同族関係者の範囲に入ると認定、配当還元方式評価を否定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:05/29/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 相続で取得した取引相場のない株式の評価をめぐって同族関係者の範囲、つまり同族株主以外の株主等が取得した株式に該当するものとして配当還元方式による評価が認められるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、同族株主以外の株主等が取得した株式には該当しないと認定、配当還元方式による評価方法を否定して審査請求を棄却した。

 この事件は、審査請求人が相続で取得した株式を配当還元方式で評価して相続税の申告をしたところ、原処分庁が相続した株式の株主(会社)が同族関係者に該当すると認定、配当還元方式による評価を否認して更正処分等をしてきたため、その取消しが求められた事案だ。

 評価会社の相続開始時点前後の株主は筆頭株主グループの議決権割合が30%未満だったため、同族株主のいない会社に該当していたことから、請求人は評価会社に同族株主は不在であり、株主である法人は同族関係者ではないと主張。加えて、請求人と同族関係者の議決権割合も15%未満だったため、相続した株式は配当還元方式によって評価すべきであるとも主張、原処分の取消しを求めていたという事案である。

 裁決は、評価会社の株主である法人の設立経緯、資産内容、人的・物的実体及び株主総会や取締役会の開催状況等から、出資者が評価会社の経営や意思決定に関心等を有していたとは考え難いと指摘。また、出資者はいずれも評価会社の役員等であり、評価会社を退社後は出資者の地位を失うとともに、出資者及び出資の譲受人は被相続人にその決定権があったとも指摘。

 そのため、請求人は法人税法施行令4条6項が定める評価会社の株主である法人の全議決権を有する唯一の出資者であり、特殊関係のある法人つまり同族関係者に該当すると認定した。結局、評価会社の請求人とその同族関係者の議決権割合は15%以上となることから、配当還元方式による評価は認められないとして棄却している。

(国税不服審判所、2011.09.28裁決)