酒類販売免許の自由化
カテゴリ:03.ニュースアンテナ 
作成日:10/02/2003  提供元:税務研究会・税研情報センター



 1998年、政府は酒販免許を取得する要件を段階的に撤廃することを打ち出し規制緩和に乗り出しました。2001年に新設店と既存店の間に一定距離を置く「距離基準」が撤廃され、さらに今年9月、地域の人口当たりの免許枠を定めた「人口基準」が廃止され、酒類販売が事実上、自由化されました。

○大昔から続く規制

 酒類を販売する店舗は、酒税法で所轄税務署長からの免許が必要と定められています。これまでは免許1件あたりの周辺人口や既存店との距離で、新規出店が規制されてきました。しかし、5年前から段階的に規制が緩和され、今年9月には免許申請者の経済的信用など「人的要件」を除き自由化されます。これをうけ、スーパーやコンビニ店以外にも薬局チェーン、ピザや弁当の宅配店、ビデオレンタル店などの異業種から多くの免許申請が予想されます。

 そもそも、酒類販売業免許制度は、1938年(昭和13)4月の「酒造税法」等の改正により導入され、所轄税務署長の免許を受けなければなりませんでした。酒類製造業免許制度も同じく、1940年(昭和15)に制定された酒税法に引き継がれ、1943年(昭和18)の酒税法改正で、酒類の製造免許および販売免許につき、免許期限や製造数量、販売業の業態等の条件を付すことができることなどが盛り込まれ、全面改正となった1953年(昭和28)改正でも、おおむねそのまま取り入れられていました。

○市場規模5兆~6兆円の食い合い

 一部の業者だけに都合の良い制度が長続きするわけがなく、1988年(昭和63)12月の「臨時行政改革推進審議会」答申を受け、「酒類販売業免許等取扱要領」を全面改正、大型店舗酒類小売業免許が新設されるなど、消費者サイドに立った改正がその後種々行われてきました。そして、大手スーパーマーケットが価格競争へ参加、安売店が登場するにいたって酒類の値崩れが生じてきました。

 しかし、こういった規制緩和の流れに逆行する法律が、2003年4月に国会で成立しました。それは、「酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法」というもので、税務署が指定した緊急調整地域では1年間に限って新しく免許を出したり、他の地域から酒販店が移転してくることを禁止する内容のものです。一般酒販店は歓迎の姿勢が目立つ半面、大手量販店からは反発の声が出ています。

 規制が緩和され、多くの店舗で酒類を扱ったとしても、需要が急速に伸びるわけではありませんから、5兆~6兆円といわれる市場規模の食い合いになることは必至です。しかし、どんな業種もこういった競争を経て、経営を続けていることも当たり前の事実としてあるのです。

【ニュースアンテナ10月号 税研情報センター】