「給料格差」の真実
カテゴリ:07.プレジデントニュース 
作成日:04/26/2007  提供元:プレジデント社



 ある大学教授はこう語る。

 「実は、格差問題自体は、教育社会学研究者の間では目新しい問題ではありません。親の職業や収入が子の進路選択を限定するという仮説に基づく研究は、40年以上も前から続けられてきました。今になって格差が問題になっているのは、将来の見通しが不透明になっているためでしょう。終身雇用に支えられた高度経済成長期は、極端な話、会社員になれれば一生安泰でした。ところが、最近は働いても生活保護以下の収入しか得られない『ワーキング・プア』の話も珍しくありません」

 いま日本では、「格差」という言葉を耳にしない日はない。「企業格差」「業界格差」「地域格差」「学校格差」「学力格差」「医療格差」……。日本中、格差のオンパレードだ。

 「『低偏差値の高校の生徒は学習意欲が低い』という指摘を聞いた親が、格差問題を必要以上に恐れて『低偏差値の高校では進学できない』と考える方がよほど問題です。そんな親の落胆を感じたら、子どもも自分の未来をあきらめてしまうかもしれません」偏差値の高低だけでは学習意欲は変わらないと前述の大学教授は語る。

 東京大学の調査(学生生活委員会学生生活調査室)では、東大生の親の平均年収は1000万円を超える。少し詳細を記すと、950万円以上の親が半数の50.7%を占め、1250万円以上は19.4%と実に約2割を占める。一方、450万円以下は13.7%にとどまる。

 東大生の親の半数は950万円以上の年収だ。この数字がいかに凄いかは、サラリーマンの平均年収と比較するとよくわかる。

 厚生労働省調べの最新版「賃金構造基本統計調査」(2006年)によると、正社員の平均年収は489万円。男女別で比較すると、男性社員の場合は555万円で、女性社員の場合は343万円。派遣社員や契約社員などの非正社員は266万円。また、上場企業の社員の平均年収は657万円となる。

 偏差値の高低や親の年収が学習意欲を左右することはないかもしれないが、「年収格差は学力格差を生む」――。東大生の親の年収調査からは、こんな仮説が成り立つ。もはや高収入の親を持つ子どもしか東京大学に合格することはできない。

 ちなみに、「賃金構造基本統計調査」によると、学歴格差も厳然と横たわっていることが証明された。平均年収では中卒439万円、高卒492万円、短大・高専卒501万円、大学・大学院卒676万円。中卒と大卒の差は237万円である。

 企業規模別にみると、格差はさらに跳ね上がる。一番低いのが中卒で99人以下の企業に勤める人の386万円。もっとも高額になるのが大学・大学院卒で1000人以上の企業に勤める人の793万円。その差407万円。

 これは感覚的には、もはや「格差」というより、「階級」的な違いとなっている。


 プレジデント誌では、ハッキリしない「格差」を給料面から徹底的に明らかにしようと試みた。自分の給料は高いのか、安いのか。サラリーマンならずとも日本人の誰でも気になる「給料格差」。入社から退職までサラリーマン人生でどのような「給料格差」が生じるのか――。

 現在、発売中の「プレジデント誌」5月14日号特集「『給料格差』大図鑑」をご参照ください。

〔プレジデント編集部 editor's letter〕