地方に活路あり
カテゴリ:07.プレジデントニュース 
作成日:08/04/2004  提供元:プレジデント社



 長野県の県庁通りの一角に、周囲が暗くなっても、明け方になるまで煌々と明かりがついているビルがある。社員数160名、平均年齢29.5歳の開発型ベンチャー企業・アールエフ(RF)社のビルである。

 アールエフ社では、自ら開発した歯科用コードレス口腔内カメラでアメリカで85%のシェアをもち、飲み込むカプセル内視鏡「ノリカ」の将来性が注目されて、世界中から研究者や技術者、経営者たちが絶えまなくやってくる。

 口腔内カメラとは、歯科医が患者の歯を見るために使うカメラで、アメリカではインフォームド・コンセントのためにほとんどの歯科医がこれを使い、モニターで患者本人にも歯を見せながら治療する。

 カプセル内視鏡「ノリカ」には、小型CCDカメラが搭載されていて、飲み込むと食道から大腸まで毎秒60枚の動画を撮影しながら潜水艇のように移動し、排泄とともに回収される。その間約8時間。これを使えば、もう胃カメラや大腸スコープの不快感を味わわなくてもよくなるという、「夢のカプセル」である。

 また、アールエフ社長の丸山次郎氏が、先端医療機器の研究を目的とした大学院大学を長野の地に設立する構想を発表したことでも、いま内外から注目を集めている。

 1993年に創業して以来10年間余りの同社の来し方を見てみると、黎明期のソニーによく似ているところがある。高い技術力をもち、当初からアメリカに進出したこと。そのために、例えば“長野無線工業”などと名づけることなく、社名を世界的に通じるアルファベット名にしていること。ブランドを守るため、マーケットを拡大させるために、大口のOEMを断ってきたこと。若い社員を抜擢登用し、ぶっつけ本番で鍛えること、等々である。

 プレジデント誌では、小さくてもソニーやホンダに続かんとする地方の企業を発掘してその志を応援したいという気持ちで、本年から「地方に活路あり」という連載をスタートさせた。長野県のアールエフ社はその第1号であり、8月末には単行本『アールエフの知 小さな世界企業誕生秘話』(篠田 達著)として刊行する予定である。

〔プレジデント編集部 editor's letter〕