相続財産の帰属は名義人と管理者の関係から総合的に考慮
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:06/12/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 被相続人以外の名義財産が、被相続人に帰属するのか相続人に帰属するのかの判定が争われた事件で国税不服審判所は、財産の原資の出捐者及び取得の状況、その後の管理状況等を総合考慮すれば、被相続人の財産に帰属すると認定して審査請求を棄却した。

 この事件は、相続税の申告をめぐり、原処分庁が共同審査請求人を契約者とする生命保険契約に関する権利、有価証券さらに預貯金等が被相続人に帰属する財産であると認定、更正処分の上、重加算税の賦課決定処分をしてきたため、審査請求人が相続人らの固有財産であると主張、原処分の取消しを求めた事案で、審査請求人ら名義の財産は被相続人に帰属するか否か、隠ぺい・仮装の事実があったか否か等が争点になっていた。

 これに対して裁決は、預貯金や有価証券等の財産の帰属を判断する際に名義が重要な要素になると示唆した上で、その原資の負担者、取引や口座開設の意思決定をした者、手続を実際に行った者、管理又は運用による利得を収受している者などの諸要素の他、名義人と管理又は運用をしている者との関係等を総合的に考慮すべきであると指摘した。

 しかし、請求人ら名義の財産は一部の財産を除き、原資の負担者、取引や口座開設等の手続きの遂行者は実質的に被相続人であり、被相続人自身又は被相続人が請求人の一人を通じて管理していたと認めるのが相当であること。また、財産の運用は被相続人の指図によって行われていたとみるのが相当であること、さらに請求人ら名義の上場株式の配当金に係る利得を享受し得る立場にあったのも被相続人であったと認めるのが相当と判断。結局、被相続人の相続財産と認めるのが相当であると認定して、審査請求を一部取り消している。

(国税不服審判所、2011.05.16裁決)