土地の租税公課は賃貸供用割合を用いて必要経費を算出が合理的
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:03/29/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 不動産賃貸業者の不動産所得の金額の計算上、医療法人と共有する建物に係る減価償却費、借入金利子及び租税公課、さらに所有する土地に係る租税公課の必要経費性の判断が争われた事件で東京地裁(小林宏司裁判長)は、いずれの部分も賃貸供用割合を乗じて算出するのが相当と判断して、不動産賃貸業者側の主張を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、不動産賃貸業者が不動産所得の金額の計算上、医療法人と共有する建物の減価償却費、借入金利子及び租税公課の一部の金額さらに建物の敷地に係る租税公課の全額を必要経費に算入して申告したのが発端。しかし、原処分庁がこれらの必要経費算入をすべて否認して更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、不動産賃貸業者(原告)が減価償却費等の50%相当分、及び建物の敷地に係る租税公課の全額を必要経費に算入すべきであると主張して、更正処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 原告は医療法人の出資者、医療法人の理事長は原告の子という関係にあったが、申告当時、原告が4分の3、医療法人が4の1の持分を共有し合い、減価償却費等は持分に応じた金額を負担することになっていた。そこで不動産賃貸業者が教室貸付事業に使用していた建物の全床面積の50%相当部分は、現実に賃貸の用に供していなかった期間も含めて、その維持、管理に必要な費用は必要経費として認められるべきであると主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 判決は、現に賃貸の用に供していなかった期間に係る建物の減価償却費等の必要経費算入は認められないと指摘した上で、賃貸供用割合に基づいて経費を按分するのが相当と判断。また、土地の租税公課についても、賃貸供用割合を用いて教室賃料収入に係る必要経費を算出するのが合理的であると指摘。結局、必要経費に算入すべき租税公課は、各年分の租税公課の金額に賃貸供用割合を乗じて算出されたものになると判断して、棄却した。

(2015.06.18東京地裁判決、平成25年(行ウ)第778号)