東京高裁 税理士に賠償命令 減額更正の嘆願も義務
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:03/14/2003  提供元:エヌピー通信社



 更正の請求を求める嘆願を行わなかったために損害を被った納税者が、顧問税理士に対し損害賠償請求を起こしていた裁判の控訴審判決が注目されている。東京高裁は、「税理士は更正の請求期間を過ぎた後でも、税金が還付される可能性があれば税務署に減額更正を求める嘆願はすべきである」とし、納税者側の主張を認めた1審判決を支持している(平成15年2月27日判決)。減額更正の嘆願を受けても税務署は減額する義務はない。にもかかわらず、法的にも拘束されていない嘆願でも税理士に履行義務があるとしたわけだ。

 裁判を起こしていた建築資材販売会社は、顧問税理士の税務手続きにミスがあったとして損害賠償の支払いを求めていた。賠償請求の概要は、顧問税理士が更正の請求を求める嘆願書の提出を行っていれば損害は少なかったというもの。

 判決によると、A税理士の顧問先であるB氏は建築資材販売会社を営んでいたが、A税理士の指示で平成7年度の確定申告で同2年度に発生した有価証券であるワラント債の売却損を特別損失と計上。その後、税務署から更正処分を受け、B氏は「A税理士はワラント債の売却損につき減額更正の請求のアドバイスをしなかったことから、還付金がもらえなかった」と訴えた。

 一方、A税理士は「ワラント債の売却を確認したのは平成8年6月24日。すぐに嘆願書を提出しても同月末の更正期限までに更正の決定をするのは客観的に不可能だった」と主張した。これに対し裁判所は、「ワラント債の売却損の認定およびそれにともんなう還付金の決定は比較的容易であった」と判断。また、「A氏などに説明し証券会社に照会させるなどして、早急に資料を整えたうえで当局に嘆願書を提出するなどの措置をとっていれば、当局は期限までに更正の決定をするのは不可能ではない」と指摘している。さらに、「仮に、ワラント債の売却損を計上しなかった場合に納付することになる税額が約1455万円であったとしても、B氏が適正な申告をし所要の措置をとっていれば、約1456万円の還付を受けることができた」として、A税理士の控訴を棄却し、B氏に対する損害賠償の支払いを命じている。

 法的な拘束力のない嘆願書の提出でさえも、税理士はアドバイスする義務があるとした今回の判決は、多くの税理士に大きなショックを与えている。

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