商品券の使途を記録した書面等が存在しないことを理由に、請求を棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:07/26/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 吸収合併によって消滅した法人が購入した商品券が接待交際費として損金算入が認められるか否かの判断が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、商品券の使途を具体的に特定する事項を記録した書面等が存在せず、商品券の使途に関する法人側の主張に変遷が見られることなどから、業務の遂行上必要とは認められないと判示して、合併法人側の主張を棄却した。

 この事件は、吸収合併で消滅した法人の確定申告に対して原処分庁が更正処分をしてきたため、消滅法人を吸収合併した合併法人(倉庫会社)がその取消しを求めて提訴したという事案である。

 具体的には、消滅法人が購入した商品券の購入のための費用を接待交際費として計上した上で、交際費等に係るいわゆる損金不算入額のみを損金に算入しないで申告したところ、原処分庁が商品券の使途が明らかではないことを理由に、商品券の購入費用の全てを損金に算入することはできないと否認して、更正処分をしてきたことが発端。そこで合併法人側が、商品券は消滅法人の事業関係者に贈与されており、その購入のための費用は交際費等として損金算入が認められるべきであると反論して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 判決はまず、損金に算入することができる支出は、業務の遂行上必要と認められるものに限られると解釈。その解釈に沿って、使途を特定することができず、業務の遂行上必要と認めることができない支出は、損金に算入することはできないという考えを示した。

 その上で、消滅法人の経理担当者が税務署からの使用状況の分かる書類の提出を求められたものの、相手が多数で特に明細は作っていないと回答して、提示を求められた書類を提示することはなかった事実を認定。また、名簿に記載された者は、面接を受けたとされる者の氏名等が記載されているにすぎず、書面に記載された者に商品券が手渡されたことをうかがわせる記載は一切なく、照会書や回答書は商品券の使途に関する法人側の主張を裏付けるものであるとは言えないとも判断した。

 結局、商品券の使途に関する供述を裏付ける証拠は見当たらず、全証拠によっても商品券の使途が明らかではなく、業務の遂行上必要であると認められない以上、損金算入は認められないと判示して、棄却した。

(2015.09.09東京地裁判決、平成25年(行ウ)第627号)