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父と娘とビール戦争
カテゴリ:
07.プレジデントニュース
作成日:
07/22/2008
提供元:
プレジデント社
特集『稼ぎ頭の勉強法、落ちこぼれの勉強法』が大好評の最新8月4日号のプレジデント誌に、父と娘との情愛がもたらす「ちょっといい話」が出てきます。
舞台は、経営者と文化人との意外な交流模様を紹介する巻頭のコラム「人間邂逅」。今回の登場者は、ライフコーポレーション会長の清水信次さんと、タレントから参議院議員へ転じた蓮舫さんです。
食品スーパー大手のライフを創業する前、清水さんは台湾からバナナやパイナップルを輸入する事業で成功しました。その際のパートナーだったのが、蓮舫さんの父で台湾人の謝哲信さん。清水さんと謝さんとは、商売を超えた親友として、毎夜のように商売や天下国家について語りあったそうです。
しかし、謝さんは14年前に60歳で亡くなります。「子煩悩だった」と清水さんが振り返る謝さんは、蓮舫さんが幼稚園や小学校へ上がったりするたびに、赤ん坊のときからの彼女の写真を清水さんに見せては自慢をしていたそうです。
その話を聞いていた蓮舫さん。最初は「あの父が子煩悩だったなんて、まさか……。家ではそんなそぶりは見せませんでしたけど」と笑っていましたが、やがて目頭にハンカチを当てて黙ってしまいました。
蓮舫さんたちに「清水のおっさん」と呼ばれていたという清水さんは、談話の最後を「清水のおっさんも、天国の謝さんと一緒にあなたのことを応援しているよ」と締めくくりました。そばで聞いていた私たちも、おもわず涙目に……。
さて、話は変わります。
新聞・テレビでご存知の方も多いと思いますが、いまビール業界でたいへんなことが起きています。
ビール事業では万年最下位だったサントリーが、今年上半期の課税出荷数量で名門サッポロを追い抜き3位に浮上したのです。両社を含む大手4社の火の出るような営業現場を取材したのが、最新8月4日号掲載の「大乱! 08年ビア・ウォーズ」です。
洒脱なサントリー、朴訥なサッポロ、怜悧なキリン、根性のアサヒ。それぞれの社風どおりの凄腕営業マンが、ビール最盛期の真夏を前にどんな闘いを繰り広げているのか。まさに手に汗を握る密着ルポになりました。
今年の“ビール戦争”で私たち取材陣が注目したのは、シェア変動の主役であるサントリーに加えて、ここ数年、経営のリソースでは互角といっていいキリンとの首位決戦に、必ず僅差で勝利してきたアサヒビールの強さです。
ビールのトップブランドである「スーパードライ」を擁するアサヒの営業マンは、他社よりもたしかに有利な条件で戦っています。しかし、ブランドに胡坐をかいていないところが彼らの凄さです。
たとえば、今回の記事で紹介した若手営業ウーマンの細谷かおりさん。彼女は神奈川県内の総合スーパーをまわっていますが、母親世代の担当者に「倉庫からの品出しや陳列も、嫌な顔をしないで手伝ってくれる。とにかく骨惜しみをしないんです」と絶賛される地道な働きぶりで、売り場の主導権をがっちりと握っています。
トップ企業らしく、おっとり構えていてもいいはずなのに、彼らはなぜ、地を這うような営業を実践できるのでしょうか。
最新号の特集ページ(「一流トップの学び方」)に登場していただいた荻田伍社長は、アサヒの最悪期を知る営業マンです。二十年以上前のアサヒはブランド力が弱く、酒屋さんにもなかなか売ってもらえないという屈辱的な状況にありました。そんな中、経営陣が「これに失敗したら身売りをするか、さもなければ会社が存在できなくなる」というギリギリの危機意識の中で発売を決めたのがスーパードライです。
その後の大躍進ぶりは産業史に残る鮮やかなものでしたが、アサヒの社内には荻田さんをはじめ、一連の経験を周囲に伝えている人たちがいます。
酒類本部長の泉谷直木常務は「生き様」という言葉をよく使いますが、アサヒはこんな会社だ、スーパードライはこんな商品だ――と繰り返し説くことによって、細谷さんのような入社3年目の若手にもアサヒの「生き様」が伝わっているのです。
〔プレジデント編集部 editor's letter〕