節税目的の税金養子であっても、養子縁組は有効と最高裁が判断
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:02/14/2017  提供元:21C・TFフォーラム



 相続税の節税対策を目的にしたいわゆる税金養子が、当事者間に縁組みをする意思がないときに該当するか否かつまり養子縁組そのものが無効か否かの判断が争われた事件で最高裁第三小法廷(木内道祥裁判長)は、無効と判断した控訴審判決を破棄、専ら相続税の節税のための養子縁組であっても直ちに養子縁組そのものが無効になるものではないと判示して、養子縁組の無効を訴えてきた長女側の請求を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、被相続人が生前、税理士等から孫を養子にすれば相続税の節税に効果がある旨の説明を受けた後、養子の親権者を被相続人の長男とその妻、養親を被相続人とする養子縁組を行い、証人として被相続人の弟夫婦が署名押印の上、養子縁組届出書を作成して役所に提出したのが発端。

 しかし相続開始後、長女・次女側と長男側が相続を巡って対立したことから、長女・次女側が養子縁組の無効確認を求めて提訴したところ、一審は養子縁組を有効と判断したものの、二審が無効と判断したため、養子の親権者である被相続人の長男側が上告して二審判決の取消しを求めて上告したという事案である。ちなみに、被上告人は被相続人の長女と二女、上告人は被相続人の長男とその妻との間の長男として生まれ、1歳前後の時に被相続人との間で養子縁組をしていたという事情にあった。

 控訴審は、養子縁組は専ら相続税の節税のためにされたものであるから、民法801条1号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」と当たると判断、長女・二女側の請求を認容した。

 しかし最高裁は、養子縁組は嫡出親子関係を創出するものであり、養子縁組による相続税の節税効果は相続人の増加に伴い、基礎控除額を相続人の数に応じて算出することになる相続税法の規定によって発生するものであると解釈。また、相続税の節税を目的にした養子縁組は節税効果を発生させることを動機としてするものに他ならず、相続税の節税の動機と養子縁組の意思とは併存し得るとも解釈。

 その結果、専ら相続税の節税のための養子縁組であっても、直ちにそれが「当事者間に縁組をする意思がないときに」当たるとすることはできないと判示して、長女側の請求を斥ける判決を言い渡した。

(2017.01.31最高裁第三小法廷判決、平成28年(受)第1255号)