積立NISA業界にくすぶる不満の声
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:12/26/2016  提供元:エヌピー通信社



 2018年1月に創設されることが決まった「積み立てNISA」に対し、証券業界に不満が広がっている。少額からの長期分散投資を通じて国民の安定的な資産形成を図る狙いだが、対象商品の選定基準や資産形成効果について疑問視する声が続出。背景には金融庁による事実上の「販売手数料引き下げ要請」に対する反発もあるようだ。

 積み立てNISAは、運用益に対する非課税の限度額が通常のNISA(年120万円)の3分の1の年40万円となる一方、制度の継続期間がNISA(5年)の4倍の20年。非課税投資枠はNISAより200万円多い最大800万円となる。

 対象商品は「信託期間が無期限または20年以上」「毎月分配型でない」などの条件を満たし、「長期積み立て投資に適した商品」。金融庁は「金融機関の意見も踏まえて今後、選定していく」(総務企画局幹部)としている。

 ただ、金融庁はこれまで、幹部の講演などで日本と先進国と新興国それぞれの株式と債券の計6分野に分散投資する「バランス型ファンド」を推奨してきた経緯があり、証券業界には「商品設計における業者側の自由度はほとんどない」とあきらめの声が上がる。また、長期分散投資は短期間の相場変動に左右されず大損しにくい代わりに、大きな利益も生みにくいとされ、ある国内大手証券幹部は「十分な節税メリットを得るには年40万円の上限額は低すぎる」と効果に疑問を投げかける。

 かつて顧客に対して投資信託など金融商品の乗り換えを頻繁に促して販売手数料を稼ぐ「回転売買」が社会的な批判を浴びた証券業界では、近年「顧客本位の販売姿勢」を掲げて手数料の引き下げを求める金融庁に対して不満が根強い。「判断基準がとにかくコスト一辺倒。高度な運用技術を用いて高いリターンを狙う商品には、それなりの手数料がかかってしかるべきだ」との見方も少なくなく、制度の活用がどこまで実効性を伴って広がるかは見通せない状況だ。