酒の〝激安売り〟禁止違反者には罰金、免許取り消しも
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:01/13/2017  提供元:エヌピー通信社



 酒類の過度な安売り防止を目指す新しいルールが今年6月から始まる。店舗で赤字販売を続けた場合に罰則として販売免許の取り消しもできるようにする内容になっている。安売りで顧客を獲得する大型店から、古くから店を構える小規模な酒店を守る狙いがあるが、企業の自由な競争を縛ることになれば、価格が高止まりしかねず、結果的に消費者にとってもマイナスになる可能性がある。

 昨年5月に議員立法で成立した改正酒税法の運用のための基準となるルール案を昨年末に国税庁がまとめた。パブリックコメントを経て正式に決定する。

 「公正な取引の基準」の禁止事項として①仕入れ原価と販管費の合計額を下回る価格で継続して販売すること②他の酒類業者の事業に相当程度の影響を及ぼすおそれがある取引――規定。販売の実態把握や周辺の他の店舗への影響の調査などは税務署や国税局が個別に実施し、判断する。安売りを繰り返して基準を守っていないと判断した場合は、安売りをやめるよう指示をするほか、業者名を公表し、50万円以下の罰金を科す。それでも安売りが続く場合は、最終的に販売免許の取り消しに至ることもある。

 国税庁の調査によると、酒類小売業者のうち酒屋である一般酒販店の事業者数は47%を占めるが、販売数量は14.6%にとどまる。一方で事業者数は少ないスーパーマーケット(3.5%)の販売数量は37%、量販店(0.9%)は12.6%となっている。小規模な酒店が苦しい立場とは思われるものの「淘汰される時期は終わった。生き残っている酒店は価格以外に品ぞろえなどで工夫しているところだ」(酒類事業関係者)との見方もある。安売りも一過性のものならば罰則の対象ではないことから、実際には量販店などへの影響も限定的と思われる。このため「結局地元に根付いている酒店の集票力に期待している議員のための法改正でしかない」(政府関係者)と冷めた目でみる向きが強い。