海外子会社合算税制の事業基準を満たしていないと判示、控訴棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:05/31/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 タックスヘイブン税制の適用をめぐり、海外子会社が株式の保有を主たる事業とするものに該当するか否かの判断が争われた事件で、名古屋高裁(藤山雅行裁判長)は株式の保有を主たる事業とするものであり、地域統括業務は株式保有事業に含まれる一つの業務に過ぎないため、株式保有業と別個独立の業務とは言えないと認定、法人側の請求を一部認めた原審判決を全て取り消した上で、法人側の控訴を棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、原処分庁が海外子会社の課税対象留保金額に相当する金額は内国法人の所得金額の計算上損金の額に算入されると判断、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、内国法人側がその取消しを求めて提訴したのが発端。

 その結果、一審の名古屋地裁は過少申告加算税賦課決定処分等の一部については請求を認容したものの、その他の部分は訴えが不適法と却下したため、法人側が原審で却下された部分の請求の認容を求めて控訴する一方、原処分庁側も法人側の請求を認容した部分の請求の棄却を求めて控訴したという事案である。つまり、株式保有事業を営む海外子会社がタックスヘイブン対策税制の適用除外基準を満たしているか否かが争点になった事案だ。

 控訴審は、海外子会社は株式の保有を目的にする子会社であり、法人側が主張する地域統括業務は株式保有事業に含まれる一つの業務に過ぎず、株式保有業と別個独立の業務とはいえないと認定。その上で、事業としての株式の保有とは単に株式を保有し続けることのみならず、その株式発行会社を支配しかつ管理するための業務もまた、その事業の一部をなすというべきであり、問題となった一定地域内にある被支配会社を統轄するための諸業務もまた株式保有業の一部をなし、タックスヘイブン対策税制を規定した措置法66条の6第3項括弧書きの「事業」に該当することは明らかであるという判断を示した。

 結局、事業基準を満たさないためタックスヘイブン対策税制が適用される事案であるから、原処分はいずれも適法であると判示するとともに、法人側の主張を一部認容した原審判決を不当と判示して、法人側の請求を全て棄却する判決結果になった。

(2016.02.10名古屋高裁判決、平成26年(行コ)第91号)