平成16年度改正大綱 土地譲渡で抜き打ち増税 損益通算廃止へ向かう
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:01/09/2004  提供元:エヌピー通信社



 平成16年度税制改正大綱のなかに盛り込まれた、土地や建物の譲渡所得と他の所得との損益通算の廃止が波紋を呼んでいる。これまでは、土地や建物などの不動産を売却して損失が出た場合、事業所得や給与所得といった他の所得と通算して課税所得を少なくすることができたが、平成16年1月1日以後の譲渡についてはこの損益通算ができなくなるわけだ。税理士ら専門家の間からは早くも「大増税だ」との批判が出ている。

 今回の税制改正大綱において、土地や建物の譲渡所得に対する税率の引下げなど、不動産関連では減税策が目立つ。

 5年以上所有した土地や建物を売却し利益が出た場合の「長期譲渡所得」に対する税率を現行の26%(所得税20%、住民税6%)から20%(同15%、同5%)に、所有5年以下の「短期譲渡所得」の税率を現行52%(所得税40%、住民税12%)から39%(同30%、同9%)にそれぞれ引き下げる。

 こうした減税のラインナップのなかに増税項目がちゃっかり盛り込まれた。不動産業界などへ大きな衝撃を与えたその増税項目とは、「土地や建物の譲渡所得と他の所得との損益通算の廃止」。現状は、個人が土地や建物を売却して損失が出た場合、損失分は、その個人の不動産所得だけでなく、売却した年における事業所得や給与所得から控除できる。たとえば、その他の所得が3千万円あったとしても売却損がそれ以上あれば課税所得はゼロになるわけだ。

 つまり、不動産の値下がりした部分を課税所得の縮小により補てんできたが、平成16年1月1日以降に譲渡される土地や建物に関してはそれができなくなるとされたわけだ。

 損益通算の廃止については、これまで進められてきた改正論議のなかでほとんど出ていなかったことから、税理士ら専門家の間では「抜き打ち的な大増税だ」との批判も出ている。「バブルで“塩漬け”になった土地を所有する顧客には早期売却を勧めていたが、もう手遅れだ」(税理士)。

 「目玉が少ない」とも言われる今回の改正だが、土地を売っても利益が出ないことを見込んで税率を下げる一方で、必ずと言えるほど出てしまう赤字については規制の網をかけるという政府のやり方に、税理士や不動産業者が煮え湯を飲まされた格好になっている。

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