小規模宅地特例の適用は相続人全員の選択同意書が必要
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:11/29/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 小規模宅地等の評価減特例の適用を受ける場合に、同特例の特例対象宅地等を取得した全ての相続人の選択同意書を申告書に添付する必要があるか否かの判断が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、同特例を定めた措置法の政令が特例対象宅地等を取得した全ての個人の選択同意書の添付を求めていることを理由に、納税者側の請求を斥けた。

 この事件は、相続した土地が被相続人と生計を一にしていた親族の事業の用に供されていた宅地等に該当したことから、小規模宅地等評価減特例を適用して相続税の申告をしたのが発端。これに対して原処分庁が、同特例の適用の対象となる全ての土地を取得した相続人全員の同意がされていないことを理由に特例の適用を否認、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その全部取消しを求めて提訴された事案である。

 納税者側は、同特例の特例対象宅地等を相続させる旨の遺言が存在する場合、申告時点における選択同意書の添付を要件とすると、小規模宅地等評価減特例を定めた措置法69条の4第4項ただし書きの適用が不能となるから、同要件は技術的細目要件としての機能を超え、実体要件としての機能を有するに至ると指摘した上で、同施行令40条の2第3項3号は、相続させる旨の遺言の対象となった特例対象宅地等に適用される限りにおいて租税法律主義に違反した違憲無効な規定となる旨の主張を展開、原処分の取消しを求めた。

 これに対して判決はまず、措置法69条の4が選択特例対象宅地等を同一の被相続人に係る全ての相続人等に係る全ての特例対象宅地等の中から選択したものと定め、全ての相続人等間で統一された選択をすることを要求していると解釈。

 また、施行令40条の2第3項は、特例対象宅地等のうち同特例の適用を受けるものの選択は特例対象宅地等を取得した個人が1人である場合を除き、特例対象宅地等を取得した全ての個人の選択同意書を相続税の申告書に添付することを定めているのであるから、措置法69条の4第1項が定める「政令で定めるところにより選択」の文言を受け、その委任に基づく具体的手続を定めた規定であることは明らかと指摘、納税者側の主張を斥けて棄却の判決を言い渡した。

(2016.07.22東京地裁判決、平成27年(行ウ)第57号)