業務委託基本契約は通謀虚偽表示による仮装ではないと認定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:06/16/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 外国法人から内国法人に支払われた業務委託手数料が内国法人、その法人の代表取締役のいずれに帰属するのかの判定が争われた事件で、国税不服審判所は代表取締役ではなく法人に帰属すると判断、原処分を全部取り消した。

 この事件は、内国法人の代表取締役(審査請求人)が外国法人との間で雇用契約を締結し、同契約に基づく給与について所得税の申告をする一方、同時期に代表取締役を務める内国法人が外国法人との間で締結した業務委託基本契約に基づく業務委託手数料を内国法人の所得として法人税等の申告をしたのが発端ちなった。

 この申告に対して原処分庁が、業務委託基本契約に基づいて内国法人が委託された業務の内容と、雇用契約に基づいて代表取締役が行う業務の内容を区別することはできないという理由から、外国法人から内国法人に支払われた業務委託手数料の全部を代表取締役への給与であると認定して所得税の更正処分等をしてきたため、代表取締役がその全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 つまり原処分庁は、業務委託基本契約は通謀虚偽表示によりなされたもので無効という判断から、外国法人から内国法人に支払われた業務委託手数料の全部が代表取締役への給与に当たると主張したわけだ。

 しかし裁決は、業務委託基本契約における合意内容は、代表取締役に外国法人の副社長としての業務を行わせ、内国法人にその対価を支払うというものであり、外国法人に代表取締役の労働力を提供することが債務になっていたと認定。実際、契約に沿って内国法人がその債務を履行、外国法人から業務委託手数料を受領していたからだ。

 また、審判所の調査によっても、業務委託基本契約が通謀虚偽表示により仮装されたものであることを基礎づける証拠は見当たらず、原処分庁からも提出されていないと指摘。結局、業務委託基本契約に基づく業務委託手数料は、代表取締役への給与には当たらず内国法人に帰属すると判断して、原処分を全部取り消している。

(2014.07.01国税不服審判所裁決)