「新興宗教の真贋」
カテゴリ:07.プレジデントニュース 
作成日:11/02/2000  提供元:プレジデント社



「末期癌を治す」と嘯く、龍堂という男がいます。
新潟県燕三条市が彼の出身地で、ここを拠点に、埼玉県熊谷市にも「龍命堂」という治療所を設けています。龍堂は医者ではありません。お釈迦様からパワーを貰った自分の手を、患者さんの身体にかざすと、不思議とだんだん良くなっていくそうです。これまで2000人の癌患者を治したと公言しています。燕三条の出身者に聞いたところによれば、龍堂の評判は一般によく知られていて、確かに、医者から見離された患者が龍堂の治療を受けたら良くなったという話がいくつもありました。燕三条の市役所に勤務する公務員のなかにも、病気でなくても、身体の調子が良くなると通っている方がいるそうです。熊谷市には月に1回のペースでやってきます。先月、私がここに行きましたときには、駐車場は所沢と熊谷ナンバーの車で埋め尽くされていて、50人ほどの方がお見えでした。


 龍堂は医者ではありませんので、治療代を請求したら医師法違反になります。だから治療代は無料。本人は「龍命堂は宗教法人として認可されている」と言っていまして、寄付金を受け付けています。実際、病気が治った患者さんの話によれば、自分の身体が良くなった後、1万円でも100万円でも、任意で寄付をするのだそうです。

 龍堂が不思議なパワーを貰ったのは十数年前。ある日突然、夢でお告げがあって、家の近くに落ちていた石を拾ってきたところから、病気の人の身体を治すことができるようになりました。熊谷市の龍命堂には、黒光りした石が置いてあります。普段ここでは、龍堂の代理人という女性が、この「石」を患者の身体にかざして治療をしています。

 さて皆さん、この話、どこまで信じられるでしょうか。
 龍堂は現代の救世主なのか、詐欺師なのか――。
 西洋医学は万全ではありませんし、世の中には科学では解明できないことが多々あります。個人的にはそんな不可思議なパワーを否定するものではありませんが、心の隙間に入り込んだ新興宗教はビジネスとして花盛りです。ではどうやって真贋を見抜くか。


 それは、主催者が金を儲けているか否か、この1点です。
「信じる者は救われる」と言いますが、誰がどんな宗教を信じようと自由です。ただ、「溺れる者は藁をも掴む」で、人間の弱さに付け込んだ商売は尽きることがありません。龍堂が現代の救世主ならば、たとえ末期癌を治してもらったとしても、寄付という名目にかかわらず、一銭も払う必要がありません。それが宗教家のあるべき姿で、それ意外を認めるべきではありません。


 もし、御殿が建ったなんて話があれば、まず間違いなく疑ってかかったほうが得策です。
 それにしても、旧来の伝統的宗教家があるべき姿を見せてくれないために、われわれ庶民は新興の宗教家の真贋を見抜き難いのだと思います。


〔プレジデント編集部〕