配当等に係る控除所得税額の過少記載でも更正の請求は可能
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:07/22/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 配当等に係る所得税額控除額の計算を誤り、控除税額を過少に記載した法人税の確定申告でも更正の請求が認められるか否かの判断が争われた事件で、最高裁(今井功裁判長)は国側の主張を認めた原審の福岡高裁判決(平成18年10月24日判決)を変更、法人側の主張を認める判決を言い渡した。

 この事件は、清涼飲料水の製造・販売等を行う法人が配当等に課された所得税額の控除額を過少に記載して申告した結果、法人税額が過大になったため更正の請求をしたのが発端。本来、配当等の計算の基礎となった期間の期末・期首の各時点の所有株式数を記載すべきところ、誤ってその事業年度の期末・期首の各時点の所有株式数を記載したため、配当等に係る控除所得税額を過少に記載して申告したという事情があったからだ。

 これに対して、一審の熊本地裁(平成18年1月26日判決)は法人側の主張を認めたが、控訴審の福岡高裁は法令解釈の誤りや計算の誤りがあったからといって、直ちに更正の請求の要件に該当するものではないと逆転判断を下したため、法人側が上告していたという事案だ。

 最高裁は法人税法68条に触れ、法人が確定申告の際に配当等に係る所得税額控除制度の一部又は全部の適用を受けることを選択しなかった以上、後にこれを覆し、同制度の適用を受ける範囲を追加的に拡張する趣旨で更正の請求をすることは許されないことを規定したものであると同条を解釈。その上で、配当等の計算の基礎となった期間の期末・期首の各時点の所有株式数を記載すべきところ、誤ってその事業年度の期末・期首の各時点の所有株式数を記載したため、一部の銘柄について銘柄別簡便法の計算を誤り、結果的に控除を受ける所得税額を過少に記載したものであると認定。結局、法人が申告の際に控除所得税額を過少に記載したために法人税額を過大に申告したことが、更正の請求の要件に該当するのは明らかと判示、法人側の主張を認容する再逆転判決となった。

(平成21年7月10日最高裁第二小法廷判決、平成19年(行ヒ)第28号)