に転じたが、「所得が増えても将来不安から貯蓄に回っている」(内閣府幹部)と、消費低迷が反転する兆しはないまま。これまでの円安・株高に歯止めがかかると「アベノミクスは景気持ち直しの唯一の起点けん引役を失った」(国内証券アナリスト)という状態で、堅調だった企業の設備投資の伸び悩みが懸念される。

 人口減少が続く中で、日本経済の実力を示す潜在成長率は0%台にとどまったまま。アベノミクスは、金融緩和や財政出動で「時間稼ぎ」する間に成長戦略を実行し、自律的な経済成長を促す狙いもあったが、目立った成果を上げていない。永田町と霞ケ関界隈では、19年10月の再増税は「政治的にも経済的にも実現はほぼ不可能」との声が出始めている。