非居住者性の判断を買主側に求めるのは酷ではないと判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:03/13/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 非居住者から土地等を購入した場合の源泉徴収義務制度の適用をめぐって、買主側に売主が居住者か非居住者かの確認義務が求められるか否かの判断が争われた事件で、東京高裁(春日通良裁判長)は原審と同様、土地等の売買の際に売主が居住者か非居住者かの判断をするのが通常であると判断、買主である法人側の控訴を棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、海外に転勤していた日本人から土地を購入した法人が、その対価の支払いの際に源泉徴収をしなかったため、原処分庁が源泉税の納税告知処分、不納付加算税の賦課決定処分をしてきたため、土地を購入した法人がその取消しを求めて提訴していたというもの。

 法人側は、外見上から見ても日本人である売主が居住者か否かの判定を買主に求めるのは酷な負担を強いるものであるから、外国人から土地等を購入した場合の源泉徴収義務制度は限定的に適用すべきであると主張して、原処分の取消しを求めて提訴したわけだが、原審の東京地裁は、居住者か非居住者かの判定は売買契約の目的を達成するためには買主側に調査確認等が当然に求められ、酷な負担を強いる制度ではないと判示して棄却したため、控訴して再度その取消しを求めていたという事案である。

 しかし控訴審も一審と同様に判断、源泉徴収義務が発生する売買か否かの判断は重要なことであるから、非居住者性の確認を行うのが通常であり、それが取引の実情であると示唆して控訴を棄却している。源泉徴収の確認義務を買主側に求めた初めての判決として注目を集めているが、売主が日本人の場合、居住者か非居住者かの判定をするのは実務的に困難な場合が多いと指摘する声も多い。国際化に伴い、制度創設時の立法趣旨とは異なる想定外の事情が出てきたというわけだ。

(2011.08.03 東京高裁判決、平成23年(行コ)第117号)