米国公認会計士(USCPA)について
カテゴリ:05.経営塾 
作成日:01/05/2000  提供元:EPSON



 最近、雑誌や新聞で米国公認会計士の試験の講座案内が多く見られるようになり、私の周りでも、若い学生で受けてみようと考えている人が増えています。
 そこで、米国公認会計士の地位と仕事について書いてみたいと思います。


 まず、米国公認会計士の試験のレベルですが、簡単に言えば日商簿記1級レベルに監査論等の科目が加わったと考えればよく、極端に難しい試験ではありません。
ただ、日本人にとっては英語というハンディキャップがある為、この問題をクリアする方が大変です。


 次に、米国公認会計士の仕事ですが、米国公認会計士は約33万人おり(日本の公認会計士:1万3千人)、試験に受かったからといって、簡単に仕事に就くことはできないのが現状です。
資格を持ってはいても、会計に関する基礎的な知識があることの証明だけで、その資格だけでアメリカの5大会計事務所へ入社できたり、開業することはできません。
 一般のアメリカ人でも、簡単に5大会計事務所に入社できないのですから、米国公認会計士の資格があっても、彼らのように自由に英語が話せない日本人にとっては、なおさら難しい事となります。


 アメリカの公認会計士と日本の公認会計士の一番大きな違いは、アメリカの公認会計士は、例えばアメリカのビッグ5と言われる大手会計事務所に入っても、ほとんどが自分のキャリアアップの為に入社するのであり、そこで一生仕事を続けたいと考えている人はいないという事です。
大手会計事務所のキャリアをもとに、一般会社の会計担当やコンサルタント等として、2~5年で会計事務所を辞めていくのが普通です。


 「会計あるところに米国公認会計士あり」というように、会計の大学教授も一般会社の経理部長も小さな会計事務所の所長も会計に関するところの然るべき地位の人は、すべて米国公認会計士の資格を持っているという事になります。

 そこで、日本人で日本で勉強し、米国公認会計士の資格を取得したときどうなるか考えてみたいと思います。

 まず、アメリカのビッグ5(大手会計事務所)には、英語能力の面で入社する事はまず不可能です。
日本の公認会計士で、監査法人に勤務している人は、提携先のビッグ5にはある程度簡単に入る事ができます。なぜならば、日本企業の海外進出は世界中に及び、日本の会計事情(親会社の会計基準)が解り、アメリカの会計事情もある程度理解し、日本語で日本企業の日本人責任者にサービスを提供できる必要性・需要は非常に高いものがあるからです。(一般に日本の公認会計士は、会話・発音は下手でも英語の参考文献を読む能力はある程度持っている事が多い。)


 次に、日本の監査法人に入る事も今のところは不可能に近く、税理士事務所でも日本の税法知識を持ち合わせていない米国公認会計士を雇用する事は考えられません。

 しかし、海外からの日本進出企業は非常に増えており、海外企業の日本支店での会計担当者としての道としては、大変有望と考えられます。
ただ、米国公認会計士試験に受かっても、仕事に関する何らかのキャリア(実務経験)があるわけではありませんので、このキャリアをどう身に付け、どう外国人マネージャーに売り込む事ができるかが重要になってきます。
 外国企業は、能力主義が建て前ですので、いくら資格があっても、能力が備わっていなければ認めてもらえないからです。


 バブル崩壊後の不況のおり、若い人が不安になり、資格試験や公務員試験に流れやすい事は仕方がない事ではありますが、受験学校の主催者は、資格取得後の実態も正しく伝えてもらいたいものです。
安易なブームの煽動と金儲け主義の専門学校・予備校の増加に対しては疑問を呈する次第です。


 最後に、希望を持って米国公認会計士試験の勉強をしている方々に申し上げます。
米国公認会計士の資格は、これからの経済のグローバリゼーションにおいて、それなりに価値がある資格(ある程度、英語が理解でき、基礎的な会計理論を身につけている)でありますが、それに加えてキャリア(自分の得意とする実務経験に裏付けされた専門分野)をつける事により、鬼に金棒となるという事を理解してほしいと思います。