海外居住5年超でも相続税「資産フライト」をシャットアウト
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:10/28/2016  提供元:エヌピー通信社



 富裕層の国境を超えた税逃れを防止する取り組みの一環として、政府は国外に住む人への相続税の課税を強化する方針を固めた。課税要件となる国外居住年数を見直し、10年以上国外に住んでいなければ、保有する海外資産に日本の相続税が課されるよう見直す。
 現在の制度では、相続人と被相続人の両方が5年を超えて海外に住んでいると、海外資産に対しては日本国内での相続税は課されず、どちらか一方でも日本に住所があるか、海外に居住して5年以内であれば課税対象となる。また要件を満たしていても、国内にある財産には日本の相続税がかかる。

 新制度は、現在5年超となっている居住期間の要件を10年超に引き上げるというもの。これまでは親子ともに海外に移住して5年を超えれば相続税の対象外となったが、今後はたとえ9年住んでいても日本の相続税が課せられることになる。

 近年、日本の資産家の間では、相続税率が著しく低いシンガポールやニュージーランドなどの国外に移住して資産を移し、日本での課税を免れる〝資産フライト〟が増えていた。これを受けて昨年7月には、出国時点での含み資産に課税する「国外転出時課税」制度がスタートしている。政府は、さらに課税要件となる年数を延ばすことで、税逃れのための海外移住を完全シャットアウトする構えだ。