法人支払いの保険料は一時所得の計算上控除できないと棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:02/23/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 法人から契約上の地位を譲り受けた生命保険契約の解約払戻金に係る一時所得の金額の計算上、法人が支払った保険料を控除できるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、法人が支払った保険料を一時所得の金額の計算上控除することはできないと判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、複数の法人の代表取締役である審査請求人が、各法人から契約上の地位を譲り受けた各生命保険契約を解約したことに伴って受領した解約払戻金に係る所得の申告をせず、他の所得のみを申告したのが発端となった。

 これに対して原処分庁が、解約払戻金に係る一時所得の金額が生じると判断、所得税の更正処分等を行ってきたため、請求人が、各法人が支払った各生命保険契約に係る保険料の総額は一時所得の金額の計算上控除されるべきであり、解約払戻金に係る一時所得の金額は生じないと主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 しかし裁決は、一時所得に係る支出が所得税法34条2項の「収入を得るために支出した金額」に該当するためには、それがその収入を得た個人において自ら負担して支出したものでなければならないと解釈。また、平成23年6月改正前の所得税法施行令183条(生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等)2項2号についても、以上の理解と整合的に解釈されるべきであるとも指摘した。

 その上で、同号が一時所得の金額の計算において支出した金額に算入すると定める「保険料…の総額」は、保険金の支払いを受けた者が自ら負担して支出した金額をいうと解すべきであり、同号がこのようにはいえない保険料までその金額に算入し得る旨を定めたものではないと述べて、請求人の主張を否定した。結局、解約払戻金に係る一時所得の金額の計算上、法人がその名義により支払った保険料は控除することができない判断、審査請求を棄却した。

(2015.04.21国税不服審判所裁決)