外国所得税の納付事務は国外と認定、原処分を全部取消し
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:04/03/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 外国政府に納付した帰国社員の海外事業所勤務中の賃金に係る所得税が帰国社員に対する経済的な利益の供与に当たるか否か、それに伴う源泉所得税の納税告知処分の可否が争われた事件で、国税不服審判所は外国所得税の納付つまり給与等の支払事務は国外において行われていたと認定の上、源泉徴収義務はないと判断して原処分を全部取り消した。

 この事件は、審査請求人が外国政府に納付した帰国社員の海外事業所勤務中の賃金に係る所得税を帰国社員に対する経済的な利益の供与に当たると原処分庁が認定して、源泉所得税の納税告知処分等をしたことが発端になったもの。

 そのため請求人側が、賃金の支払い及び所得税の納付等の支払事務は国外の各事業所によって行われるとともに、その所得税は帰国社員が非居住者であった期間に生じたものであるから源泉徴収義務はないと主張して、原処分の全部取消しを求めた。つまり、1)外国所得税額負担額の支払い(納付)が国内における給与等の支払いに当たるか、2)外国所得税額負担額は非居住者であった期間の国内源泉所得以外の所得に該当するか否かが争点になった事案だ。

 これに対して裁決は、外国所得税の納付が1)海外事業所から事務を委託された現地の会計事務所が海外勤務者の所得税額の計算及び申告・納税の手続きを行うとともに、2)海外事務所の所長が納付すべき税額の確認及び支出を決定し、3)海外事業所が外国所得税の納税の資金手当を行っていたことを踏まえれば、外国所得税に係る支払事務は海外事業所で行われていたと認めるのが相当であると判断。その結果、外国所得税の納付事務は国外で行われていたと認定して、請求人に源泉徴収義務はないと判断、全部取り消した。

(国税不服審判所、2011.06.28裁決)